女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ

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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(14)1RKO宣言。

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ダン嶋原は『年末格闘技男女大戦争』を3日後に控え、その日の昼に堂島源太郎のトレーナーであった今井と岩崎の元を訪ねランチを誘った。
いくら自分に絶対有利なルールで相手が女子であっても、油断せず情報を集め対戦相手の分析を欠かさないのも嶋原の強さの秘密であった。

(NOZOMIのことを一番知っているのは
彼女との試合で堂島さんのセコンドについていたこの2人だと思う...)

本当はNOZOMIと直に戦った村椿和樹の話を聞きたかったのだが、女子にKO負けした恥辱を受け、引退発表後から
絶対マスコミの前に姿を表さず、噂では熱愛報道もあり結婚間近と思われた元女性アイドルとも別れたそうだ。
その後の村椿和樹は消息不明。

いくら過去に数々の栄光があるとはいえ、男が女に格闘技で負けるということは積み上げてきた実績が無に帰す。
残酷だがそういうことなのだろう。

NOZOMIという美女ファイターは、堂島源太郎の命を奪い、村椿和樹の心をズタズタにしてしまったのだ。

「ところで今井さん。堂島さんの息子龍太君は相変わらず頑張ってますか?
中学生になって、部活では柔道部に入ったそうですね?」

「そうなんだよ、あいつには親父を継いでもらってキックボクサーになってほしいんだけどな。本人は総合格闘家になって、将来NOZOMIと戦いたいと言ってるんだ。ハハハ!」

この今井トレーナーは堂島源太郎の息子龍太を自分の子どものようにかわいがっており嬉しそうだ。

NOZOMIの名前が出たところで、嶋原は彼女について話を振った。

「僕はもう最盛期をとうに過ぎた堂島さんが、なぜ自分絶対不利な寝技あり総合ルールであそこまで彼女を追い込み、なぜスタンドのみの自分有利なルールで円熟期にあった村椿さんがあんなに簡単にやられたのか?ずっと考えているんです」

「嶋原君はどう思う?」

岩崎が逆に嶋原に問い返す。

「多分、ですが、、村椿さんは相手が女子だからと甘く見ていたんじゃないかと、、グラウンドなしのルールが逆に仇になって強引に行き過ぎたんじゃないかと思うんです。そんな自信過剰から不用意に突っ込んでカウンターを食らった。あれがなければ肘と膝の餌食にならなかった。絶対村椿さんが勝っていた。僕は彼と戦ってみてその強さを知っているんです」

岩崎は腕組みしながら嶋原の話を黙って目を瞑りながら聞いていた。

「嶋原君の分析は正しいと思う。それに付け加えるならば、村椿君は相手に対するリスペクトが足りなかったのでは? それが結果的に相手を甘く見ることになった。堂島さんは女子選手を殴れるか?と、最初は苦悩していたようだが、彼女のことを知るにつけリスペクトするようにもなった。女子だからと甘く見ることなく、逆に彼女を前に恐怖で足が竦んでいたほどだ。どんなルールでも過信は禁物だよ」

「はい! 僕は相手が女子選手であっても決して侮らないし、現にNOZOMIは堂島さんや村椿さんを倒している。そういう点ではリスペクトしています。彼女の研究分析もしてきたし万全の状態で大晦日のリングに向かいます。そして必ず第1ラウンドでKOします」

岩崎は、この10年に1人、否、20年に1人とも言われる超天才ダン嶋原がキックルールでよもや女子選手に敗れるなんてことはないと思っている。
でも “ 必ず1ラウンドでKOする” という言葉が引っ掛かる。彼もまた村椿和樹と同じように熱くなるタイプなのだ。
天才特有の危うさも感じる。

(それに、NOZOMIという天才美女ファイターに不気味なものを感じる。まだ底を見せていない? 彼女の真の実力が見えてこないのだ。何かあるぞ?)

そこに黙っていた今井が顔を上げた。

「嶋原君。試合に臨む心構えは別として、NOZOMIの技術についてだけど、彼女が堂島さんを倒したのは高校2年で17才の時だった。それから1年半後の鎌田桃子戦では格段に打撃技術が進歩していた。更にその半年後はモンスター村椿和樹をリングに沈めた。あのカウンターパンチを見たか? あれは村椿が油断していただけでは説明がつかないんだよ。恐るべきアテ感だ」

「確かに...」

「村椿戦からまた1年が経った。堂島さんと戦ってから3年だね? 17才だった彼女も20才になった。私は思うのだけど、NOZOMIは村椿戦から更に格段に進歩?否、進化していると考えた方が良さそうだ。1ラウンドで倒してやろうなんて考えは捨てるべきだ。判定でも何でも勝ちに徹した方がいい」

「・・・」

嶋原は何か言いたそうだがじっと黙って今井のアドバイスを聞いていた。
今井も岩崎も嶋原の気持ちは分かっていた。いくら勝っても、このルールで判定では実質負けに等しい。圧倒的な実力差を見せなくては世間も自分も納得しない。例えそれが危険を孕んでいても最初から倒しにいくだろう。

そして、三人は店を出た。

「嶋原君、君とNOZOMIの試合はキックボクシングの名誉というより、男の名誉がかかっている試合だ。男は女より強いということを証明してくれ!」

「はい!僕は絶対負けません」

大晦日の『年末格闘技男女大戦争』に向けて、各選手はそれぞれどんな思いでいるのだろうか?

あの雷豪を血の海に沈めた褐色のケンカ空手少女シルヴィア滝田は、同じ大相撲出身ながらでかいだけで “うどの大木” だった雷豪と違って、今度の相手翔龍道は甘くはないと思う。

翔龍道は角界から刺客として送り込まれた絶対負けられない立場。
続けて元幕内力士が空手女子高生に敗れることは許されないのだ。そのプレッシャーは相当なものだろう。

16才の無名少女と試合をする小杉稔も
気持ちが落ち着かない。相手の奥村美沙子という少女の情報がまったくないからだ。どんな戦い方をするのだろうか? 大人の男である自分が、16才の少女に負けるわけにはいかない。

奥村美沙子は、NOZOMIさんと一緒に練習した自分が、どこまで男子選手相手に通用するのか? その成果を試してみたい。楽しみしかない。

そんな中、NOZOMIは当日のリング衣装選びに余念がなかった。

そうして、大晦日を迎えた。

今大会は大いに盛り上がりそれぞれの試合が順調に消化した。

(リングアナ)

「これより、格闘技男女大戦争、三番勝負の第一戦目。小杉稔選手vs奥村美沙子選手が入場します!」

ウオオオオオオオ!

場内は興奮の坩堝と化していた
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