女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ

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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(24) 渡瀬耕作 vs NOZOMI

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(リングアナ)

「NOZOMI選手の入場です!」


NOZOMIの入場シーンは注目される。

堂島源太郎戦は白いセーラー服で入場し試合では蛇革のビキニで戦った。
村椿和樹戦ではスカート状のレオタード、ダン嶋原戦では女子フィギュアスケートを思わせるような衣装。

今日はどんな衣装で来るのか?

しかし、長年格闘技界を牽引してきた渡瀬耕作に対する敬意なのか? 
NLFSカラーの真紅の水着、ビキニではなくワンピースタイプ。これは鎌田桃子と戦った時と同じだが、それでもハイレグでありセクシーだ。

あくまで渡瀬耕作の引退試合であって主役は彼であり、それを踏まえ派手な演出もなく静かに入場した。


(リングアナ)

「渡瀬耕作選手の入場です!」

黒のハーフパンツ、渡瀬耕作がいつものように静かに花道を歩いてきた。
リングインする前に立ち止まると、大きく深呼吸し目を瞑り何事かを呟いている。これは渡瀬耕作独特の儀式、ルーティン。これが見納めだ。

リングで向かい合う両者。

さすがのNOZOMIも、日本MMA無差別級最強だった男を前に怖さを感じた。
(私はこんな超人と戦って、無事リングから降りられるのだろうか...)


対する渡瀬はNOZOMIを前に怖さは感じないが彼にしては珍しく緊張している。若い頃はともかく、渡瀬は常に心を集中させどんな相手であろうと無心で戦ってきたのだ。しかし、相手は女性であり何をしてくるか分からない。
この緊張感はどこから来ているのだろうか? 自分より30kgも軽い女子相手に負けるとは思わないが、何か得体の知れなさをこのNOZOMIには感じる。

否々、そうではない!
自分の人生をかけてきたリングでその最後の試合で「女」と戦うのだ。そんな違和感に緊張しているのだ。


試合は5分3ラウンド。
決着つかねば最大5ラウンドまで。
何でもあり総合ルールで行われる。

(実況)

「さあ! いよいよ世紀の一戦が始まります。日本格闘技界最強の座を長い間守ってきた超人渡瀬耕作の引退試合。NOZOMIは村椿、嶋原というキック界のスーパースターを連続して撃破してきましたが、今回の相手は総合格闘技無差別級前王者だ。本当に女子選手がこんな大きく強い男と戦って大丈夫なのか?  ゴングは鳴った」


開始早々だった。

ビシッ!ビシッ!

両者ボクシングの構えから、、いきなりNOZOMIのジャブが矢のように飛んできた。彼女のリーチは長い、、この距離感からは考えられないほど鋭く伸び渡瀬の顔面にヒットした。
渡瀬が怯むと今度は槍のような右ストレートがその顔面を打ち抜いた。

一瞬グラっとした渡瀬が態勢を持ち直しガードを固めると、今度は下半身に強烈なローキック。
そのローキックは、3発、4発と渡瀬の膝を確実にとらえた。さすがの渡瀬も顔を顰めながら後退するとロープ際に追い込まれた。NOZOMIの連続攻撃は速く渡瀬に反撃の間を与えない。

ロープ際に追い込まれた渡瀬の首に、
NOZOMIの長い腕がまわった。フロントチョークの態勢である。並の格闘家ならここでお終いだろう。だが、渡瀬の首は鍛えに鍛えてある。そう簡単には極まらない。NOZOMIはフロントチョークを諦め首相撲に持っていくと片方の脚を少し引いた。
あの村椿和樹に地獄の苦しみを与えた首相撲からの膝蹴り態勢だ。

グサッ!

鋭い膝が渡瀬の腹部に突き刺さる。

しかし、渡瀬は大きくて体幹が異常に強い。首相撲は中途半端で膝蹴りも完璧ではない。それでも渡瀬は2~3歩ヨロけると腹部を抑え苦痛の表情で膝をついた。ダウンである。

NOZOMIは膝をついている渡瀬に飛び掛かるとマウントの態勢になった。
そして、拳を直角に振り下ろす。
 NOZOMIの拳が顔面を襲う少し前に、渡瀬は顔前に腕で十字を作りその直撃から守った。それでも構わずNOZOMIは何度も何度も拳を振り下ろす。
 拳の連打に嫌気がさした渡瀬は身体を裏返すとうつ伏せになる。
 そこへ背後からNOZOMIの腕が渡瀬の首にまわった。そして、長い脚もその胴にまわる定石通りの攻撃、胴締めスリーパーである。

試合開始からちょうど2分が経過。
あと3分もありこのままジワジワと絞め付け渡瀬を絞め落としてしまうのだろうか? あの渡瀬が何も出来ない。


(実況)

「我々格闘技ファンは錯覚?幻覚を見ているのでしょうか? あの伝説の男、超人渡瀬耕作が美しい女性に成す術もなく一方的に敗れてしまうのか? 身長で3cm、体重で30kgも重い渡瀬耕作ですがNOZOMIの長い手足に巻かれピンチです。これがNOZOMIの雌蛇と云われる所以です。彼女の細く長い腕はまるで紐のように首に巻き付きます。一度深く結ばれて(巻かれて)しまうと無間地獄。絶対に外せません」


一方的に攻めながらも、NOZOMIは渡瀬耕作に対して怖さを感じていた。
今のところは相手の力を封じ攻撃の間を与えていないだけ。この一連の攻撃を防ぎ切られて反撃に出られたらどうなるのだろう?
この胴締めスリーパーも完全には極っていない。もっと、針金で巻くように深々と入らないとタップはとれない。
渡瀬さんのフィジカルの強さ、内に秘めるパワーを凄く感じる。

(反撃されたら怖い。ここで一気に決めないと苦しい戦いになる...)

このままでは絶対に極まらない。スタミナには自信があるけれど、このまま攻め続ければこっちの方が先に疲れ切ってしまうだろう。

時間は3分半を過ぎていた。

NOZOMIはこの態勢での攻撃を諦めると渡瀬から離れサッと立ち上がった。渡瀬もヨロヨロと用心深く立ち上がると、いきなりNOZOMIの長く美しい脚が鞭のように飛んできた。それは渡瀬の側頭部に炸裂した。

ハイキックである。

意識を失いそうになり渡瀬はダウン。

倒れている渡瀬にNOZOMIはサッカーボールキックを見舞った。
何度も何度もまるでリンチのように蹴り上げては踏みつける。それを頭を抱え亀の甲状態で身を守る渡瀬耕作。
幾分、目の上が内出血している。

一方的になった戦局にレフェリーが渡瀬の顔を覗き込んでいる。
レフェリーストップになるのか?

引退試合がこんな惨めなことになってしまった偉大なる渡瀬耕作の姿をこれ以上見るのは忍びない。レフェリーは亀の姿勢になった渡瀬は戦意喪失、もうこれ以上試合続行は不可能と判断。

ストップしようとした瞬間だった。

蹴り上げられていた渡瀬がNOZOMIの長い片脚を両腕で掴むとそのまま掬い上げた。後方に吹っ飛ぶNOZOMI...。

渡瀬はフラフラと立ち上がるとファイティングポーズをとった。
反撃に出ようとしたところで第1ラウンド終了のゴングが鳴った。

(実況)

「第1ラウンド終了ですが、これは大変な試合になりました。あの最強絶対王者だった渡瀬耕作が、女子選手に一方的にやられている5分間でした。あわやレフェリーストップTKO負けか?という場面までありました。それにしてもNOZOMIは1年前の嶋原戦の時より格段に進歩している。この美女はどこまで進化し続けるのか!」


さてこの試合どうなる?

渡瀬耕作の反撃はあるのか?

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