女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ

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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(45)スキャンダル。

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(実況)

「ダン嶋原が遂に、G主催の格闘技戦に帰ってきました。NOZOMIとの死闘から3年半? 鎖骨粉砕骨折からの復帰戦こそ村椿和樹に敗れましたが、その後は5連続KO勝ちです。対するは柔術マジック奥村美沙子。この試合は総合ルールで行われます。どんな試合になるのか?全く想像できません」


嶋原は目の前に立っている女は意外と背が高いなと思った。
計量では174(62)でしなやかな美しい肉体をしている。174(64)でこの試合に臨む自分とほぼ同じサイズ。
それにNOZOMIのような派手な華やかさはないが静かに咲く花のような美しさがある。(俺はこんな女と戦うのか?いや、そんな考えはよそう。昔の俺とは違うのだから...)

嶋原がNOZOMIに対して沈黙を守っているのは、まだ総合ルールで戦って勝つ自信が1%もないからだ。せめて10に1でも勝てる可能性があれば...。
キックルールなら、今度は勝てるんじゃないの?と周囲は言う。

しかし、それに何の意味、価値があるというのだろうか?尊敬する堂島源太郎は当時17才のNOZOMIと総合ルールで戦い命を落とした。
盟友村椿和樹も二度目の対決は総合ルールで挑んだものの絞め落とされた。そして、魔性の女NOZOMIに心まで奪われたのだ。今日は目の前の敵(奥村美沙子)を全力で倒す。そのための総合ルール対策もやってきた。
まだまだNOZOMI以外の女には負けたくない。負けたなら俺は引退する。


奥村美沙子は目の前にいるダン嶋原のオーラに圧倒されそうだった。
16才でデビュー(小杉稔戦)した彼女ももうすぐ22才になる。
その後、卓越した柔術テクニックで次から次に男子相手に連勝街道を歩んできたが今日の相手は違う。

美沙子は遠い日のことを思い出す。

10年前の彼女は体操に夢中の小学生。跳馬と段違い平行棒が得意な女の子だった。しかし、小六頃から急に身体が大きくなり体操を続けられるか?向いていないのか...と、悩んでいた。
ちょうどその頃だろうか? たまたま点けたテレビに当時18才のダン嶋原が映っていた。圧倒的なスピードで相手を翻弄するとあっという間に倒してしまった。その衝撃的強さに美沙子はたちまちファンになってしまった。
(世の中にはこんな強い男の人がいる)
夢見る少女は嶋原に影響を受けた。

体操好きの女の子だった美沙子が10年の時を経て、今、憧れていたダン嶋原とリングで向かい合っている。
そして拳を交え戦うのだ。

(嶋原さん、私はアナタに憧れ大ファンだったけど、この試合は勝たせてもらいます。私の柔術を味わって下さい)


(実況)

「さあ! 今、ゴングが鳴った。これは異性格闘技戦であり、総合ルールながらキックボクシング vs 柔術という究極の異種格闘技戦でもあります」


嶋原はオーソドックスな軽いフットワークからキックボクシングの構え。
美沙子は腰を落とした低い姿勢から組み付こうという構えだ。

ビシッ!ビシッ!

嶋原のジャブが低い構えの美沙子を襲った。更に軽快なフットワークで周囲をまわるとローキックが下腿部に襲ってきた。今日の嶋原はいつにも増してキレがあるようだ。
美沙子は嶋原のスピードに目を追うのがやっとで、パンチやキックを防ぐので精一杯、攻め手が見つからない。

バシッ!

ローキックを太腿に浴びると倒れそうになった。美沙子の神経が下半身にいくとガードが下がり、そこへアッパーが飛んできた。
危うくまともに浴びそうになったが、持ち前の運動神経で防ぐとクリンチにいった。そして嶋原の胴に両腕をまわした。密着攻撃だ。

捕まえた!

美沙子はこのままタップするまで絶対離さないと思った。
(私は蛇。一旦相手の身体に巻き付いたら絞め殺すまで離れない)

美沙子は嶋原の胴に腕をまわすとどう攻めようか?と考えている時だった。

ドスッ!

嶋原の肘が美沙子の側頭部に炸裂。
一瞬意識が飛びそうになり、嶋原の身体から腕を離してしまう。そこへ今度はストレートが飛んできた。

美沙子は初めてダウンを喫した。

嶋原は倒れた美沙子の背後にまわるとその首に腕をまわし、なんと胴絞めスリーパーにいった。


(実況)

「キックボクサーの嶋原が胴絞めスリーパーにいった。相手はその道の達人柔術マジシャン奥村美沙子だぞ。これは無謀ではないのか?」


美沙子はこのスリーパーから脱出できないかもしれないと考えていた。
クリンチにいった時に浴びた肘と、その後のストレートパンチがかなり効いていたのだ。
道場にもシルヴィアや天海瞳といった打撃のスペシャリストがいてスパーリングもするが、嶋原のパンチやキックは今まで経験したことがないほど強烈なものだった。
(私の課題は打撃対策だわ。絶対顎を上げるな美沙子はグラスジョーだと言われていたけどそれを許してくれなかった。やっぱり嶋原さんは強い...)

もう、美沙子にこのスリーパーから逃れ反撃する余裕はない。

自らタップした。


・・・・・・・・・・・・・・・・


高校三年男子である俺は、一年の女子に負けてしまった。

俺は弱い! 
女に負けたんだ、格闘技をやる資格なんてない。なにが打倒NOZOMIだ!

堂島龍太は格闘技戦『MMA甲子園ワンナイトトーナメント』一回戦で、年下の女子選手、柳紅華に敗れてからというもの悶々とした日々を送っていた。
あの試合で龍太は肋骨にヒビが入っていたが、それは空手道場でも経験がありどうっていうことはない。
それより心の傷が大きかった。

負けた瞬間はあまりにもショックで悔しさも感じなかったが、時が経つに連れふつふつとした悔しさが込み上げてきた。それに、試合後にNOZOMIに言われたことが気になってもいた。

そんなある日。
お盆休みということで妹の麻美が久しぶりに顔を見せにきた。

悶々としている龍太の元にやってくるとしばらくジィーっと見つめている。

「なんだ! 年下の女の子にボコボコにされた俺をバカにしに来たのか?」

「お兄ちゃん、あの試合何もしなかったじゃない。戦ってもなかった」

「何もしなかったんじゃない! 弱いから何も出来なかったんだ...」

「NOZOMIさん言ってたよ。堂島龍太はドン底から這い上がったら恐ろしく強くなるって。うちの(NLFS)桜木さんも、奥村さんもデビュー戦は負けたのよ。勝ったシルヴィアさんは慢心して2戦目は負けたわ。天海さんも勝って自信過剰になりそうだったから、お兄ちゃんのところへスパーリングをやらせに行ったそうよ」

「でも、俺の場合は女に、しかも年下の女の子に負けたんだ。救いようのない敗北なんだよ」

「お兄ちゃん、まだ、男だから女だからなんて言ってるの? そんなだから負けるのよ。そうよ、お兄ちゃんは弱いのよ。言っておくけど、私は道場では柳紅華さんと五分五分なの。お兄ちゃんより私の方が強いってことね?」

「なんだおまえ! 柳紅華と五分五分なのか? そんなに強くなったのか...」

(俺をぶちのめした柳紅華と、妹が五分五分の実力?その理屈からくると俺は麻美より弱いってことなのか?)

ショックだった。
兄としてのプライドを傷つけられる思いになった。


そんなある日。
世間を騒がすスキャンダル?がセンセーショナルに報じられた。

『格闘家NOZOMIとシルヴィア滝田、深夜のラブホテル街で、熱いディープキッスを激写される』
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