女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ

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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(46) LGBT問題。

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シルヴィア滝田とのディープキッスが激写されたのを受け、NOZOMIはマスコミの前で会見することになった。
そこにはシルヴィアも同席した。

「なんでこんなところにワザワザ説明しに来なくちゃならないのか? 全然意味が分からないんですけど...」

開口一番、NOZOMIはそう言い放つとシルヴィアの肩に腕をまわし、軽くチュッとキスをした。

「つ、つまり、、アナタたちはそういう関係だということですか?」

「そういう関係って何ですか?」

今の世の中はLGBT等の性的マイノリティに対する差別的な発言はNGであり、
質問する記者も気を使っているのが分かる。それをNOZOMIは面白そうに見まわしている。
LGBTに対して理解があるように装いながら、その実はそれを好奇の目で内心軽蔑している人は少なくない。

そんな好奇な目にNOZOMIは逆に冷たく言い放った。

「不倫をしてるわけじゃないでしょ?私とシルヴィアがどんな関係であろうと皆さんには関係ありません。はっきり言います。私は男性も女性も愛せるバイです。シルヴィアは女性が好きなレズビアンです。そんなふたりが愛し合い肉体関係があってもいいでしょ? 何か問題でもあるんですか!」

この堂々とした物言いに記者からの質問が途絶えた。NOZOMIはそれを見まわしながら再び口を開いた。

「LGBT等の性的少数者にも権利がある世の中になってきました。人間には多様性があるのですから。こんな私だって、男らしい男、女らしい女という概念はあって然るべきだと思います。でも、 “男とはこうあるべき” とか、“女の子らしくしなさい” というのはおかしいと思いませんかね?」

マスコミ一同は、シーンとNOZOMIの持論に聞き入っている。

「私のように男より強くなりたい女もいれば、女より美しくなりたい男だっているんです。マッチョになりたい女がいたっていいじゃないですか! 女のようにセクシーなドレスを身に着ける男がいたっていい! 私は格闘技を通して、そんなジェンダーレス問題を訴え続けていきたいと考えています」

こうして記者会見は終わった。

このNOZOMIの発言に顔をしかめる保守的な人もいたが、“男とか女とかは関係ない、人には多様性があり個性の問題なのだ” というNOZOMIの考え方は世間一般では支持された。


スクールの校長であるNOZOMIとシルヴィアの関係は、スクールの面々にはそれとなく知らされていたので驚きはなかった。肉体関係があるからといって格闘技に関してはNOZOMIは絶対にえこひいきはしない。
それだけの信用があった。

NOZOMIの会見があった日の夜。

練習と食事を終えるとルームメイトの榊枝美樹が麻美に真剣な顔で言った。

「麻美、今日のNOZOMIさんとシルヴィアさんの会見感動したね?」

「うん。私も感動しちゃった...」

すると、榊枝美樹はジッと麻美を物憂げな目で見つめてきた。

「どうしたの?美樹...」

「麻美は女の子嫌い?」

「・・・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


高校生活最後の夏休みが終わろうとしていた。龍太は柳紅華という少女に敗れた屈辱をまだ引きずっている。

「私は柳さんと道場では五分五分だからお兄ちゃんより強いかもよ」

妹、麻美の言葉も頭から離れない。

色々考えると、龍太は麻美に言われたように柳紅華と戦ってさえいない。
女の子を相手に戦うという覚悟がなかったのだと思う。
龍太はあのシルヴィアとスパーリングをしてダウンを奪っている。
シルヴィアは柳紅華という少女よりずっと強いはずだ。なのに、龍太は紅華には何もさせてもらえず完敗した。

何もさせてもらえなかった?
違う! 女相手にしようとしなかった。
無抵抗でいただけなのだ。

もう一度彼女と戦いたい。

龍太はリベンジを考えていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・

NOZOMIは目を見張った。

その日、柳紅華と堂島麻美のスパーリングが行われ下からの三角絞めで麻美が紅華からタップを奪った。パワーこそ紅華がまさるが、スピードとテクニック、ここのところ明らかに麻美の方が分がいい。信じられないくらいの進化にゾッとする程だ。

NOZOMIは麻美の戦う姿を女豹だと思った。それも美しく強い女豹。

(この子は、私の真の後継者になるかもしれない。否、きっとなる...)

柳紅華と堂島麻美がスパーしている横では榊枝美樹が男子スパーリングパートナー相手にスパーしている。
麻美と美樹は同じ15才であるが、美樹は小六からNLFSの練習生で麻美より一年早い。しかし、天賦の才に恵まれた麻美と比較するとその実力は天と地ほども差がある。それでも、NOZOMIはこの少女のひたむきさが好きだった。少しずつだが成長はしている。

NOZOMIは考える。

来年夏、堂島麻美は、天海瞳、柳紅華に続いて16才での格闘技戦デビューは何の問題もない。15才の現在でもその実力は既に柳紅華を超えている。
しかし、榊枝美樹に男子と戦わせるわけにはいかない。
根っからの格闘技好きの彼女には、将来は何らかの女子格闘技団体を紹介しようと考えている。

しかし、榊枝美樹が堂島麻美に向ける目が気になっていた。

(美樹が麻美に向けるあの目は? 間違いない!あれは恋する切ない目だ。ふたりをルームメイトにしてしまったけれど、それまでは気が付かなかった。
残酷なことをしてしまったのかもしれない。麻美はヘテロなのだから...)


夏は過ぎ秋も深まってきたころ。。

一度は格闘技をやめようと考えていた傷心の堂島龍太は、やっと重い腰を上げ練習を再開していた。
(やっぱり俺は格闘技をやめられない。柳紅華にリベンジする!そうでなかったら、何のために今まで格闘技をやってきた? 父があの世で嘆くだろう)

その柳紅華は『G』主催大晦日格闘技戦に出場が決まっていた。
対戦相手は、夏の大会での「MMA甲子園ワンナイトトーナメント」で優勝して高校生MMA王者となった迫田宗光。
迫田と龍太を下した紅華は決勝で対戦する可能性が高かったのだが紅華の棄権で実現されなかった。

龍太は迫田とも因縁があった。
高校柔道全国大会の準々決勝で戦い敗れている。迫田は全国3位の猛者。
龍太はあのトーナメント最大のライバルは迫田と考えていたが、打撃ありの総合ルールなら絶対負けないと思っていたがその前に紅華に負けた。

迫田宗光 vs 柳紅華 の対決は龍太も興味あったのだが、その対決は流れた。

「自分は女子とは戦いたくないです」

迫田が異性格闘技戦を固辞したのだ。


《 尚、この迫田宗光は、後に堂島麻美のデビュー戦の相手となる》



「龍太! お前にも大晦日の格闘技戦のオファーがきたぞ。相手は柳紅華との再戦だ!迫田がオファーを断ってきたのでお前に声がかかった。あと三ヶ月もないけど間に合うか?」

龍太の目が輝いた。
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