女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ

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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』(50) セーラー服の女豹。

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前日計量は全(選手)て済んだ。
いよいよ明日は『G』主催夏季格闘技戦大会が行われる。

選手それぞれにその思惑はある。
とくにNLFS勢と戦う男子選手は、女子と戦うことに色々戸惑い、かなりプレッシャーがあることだろう。

MMA65kg以下級日本8位尾崎武彦もそんなプレッシャーを感じていた。相手は柔術マジシャン奥村美沙子。
彼女の柔術はファンタスティック柔術と言われ、柔術テクニックだけに関していえばNOZOMI以上との噂。いくら天才柔術女子相手といえど、尾崎は男子MMAランカーであり、そんな自分が女子相手に負けるわけにはいかない。

尾崎には作戦があった。奥村美沙子は前の試合でダン嶋原に敗れている。
尾崎とて柔術の心得はあるが、奥村の弱点は打撃にあると嶋原戦で明らかになった。打ち合いに持っていけばどうにかなる! 問題は自分の打撃が彼女にヒットするか否かだ。嶋原は打撃を極めた男だからこそ出来たこと?
尾崎は相手が女だからと甘く見るような男ではない。不安も感じている。

美沙子は無心であった。
彼女は何がなんでも絶対勝ってやろうなんて考えるタイプではない。
勝ち負けより自分の力を出し切ることが大切と考えている。
(前の試合では、自分が少女時代に憧れていた嶋原さん相手だったので、無心ではいられなかった...)



注目の女子50kg以下最強決定戦?

吉岡香織 vs 桜木明日香

吉岡香織は世界のレスリング絶対女王として、オリンピック連覇を果たしたあとも不敗のまま引退。
総合格闘技に転向すると、そのデビュー戦でいきなりMMA50kg以下級女子王者に挑み圧勝した。しかし、その階級にはNLFSの桜木明日香がいて、彼女は男子相手に大活躍していた。
五輪代表権をかけたレスリングでは僅差ながら勝っている相手だが、総合ルールならば桜木明日香の方が強いのではないか?との声が多い。
(男子と戦うことに何の意味があるの?
私は総合に転向しても過酷なトレーニングを続けている。NLFSのやり方は気に入らない。女子は女子同士で戦うべきよ。私は負けない...)

桜木明日香は自信があった。
(レスリング界の先輩である吉岡さんは尊敬しているけど、総合ルールなら私の方が強い。絶対の自信がある!)



NOZOMIと戦うはプロレス界でセメントの鬼との異名がある権代喜三郎。

権代は後悔していた。
自分の弟子?の一人であるウルフ加納がNOZOMIに倒されると、その悔しさから思わず「俺と戦え!」と叫んでしまった。自分の信じたプロレスの信奉者が女子に倒されたのが信じられず我慢ならなかったからだ。
(10年前の俺なら女に負けることはあり得ない。セメントの鬼、関節技の鬼と言っても俺はもうすぐ44才になる。あの女は今の俺より強い!悔しいけどそれだけは分かるがもう退けない)

NOZOMIは権代喜三郎というプロレスラーに好感を持っている。
彼は実直だが頑固で融通が効かない。
そんな保守的で昭和の匂いがする男をNOZOMIは否定しているが、考え方は違っても己を持っている男、否、人間は嫌いじゃないのだ。

プロレスのリングで活躍する鎌田桃子から権代のことは聞いていた。

(権代さん。私はアナタを一人の頑固な男として尊敬します。でも、リング上では容赦しません。残酷で切ない試合になりそうね...)



堂島麻美のデビュー戦の相手は迫田宗光。日頃強気の彼も落ち着かない。

(なんだって俺が女なんかと試合しなくちゃならないんだ。しかも、この間まで中学生でデビュー戦の女の子が相手だっていうじゃないか。それに堂島龍太の妹だって?  万一負けてしまったら俺は恥ずかしくて外を歩けなくなる。マッチメイカーの沼田さんに巧く乗せられてしまった...)

迫田はよもや高校一年の女子に負けるなんて考えてはいない(考えないようにしている?)が、道場ではあの柳紅華を問題にしないとの噂を聞いている。それに彼女はどういう戦い方をするのだろうか?レスリングや空手を習っていたというが、まったく謎でベールに包まれている。それが不気味だ。

堂島麻美は忘れてはいない。
(迫田さんは、女なんか...と、女性を見下す発言が目立つ。それに、お兄ちゃんや、亡くなったお父さんのことまで女に負けたやつと嘲笑った。彼は私の家族を侮辱した。絶対にゆるさない。迫田さん、明日はアナタが女の子に負けることになるのよ)



2○○○年 7月30日

○○スーパーアリーナには3万以上の大観衆が詰めかけていた。

堂島麻美のデビュー戦ということで、
母佐知子、兄龍太、それに継父である今井宗平も招待されていた。

佐知子は娘のデビュー戦ということで眠れぬ夜が続いていた。決して忘れはしない。愛する夫、源太郎がNOZOMIの腕の中で失神していく姿を。そして戻らぬ人となってしまったのだ。
あれから9年、当時7才だった麻美が父源太郎と同じリングに立つ。
息子の龍太は既に立っていたが、彼は男でありそんなに心配していない。
(麻美はまだ16才の女の子、、それが男性と戦うなんて...)

佐知子は心配で心配で心臓が破裂しそうだ。それは龍太も同様だ。


NLFS勢一番手で麻美が入場する。
相手の迫田宗光は既にリングで待ち構えて不敵な笑みを漏らしている。


(リングアナ)

「ASAMI選手の入場です!」


場内が薄暗くなった。

それはジワジワと明るくなり、花道の向こうにシルエットが映し出された。

いきなりアップテンポなリズム、大音響の音楽が場内に鳴り響いた。

レーザー光線がジグザグに場内を飛び交い、それは花道の向こうのシルエットに突き刺さった。

(実況)

「こ、これは、、 9年前のNOZOMIの再現のようだぞ! ASAMIは、なんと純白のセーラー服で入場だぁ~! でもたった一人で歩いてくるぞ。この風格と余裕、これがデビュー戦の女子選手なのか?  これは獲物を狙う目、女豹の眼光だァ!」

花道の向こうから、ASAMIこと堂島麻美がセーラー服姿でアップテンポなリズムに乗せて歩いてきた。
そのド派手な入場に観客は息を呑む。

(これが妹の麻美なのか?)
龍太も目を丸くしている。

待ち構える迫田もあ然としている。


※ 9年前のNOZOMIの入場シーンは
 雌蛇の罠 その10入場式を参照。


つづく。

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