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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』(51) センセーショナル 格闘ヒロイン。
しおりを挟むこれから殺伐としたリングへ向かおうとする少女(ASAMI)が、レーザー光線がジグザグに飛び交う中をアップテンポのリズムに乗って、なんと純白のセーラー服に身を包み典型的女子高生スタイルで入場してきたものだから観ている者は度肝を抜かされた。
9年前のNOZOMIほどの派手さはないが
麻美は落ち着いていた。
その鋭い目線はまっすぐリングにいる迫田宗光に据えられていた。
(迫田さん、アナタは「女の子なんか」と、日頃から女性を見下している。ならば、こんなセーラー服を着て入場してきた女子高生に負ける姿を晒し辱めを受ければいいわ。今日は、わざと相手が女の子であることを意識させるためにこの姿で入場したの)
NLFSは格闘技だけでなく、モデル活動等の芸能活動も行っている。
まだ、実際にモデルとして活動しているのはNOZOMIとシルヴィアだけだが
麻美も恐ろしいほどの美少女だ。
いずれ、その舞台にも上がるだろう。
セーラー服でやって来たASAMIが、ロープを手に取ると恐るべき跳躍力でそれを飛び越えリングインした。
ハーフパンツに上半身裸で戦闘態勢にある迫田と、セーラー服姿の少女がリングで向かい合い視殺戦をしている光景は異様である。このふたりはこれから本当に拳を交えるのか?
(実況)
「これは宿命を感じます!今から9年前、ASAMIの父、堂島源太郎はこのG主催格闘技戦のリングに立ちました。
相手はASAMIが所属するNLFSを立ち上げたNOZOMIでした。父を倒し亡きものにしたNOZOMIの元でトレーニングを積み念願のデビューを果たします。天国の堂島源太郎よ見てくれ! 息子龍太に続き、娘のASAMIもアナタが戦ったこのリングに帰ってきたぞ!」
麻美が自らセーラー服に手をかけた。
白い上着に紺のプリーツスカートをさっと脱ぎ捨てた。
ウオオオオオオ!
場内がどよめいた。
NLFSカラー真紅の生地に豹柄の水着。
ビキニではなくワンピース水着ではあるがハイレグで16才とは思えぬセクシーさに誰もが息を呑んだ。
美しき女豹!
(お、俺はこんなのと戦うのか! うそだろ、、本気なのか?)
迫田宗光は一連のASAMIのショー?に圧倒されていた。
計量では迫田 175cm 69.5kg
ASAMIは 174cm 62kg
身長こそあまり変わらないが、重さはかなり違う。それでも、ASAMI側からの希望でこの試合は実現した。
5分3ラウンド、最大延長5ラウンド。
総合ルールで行われる。
(実況)
「この美しき少女。故堂島源太郎の愛娘に大観衆から大きな声援が飛び交っています。デビュー戦から凄い人気です。これは選ばれたものしか出せない華なのか? スーパーヒロイン誕生の予感がするのは私だけでしょうか? 今ゴングが鳴りました。ファーストコンタクトはどうなるのか!?」
迫田宗光は麻美のオーラに萎縮していた。まさか、リングという戦場にセーラー服で入場し、こんなセクシーな豹柄の水着で向かって来られるなんて思ってもいなかった。幾分、足が震えているのを自覚した。まるで、戦う前から呑まれているようでもある。
迫田は必死に落ち着こうとした。
麻美は空手の構え?から、迫田の周囲をぴょんぴょん飛び跳ねている。
迫田の目の前で豹柄の水着、美しき女豹が妖しく躍っている。
迫田も拳を構えジリジリと摺り足。
柔道ともボクシングともつかぬ低い構えだ。段々落ち着いてきたようだ。
迫田は早く麻美を捕まえてしまいたかった。捕まえて投げ捨て最後は絞め技か腕ひしぎに極めてしまうのが作戦なのだ。慎重に構えた。
迫田がジリっと前に出てきた。
その時だった。
目の前から麻美が消えた!
次の瞬間、足元に衝撃を感じた。
飛び跳ねていた麻美が、あり得ない位置から迫田に高速タックルを決める。
不意をつかれ、否、あの位置からまさかタックルが来るなんて思いもよらず迫田は防ぎ切れない。
テイクダウンを取られた迫田が逃れようとすると、女豹が飛び掛かってくるのが見えた。
恐るべきスピード。
気が付くとマウントを取られいきなり女豹の拳が迫田を襲ってきた。
ズゴッ!
一発目の拳は迫田の顔面に炸裂。
迫田は必死に腕でガードした。
普通、こういう体勢になれば相手に隙を与えず一気にパンチの乱打で決めていまうものだが、麻美のそれは一発打てば拳を止め相手の様子を見ている。
そして、空いている部分に狙いを定めると二発目、三発目と拳を直角に打ち下ろす。その目はまるで楽しんでいるかの如く、獲物に食らいつくネコ科の猛獣、そう!女豹の目だ。
仰向けに倒れている迫田は、自分の身体に馬乗りになった美少女が拳を振り落としてくるのが見えた。
必死にガードするも、少女は自分の様子を見ながら的確に打ってくる。
自分の身体の上で女豹が睨んでいる。
(もう、どうやっても逃げられない...)
レフェリーは迫田の顔面が血に染まってきたのが見えた。間に入って止めようとするより先に迫田が馬乗りになっている麻美の膝を叩いた。
タップである。
麻美は迫田宗光の身体から離れ立ち上がると両手を掲げレフェリーから勝ち名乗りを受けた。
リング中央で血まみれで倒れている迫田の元にセコンドが駆け込んできた。
ウオオオオオオ!!
場内から地鳴りのような大歓声が渦巻きそれはしばらく続いた。
(実況)
「1ラウンド2分16秒。これは驚きました! まだ高校一年の女子高生ファイターが、一発の高速タックルからのマウントパンチで大学一年の男子選手を倒しました。敗れた迫田宗光は去年の高校生MMA王者であり柔道でも全国大会3位という猛者です。それを全く問題にしません。恐るべき少女です!我々格闘技ファンは、センセーショナル格闘ヒロインを目撃したのです」
佐知子は勝ち名乗りを受けている娘を見ながら震えていた。
心配で心配で夜をも眠れずこの日を迎えたがそれが杞憂に終わった?
否、自分の娘ながら怖さも感じた。
(こ、これが、、麻美なの? ほ、本当にわたしの娘なの?...)
佐知子は娘が無事であってくれという心配な気持ちと共に、心のどこかで、男子の厚い壁に阻まれ “女の子は男子と戦うもんじゃない! ” と、現実を思い知ってほしいと期待していたのだ。
龍太も佐知子同様、妹の圧倒的勝利に驚愕していた。
(麻美! そんなに強くなってたのか?
迫田は高校時代の全国柔道大会で俺に勝った男。それを問題にしないなんてお前は本当に俺の妹なのか?)
冷静に考えれば迫田は柔道は強いが打撃には全く対応出来ていない。
MMA高校王者といっても、あれは興行のために格闘技経験がある高校生の寄せ集めのトーナメントに過ぎない。
総合ルールでの迫田は未熟だと思う。
そうであっても、まだ16の女の子である麻美が彼を倒したのは驚きだ。
驚き? 否、違う。
ショックなのだ。
龍太は嫌な予感がする。
自分が格闘技をやっていく上で、妹はライバルとなるのではないか?
堂島麻美ことASAMIは、自分にとって避けては通れない壁になる?
いつか俺と妹は戦う運命にあるのではないか? 宿命の兄妹、、、。
(そんなバカな...。 ふたりは血の繋がった兄妹。そんなことになったら、お父さんはあの世で嘆くにきまってる。そしてお母さんも...)
龍太はチラッと横目で母の顔を見た。
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