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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』(54) 堂島兄妹強し!
しおりを挟むNOZOMIが権代を下し、これで男女格闘技戦は女子の30勝13敗となった。
NLFSには多くのスポンサーも付き、格闘技界の中心になりつつある。
衝撃デビューを果たした麻美は寮を出ることになった。
今では母と今井の関係は許せる気持ちもあるが家に戻る気にはなれない。
通っている女子校の寮に入った。
「麻美、色々とありがとうね。お別れだけど道場では会えるもんね...」
退寮する日、榊枝美樹が涙まじりに言ってきた。麻美も美樹のことが大好きだが親友としてであり彼女の愛に応えることは出来ない。それは美樹にも分かっていることだった。
美樹は麻美と同い年だが、男子と試合する実力はなくデビューはまだ先になるだろう。否、それも無理かもしれない。彼女はvs男子ではなくvs女子でやっていくことになりそうだ。
話はどんどん進みます。
秋も深まってきた頃か?
麻美は兄の龍太とNLFSの天海瞳が付き合っていることを知った。
瞳は兄の通うジムにたまに訪れてはスパーをする仲だという。その過程でお互いに惹かれ合ったのだろう。
NOZOMIの方針で “恋愛大いに結構” なので、麻美はあまり気にすることはなかったが、あの父源太郎に似てシャイで不器用な兄がどんな顔でデートするのか? 想像すると可笑しかった。
その龍太は柔道に打ち込み、秋全国新人戦ではベスト8まで勝ち進んだ。
立派な成績ではあったが、ベスト8の壁が破れず本人は不満だった。
麻美に敗れたライバルの迫田宗光は、あの試合以来落ち込み退部していた。
大学も去った。柳紅華に敗れどん底から這い上がった龍太にしてみれば勿体ないことだと思うのだった。
妹の麻美にも刺激を受けていた龍太、暮れのG主催格闘技戦からオファーを受けた。なんとキックルールで。
「龍太!本来のお前に向いている格闘技はキックボクシングだと思う。それに専念すれば、ダン嶋原のようなキックボクサーになるのも夢じゃない。それは麻美ちゃんも同じ。君たち兄妹には堂島源太郎の血が流れている。天性のストライカーなんだけどな」
継父の今井によくそう言われる。
大晦日の格闘技戦では、堂島兄妹が揃って出場した。
龍太はキックボクシングルールで、キックボクサー男子日本6位の選手と試合をし、スピードで翻弄すると一発のカウンターパンチで沈めてしまった。たった56秒の秒殺だった。
麻美はデビュー2戦目ながらMMA65kg以下級男子ランカー(10位)に挑戦すると、今度はレスリングを封印し打撃だけで相手を圧倒。初回こそ攻めあぐねたが2ラウンドになると滅多打ち。
最後は戦意喪失した相手にタオルが投げ込まれた。麻美の実力も本物だ。
NLFS勢は奥村美沙子が日本男子ランカー4位と熱戦の末判定負け。
天海瞳もキックボクシング男子3位の選手に挑むも無念の判定負け。
やはり、男子上位ランカーの壁は厚いのか?と思われたが、シルヴィア滝田が大仕事をやってのけた。
前回の試合で敗れている70kg以下級日本2位酒井篤との再戦を行ったのだ。
(女豹の恩讐47 を参照)
序盤こそまたまた苦戦を強いられたが最後は打ち合いの末右フックが炸裂。
酒井は半失神状態で立ち上がれず。
逆転KO勝ちで前回の雪辱を果たした。
年は明けあっという間に半年が過ぎると夏になった。
龍太は大学二年の20才。麻美は高校二年の17才になろうとしていた。
そして、夏の格闘技大会でも兄妹揃って出場すると圧勝したのだった。
龍太は打撃と柔道流組技のコンビネーションがよく総合格闘技のお手本のような勝利。麻美はタックルを警戒する相手に意表を突く反り投げからマウントになると冷酷に顔面殴打。
どちらの相手もそこそこのMMA日本男子ランカーの実力者であった。
“ 堂島兄妹強し!”
そんな見出しが多くのスポーツ紙に躍っている。それはNOZOMIも無視出来ない存在になりつつあった。
そんなある日のこと。
今井や岩崎と龍太はジムでトレーニングを積んでいた。
すると、ある訪問者が現れた。
ミニスカートの長身美女。
NOZOMIが直々に龍太を訪ねてきた。
「久しぶり。アナタたち兄妹は大変な話題になってるわね。そろそろ龍太君もビッグマッチが必要でしょ? うちの麻美は決まりそうよ 」
「そうなんですよ! NOZOMIさんに認めてもらう実績がほしくて焦りを感じているんですよ。え! 麻美がビッグマッチ? 誰が相手ですか?」
「どうかしら? うちのシルヴィアと日本ウェルター級王者植松拓哉への挑戦権をかけて戦うっていうのは?ふたりとも同じ階級だからね。それから、麻美と交渉中の相手は今は言えない。でもかなりのビッグネームよ」
龍太にとっては願ってもないこと。
(NLFSでNO.2のシルヴィア滝田さんに勝てれば、70kg以下級MMA王者植松拓哉へ挑戦? そして、その先に見えるのは? いよいよNOZOMI戦...)
その頃。
ダン嶋原の元にGの敏腕マッチメイカー沼田からあるオファーがあった。
「相手は今話題の堂島兄妹の妹。堂島麻美ことASAMIと総合ルールで戦ってほしい。向こうは話を持ち込んだら大喜びで一発OKしてくれたよ」
「俺が堂島源太郎さんの娘さんと?彼女のことは小さい頃からよく知ってるんですよ。麻美ちゃんとシュートマッチだなんて、いくらなんでも...」
そう抵抗しながらも、この沼田という男に睨まれたら逃げることは出来ないことを嶋原はよく知っている。
嶋原は思い出していた。
遠いあの日。
彼を弟のようにかわいがってくれた、故堂島源太郎の家に遊びに行った。
そこにはまだ幼い麻美の姿もあった。
人懐っこくて強い目の光を放つかわいい女の子だった。
嶋原は麻美を高く抱き上げた。
「高い! 高い!」
嶋原が高い高いをしてあげると、麻美は満面の笑顔でキャッキャ!言って大喜び。それを嬉しそうな笑顔で見ていた堂島源太郎の姿が忘れられない。
(そんな麻美ちゃんと、オレはリングの上で拳を交えるのか? 世話になった堂島源太郎さんの愛する娘を殴ることなんて出来るのか?)
時の流れはあまりにも残酷だ...。
ダン嶋原そう思うのだった。
シルヴィアとの試合を堂島龍太に打診したところ、快い返事をもらったことをNOZOMIから聞かされていた。
シルヴィアは(いよいよその日が来るのね...)と感慨深い。
同じKG会空手出身。
小学生時代の彼に胸を貸したことがあった。それから数年後にスパーリングをすると「いつかプロのリング、総合ルールで戦おう」と約束した。
(女豹の罠 その28参照)
あれから5年。
シルヴィアは25才、龍太は20才になっていた。いつか、ふたりが戦うことは宿命だったのかもしれない。
(龍太君はかなり強くなっている。私は彼の妹である麻美とのスパーリングでは3回に1回は不覚を取ることがある。兄の龍太君は妹の麻美より強い?と考えた方がいいだろう。簡単な相手ではないけど私は絶対負けない!)
総合ルールで行われる試合。
最後は激しい打撃戦になり決着は壮絶なKO劇になりそうな気がする。
シルヴィアは気を引き締めた。
つづく
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