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しおりを挟む殿下へのあいさつを済ませると、私は迷わず、軽食が用意してある場所に急いだ。
軽食エリアのテーブルにはとても美味しそうなお菓子が所狭しと並んでいた。
シンプルで一般的なお菓子から、初めて見る宝石を散りばめたような斬新なお菓子まで、さすが王家と唸るような
セレクトだった。
(綺麗・・。素晴らしいわ。)
私は数種類のお菓子を選ぶと、会場の隅の庭がよく見えるテーブルに着いた。
席に着くと、飲み物を用意してもらえた。
(給仕も一流ね・・。ぜひとも修行させてもらいたいわ。)
王室のお茶会の質はとても高かった。
それに我が領の製品もとても美味しく調理されていて嬉しくなった。
(これは美味しいわ!!こんな使い方があるのね。)
お茶会のお菓子の視察を忘れ堪能していると、思わぬ人物に声をかけられた。
「こんにちは。初めまして。
私はクロエ・デュアルです。」
顔を上げると、公爵令嬢のクロエ様がこちらを見ていた。
私は急いで立ち上がると、淑女の礼を取った。
「これは、デュアル様。初めまして。
私は、アリエッタ・ライトでございます。」
「ふふふ。私のことはクロエと呼んで頂けませんか?
私もアリエッタ様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「はい。光栄です。クロエ様。」
(え~~~!!公爵令嬢のクロエ様に話かけられた~~!!
どうして?私、普通よね?目立ってないわよね?)
「さすがは、疾風のアリエッタ様だわ。
あいさつも軽やかで見ていて気持ちが良かったわ。」
(疾風??)
「クロエ様、無礼を承知で申し上げますが、その『疾風の』というのは?」
「あら?アリエッタ様はご存知ないの?」
「はい。」
「ふふふ。面白い方。馬に乗ったアリエッタ様はまるで疾風のようですので、皆様、『疾風のアリエッタ様』とお呼びしておりますよ?」
「・・・・。」
「ああ。でも、剣舞のファンのからは『一陣の風様』と呼ばれていますわ。
私はアリエッタ様の乗馬姿のファンですの。
それに先程のあいさつも簡潔で素敵でしたわ。」
(『一陣の風様』?!もはや、人でさえないわね。
でも恥ずかしいわ。これって、どういうことなのかしら?
私、辱めを受けているのかしら?これが貴族の牽制?!)
「お話中すみません。私もぜひ、『一陣の風様』とお話させて頂きたいわ。」
すると、今度は辺境伯のミラー様が話に加わった。
「あら。ミラー様、御機嫌よう。」
クロエ様が親し気にあいさつをされた。どうやら、2人は仲が良いらしい。
「クロエ様がお話されているから、勇気を出して話しかけたの。私、本当にあなたのファンなの!」
ミラー様に急に手を握られた。
「ミラー様、アリエッタ様が驚いているわよ?」
すると、ミラー様が真っ赤になった。
「申し訳ありません。私は、ミラー・コージュと申します。ミラーとお呼び下さい。」
ようやくミラー様に名乗って貰えてほっとした。
(私から名乗る訳にはいかないものね。)
「初めまして。私は、アリエッタ・ライトでございます。
ありがとうございます。私のこともアリエッタと名前でお呼び下さい。」
にっこりと笑うと、ミラー様が嬉しそうに笑った。
「嘘みたい。アリエッタ様とお近づきになれるなんて!!
勇気を出してよかった。」
「ふふふ。私の手も握ってくださいませんか?アリエッタ様。」
そう言って、クロエ様にも握手を求められた。
「ええ。喜んで。」
手を握ると、嬉しそうにしてくれた。
(この行動に裏があるのかしら?
だとしたらどんな裏かしら?
私も、もう少し裏を読めるようにならなければダメね~。)
笑顔で考えていると、クロエ様から熱い眼差しを向けられた。
「ぜひ、今度お茶会にいらっしゃいませんか?」
「アリエッタ様、ぜひ家にもお越し下さい。」
「ありがとうございます。」
そうして私はアルベルト殿下ではなく、令嬢と仲良くなってお茶会を終えたのだった。
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