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しおりを挟む今日は例のお茶会が開かれる日だ。
結局、私のドレスは新調されてしまった。
「婚約者候補の集まるお茶会にクラリスのドレスのリメイクなど、侯爵家の恥です。」
という次期侯爵である兄の鶴の一声により、私はとても素晴らしいドレスを仕立てられてしまった。
「もったいない。」
と抗議すると、兄はすました顔で、「孤児院に寄付するための貴族バザーの提供品の一つにするので問題ない」と言い放った。
なので私にできることは、シミなどを付けないように細心に注意を払うだけだ。
(プレシャー以外のなにものでもないわ!!)
会場につくとお茶会というより、式典のようだった。
ダンスホールに、静かな音楽が流れ、
中央には玉座が配置されて、とても厳かな雰囲気だ。
周りを見ると私は「はぁ~。」と息を吐いた。
さすがに王太子殿下の婚約者候補が集まるお茶会だ。
そうそうたるメンバーだ。
(あの方は公爵家の3女クロエ様ね。
あちらは、辺境伯のご息女ミラー様。
それに事業が大変成功された伯爵令嬢のマリー様。
素晴らしいわ!!
これだけの方々がいらっしゃれば、私が目立つこともないわね。)
ほっとしていると、数人の令嬢に囲まれた。
「まぁ、アリエッタ様、御機嫌よう。
先日の剣舞会は素晴らしかったですわ~~。」
「本当に!!乗馬大会も他の追随を許さぬ圧倒的な成績でしたわよね。」
「今度わたくしに剣舞を見せて頂けませんか?」
「ずるいわ!!私もぜひ。」
「アリエッタ様。私に乗馬を教えて頂けませんか?」
(『貴族の言葉はそのまま信用するな。』とお兄様には言われているけれど・・。
褒められれば嬉しいのよね~。
それに、この言葉に裏があったとしても大した問題ではないように思うのだけど?
楽観的かしら。)
「皆様。ありがとうございます。」
私は素直に言葉を受け取ることにして、心からの笑顔を向けた。
「「「「はぁ~素敵~。」」」」
可愛らしい令嬢の方々と交流していると、王太子殿下がいらっしゃるという声が響いた。
多くの令嬢が我先にと中央に陣取る中、
私は流れに逆行し、中央から離れた位置にそそくさと移動した。
(きっと話が長いだろうし、姿勢が崩れても目立たない場所がいいわ。)
「アルベルト殿下のご入場。」
声と共に王太子であるアルベルト殿下の姿が見えた。
アルベルト殿下は輝く黄金色の髪に長身で身体のバランスも素晴らしい方だった。
(はぁ~。殿下の髪は、収穫前の夕日に照らされた小麦のようで美しいわ。)
殿下が中央に立ち、話が始めた。
形式的なあいさつのようだったので聞き流しても問題ないと判断して、ぼんやりと聞くふりをしていた。
話が終わった。
次は参加しているすべての令嬢が個別に殿下にのあいさつをしていく時間だ。
実は、本日のメインイベントはこの個別あいさつだ。
こういう場で、あいさつは爵位順が一般的だ。
(面倒だわ。)
私は侯爵家なので、恐らく公爵令嬢のクロエ様と、同じ爵位の侯爵令嬢、そして前王妃様の妹の娘である辺境伯のご息女ミラー様の次になるのだろう。
(はぁ~。まぁ、早く終わってしまう方が気が楽よね。)
少しだけ中央に近くに寄って、3人のあいさつが終わるのを待った。
しかし、さすがは王妃選定のお茶会だ。
(一人のあいさつが長い!!)
通常のあいさつは殿下から話を切り上げるのが慣例だが、今日は婚約者対象である令嬢から話を切り上げるのがマナーだ。
このあいさつで自分をアピールしなければならないのだ。
だからこそ皆、側近の方の咳払いがあるまで王太子と話をする。
側近の方は皆が平等になるように砂時計を使って計っている。
(アルベルト殿下も側近の方も大変ね~20人はいらっしゃるわよね~。
せめて対象外の私は素早く終わらせて私の分の時間休ませてあげましょう。)
そして私の順番になった。
「アリエッタ・ライトでございます。
本日はお招き頂き、誠にありがとうございます。」
そう言って、カーテシーをする。
「初めまして、お噂はかねがねお伺いしております。
乗馬大会や剣舞会での活躍を拝見致しました。
おめでとうございます。」
「ありがとうございます。光栄です。
それでは、御前を失礼致します。」
ちらりと護衛の方を見た。
(側近の方も大変ね。)
頭を下げて見上げると驚いたような殿下の顔が見えた。
殿下に一礼した後、側近の方にも小さく頭を下げた。
(お疲れ様です。)
心の中で激励し、踵を返した。
もう今日は殿下と話すことはないだろう。
きっと、みんなとあいさつが終わったらお茶会終了の時間だ。
(よし!!視察!視察~!!)
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