なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番

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26 宴

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「いや~~若に、嫁が来て本当によかったよ~~」
「本当にねぇ~~。若は全く女の子に興味を示さなかったもんね~~」

 宴というので、参加するとみんなで祈りを捧げた後に、リカルドの隣で食事を済ませると、いつの間にはたくさんの人に囲まれていた。
 みんなリカルドが結婚したことを心から喜んでいた。

 リカルドは……

「いや~~めでたい、めでたい。どんどん呑め!!」
「おおぉ~~さすが、若、いい飲みっぷりだぜ!!」

 中央で多くの男性に囲まれて、真っ赤な顔ですごい勢いでお酒を飲んでいた。

(あんなに飲んで大丈夫かな?)

 私は心配していたが、とても楽しそうだったので、声をかけることはしないが……
 
「若は、小さい頃から賢い子でねぇ~~、13歳の頃にはすでにお館様の仕事を手伝っていたんだよ」
「それにね~~、陛下の船だって……色んなところから安く材料を調達したおけげで、予算より随分安く済んだにもかかわらず、陛下の威信を保てたって言って陛下も若には頭が上がらないって話さね」

 国王陛下は自らの威信を示すために何か作ることが多い。だが、今は財政が苦しいので大変だと財務勤務の女官が言っていたのを思い出した。
 でも大きな問題もなく済んだと言っていたので大した問題にならなかったが……

(あの問題の影にリカルドがいたのか……)

 私はリカルドのことを知る人から彼の幼い頃などを教えてもらって楽しかった。
 それにみんないい人だ。
 きっとリカルドがみんなを大切にしているからだろう。
 話をしていると、会場に人がまばらになってきたが、リカルドたちは相変わらず凄い盛り上がりだ。

「ちょいといいかい?」
「え?」

 私より少し年上の女性に声をかけれて振り向くと女性が明るく言った。

「私はマーサっていうんだ。ライドって男を知ってるかい?」
「はい、船では食事を作っていただいていました」

 マーサが笑いながら言った。

「ああ、そうそう、その人は私の旦那でね。私はこの城で働いている」
「ライドさんの奥様! はじまして、イリスと申します」
「あはは、丁寧にどうも。ところでイリスさん、疲れてるだろ? あの連中はまだまだ終わりはしないよ。先に部屋に行って休みな」

 私は、マーサに言われてそう言えば、今日はどこで寝るのかリカルドに聞くのを忘れていたことをに気付いた。
 するとマーサが怖い顔をした。

「まさか……若に、部屋を教えてもらなかったのかい?」

 私はうなずいた。

「ったく、これだから……女っけのない朴念仁はいけないね!! ついておいで、私がイリスさんを部屋に案内するよ」
「いいのですか?」
「ああ、もちろんだ」
「お願いします」

 私は頭を下げると、マーサについて行った。

「ここだよ」

 ありがとうございます。
 部屋に入ると真っ暗だった。

「待っておくれ、今、灯りを……」

 マーサが数カ所に灯りを灯してくれた。どうやらこの部屋の照明はオイルランプを使っているようだ。
 灯りがついて部屋を見渡すと、大きいベッドと、ソファー。そしてローテーブルというシンプルな作りだった。

「あ、私の荷物がありました」

 そして、入り口付近の荷物置き場には私の荷物が運び込まれていた。
 きっと誰かが運んでくれたのだろう。

「ああ、荷物はあるのかい。よかった。おいで、こっちに風呂がある」
「はい」

 マーサについて行くと驚いてしまった。

「これは温泉ですか?」
「ああ、そうさ。この辺りは温泉が出るからね。家には大抵温泉がある」

(凄い、港もあって温泉もあるなんて……なんて恵まれた土地……)

 マーサがタオルなどの場所を教えてくれた。

「洗濯は、明日私がするからこのカゴに入れておけばいいから」
「ありがとうございます」

 お礼を言うと、マーサが本当に嬉しそうな顔をした。

「いや、いんだよ。若は……ずっと自分のせいでクリスティーナさんは亡くなったと……思っていてね……誰かと家族を作るのを怖がっていたんだよ。クリスティーナさんは、元から身体が弱くてね、若のせいじゃないのに」

 マーサはそう言うと「しめっぽい話をしちまったね……」と言った。

「ゆっくり休んでおくれ。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」

 私はマーサの出て行った扉を見つめた。
 リカルドと出会った時、そんな風には見えなかった。
 もしかしたら、リカルドも自分というより、領のために結婚したというのがよかったのかもしれない。
 そして、結婚をしたら私のために動いてくれたのだろう。

 公爵家から贈られた嫌がらせのバラにまで大切にするリカルドだ。
 きっとずっと苦しんできたのだろう。
 どんなきっかけでも、そんなリカルドの心を少しでも軽くしたいと思えた。
  
(明日リカルドに笑顔でおはようっていうためにも、今日はもう寝よう)

 私は自分の荷物から寝着を取り出した。
 そして、身体を洗って温泉に入った。

「ふぁ~~温泉なんて久しぶり……」

 こっちに来て、お風呂に入れたのは幸いだったが、ずっと大勢で入るただのお湯を沸かしたお風呂だったので、温泉はやっぱり格別だ!!
 私はのんびりと温泉を堪能して、髪を乾かして歯を磨くと大きなベッドに入った。
 月はもうかなり高くなっていた。

(リカルド、おやすみなさい……)

 私は心の中で、リカルドにお休みを告げて眠ろうとした時だった。

 ガチャリと扉が開く音がした。

(扉が開いた?)

 もう意識も沈んでしまって、身体が動かない……すると突然、ベッドが沈んだと思い目を開けた。

(何!?)

 そして気が付くと誰かに抱きしめられていた。

「イリスさ~~ん、好きだ~~大好きだぁ~~またキスしたい~~あ~~あの時、もう一回しとけばよかったぁ~~」

(リカルド!?)

 リカルドの方を振り向こうとして思いとどまった。

(お酒臭い!!)

 私まで寄ってしまいそうなほどのお酒の匂いがする。

(どういうこと!? リカルド、まさか酔って部屋を間違えたの!?)

 私が困惑している間にも、リカルドは私を抱きしめて、ず~~と「好きだとか、もっとキスしたいとか、柔らかった」とか、正気で聞くには恥ずかし過ぎることを言い続けている。

「あ~~もう、俺の嫁が可愛い。すげぇ、好き。大好き。あ~~早く結婚式したい~~なんで、半年もかかるんだよ~~領主最悪~~でも、ドレス見たい~~」

(嫁!? 早く結婚したい? リカルド、そんな風に思ってくれているんだ……)

 ずっと名前で呼ばれていたので、リカルドが本心では私のことを『嫁』だと思っていてくれたことが嬉しくて、私はリカルドの方をくるりと振り返った。
 すぐ近くにリカルドの顔がある。
 相変わらずお酒臭いが、私はリカルドに向かって尋ねた。

「私もリカルドのことが好きです。結婚式……楽しみです」

 リカルドに向かって囁くように言うと、リカルドの目が開いた。

「嬉しい~~俺も好き、すげぇ~~好き、大好き」

 そう言ってリカルドが片手を私の頭の後ろに回した。

(え!?)

 驚いていると、嬉しそうに笑ったリカルドの柔らかな唇が触れた。

(お酒の匂い……)

 二度目のキスはお酒の匂い。
 リカルドの高い体温。
 そして……ふにゃりとしたリカルドの幸せそうな顔。

「あ~~柔らかくて気持ちいい~~」

 そして再び唇が重なった。
 リカルドは、「柔らかい」「好きだ」と言いながら何度も私にキスをすると「……ああ、最高」と言って眠りに落ちた。
 ぱさりと、私の頭に回されていた彼の手がベッドに落ちた。
 リカルドは隣で気持ちよさそうに寝息を立てているが、私は眠れそうもない。
 あれから7回のお酒の匂いに包まれたキス。
 まるで酔いそうなほど強烈なのに、全然酔えない。
 リカルドの顔を見ると、とても幸せそうな顔で寝ていた。
 きっと今日のことなど覚えていないのだろう……

(これは私だけが知ってる……8回のキス……)

 何度も「好きだ」とか言われて、私は思いの外、リカルドに愛されていたのかもしれないと思えた。
 いつも紳士的でかっこいいリカルドに、こんなに想われていたなんて知らなかった。

「ふふ、おやすみなさい」

 私もリカルドの頬にキスをするとリカルドに背を向けて目を閉じだ。
 とても眠れないかと思ったが、私抱きしめて眠るリカルドの腕のあたたかさと、規則的な心臓の音が子守り歌になり、いつの間には私も眠りについていたのだった。



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