好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番

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第一章 幸せが約束された未来

7 突然の申し出(1)

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 家に戻ると、侯爵家の御者が、エカテリーナに貰った服を入れた箱を馬車から降ろしてくれた。
 
「家に中にお運びしましょうか?」

「いえ、ここで。ありがとうございました」

 いつもなら、すぐに迎えに来てくれるエマが迎えに来なくて、私は首を傾けた。
 私は、侯爵家の馬車を見送ると、エントランスの扉を開けた。

「よし!! ……重い!! おかしいな? 服しか入ってないのに?」

 荷物を運びこもうとしたが、重くて動かせない。
 どうやら、服は一着だと重くはないが、何着も木箱に入ると、とても重くなるらしい。

「仕方ない。エイド、仕込みで忙しいかもしれないけど、ごめん」

リーン、リーン。

 私は、夕食の仕込みで忙しいであろうエイドを、呼ぶために呼び鈴を鳴らした。

「おかえりなさい、お嬢。お出迎え出来ずにすみません!!」

 すると、すぐにエイドが駆けて来た。

「それはいいのよ。それよりエイド、仕込みの時間にごめんね」

「いやいや、気にしないで下さい。それより、お嬢。お嬢に会いたいって、大変な方がお見えですよ!!」

 エイドが慌てた様子で言った。

 そう言えば、屋敷の奥に見たこともない馬車が待機していた。

 普段からお父様のお客様が、お見えになることもあるので、今回もきっとそうだと思っていたので、あまり気にしていなかった。

「すぐに行くわ」

 返事をすると、すぐに客間に向かうことにした。

 お父様やお母様のお知り合いの方の中には、『もうこんなに大きくなったんだね~』と、幼い頃から私のことを知っていて気にかけて下さる方々も多い。
 きっと今回も、お父様やお母様に会いにきたついでに、私にも会いたいと言って下さった方なのだろう。

「ところで、お嬢。この荷物。どうしたんです?」

 私は、振り向いてエイドを見て言った。

「エカテリーナに、着なくなった服を貰ったの」

「服?! こんなに?! とりあえず、俺が中に運んでおきますので、お嬢は急いで、客間に向かって下さい!!」

「ええ。わかったわ」

 私はエイドに服を任せて、急いで、客間に向かった。

☆==☆==☆==

 トントントン。

「失礼致します」

 客間に入ると、いかにも高級そうな身なりの老年の男性が座っていた。

(あら? あの方……どこかで会ったことがあるような??)

 私は、扉の前で礼をすると、お父様やお母様の近くまで歩いて行くことにした。

「シャル、ここにおいで」

 お父様に促されるままソファーに座って、男性を見ると、男性が優しく微笑んでくれた。
 近くで見るとますます、どこかで会ったことがある顔だった。

(どこで、お会いしたのかしら? どこ……)

「紹介しよう。この方は、ホフマン伯爵だ」

「ホフマン伯爵……先日のお茶会の!! お茶会では、ドレスも準備して頂き、お茶やお菓子も大変美味しく頂きました。ありがとうございました」

 私がお礼を言うと、男性はにこやかに笑った。

「ふふふ。お礼ならもう聞きましたぞ? ウェーバー嬢」

 男性の穏やかな低音を聞いて、すぐに思い出した。

「ああ!! 私に、石をくれた……執事の……」

 私はつい大きな声を上げてしまった。

(あら? でも、私は執事の方から石を……)

 男性は、どう見ても執事には見えない服装をしている。
 私が困惑していると、男性が口を開いた。

「ウェーバー嬢。騙すような真似をしたことを詫びよう。
 私は、現ホフマン伯爵の爵位を持つものだ。領主はとっくに息子に譲っているがね。
 我がホフマン伯爵家には、どうしても、賢くて、審美眼のある娘が必要でな」

(賢くて、審美眼のある娘?! それで、私になんのようかしら?)

 私が首を傾けると、ホフマン伯爵は、嬉しそうに笑った。

「あの会場で、見込みがありそうなご令嬢数人に、白い石を見せ、どちらがいいか尋ねた」

「はい……」

 会場で、白い石を見せられたことを思い出す。あのお茶会には私と同じ歳くらいの子も多かったので、なんとなく他の子にもしているのだろうな、とは思っていたので、特に驚きはなかった。

「ウェーバー嬢以外の令嬢は、皆、ただの白い石を選んだ」

「ただの白い石?」

 私が選んだ石は、黄色にも見える石だったが、もう一つの石は、確かにただの白い石だったことを思い出した。

「そう。君以外の令嬢が選んだ石は、伯爵家に庭に落ちてた、なんの変哲もないただの白い石だ」

「……」

「だが……ウェーバー嬢」

 伯爵はニヤリと笑って目を細めながら私の顔をじっと見た後に、話を続けた。

「君の選んだ石は、マッローネダイヤの原石なのだ」

 マッローネダイヤ??
 何かしら?

 私ではなく、お父様が声を上げた。

「マッローネダイヤ?!」

 お父様が、大きく目を見開きながら私の方を見ながら、ゴクリと息を飲んだ。

「シャル!! あの、石は持っているかい?」

「は、はい。部屋の机の引き出しに中にありますわ」

「引き出し……すぐに宝物庫に移した方がいいかもしれない」

 お父様は、青い顔で言った。

「……あの、マッローネダイヤとはなんです?」

 私の問いかけに答えてくれたのは、お父様ではなく伯爵だった。

「ウェーバー嬢、私が答えてもいいかな?」

「はい。お願い致します」

「あの石は、マッローネダイヤと言って、この国の溶岩地帯でのみ採れる石なんだ」

「溶岩地帯? 確かとても危険で近づいて行けない場所だと……」

「おお、7歳なのに、もうそんなことまで学んでいるのかい? 素晴らしいね。
 いかにも、とても危険な場所だ。だからこそ、とても貴重な石なのだ」

 危険な溶岩地域で採れる石……。それは確かに貴重なものだろう。
 だが、貴重と言われても、価値がよくわからなかった。

「わかりやすく説明しようか。確か、君は、ランゲ侯爵令嬢と、ドレスについて面白い話をしていたね?」

(聞かれていたのね!!)

 私は、話を聞かれていたことに驚いていたが、返事をした。

「はい」

「ウェーバー嬢。お茶会に来ていた令嬢を覚えているかい?」

 伯爵は、笑顔で私の顔を見た。

「はい。確か、20人から30人はいらしたかと……」

「ウェーバー嬢にあげた石で、今回招待した令嬢たちのドレスが全て買える、と言ったら価値が、わかるかな?」

 ドレスが全部?
 全部?!
 あれが?!

 私は値札を見たことを思い出す。
 一着でもとんでもない値段だった。
 それが、20から30着?!


「あの石で、あの煌びやかなドレスを全部?!」

「え?!」

「え?!」

 驚いたのは私だけではなかったようで、お母様とエマも思わず声を上げた。
 どうしよう。
 ただのお遊びで貰ったと思った石は、とんでもなく価値のある石だった。

 一体、私はどうしたらいいのだろうか?

 私は思わず遠くを見つめたのだった。





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