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第一章 幸せが約束された未来
6 侯爵家へのお呼ばれ(2)
しおりを挟むボーン、ボーン、ボーン、ボーン。
時計の音が聞こえて、私は時計に目を向けた。
「もう、こんな時間!!」
エカテリーナの屋敷は王都でも城にとても近い場所にある。一方私の屋敷は、貴族の暮らすエリアの一番外れなので、ここから、私の屋敷までは半刻はかかる。
お母様から、時計が5つ鳴る前には戻るように言われていたのだった。
「ふふふ。シャルロッテと話をしていると、つい時間が過ぎてしまうわね」
エカテリーナが、立ち上がるとベルで侍女を呼んで、言った。
「シャルロッテを送る準備をお願いね」
「かしこまりました」
エカテリーナといると楽しいので、もうお別れだと思うと悲しかった。
私は、エカテリーナにお礼を伝えることにした。
「今日は、楽しかった!! お洋服もたくさん、ありがとう」
「私も楽しかったわ!! また遊びに来て」
「うん。あ、その時は、エカテリーナに貰ったお洋服を着てきてもいい?」
「着てくれたら嬉しいわ!! ぜひ着てきて!!」
私は、少しだけほっとした。
エカテリーナに貰った服なら、私が侯爵家に出入りしてもおかしくはないだろう。
(また、変って言われたら悲しいし……エカテリーナから貰ったお洋服を着て来たら、一緒に遊んでくれるかな?)
私は、さっきゲオルグとのことを思い出した。
それから、すぐに帰る用意が出来たとの連絡があった。
エカテリーナは、私を馬車の前まで見送ってくれた。
「シャルロッテ、またぜひ、遊びに来てね」
「うん!!」
パタパタ。
私が馬車に乗ろうとすると、後ろから足音が聞こえて、私の手に何かが押し付けられた。
「え?」
振り返ると、息を切らして、顔を真っ赤にしたゲオルグが立っていた。
ゲオルグに押し付けられている手の中を見ると、押し花のしおりを握らされていた。
「……やる」
「ありがとう」
私は、しおりを受け取ると、ゲオルグにお礼を言った。
(私が大嫌いなのに……これをくれるの……?)
私は不思議に思ってゲオルグを見つめていると、ゲオルグが大きく息を吐いた後に、私の顔を正面からじっと見つめた。
「……あと……ごめん」
そう言って、ゲオルグは片手を差し出して来た。
(え? これって、握手? イヤだったんじゃないの??)
手を取っていいものか、悪いものか考えていると、ゲオルグが声を上げた。
「やり直し。初めから」
もしかしたら、ゲオルグは教師に注意されてここにいるのかもしれない。
自分の意思ではなく、義務感で言っているのかもしれない。
例えそうだとしても、仲直りできることが嬉しくて、ゲオルグの手を握った。
「うん。よろしくね。ゲオルグ」
「ああ、よろしく、シャルロッテ。次に来た時は、俺も……一緒に遊ぶから」
ゲオルグが私の手を握ったまま、視線を逸らしながら言った。
耳まで真っ赤になっている。
そう言えば、エマとエイドも仲直りをする時はいつも恥ずかしそうだった。
(『ごめんなさい』って言う時は、恥ずかしいのかな? でもそれでも伝えてくれたんだ……)
私は、笑顔で答えた。
「うん!! 遊ぼう!!」
ゲオルグが私と繋いでいない方の手で、頭を掻いた。
「それと……俺、シャルロッテのこと……嫌いじゃない」
『大嫌い』だと言われたが、どうやら嫌われていないようだ。
私もお友達が出来るのは嬉しいので、嫌われていないと知って、ほっとした。
「そっか!! よかった」
「あ……」
ゲオルグが何か言いたそうな顔で、私を見ていたが、ゲオルグの両肩にエカテリーナの手が添えられた。
「シャルロッテ。弟を許してくれてありがとう」
これまで、いろんなエカテリーナの表情を見たが、今の顔は優しくて、とても穏やかで心が暖かくなるような笑顔だった。
「今度は3人で遊ぼうね!」
私は、自然に笑顔になっていた。
「うん、またね」
「またな!!」
「うん。またね!!」
馬車から、外を見ると、ゲオルグが手を振りながら少しだけ走って見送ってくれた。
私はそれが、とっても嬉しかった。
次に会う時は3人で遊べる。
何をして遊ぼうかと、私は胸を躍らせたのだった。
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