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第一章 幸せが約束された未来
7 突然の申し出(1)
しおりを挟む家に戻ると、侯爵家の御者が、エカテリーナに貰った服を入れた箱を馬車から降ろしてくれた。
「家に中にお運びしましょうか?」
「いえ、ここで。ありがとうございました」
いつもなら、すぐに迎えに来てくれるエマが迎えに来なくて、私は首を傾けた。
私は、侯爵家の馬車を見送ると、エントランスの扉を開けた。
「よし!! ……重い!! おかしいな? 服しか入ってないのに?」
荷物を運びこもうとしたが、重くて動かせない。
どうやら、服は一着だと重くはないが、何着も木箱に入ると、とても重くなるらしい。
「仕方ない。エイド、仕込みで忙しいかもしれないけど、ごめん」
リーン、リーン。
私は、夕食の仕込みで忙しいであろうエイドを、呼ぶために呼び鈴を鳴らした。
「おかえりなさい、お嬢。お出迎え出来ずにすみません!!」
すると、すぐにエイドが駆けて来た。
「それはいいのよ。それよりエイド、仕込みの時間にごめんね」
「いやいや、気にしないで下さい。それより、お嬢。お嬢に会いたいって、大変な方がお見えですよ!!」
エイドが慌てた様子で言った。
そう言えば、屋敷の奥に見たこともない馬車が待機していた。
普段からお父様のお客様が、お見えになることもあるので、今回もきっとそうだと思っていたので、あまり気にしていなかった。
「すぐに行くわ」
返事をすると、すぐに客間に向かうことにした。
お父様やお母様のお知り合いの方の中には、『もうこんなに大きくなったんだね~』と、幼い頃から私のことを知っていて気にかけて下さる方々も多い。
きっと今回も、お父様やお母様に会いにきたついでに、私にも会いたいと言って下さった方なのだろう。
「ところで、お嬢。この荷物。どうしたんです?」
私は、振り向いてエイドを見て言った。
「エカテリーナに、着なくなった服を貰ったの」
「服?! こんなに?! とりあえず、俺が中に運んでおきますので、お嬢は急いで、客間に向かって下さい!!」
「ええ。わかったわ」
私はエイドに服を任せて、急いで、客間に向かった。
☆==☆==☆==
トントントン。
「失礼致します」
客間に入ると、いかにも高級そうな身なりの老年の男性が座っていた。
(あら? あの方……どこかで会ったことがあるような??)
私は、扉の前で礼をすると、お父様やお母様の近くまで歩いて行くことにした。
「シャル、ここにおいで」
お父様に促されるままソファーに座って、男性を見ると、男性が優しく微笑んでくれた。
近くで見るとますます、どこかで会ったことがある顔だった。
(どこで、お会いしたのかしら? どこ……)
「紹介しよう。この方は、ホフマン伯爵だ」
「ホフマン伯爵……先日のお茶会の!! お茶会では、ドレスも準備して頂き、お茶やお菓子も大変美味しく頂きました。ありがとうございました」
私がお礼を言うと、男性はにこやかに笑った。
「ふふふ。お礼ならもう聞きましたぞ? ウェーバー嬢」
男性の穏やかな低音を聞いて、すぐに思い出した。
「ああ!! 私に、石をくれた……執事の……」
私はつい大きな声を上げてしまった。
(あら? でも、私は執事の方から石を……)
男性は、どう見ても執事には見えない服装をしている。
私が困惑していると、男性が口を開いた。
「ウェーバー嬢。騙すような真似をしたことを詫びよう。
私は、現ホフマン伯爵の爵位を持つものだ。領主はとっくに息子に譲っているがね。
我がホフマン伯爵家には、どうしても、賢くて、審美眼のある娘が必要でな」
(賢くて、審美眼のある娘?! それで、私になんのようかしら?)
私が首を傾けると、ホフマン伯爵は、嬉しそうに笑った。
「あの会場で、見込みがありそうなご令嬢数人に、白い石を見せ、どちらがいいか尋ねた」
「はい……」
会場で、白い石を見せられたことを思い出す。あのお茶会には私と同じ歳くらいの子も多かったので、なんとなく他の子にもしているのだろうな、とは思っていたので、特に驚きはなかった。
「ウェーバー嬢以外の令嬢は、皆、ただの白い石を選んだ」
「ただの白い石?」
私が選んだ石は、黄色にも見える石だったが、もう一つの石は、確かにただの白い石だったことを思い出した。
「そう。君以外の令嬢が選んだ石は、伯爵家に庭に落ちてた、なんの変哲もないただの白い石だ」
「……」
「だが……ウェーバー嬢」
伯爵はニヤリと笑って目を細めながら私の顔をじっと見た後に、話を続けた。
「君の選んだ石は、マッローネダイヤの原石なのだ」
マッローネダイヤ??
何かしら?
私ではなく、お父様が声を上げた。
「マッローネダイヤ?!」
お父様が、大きく目を見開きながら私の方を見ながら、ゴクリと息を飲んだ。
「シャル!! あの、石は持っているかい?」
「は、はい。部屋の机の引き出しに中にありますわ」
「引き出し……すぐに宝物庫に移した方がいいかもしれない」
お父様は、青い顔で言った。
「……あの、マッローネダイヤとはなんです?」
私の問いかけに答えてくれたのは、お父様ではなく伯爵だった。
「ウェーバー嬢、私が答えてもいいかな?」
「はい。お願い致します」
「あの石は、マッローネダイヤと言って、この国の溶岩地帯でのみ採れる石なんだ」
「溶岩地帯? 確かとても危険で近づいて行けない場所だと……」
「おお、7歳なのに、もうそんなことまで学んでいるのかい? 素晴らしいね。
いかにも、とても危険な場所だ。だからこそ、とても貴重な石なのだ」
危険な溶岩地域で採れる石……。それは確かに貴重なものだろう。
だが、貴重と言われても、価値がよくわからなかった。
「わかりやすく説明しようか。確か、君は、ランゲ侯爵令嬢と、ドレスについて面白い話をしていたね?」
(聞かれていたのね!!)
私は、話を聞かれていたことに驚いていたが、返事をした。
「はい」
「ウェーバー嬢。お茶会に来ていた令嬢を覚えているかい?」
伯爵は、笑顔で私の顔を見た。
「はい。確か、20人から30人はいらしたかと……」
「ウェーバー嬢にあげた石で、今回招待した令嬢たちのドレスが全て買える、と言ったら価値が、わかるかな?」
ドレスが全部?
全部?!
あれが?!
私は値札を見たことを思い出す。
一着でもとんでもない値段だった。
それが、20から30着?!
「あの石で、あの煌びやかなドレスを全部?!」
「え?!」
「え?!」
驚いたのは私だけではなかったようで、お母様とエマも思わず声を上げた。
どうしよう。
ただのお遊びで貰ったと思った石は、とんでもなく価値のある石だった。
一体、私はどうしたらいいのだろうか?
私は思わず遠くを見つめたのだった。
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