好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番

文字の大きさ
11 / 95
第一章 幸せが約束された未来

10 初恋の人との出会い(2)

しおりを挟む




「凄い……本当にキレイ……」

 ハンスに連れて来られた場所は、大きな噴水の隣につるバラのアーチがあり、様々な種類のバラが咲き乱れる美しい場所だった。

 噴水の水が常に七色に反射していると思ったら、この噴水は町の広場にあるような、ただの石ではなく、見たこともない石が使われていた。

「気に入った?」

「はい」

 ハンスが嬉しそうに笑うと、「僕たち結婚するんだから、普段の言葉でいいよ」と言った。
 優しい瞳で見つめらるのたとても嬉しいと思って、私も笑顔で答えた。

「うん、じゃあ、ハンス。よろしくね」

「ああ、そっちの方がシャルに近づけたみたいで嬉しいな。実は、僕、お茶会でシャルを見た時から、ずっと君の事を考えてたんだ」

「お茶会?」

 どういうことだろうか?
 私は、お茶会ではハンスに会っていないはずだが……。

「本当は君をお茶会で見つけた時にすぐ、君のところに行きたかったんだけど、動けなくて……声をかけなかったことを、後悔したんだ」

 そういえば、エカテリーナがずっと、『あいさつがしたいけど、囲まれれて近づけないわね……』と言っていたが、ハンスのことだったのだろうか?
 もしかして、私はあの時、のんきにお茶を楽しんでいる場合ではなかったのだろうか?
 私は、急いでハンスに謝罪した。

「ごめんなさい、ハンス。私の方こそあいさつに行くべきだったのに」

「いや、僕は君たちが、楽しそうにお茶会を楽しんでくれたことが嬉しかったんだ。
 お菓子を食べて、楽しそうに話をしていたシャルはとても可愛かったから」

 可愛い……。
 両親や、エマやエイドは、よく私のことを可愛いと言ってくれる。
 それはとても、嬉しいが、ハンスに言われると、なんだか頬が熱くなってきて自分でも戸惑ってしまった。

「ハンス……そんな風に言ってくれて、ありがとう」

「ふふふ、あの後、すぐにおじい様が『ホフマン伯爵家に相応しい娘を見つけた』って、おっしゃっていたから、もうシャルには会えないかと思っていたんだ」

 つまり、ホフマン伯爵が家に来た時、ハンスは私が相手だと知らなかったということだ。
 ということは、私がもし、あの時、マッローネダイアの原石を選ばなければ、ハンスとは会っていなかったということだろうか?

 私が考えていると、ハンスが嬉しそうに笑った。

「だから、シャルが来てくれた時、夢かと思った!! また、君に会えて嬉しい。しかも僕のお嫁さんになってくれるなんて!! ねぇ。あの時言えなかったことを言ってもいいかな? シャルが着ていた、深い紫水晶のようなドレス、良く似合ってて素敵だったよ」

 顔が熱いと思ったが、熱いのは顔だけじゃなかった。
 身体中の体温が上がって、心臓の音が大きく聞こえる。それだけじゃなく、普段は聞こえない耳の中まで脈を打つ音が聞こえる。

 ハンスと繋いだ手が、とても恥ずかしいのに嬉しくて……。
 初めての感情に戸惑いながら答えた。

「……ありがとう」

 それから、私たちはハンスに案内されて、庭を見て回った。伯爵家の庭はとても広くて、今日だけでは、回れそうになったので、また今度見ることにした。

 ハンスと手を繋いで、お父様たちのサロンに戻った。
 すると、心配そうな顔のお父様と、エイドの顔が見えた。
 そんな中、ホフマン伯爵が私たちを見て真剣な顔をした。

「2人ともどうかな? 婚約してもいいだろうか?」

 すると、ハンスが私を見て頷いたので、私も頷き返した。

「おじい様、僕はシャルと婚約したいです!!」

 私も、ホフマン伯爵を見て言った。

「私も、ハンスと婚約したいです」

 その瞬間、お父様はなんとも言えない顔をしたが、ホフマン伯爵は、嬉しそうに笑った。

「はっはっは!! そうか、ウェーバー嬢がお相手なら、我がホフマン伯爵家も安泰だな」

 そう言った後に、父の前に書類と羽ペンを差し出した。

「よろしいでしょうかな? ウェーバー子爵殿」

 お父様は、私を見て、真剣な顔をした。

「シャル。本当にいいんだね」

「はい」

 私はお父様をじっと見つめた。視線がぶつかって、数秒。
 お父様がフワリと笑って「そうか」と言った後に、ホフマン伯爵と、ハンスの方を見て頭を下げた。

「娘をどうぞ、よろしくお願い致します」

 すると伯爵が力強く言った。

「ホフマン伯爵家の誇りにかけて、ウェーバー嬢の幸多い未来に尽力致します」

 ハンスも真っすぐにお父様に向かった言った。

「必ず、シャルを幸せにします」

 お父様は、少し笑うと迷わず、婚約誓約書にサインした。 
 こうして、私はハンスの婚約者になったのだった。





しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

処理中です...