10 / 95
第一章 幸せが約束された未来
9 初恋の人との出会い(1)
しおりを挟むホフマン伯爵の訪問の次の日。
私は、お父様と、エイドと一緒にホフマン伯爵の屋敷にお邪魔することになった。
というのも、ホフマン伯爵から、私が今後、通うことになる屋敷の環境を見るためにも、お父様も一度、屋敷に来てはどうだろうか、との提案を受けたからだ。
「はぁ~~やっぱり、お嬢は可愛いし、素直だし、賢いし、可愛いし……伯爵様に目を付けられてしまいましたねぇ~~~」
ホフマン伯爵の屋敷に行く途中に、エイドが呟いたのだった。
「エイドったら、まだわからないわよ」
私はエイドの言葉に、眉を寄せながら答えた。
侯爵家で、ゲオルグに、初対面で嫌われた過去がある。今日はエカテリーナに貰ったワンピースを着ているので、貴族令嬢のように見えるかもしれないが、それでもやはり不安だ。
「わかりますよ!! お嬢が断られるわけないでしょう?」
エイドも血は繋がらないが、兄バカなところがあるのだ。
「そんなことないと思うけど……でも、エイドも執事服良く似合うね。髪あげるのカッコイイ」
普段着のエイドもカッコイイが、今日はもっとカッコイイ。
これは、兄バカではなく、本当にそうなのだ。
それが証拠に、エイドの代わりにお使いに行って、花屋のアンや、パン屋のリリから『エイド様に渡して欲しい』と手紙を頼まれたことがある。どうやらエイドは『紙がもったいないから、自分への手紙は控えて欲しい』と言って受け取らないそうだ。
私は一度エイドに受け取らない理由を聞いてみたが、なんともエイドらしい理由だった。
どうやらエイドは使い終わった紙を見ると、もう一度溶かして、再利用したくなるらしい。だが、女の子が心を込めて書いてくれた手紙を溶かすのは、申し訳ない。だが、手元にあると、どうしても溶かして使いたくなるから受け取れないとのことだ。
だがそんな理由で手紙を断っているのに、溶かされても構わないから、エイドへ手紙を渡して欲しいという女の子は多い。
これはきっと、エイドがカッコよくて、モテるからだ。
私は真剣にエイドを褒めていると、エイドが片眉を上げて笑いながら言った。
「そうですか? じゃあ、今度、この姿で市場に行けば、たくさんおまけしてくれるかもしれませんね」
もしエイドが、執事服で買い物に行ったら、女の子に囲まれて、帰れないのではないかと、本気で心配になったが、それは口に出さないことにした。
「エイドは今のままで、充分おまけしてもらっていると思うから、普段の服でいいと思うわ……」
「あはは。俺も普段の服が一番ですけどね。でもまぁ、真面目な話。伯爵様のお屋敷に行くのに、いつもの服ってわけにもいきませんしね。もし、お嬢が俺のせいでなめられたら……俺、立ち直れません!!」
「エイド……ありがとう!」
エイドと話をしていると、ずっと黙っていたお父様が、胃の辺りを押さえながら言った。
「はぁ~、シャルもエイドも元気で羨ましいな~。私は、緊張で胃が痛い……」
「何を言ってるんです、旦那様。可愛いお嬢を嫁にやる相手と会うなんて、俺だって、胸が痛いですよ~~!!」
エイドの言葉に、お父様がヨロヨロと今度は、胸を押さえた。
「嫁に出すだと?! いけない、胸まで痛くなってきた」
私は、今度は胸を押さえる、お父様の背中をさすりながら、言った。
「ええ? お父様、大丈夫ですか? もうすぐですからね。しっかり!!」
「ううう~~娘が優しすぎて、泣きそう」
「俺も泣きそうです」
「お父様、しっかり!! エイド、前見て!! 早く着いて~~~!!」
私は、お父様の背中をさすりながら、早く目的地に着くことを願ったのだった。
☆==☆==
ホフマン伯爵の屋敷に着くと、大きな門を開けて貰った。
「何度見ても凄いわ」
「そうですね~門を抜けてもなかなか、お屋敷に、着かないですもんね~。見えますけど……」
ホフマン伯爵家は門に入ってからも、林があり、その林を抜けると綺麗な庭が見えて、ようやく屋敷の入り口が見える。
とにかく敷地も大きかったが、屋敷もとても大きい。初めてお茶会にお邪魔した時、エイドと一緒に本当にここで合っているのか不安になって、他の方の馬車を見つけて、2人でほっとしたのだ。
エントランスの前には、執事が待っていてくれた。
私たちは、馬車を降りて、家の馬車を伯爵家の御者に預けると、3人でお屋敷のエントランス前に立つ執事の元に向かった。そして、お父様が執事にあいさつをした。
「本日はお招き頂き光栄です。ウェーバー子爵です」
「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
実は、高位貴族の屋敷で働く執事は、貴族の出身者がとても多い。だから、本人は爵位を持っていなくても、親や兄弟は爵位を持っていたりする。だから、私たちのような下位貴族は、基本的に執事にも敬語を使うように教育されるのだ。
ホフマン伯爵家の執事に案内されたのは、入口からして豪華な部屋だった。
「こちらです」
コンコンコンコン。
「入れ」
執事は、ゆっくりと扉を開けると、私たちを見て「どうぞ」と言った。
緊張しながら部屋に入ると、すぐに私の前に、黄金色に輝く髪に、エメラルドグリーンの瞳の私と同じくらいの男の子が走って来た。
「わぁ~~~~♡ まさか君が、おじい様のおっしゃっていた令嬢だったなんて!!
はじめまして、僕はハンス・ホフマンです」
「わ、私はシャルロッテ・ウェーバーと申します」
いきなり、天使のようなキレイな男の子に話しかけられて私は、驚いてしまった。
「シャルロッテ。はぁ~~近くで見ると本当に、可愛い~~~♡♡」
私はあいさつをするために、手を差し出そうとして、戸惑ってしまった。
(もし、また、嫌がられたらどうしよう)
私は先日、ゲオルグに握手を拒否されたことを思い出して、手を差し出すことを迷っていると、男の子の方から私の手を取って、両手で私の両手を握ってくれた。
(よかった……この子は、手に触れるのを、嫌がらなかった……)
私は握手をしてくれただけで、嬉しくて胸が熱くなった。
「ねぇ、シャルロッテ。僕のお嫁さんになってくれる?」
嬉しそうに、私の瞳をまっすぐに見てくれた男の子に、私は無意識に頷いた。
「……はい」
キレイな瞳でとても幸せそうに微笑む男の子を見て思った。
――この子は私を見て笑ってくれるんだ。……どうせなら、笑ってくれる人と一緒にいたい。
そう思って、私はハンスとずっと一緒にいることを決めた。
「本当?! やったぁ~~!! ふふふ、僕のことはハンスって呼んでね。ねぇ、シャルロッテ。君のことは、シャルって呼んでもいい?」
「は、はい」
ハンスは、くるり後ろを向くと「うんうん」と頷いているホフマン伯爵を見ながら言った。
「おじい様、シャルと一緒に、庭に行って来てもいい?」
「ああ」
ホフマン伯爵が頷くと、ハンスは、手を繋いだまま私を見て笑った。
「シャル、向こうに綺麗な花が咲いているんだよ。一緒に見に行こうよ」
「……はい」
「行こう!! シャル」
私は何がなんだか、わからないまま、ハンスについて行ったのだった。
214
あなたにおすすめの小説
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
美しく才能あふれる侯爵令嬢ジェニエルは、幼い頃から王子セオドールの婚約者として約束され、完璧な王妃教育を受けてきた。20歳で結婚した二人だったが、3年経っても子供に恵まれず、彼女には「問題がある」という噂が広がりはじめる始末。
そんな中、セオドールが「オリヴィア」という女性を王宮に連れてきたことで、夫婦の関係は一変し始める。
※改定、追加や修正を予告なくする場合がございます。ご了承ください。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる