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第一章 幸せが約束された未来
9 初恋の人との出会い(1)
しおりを挟むホフマン伯爵の訪問の次の日。
私は、お父様と、エイドと一緒にホフマン伯爵の屋敷にお邪魔することになった。
というのも、ホフマン伯爵から、私が今後、通うことになる屋敷の環境を見るためにも、お父様も一度、屋敷に来てはどうだろうか、との提案を受けたからだ。
「はぁ~~やっぱり、お嬢は可愛いし、素直だし、賢いし、可愛いし……伯爵様に目を付けられてしまいましたねぇ~~~」
ホフマン伯爵の屋敷に行く途中に、エイドが呟いたのだった。
「エイドったら、まだわからないわよ」
私はエイドの言葉に、眉を寄せながら答えた。
侯爵家で、ゲオルグに、初対面で嫌われた過去がある。今日はエカテリーナに貰ったワンピースを着ているので、貴族令嬢のように見えるかもしれないが、それでもやはり不安だ。
「わかりますよ!! お嬢が断られるわけないでしょう?」
エイドも血は繋がらないが、兄バカなところがあるのだ。
「そんなことないと思うけど……でも、エイドも執事服良く似合うね。髪あげるのカッコイイ」
普段着のエイドもカッコイイが、今日はもっとカッコイイ。
これは、兄バカではなく、本当にそうなのだ。
それが証拠に、エイドの代わりにお使いに行って、花屋のアンや、パン屋のリリから『エイド様に渡して欲しい』と手紙を頼まれたことがある。どうやらエイドは『紙がもったいないから、自分への手紙は控えて欲しい』と言って受け取らないそうだ。
私は一度エイドに受け取らない理由を聞いてみたが、なんともエイドらしい理由だった。
どうやらエイドは使い終わった紙を見ると、もう一度溶かして、再利用したくなるらしい。だが、女の子が心を込めて書いてくれた手紙を溶かすのは、申し訳ない。だが、手元にあると、どうしても溶かして使いたくなるから受け取れないとのことだ。
だがそんな理由で手紙を断っているのに、溶かされても構わないから、エイドへ手紙を渡して欲しいという女の子は多い。
これはきっと、エイドがカッコよくて、モテるからだ。
私は真剣にエイドを褒めていると、エイドが片眉を上げて笑いながら言った。
「そうですか? じゃあ、今度、この姿で市場に行けば、たくさんおまけしてくれるかもしれませんね」
もしエイドが、執事服で買い物に行ったら、女の子に囲まれて、帰れないのではないかと、本気で心配になったが、それは口に出さないことにした。
「エイドは今のままで、充分おまけしてもらっていると思うから、普段の服でいいと思うわ……」
「あはは。俺も普段の服が一番ですけどね。でもまぁ、真面目な話。伯爵様のお屋敷に行くのに、いつもの服ってわけにもいきませんしね。もし、お嬢が俺のせいでなめられたら……俺、立ち直れません!!」
「エイド……ありがとう!」
エイドと話をしていると、ずっと黙っていたお父様が、胃の辺りを押さえながら言った。
「はぁ~、シャルもエイドも元気で羨ましいな~。私は、緊張で胃が痛い……」
「何を言ってるんです、旦那様。可愛いお嬢を嫁にやる相手と会うなんて、俺だって、胸が痛いですよ~~!!」
エイドの言葉に、お父様がヨロヨロと今度は、胸を押さえた。
「嫁に出すだと?! いけない、胸まで痛くなってきた」
私は、今度は胸を押さえる、お父様の背中をさすりながら、言った。
「ええ? お父様、大丈夫ですか? もうすぐですからね。しっかり!!」
「ううう~~娘が優しすぎて、泣きそう」
「俺も泣きそうです」
「お父様、しっかり!! エイド、前見て!! 早く着いて~~~!!」
私は、お父様の背中をさすりながら、早く目的地に着くことを願ったのだった。
☆==☆==
ホフマン伯爵の屋敷に着くと、大きな門を開けて貰った。
「何度見ても凄いわ」
「そうですね~門を抜けてもなかなか、お屋敷に、着かないですもんね~。見えますけど……」
ホフマン伯爵家は門に入ってからも、林があり、その林を抜けると綺麗な庭が見えて、ようやく屋敷の入り口が見える。
とにかく敷地も大きかったが、屋敷もとても大きい。初めてお茶会にお邪魔した時、エイドと一緒に本当にここで合っているのか不安になって、他の方の馬車を見つけて、2人でほっとしたのだ。
エントランスの前には、執事が待っていてくれた。
私たちは、馬車を降りて、家の馬車を伯爵家の御者に預けると、3人でお屋敷のエントランス前に立つ執事の元に向かった。そして、お父様が執事にあいさつをした。
「本日はお招き頂き光栄です。ウェーバー子爵です」
「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
実は、高位貴族の屋敷で働く執事は、貴族の出身者がとても多い。だから、本人は爵位を持っていなくても、親や兄弟は爵位を持っていたりする。だから、私たちのような下位貴族は、基本的に執事にも敬語を使うように教育されるのだ。
ホフマン伯爵家の執事に案内されたのは、入口からして豪華な部屋だった。
「こちらです」
コンコンコンコン。
「入れ」
執事は、ゆっくりと扉を開けると、私たちを見て「どうぞ」と言った。
緊張しながら部屋に入ると、すぐに私の前に、黄金色に輝く髪に、エメラルドグリーンの瞳の私と同じくらいの男の子が走って来た。
「わぁ~~~~♡ まさか君が、おじい様のおっしゃっていた令嬢だったなんて!!
はじめまして、僕はハンス・ホフマンです」
「わ、私はシャルロッテ・ウェーバーと申します」
いきなり、天使のようなキレイな男の子に話しかけられて私は、驚いてしまった。
「シャルロッテ。はぁ~~近くで見ると本当に、可愛い~~~♡♡」
私はあいさつをするために、手を差し出そうとして、戸惑ってしまった。
(もし、また、嫌がられたらどうしよう)
私は先日、ゲオルグに握手を拒否されたことを思い出して、手を差し出すことを迷っていると、男の子の方から私の手を取って、両手で私の両手を握ってくれた。
(よかった……この子は、手に触れるのを、嫌がらなかった……)
私は握手をしてくれただけで、嬉しくて胸が熱くなった。
「ねぇ、シャルロッテ。僕のお嫁さんになってくれる?」
嬉しそうに、私の瞳をまっすぐに見てくれた男の子に、私は無意識に頷いた。
「……はい」
キレイな瞳でとても幸せそうに微笑む男の子を見て思った。
――この子は私を見て笑ってくれるんだ。……どうせなら、笑ってくれる人と一緒にいたい。
そう思って、私はハンスとずっと一緒にいることを決めた。
「本当?! やったぁ~~!! ふふふ、僕のことはハンスって呼んでね。ねぇ、シャルロッテ。君のことは、シャルって呼んでもいい?」
「は、はい」
ハンスは、くるり後ろを向くと「うんうん」と頷いているホフマン伯爵を見ながら言った。
「おじい様、シャルと一緒に、庭に行って来てもいい?」
「ああ」
ホフマン伯爵が頷くと、ハンスは、手を繋いだまま私を見て笑った。
「シャル、向こうに綺麗な花が咲いているんだよ。一緒に見に行こうよ」
「……はい」
「行こう!! シャル」
私は何がなんだか、わからないまま、ハンスについて行ったのだった。
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