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第三章 深まる溝と揺らぐ絆
28 貴族学院入学式(3)
しおりを挟むクレイル先生について、行くと豪華なソファーに座るように促された。
「これが、ここ1ヵ月の君たちのスケジュールです」
貰った書類を見て驚いた。
外国からのお客様を招いたパーティーの出席に、学院のセレモニー、中にはダンスパーティーへの出席というのもあった。
「あの……ダンスパーティーにも、2人で出席するのでしょうか?」
私は、ハンスの婚約者だ。だから、ダンスパーティーなどは、ハンスと一緒に出席しなければいけないのではないかと思ったのだ。
「ええ。もちろん。この『代表生徒』というシステムは貴族の中では特別で、例え、婚約者いる方や既婚者であったとしても、代表生徒に選ばれたら、代表生徒を優先します。貴族の中で、代表生徒を優先して、何かいう者はおりません」
「そうなのですね……」
私の家は、子爵家なので、あまり社交については詳しくない。ホフマン伯爵家でも、社交については、学園を卒業してからで良いだろうという判断で、マナー以外は、あまり詳しく勉強しなかったのだ。
「これから1年、何かと2人で行動することが増えると思います。仲良く過ごして下さいね」
「はい」
「はい」
私は、ゲオルグと一緒にクレイル先生の部屋を出た。
「ゲオルグ…様…あの、よろしくお願いします」
私が、ゲオルグにあいさつをすると、ゲオルグが口を開いた。
「ああ。シャルロッテなら、絶対に代表生徒に選ばれると思っていた。学院にいる間くらいは、ゲオルグと、昔のように呼んでくれ。学生が学びを行うのに、婚約者など気にする方がおかしいだろう?」
学生が学びを行うのに、婚約者などと気にするのはおかしいのだろうか?
私は、あくまで、ハンスの婚約者だということは絶対に忘れるわけには行かない。
だが、ゲオルグの言う通り、一緒に学ぶ仲間でもあるということは理解できる。
「じゃあ、ゲオルグ。よろしくね」
「ああ。よろしくな」
こうして、私はゲオルグと笑い合ったのだった。
☆==☆==
一方、ハンスのクラスである、Bクラスでは……。
「ホフマン伯爵家のハンス様よ!!」
「本当だわ!! ハンス様だわ」
この国でもトップクラスの財力を持つホフマン伯爵家というだけでも、注目度は抜群だが、王族をはじめ高位貴族は、Sクラスにいる状況で、顔も良く、乗馬や剣術大会常連のハンスは、かなり女性にモテていた。
次々と、ハンスに話しかけてくる令嬢たちに、ハンスは、早くもげんなりしていた。
最近は、『勉強を優先させる』ことを理由にシャルロッテ以外の令嬢と会う機会がなかった。
シャルロッテと一緒にいても、煩わしいことは何もなく、どこかのんびりしていたので、これほど積極的に来られるのは、ハンスにとっては、苦痛しか感じなかった。
(ああ、本当に面倒だな……)
ハンスは、自分にピッタリと引っ付いてくる令嬢をたちをやんわり離しながら笑顔で言った。
「私には、婚約者がいますし、ここには勉強に来ていますので、そっとしていただけると助かります」
これで静かになると期待したが、令嬢たちは「私もハンス様と一緒にお勉強しますわ」とどこ吹く風だった。
あまり強く言っても、令嬢は将来、宝石を買ってくれる可能性もあるので、あまり強くは言えないのだ。
(どうして、シャルは私と一緒にいないのだ。そうすれば、これほど大変ではなかったのに)
ハンスは、ここにいないシャルロッテを少しだけ恨みがましく思ったのだった。
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