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番外編
お気に入り1500感謝SS【舞台の上で】
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※注意!!!※
このお話は、本編とは違いコメディですので『世界観を崩したくない』という方は、見ないことをおすすめ致します。
『大丈夫!!』という方だけどうぞ!!
↓
↓
↓
――――――――――
――これは、シャルロッテが、ランゲ侯爵家で仕事を始めて、しばらく経ったある日のこと。
その日は、仕事ではなく、エマと一緒に、エカテリーナとお茶をするためにランゲ侯爵家にお邪魔していた。
「え? 人の心の変化を知りたい??」
私は、思わず目を大きく開けてエカテリーナを見た。
エカテリーナは、最終個人研究終わり、次の個人研究の内容として『人の心の変化』について、調べてみたいと言った。
「ええ、そうよ」
エカテリーナが頷くと、エマが腕を組みながら言った。
「ん~~大変難しいテーマですが、面白そうですね!!」
「ふふ、エマなら絶対に乗ってくると思ったわ」
エカテリーナがエマの手を取って嬉しそうに言った。
「もちろん、乗ります!!」
2人は、人の心の変化を知るというかなりの難問に挑む気でいた。
人の心の変化。
哲学的な視点からのアプローチだろうか?
それとも生物学的なアプローチだろうか?
行動学、倫理学、生態学など様々な視点が考えられるが、2人は何から人の心の変化を調べるのだろうか?
私が考えていると、エカテリーナが困ったように言った。
「心の変化って、心が見えないから、変化したタイミングがわかりにくいことが一番の難点なのよね……」
エマも眉を寄せながら同意した。
「そうですね。また、人は自分の心を無意識のうちに隠してしまうように思うのです」
エマの言葉を聞いたエカテリーナが、顎に人差し指を付けながら言った。
「そうね~~。じゃあ、自分の心を客観的に見れるように、自分以外になってみればいいかもね~~」
すると、エマが、大きく目をあけて、興奮した声を出した。
「自分以外になる……? エカテリーナ様!! 天才です!!
それです!! 演じればいいのですよ、自分以外の誰かを!!
できれば役者さんのような訓練された方ではない、一般の人の方がわかりやすいかもしれません!!」
「なるほどね……ふふふ! エマ!! いいこと思いついたわ!! すぐに脚本を書くわ!!」
「いいですね!! お付き合い致します」
エカテリーナとエマは、このたった数分で、研究方法まで決めてしまったようだ。
演劇などの芸術面からのアプローチとは思わずに私は、感心してしまった。
私はどうしても、じっくりと考え込んでしまうので、2人の行動力と決断力の早さは、羨ましいと思った。
コンコンコンコン。
「はーい、入って」
エカテリーナが許可を出すと、セバスさんが部屋に入って来た。
「シャルロッテ様、本日は、仕事でおいでではないことは、承知してございますが、コラージュ伯爵から急ぎでとのお手紙が参りました」
「そうなの? ねぇ、少し席を外してもいいかしら?」
私は、夢中になっている2人に尋ねた。
「ええ! もちろんよ。ご苦労様」
「お嬢様、こちらでお待ちしております」
エカテリーナの研究の手伝いが出来ないことを、申し訳なく思いながらも私は席を立った。
「ごめんね、いってくるわ、そのまま作業を進めてね」
「はい。いってらっしゃいませ」
扉を閉めようとした時、少しだけ2人の会話が聞こえてきた。
「ん~~やっぱり、こういうのは外せないわよね」
「エカテリーナ様、アレも入れて下さいね」
「もちろんよ」
楽しそうな2人がどんな研究をするのか、私も楽しみだったのだった。
☆==☆==
数日後。
私と、エイドと、エマは、エカテリーナの研究に協力するために、王宮に来て欲しいとの連絡を受けた。
私たちが案内された場所は、王宮内にあるホールの舞台だった。
「こんな場所で?!」
私が震えながら、ホールに入ると、エカテリーナが笑顔で、冊子を手渡してくれた。
よく見ると、ゲオルグと、サフィール王子殿下の姿もあった。
エカテリーナは、みんなを見て、今回みんなを集めた理由を説明したのだった。
「ということで、みんな~~協力してね~~~」
エカテリーナの説明が終わると、ゲオルグが額に手を当てながら呆れたように言った。
「わざわざ、王宮のホールの呼び出されたと思ったら……姉上、何を考えているのですか?」
すると、ゲオルグの後ろからサフィール王子殿下が、ゲオルグの肩を叩きながら言った。
「エカテリーナが、すごく楽しそうなんだし、問題ないでしょ?」
「サフィール、姉上が絡むと途端に、甘くなるよな」
「じゃあ、みんな~~~少し、台本を読んで各自で練習してね~~」
エカテリーナの声に、私は手元の冊子に目を向けた。どうやらこれは、舞台の台本だったようだ。
表紙にはタイトルが書かれていた。
『白い雪のようなお嬢さんと少人数の小人』
パラリと表紙をめくると、配役が書かれていた。
―――――――――――――――
白い雪のようなお嬢さん・・・シャルロッテ
お妃・・エカテリーナ
鏡・王子(1人2役)・・サフィール
狩人・・エイド
小人A・・ゲオルグ
小人B・ナレーター(1人2役)・・エマ
―――――――――――――――
「私は小人の役なのか……」
ゲオルグの呟きに、エマが頭を下げた。
「私もです。ゲオルグ様、よろしくお願いいたします」
「ああ」
エイドが、ボソリと呟いた。
「あ、俺、狩人だ」
サフィール王子殿下は、嬉しそうに言った。
「あ♡ 私は王子だ~~。まぁ、私の高貴な雰囲気では、例え役といえども、王族になってしまうのだね」
私はまさかの主役だった。
演技経験のまるでない、私が主役で、この舞台の行く末は大丈夫だろうか?
かなりの不安を抱えながらも、個人練習に、入ったのだった。
☆==☆==
個人練習が終わり、エカテリーナが声を上げた。
「さぁ~~始めるわよ~~。劇が始まったら、台本は絶対に見ないこと!
わからなくなったら、アドリブで乗り切ってね~~じゃあ、始め~~」
なんと、通し稽古もなく、いきなり舞台が始まってしまったのだった。
「鏡よ、鏡、この世で一番美しいのは誰?」
エカテリーナが、悪役の雰囲気を漂わせながら言った。
「はぁ~~そんな君も素敵だ。もちろん、エカテリーナだよ♡」
「サフィール……気持ちは嬉しいけど、それでは、話が進まないわ」
エカテリーナ肩を落とすと、サフィール王子殿下が困ったように言った。
「ん~~でも、これに関しては、お芝居だとしても、私は自分に嘘は付けないな」
すると、エカテリーナがゲオルグを見ながら言った。
「仕方ないわ。ゲオルグ!! 鏡をやってくれない」
「え?」
ゲオルグは、突然の配役変更に、困っていたが、エカテリーナはすぐに演技を始めた。
「じゃあ、行くわよ。鏡よ、鏡、この世で一番美しいのは誰?」
「それは、もちろん、シャルロッテだ」
即席だったから、ゲオルグは役名ではなく、実際の名前を言ってしまったようだ。
「ゲオルグ……ここは役名で言ってほしいのだけど……もういいわ。
なんということなの、狩人を呼びなさい」
するとエイドが舞台の袖から出て、エカテリーナの元に向かった。
「お妃様、狩人でございます」
「今から森に、白い雪のような娘を連れて行って亡き者にしなさい」
「畏まりました」
エイドは、棒読みで台本通りに演技を進めた。
そして、幕が降りて、エカテリーナたちが袖に戻ると、エイドは、私の手を取った。
「さて、いきますか?」
「ええ」
私は、エイドと共に舞台に立った。
「狩人さん、どこへいくのですか?」
「あなたに、恨みはありませんが、御覚悟を」
エイドのセリフが終わったので、私は台本にある通り、エイドを木の置物の前に連れて行き、の腰のあたりに両手をついて、見上げるように言った。
「どうか、殺さないで。お願いします」
「お嬢……」
すると、エイドが石のように固まって、動かなくなった。
動かなくなったエイドを不思議に思いながら見つめていると、エイドが自分の口に手を当てながら言った。
「くっ!! 可愛い!! 誰にも見せたくねぇ。もう、このまま俺と暮らしましょう。でも、俺の家だと、人目に付く。もういっそのこと、森の中に、2人で家でも建てて暮らしましょう。お嬢1人なら、養えますよ。俺、こう見えて腕利きの狩人なんで」
エイドが役者として急激な成長をみせた。
さっきまで、棒読みだったのに、まるで心からの言葉かのように、感情を込めて演技をしていた。
台本のセリフとは違うようだったが、それでも凄い変化だった。
「お嬢、どうですか?」
エイドに真剣な顔で見つめられて、演技だとわかっているはずなのに、心臓が早くなった。
顔に熱が集まって、何も考えらなくなったその時。
「狩人さん……。独り占めは容認できません。お嬢様は、私が連れて行きます」
エイドの背後から、エマが現れて、私の手を取ると、歩き出した。
「待て、俺も一緒に行くよ」
狩人エイドの言葉に、エマがニヤリと笑った。
「では、稼ぎは頼みますよ」
「任せておけ!! 」
エイドはそのまま、私とエマについてきた。
どうしよう!
台本とは全く違った展開になっているがいいのだろうか?
困惑している間に、エマが小人の家に着いた。
「帰りましたよ~~小人Aさん!!」
ドン。
エマが扉を開けたので、私は、台本に書いてある通り、ゲオルグの近くに移動して、見上げるように言った。
「家を追い出されてしまって、住むところがなくて困っています。少しの間でいいので、どうか私をこの家に置いて下さい! 何でもします」
「何でもする?!」
このセリフは台本にはなかったが、アドリブだろうか?
ゲオルグが、信じられないという顔をした後、赤くなったかと思うと、首を横に大きく振った。
どうしたのだろう?
ゲオルグの様子がおかしい。
私は、心配しながらもセリフを言った。
「……はい」
私が頷くと、私はゲオルグに抱きしめられた。
「もちろんだ!! 少しの間などと言わず、ずっと、ずっと生涯、私と一緒に暮らそう!!
くっ!! これがお芝居というのが、残酷だ」
これが演技だとはわかっているのに、ゲオルグの真剣さに思わず顔が熱くなる。
私は、いつまでもこのままでいるわけには行かないので、ゲオルグの腕から少し離れて、セリフを言った。
「小人さん、私を家に置いてくれて、ありがとう。私頑張りますね」
すると、ゲオルグが優しく微笑んだ。
「いや、もう充分頑張っている。ここではゆっくりしてくれ」
するとエマが、頷きながら言った。
「そうですよ!! 小人Aさんと狩人さんが働きますよ!!」
これまた台本とは違うが、私はセリフを言った。
「ええ? ……どうぞ、末永く、よろしくお願いします」
「いつか俺に言ってほしい」
「いつか私に言ってほしい」
エイドとゲオルグが、何かを同時に呟き、エイドとゲオルグがお互いをじっと見ていると、黒いマントを、羽織ったエカテリーナが家に入ってきた。
「皆様~~ごきげんよう!! さぁ、白い雪のようなお嬢さん、美味しい毒リンゴはいかが?」
・・・・・・。
エカテリーナのセリフには美味しいリンゴと書かれていたはずだ。
毒リンゴとばらしてしまっていいのだろうか??
「それを聞いて食べる者はいないのでないだろうか……」
ゲオルグが、エカテリーナを見ながら呆れたように言った。
「お嬢、危険ですから、近づかないように!」
エイドが私の前に守るように立った。
「はい、ということで、お嬢様~~このリンゴは危険ですからね~~食べないで下さいね。そちらの方も、毒リンゴを売るなんて、お仕事は止めて、みんなで暮らしませんか?」
エマが、エカテリーナに笑いかけると、エカテリーナが微笑んだ。
「そうね、それもいいわね」
そして、エマが、ゆっくりと口を開いた。
「こうして、みんなは幸せに暮らしました」
幕が降りて、ようやく劇が終わった。
「演技と現実が混ざって興味深かったですね、エカテリーナ様」
「そうね、また試してみたいわ」
「はい」
エカテリーナと、エマが何やら楽しそうに話をしている、横で、サフィール王子殿下が、呆然と佇んでいた。
そして、小さく呟いた。
「あれ? 私の出番は?」
・・・・・・。
みんなは、視線を泳がせながら、サフィール王子殿下から目を逸らしたのだった。
このお話は、本編とは違いコメディですので『世界観を崩したくない』という方は、見ないことをおすすめ致します。
『大丈夫!!』という方だけどうぞ!!
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――これは、シャルロッテが、ランゲ侯爵家で仕事を始めて、しばらく経ったある日のこと。
その日は、仕事ではなく、エマと一緒に、エカテリーナとお茶をするためにランゲ侯爵家にお邪魔していた。
「え? 人の心の変化を知りたい??」
私は、思わず目を大きく開けてエカテリーナを見た。
エカテリーナは、最終個人研究終わり、次の個人研究の内容として『人の心の変化』について、調べてみたいと言った。
「ええ、そうよ」
エカテリーナが頷くと、エマが腕を組みながら言った。
「ん~~大変難しいテーマですが、面白そうですね!!」
「ふふ、エマなら絶対に乗ってくると思ったわ」
エカテリーナがエマの手を取って嬉しそうに言った。
「もちろん、乗ります!!」
2人は、人の心の変化を知るというかなりの難問に挑む気でいた。
人の心の変化。
哲学的な視点からのアプローチだろうか?
それとも生物学的なアプローチだろうか?
行動学、倫理学、生態学など様々な視点が考えられるが、2人は何から人の心の変化を調べるのだろうか?
私が考えていると、エカテリーナが困ったように言った。
「心の変化って、心が見えないから、変化したタイミングがわかりにくいことが一番の難点なのよね……」
エマも眉を寄せながら同意した。
「そうですね。また、人は自分の心を無意識のうちに隠してしまうように思うのです」
エマの言葉を聞いたエカテリーナが、顎に人差し指を付けながら言った。
「そうね~~。じゃあ、自分の心を客観的に見れるように、自分以外になってみればいいかもね~~」
すると、エマが、大きく目をあけて、興奮した声を出した。
「自分以外になる……? エカテリーナ様!! 天才です!!
それです!! 演じればいいのですよ、自分以外の誰かを!!
できれば役者さんのような訓練された方ではない、一般の人の方がわかりやすいかもしれません!!」
「なるほどね……ふふふ! エマ!! いいこと思いついたわ!! すぐに脚本を書くわ!!」
「いいですね!! お付き合い致します」
エカテリーナとエマは、このたった数分で、研究方法まで決めてしまったようだ。
演劇などの芸術面からのアプローチとは思わずに私は、感心してしまった。
私はどうしても、じっくりと考え込んでしまうので、2人の行動力と決断力の早さは、羨ましいと思った。
コンコンコンコン。
「はーい、入って」
エカテリーナが許可を出すと、セバスさんが部屋に入って来た。
「シャルロッテ様、本日は、仕事でおいでではないことは、承知してございますが、コラージュ伯爵から急ぎでとのお手紙が参りました」
「そうなの? ねぇ、少し席を外してもいいかしら?」
私は、夢中になっている2人に尋ねた。
「ええ! もちろんよ。ご苦労様」
「お嬢様、こちらでお待ちしております」
エカテリーナの研究の手伝いが出来ないことを、申し訳なく思いながらも私は席を立った。
「ごめんね、いってくるわ、そのまま作業を進めてね」
「はい。いってらっしゃいませ」
扉を閉めようとした時、少しだけ2人の会話が聞こえてきた。
「ん~~やっぱり、こういうのは外せないわよね」
「エカテリーナ様、アレも入れて下さいね」
「もちろんよ」
楽しそうな2人がどんな研究をするのか、私も楽しみだったのだった。
☆==☆==
数日後。
私と、エイドと、エマは、エカテリーナの研究に協力するために、王宮に来て欲しいとの連絡を受けた。
私たちが案内された場所は、王宮内にあるホールの舞台だった。
「こんな場所で?!」
私が震えながら、ホールに入ると、エカテリーナが笑顔で、冊子を手渡してくれた。
よく見ると、ゲオルグと、サフィール王子殿下の姿もあった。
エカテリーナは、みんなを見て、今回みんなを集めた理由を説明したのだった。
「ということで、みんな~~協力してね~~~」
エカテリーナの説明が終わると、ゲオルグが額に手を当てながら呆れたように言った。
「わざわざ、王宮のホールの呼び出されたと思ったら……姉上、何を考えているのですか?」
すると、ゲオルグの後ろからサフィール王子殿下が、ゲオルグの肩を叩きながら言った。
「エカテリーナが、すごく楽しそうなんだし、問題ないでしょ?」
「サフィール、姉上が絡むと途端に、甘くなるよな」
「じゃあ、みんな~~~少し、台本を読んで各自で練習してね~~」
エカテリーナの声に、私は手元の冊子に目を向けた。どうやらこれは、舞台の台本だったようだ。
表紙にはタイトルが書かれていた。
『白い雪のようなお嬢さんと少人数の小人』
パラリと表紙をめくると、配役が書かれていた。
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白い雪のようなお嬢さん・・・シャルロッテ
お妃・・エカテリーナ
鏡・王子(1人2役)・・サフィール
狩人・・エイド
小人A・・ゲオルグ
小人B・ナレーター(1人2役)・・エマ
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「私は小人の役なのか……」
ゲオルグの呟きに、エマが頭を下げた。
「私もです。ゲオルグ様、よろしくお願いいたします」
「ああ」
エイドが、ボソリと呟いた。
「あ、俺、狩人だ」
サフィール王子殿下は、嬉しそうに言った。
「あ♡ 私は王子だ~~。まぁ、私の高貴な雰囲気では、例え役といえども、王族になってしまうのだね」
私はまさかの主役だった。
演技経験のまるでない、私が主役で、この舞台の行く末は大丈夫だろうか?
かなりの不安を抱えながらも、個人練習に、入ったのだった。
☆==☆==
個人練習が終わり、エカテリーナが声を上げた。
「さぁ~~始めるわよ~~。劇が始まったら、台本は絶対に見ないこと!
わからなくなったら、アドリブで乗り切ってね~~じゃあ、始め~~」
なんと、通し稽古もなく、いきなり舞台が始まってしまったのだった。
「鏡よ、鏡、この世で一番美しいのは誰?」
エカテリーナが、悪役の雰囲気を漂わせながら言った。
「はぁ~~そんな君も素敵だ。もちろん、エカテリーナだよ♡」
「サフィール……気持ちは嬉しいけど、それでは、話が進まないわ」
エカテリーナ肩を落とすと、サフィール王子殿下が困ったように言った。
「ん~~でも、これに関しては、お芝居だとしても、私は自分に嘘は付けないな」
すると、エカテリーナがゲオルグを見ながら言った。
「仕方ないわ。ゲオルグ!! 鏡をやってくれない」
「え?」
ゲオルグは、突然の配役変更に、困っていたが、エカテリーナはすぐに演技を始めた。
「じゃあ、行くわよ。鏡よ、鏡、この世で一番美しいのは誰?」
「それは、もちろん、シャルロッテだ」
即席だったから、ゲオルグは役名ではなく、実際の名前を言ってしまったようだ。
「ゲオルグ……ここは役名で言ってほしいのだけど……もういいわ。
なんということなの、狩人を呼びなさい」
するとエイドが舞台の袖から出て、エカテリーナの元に向かった。
「お妃様、狩人でございます」
「今から森に、白い雪のような娘を連れて行って亡き者にしなさい」
「畏まりました」
エイドは、棒読みで台本通りに演技を進めた。
そして、幕が降りて、エカテリーナたちが袖に戻ると、エイドは、私の手を取った。
「さて、いきますか?」
「ええ」
私は、エイドと共に舞台に立った。
「狩人さん、どこへいくのですか?」
「あなたに、恨みはありませんが、御覚悟を」
エイドのセリフが終わったので、私は台本にある通り、エイドを木の置物の前に連れて行き、の腰のあたりに両手をついて、見上げるように言った。
「どうか、殺さないで。お願いします」
「お嬢……」
すると、エイドが石のように固まって、動かなくなった。
動かなくなったエイドを不思議に思いながら見つめていると、エイドが自分の口に手を当てながら言った。
「くっ!! 可愛い!! 誰にも見せたくねぇ。もう、このまま俺と暮らしましょう。でも、俺の家だと、人目に付く。もういっそのこと、森の中に、2人で家でも建てて暮らしましょう。お嬢1人なら、養えますよ。俺、こう見えて腕利きの狩人なんで」
エイドが役者として急激な成長をみせた。
さっきまで、棒読みだったのに、まるで心からの言葉かのように、感情を込めて演技をしていた。
台本のセリフとは違うようだったが、それでも凄い変化だった。
「お嬢、どうですか?」
エイドに真剣な顔で見つめられて、演技だとわかっているはずなのに、心臓が早くなった。
顔に熱が集まって、何も考えらなくなったその時。
「狩人さん……。独り占めは容認できません。お嬢様は、私が連れて行きます」
エイドの背後から、エマが現れて、私の手を取ると、歩き出した。
「待て、俺も一緒に行くよ」
狩人エイドの言葉に、エマがニヤリと笑った。
「では、稼ぎは頼みますよ」
「任せておけ!! 」
エイドはそのまま、私とエマについてきた。
どうしよう!
台本とは全く違った展開になっているがいいのだろうか?
困惑している間に、エマが小人の家に着いた。
「帰りましたよ~~小人Aさん!!」
ドン。
エマが扉を開けたので、私は、台本に書いてある通り、ゲオルグの近くに移動して、見上げるように言った。
「家を追い出されてしまって、住むところがなくて困っています。少しの間でいいので、どうか私をこの家に置いて下さい! 何でもします」
「何でもする?!」
このセリフは台本にはなかったが、アドリブだろうか?
ゲオルグが、信じられないという顔をした後、赤くなったかと思うと、首を横に大きく振った。
どうしたのだろう?
ゲオルグの様子がおかしい。
私は、心配しながらもセリフを言った。
「……はい」
私が頷くと、私はゲオルグに抱きしめられた。
「もちろんだ!! 少しの間などと言わず、ずっと、ずっと生涯、私と一緒に暮らそう!!
くっ!! これがお芝居というのが、残酷だ」
これが演技だとはわかっているのに、ゲオルグの真剣さに思わず顔が熱くなる。
私は、いつまでもこのままでいるわけには行かないので、ゲオルグの腕から少し離れて、セリフを言った。
「小人さん、私を家に置いてくれて、ありがとう。私頑張りますね」
すると、ゲオルグが優しく微笑んだ。
「いや、もう充分頑張っている。ここではゆっくりしてくれ」
するとエマが、頷きながら言った。
「そうですよ!! 小人Aさんと狩人さんが働きますよ!!」
これまた台本とは違うが、私はセリフを言った。
「ええ? ……どうぞ、末永く、よろしくお願いします」
「いつか俺に言ってほしい」
「いつか私に言ってほしい」
エイドとゲオルグが、何かを同時に呟き、エイドとゲオルグがお互いをじっと見ていると、黒いマントを、羽織ったエカテリーナが家に入ってきた。
「皆様~~ごきげんよう!! さぁ、白い雪のようなお嬢さん、美味しい毒リンゴはいかが?」
・・・・・・。
エカテリーナのセリフには美味しいリンゴと書かれていたはずだ。
毒リンゴとばらしてしまっていいのだろうか??
「それを聞いて食べる者はいないのでないだろうか……」
ゲオルグが、エカテリーナを見ながら呆れたように言った。
「お嬢、危険ですから、近づかないように!」
エイドが私の前に守るように立った。
「はい、ということで、お嬢様~~このリンゴは危険ですからね~~食べないで下さいね。そちらの方も、毒リンゴを売るなんて、お仕事は止めて、みんなで暮らしませんか?」
エマが、エカテリーナに笑いかけると、エカテリーナが微笑んだ。
「そうね、それもいいわね」
そして、エマが、ゆっくりと口を開いた。
「こうして、みんなは幸せに暮らしました」
幕が降りて、ようやく劇が終わった。
「演技と現実が混ざって興味深かったですね、エカテリーナ様」
「そうね、また試してみたいわ」
「はい」
エカテリーナと、エマが何やら楽しそうに話をしている、横で、サフィール王子殿下が、呆然と佇んでいた。
そして、小さく呟いた。
「あれ? 私の出番は?」
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わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
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あごにくまるたろう様
感想ありがとうございました*.+゚嬉(๓´͈ ˘ `͈๓)嬉.*♡
返信が遅れまして大変申し訳ございませんでしたm(_ _)m
率直な感想は心に響きます!!
ありがとうございました•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧⁺
ラズワルド様
感想ありがとうございました•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧⁺
返信が遅れまして大変申し訳ございませんでしたm(_ _)m
いつもラズワルド様の感想を読むのを楽しみにしておりました。
頂いた感想を立ち止まって考えて、もう一度物語の概要を見直して、そして書き始める。
まるで地図のように、的確に導くような感想の数々に心からの感謝を!!
また機会がありました、遊びに来て頂けると有難く思います。
本当に、本当にありがとうございました((っ´;ω;)っ
マグノリア様
感想ありがとうございました•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧⁺
返信が遅れまして大変申し訳ございませんでしたm(_ _)m
こちらこそ、本当にありがとうございました。
いつも、いつも的確に物語を読み込んで下さって、感謝していましたが、今回の感想は、まさに、全てを代弁して下さった感想です!!
最後まで、本当に素晴らしい感想と考察を教えて頂きありがとうございました。
感謝です。心からの感謝を!!
また機会があれば、遊びに来て頂けると、有難く思います(>᎑<`๑)♡