残酷喜劇 短編集

ドルドレオン

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悪魔の病院

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ある病院がありました。そこには、たくさんの悪魔がいました。でも、善良に生きた老人は、病室ですやすや寝ていました。看護師は悪魔でした。でも、どう見ても善良な人間なので、お薬をだして、あるいらだちを抱えて居ました。
 老人はある迫害にあったのです。それは政治的な問題を抱えた、影響力のある思想でした。大衆は最初、彼についていきました。彼はよりよい社会を作りたいだけでした。
 ただ、政治はそれを許しませんでした。政治家はメディアで彼の印象を操作し、結局、老人は迫害されたのです。
 老人はすやすや寝ていました。「看護師さん。わたしはね、戦ったんだ。けど、どうにもできなかった」「そうでしたか。今はゆっくり休みましょう」看護師はにこやかに、頭を下げました。
 悪魔の病院は、ある施設があったのです。そこでは、犯罪を犯した人、そして、老人を迫害し、政治腐敗をもたらした人、倫理的行動にかけたくずどもがいました。
 彼らは最初、病院に入り、自分が病気でもないのにも関わらず、人間ドックにひっかかったのです。「今すぐ入院しましょう」そう(闇)医者は誘導しました。
 彼らは最初、愚痴や不平不満、煙草も酒ものめない状況にいらだちを感じました。
「おい、看護師。酒はでねえのか」
「おい、看護師さんよ。やらせてくれねえか。俺にはたんまり金があるんだ」
「なあ、頼むよ。俺は寿司を食いたいんだ。知ってるか? 時価の寿司はうまいんだ」
 彼らは口々に不平不満言っていました。看護師はにこやかな表情を浮かべて、病室から出ていくとき、冷たい目線を彼らに二十秒ぐらい向けていました。
 彼らは最初文句を言いながら、病院食を食べていました。
 ただ、その病院食にはある薬が混ざっていました。それは精神が錯乱するものでした。

 優しい老人は病室で一人、自分がされてきたことを、諦念の目で自分の過去を思い返しました。
 悪魔の看護師は、にこやかな表情でじっと話を聞きました。老人は話を聞いてくれるだけで、満足しました。「あなたほど優しい人はいない。彼氏はいるのか? ちゃんといい人と結婚しなさい。駄目な男も世の中にはいるんだ。平凡な家庭がどれだけ幸せか分からないだろう」看護師は深くうなずきながら、目は虚ろでした。
 看護師が出ていくとき、にっこりほほえんで、手をふりました。
 老人はあまり若い子に社会の残酷さを教えたくありませんでした。「わたしは運命論者に逃げながら、結局偶然性という怪物に飲み込まれたのだ」老人は涙を流しました。



 さて、一方でくずどもはだんだんとドラッグの作用が出ていました。
 彼らは四六時中、幻覚を見始めました。独り言が多くなりました。そして、病室で独り言が多くなると、他の患者が「俺が神だ! 黙れ! 殺すぞ!」と怒鳴りました。それから殴り合いが始まり、喧嘩が弱い若者も大声で叫びながら、他の患者をなぐると、力の強い大人が、喉仏をつぶし、死んでしまいました。
 そのあと、悪魔の看護師が入ってきて様子を見ました。
「こいつ、俺の悪口を言ったんだよ! 殺して当然だろ!」
 悪魔の看護師は無言で死体を引きずり、別の看護師が無言でシーツを取り替えました。その時患者は、やっと違和感に気づきました。
「何が起こってるんだ? 俺は神のはずなのに………」

 患者たちは精神朦朧状態で、「早く飯をくれ! 早く飯をくれ! 飯を食わないと変になる!」と言い始めました。彼らにとって一時間は二十時間ぐらいの感覚でした。
 そして、粗末な飯を豪華な飯のように、がつがつ食べて、「もっとくれ! もっとくれ!」と言い始めました。
 悪魔の精神科医はじっとモニターを見ながら、煙草を吸っていました。モニターを見ていると、彼らがまた暴れだしたり、殺し合いをするのです。
 そのたびに、悪魔の看護師は無表情でシーツをかえたり、死体を持っていきました。
 
 医者がやっと病室に顔を出しました。
「みなさんの病気は完治しました。それでは故郷に連れていくので、みなさん、列車が来るので、のってください。病院の外で、あなたたちが好きな食べ物も酒もたばこも、金も女も、何もかも自由です」
 患者は精神状態がおかしいので、医者のその言動の不可思議さに気づきませんでした。
 列車に乗ると、豪勢な食べ物があるとおもっていました。
 けれど、彼らに配られたのは、和菓子一個でした。
「なんだよ、和菓子かよ。酒をよこせ! 酒をよこせ!」ある患者は大声でわめきましたが、ある青年は震えていました。
 列車はどんどんスピードが増していきます。なんだか様子がおかしいで
「なんかおかしくねえか? 列車ってよ、こんなに早く走るものだったか?」
 くずどもは、やっと気づき始めました。
 運転手がいるところに駆け寄り、そこを見ると、運転手がいないのです。
「どういうことだ? 運転手がいねえ」
「どこに向かってんだ? これ」
「分からねえ、もう何が何だか分からねえ!」
 彼らは精神朦朧状態で、実はぐるぐると列車が同じレールを周っていたのです。青年は、「和菓子ってことはそういうことだよな……、しけい」
 彼らにとって、時間の感覚はもはやおかしくなっていました。列車の外に出ようとしても、出れません。スピーカーから音が聞えました。
「殺しあってください。残った一人を娑婆に出します」
 患者たちは怒号を散らしながら殺し合いを始めました。悲惨な状況が続く中、生き残った一人の男が、「俺が勝ったぞ、救え!」と言いました。
 列車が止まりました。
「よくぞ生き延びました、おめでとう」
「だろ! 言っただろ! 俺が神だって!」
 それから医者は天国への扉と書かれたドアを指し示し、「この向こうには女も酒も、何もかもあります。どうぞどうぞ」と言いました。
 生き残った一人は、ドアを開き、階段を上りました。彼は大ウソつきで、何度も何度他人を死に目に合わせた人です。
 階段をのぼり、扉を開くと、そこには、首吊り用の縄だけがありました。
 後ろのドアが閉じ、そこからスピーカーが流れました。
「君はある政治的煽動を行った人材をだましにだまして、地獄にたたきつけたよね」
「何の話だ? しらん」
 彼はもう譫妄状態でありながら、なんとかごまかそうと、色々な事実を叩きつけられても、ごまかしました。
「いいかげん、出してくれ! 頼む」
 三十時間はそうやって会話していました。
 そして、その男はやっと白状しました。
「よく言った。終了」
 それから、男の前には首吊り用の縄だけが残りました。
「ふざけんな! 正直に言ったじゃねえか。おい、なんとか答えろ!」
 スピーカーからはもう声は流れませんでした。


 優しい老人は病室で、「わたしがしてきたことは正しかったのだろうか」と看護師に言いました。
 看護師は悪魔でしたが、彼にだけ優しい表情を浮かべました。
「きっと、あなたを貶めた人はどこかで、天罰が下るのですよ。それでいいじゃないですか」
「そうか、君はそう言ってくれるのか。優しい子だ。何度もいうがね、変な男には騙されるなよ」
「はいはい、何度も聞きましたよ、おじいさん」

END
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