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第80話 霜月さんのクローゼットは自動補充
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今日は冒険者活動に必要な投擲用のナイフを手に入れるため、黒岩さんが経営する冒険者向けショップのブラック・ロックがあるショッピングモールに行く予定である。最初は学園の購買でありあわせの物を購入する予定であったが、妹の瑠璃が霜月さんとすみれちゃんを巻き込んだことで休日に買い物に出かけることになってしまった。
今はショッピングモール近くの駅で3人仲良く霜月さんを待っている。霜月さんが集合時間に遅れているわけではなく、すみれちゃんとは家からの最寄り駅で先に合流をしていたのだ。
「すみれちゃん、折角の休日なのに瑠璃が巻き込んでごめんね」
「いえ、私は皆さんと買い物に出かけるのを楽しみにしてましたよ」
「そうだよ!おにぃはすぐに私を悪者にしようとするんだから!」
「ごめんごめん。でも予定を決めた時にすみれちゃんの都合を確認してなかっただろう?」
「あれ、そうだったっけ?……でも楽しみにしてくれてたみたいだから大丈夫!」
少し早めに家を出たため霜月さんの到着まではまだ時間があり雑談で時間をつぶしていたのだが、この面子で集まるといつも僕がすみれちゃんに瑠璃の行動に対して謝っているような気がする。別に瑠璃を悪者にしたいわけではないのだが、やはり自分の中ではすみれちゃんが妹の勢いに巻き込まれているという認識なのだろう。
(なんか、すみれちゃんが断る姿を想像できないんだよな……)
妹の突っ込みを受けて冷静に考えてみるが、控えめな性格をしているすみれちゃんが妹の誘いを断る姿はどうしても思い浮かばなかった。しかし仲の良いふたりなので言葉を交わさずとも分かり合えているのかもしれない。……そうなると僕があまり首を突っ込まないほうが良いのかもしれない。
「あ!美銀さんだ!」
「お待たせ……」
「わあ……美銀さんの私服姿は始めてみたけど、すごい美人さんだね!」
「ありがとう。瑠璃ちゃんとすみれちゃんの私服姿もいつもより可愛い……」
「あ、ありがとうございます」
妹とその親友であるすみれちゃんの仲の良さを考察していると霜月さんが合流してくる。彼女は白を基調としたワンピースと頭にはつばが広い帽子(後で妹に効いたのだがキャペリンハットというらしい)を着用しており、彼女の見た目も相まってどこかの令嬢と勘違いしてしまいそうである。
「美銀さん、その洋服は何処で買ったの?」
「わからないけど……いつの間にか家にあった」
「それじゃあ家の人が買ったのかな?そうだとしたらすごい目利きだ……」
ファッションに詳しい妹は霜月さんが来ている服に興味があるようで、どこで手に入れたのかを質問をしていく。しかし彼女はいつかのダンジョンで聞いたことのあるような回答をしてくる。見たところ話を誤魔化したいようなわけではなく、本当に心当たりがないようである。……その話を聞いてどのように着用する服が増えていくか僕も興味を持ってしまった。
皆がそろったことでこの場で話を続けるわけにもいかずショッピングモールに向かって歩き始める。自分の目の前では霜月さんを両側から妹とすみれちゃんが挟み、女性同士の会話が盛り上がっているようだが、僕は後ろから眺めることしかできなかった。
「結局こうなるんだな……」
「岩ちゃんは開店時間に関してはルーズだから仕方ないね!」
今日は前回の反省を生かしブラック・ロックの開店時間から大分時間を置いてショッピングモールに来たのだが、残念ながら目的のお店は開店していなかった。妹が店長の黒岩さんに連絡を取ったところまだ少し時間がかかると言われたので、今回もゲーセンで時間を潰すことにした。
それにしても毎度このように開店時間に間に合わないお店を見ると経営が大丈夫なのか気になってしまう。前回も店長の黒岩さんだけしかいる様子がなかったので、店員を雇えばいいのではないかと思ってしまうのだが、何かできない理由があるのかもしれない。
「よし、みんなで一緒にプリクラを撮ろう!」
「いや、僕はいいから3人で撮ってきていいよ」
前回と違いあまりゲームに興味がない霜月さんとすみれちゃんがいるため時間を潰すにもやることがなく、妹がお店の隅にあるプリクラを撮ろうと提案をしてくる。今の状況に対してかなり良い提案ではあるが、女性3人の中に男がひとりだけ混ざるのは恥ずかしかったため僕は断ることにした。
「え~。じゃあ女子だけでとってくるからいいもん!行こ、ふたりとも!」
「えっと……お兄さん、それじゃあ行ってきますね」
「……迷子にならないでね?」
「ここら辺にいるから大丈夫だよ……」
僕が断ったことに不満な様子を見せながらも妹はふたりを連れてプリクラ機へと向かっていく。霜月さんは僕をひとりにすることで迷子にならないか心配しているようであったが、あれは彼女なりのジョークだろうと信じたい。
ひとりになり手持ち無沙汰になったのでとりあえず近くにあったUFOキャッチャーに目を向ける。僕が目を向けた筐体はぬいぐるみのストラップが景品となっているようであった。
少し考えた後に1クレジット分の金額を投入して遊んでみることにする。どちらかというと景品が欲しいというよりは少しでも時間が潰そうと考えており、言うなれば衝動的な行動であったのだがそれが思わぬ結果を招いてしまう。
山盛りになっているぬいぐるみの真ん中にアームを下ろしたのだが、ぬいぐるみ同士がいい具合に絡み合っていたことで1プレイで5つのぬいぐるみをゲットしてしまった。……やはり物欲センサーというのはこの世に存在しているに違いない。
(なんのキャラかもわからないけど……皆に配るか)
ぬいぐるみを5つも手に入れても必要はないため、プリクラを撮り終わったら皆に配ることにする。問題はこのぬいぐるみを取ったのはたまたまであり、僕も知らないキャラクターだということである。
筐体をよく見ると、どうやらこのぬいぐるみは生き物をデフォルメしただけのようで何かのアニメなどのキャラクターではないらしい。全8種類のぬいぐるみがあるようだが、自分の手元にあるのは、猫、犬、狐、狼、竜である。
(竜だけ異色を放ちすぎじゃないか?……動物の枠組みに入れちゃダメだろ)
実在する動物の中に紛れ込んでいる空想上の生物である竜に違和感を感じるが、実物をよく見るとなかなか可愛い見た目をしている。少し考えた後、竜のぬいぐるみだけをポケットにしまいこみ、女子3人がプリクラを撮り終わるのをそのまま待つことにするのであった。
今はショッピングモール近くの駅で3人仲良く霜月さんを待っている。霜月さんが集合時間に遅れているわけではなく、すみれちゃんとは家からの最寄り駅で先に合流をしていたのだ。
「すみれちゃん、折角の休日なのに瑠璃が巻き込んでごめんね」
「いえ、私は皆さんと買い物に出かけるのを楽しみにしてましたよ」
「そうだよ!おにぃはすぐに私を悪者にしようとするんだから!」
「ごめんごめん。でも予定を決めた時にすみれちゃんの都合を確認してなかっただろう?」
「あれ、そうだったっけ?……でも楽しみにしてくれてたみたいだから大丈夫!」
少し早めに家を出たため霜月さんの到着まではまだ時間があり雑談で時間をつぶしていたのだが、この面子で集まるといつも僕がすみれちゃんに瑠璃の行動に対して謝っているような気がする。別に瑠璃を悪者にしたいわけではないのだが、やはり自分の中ではすみれちゃんが妹の勢いに巻き込まれているという認識なのだろう。
(なんか、すみれちゃんが断る姿を想像できないんだよな……)
妹の突っ込みを受けて冷静に考えてみるが、控えめな性格をしているすみれちゃんが妹の誘いを断る姿はどうしても思い浮かばなかった。しかし仲の良いふたりなので言葉を交わさずとも分かり合えているのかもしれない。……そうなると僕があまり首を突っ込まないほうが良いのかもしれない。
「あ!美銀さんだ!」
「お待たせ……」
「わあ……美銀さんの私服姿は始めてみたけど、すごい美人さんだね!」
「ありがとう。瑠璃ちゃんとすみれちゃんの私服姿もいつもより可愛い……」
「あ、ありがとうございます」
妹とその親友であるすみれちゃんの仲の良さを考察していると霜月さんが合流してくる。彼女は白を基調としたワンピースと頭にはつばが広い帽子(後で妹に効いたのだがキャペリンハットというらしい)を着用しており、彼女の見た目も相まってどこかの令嬢と勘違いしてしまいそうである。
「美銀さん、その洋服は何処で買ったの?」
「わからないけど……いつの間にか家にあった」
「それじゃあ家の人が買ったのかな?そうだとしたらすごい目利きだ……」
ファッションに詳しい妹は霜月さんが来ている服に興味があるようで、どこで手に入れたのかを質問をしていく。しかし彼女はいつかのダンジョンで聞いたことのあるような回答をしてくる。見たところ話を誤魔化したいようなわけではなく、本当に心当たりがないようである。……その話を聞いてどのように着用する服が増えていくか僕も興味を持ってしまった。
皆がそろったことでこの場で話を続けるわけにもいかずショッピングモールに向かって歩き始める。自分の目の前では霜月さんを両側から妹とすみれちゃんが挟み、女性同士の会話が盛り上がっているようだが、僕は後ろから眺めることしかできなかった。
「結局こうなるんだな……」
「岩ちゃんは開店時間に関してはルーズだから仕方ないね!」
今日は前回の反省を生かしブラック・ロックの開店時間から大分時間を置いてショッピングモールに来たのだが、残念ながら目的のお店は開店していなかった。妹が店長の黒岩さんに連絡を取ったところまだ少し時間がかかると言われたので、今回もゲーセンで時間を潰すことにした。
それにしても毎度このように開店時間に間に合わないお店を見ると経営が大丈夫なのか気になってしまう。前回も店長の黒岩さんだけしかいる様子がなかったので、店員を雇えばいいのではないかと思ってしまうのだが、何かできない理由があるのかもしれない。
「よし、みんなで一緒にプリクラを撮ろう!」
「いや、僕はいいから3人で撮ってきていいよ」
前回と違いあまりゲームに興味がない霜月さんとすみれちゃんがいるため時間を潰すにもやることがなく、妹がお店の隅にあるプリクラを撮ろうと提案をしてくる。今の状況に対してかなり良い提案ではあるが、女性3人の中に男がひとりだけ混ざるのは恥ずかしかったため僕は断ることにした。
「え~。じゃあ女子だけでとってくるからいいもん!行こ、ふたりとも!」
「えっと……お兄さん、それじゃあ行ってきますね」
「……迷子にならないでね?」
「ここら辺にいるから大丈夫だよ……」
僕が断ったことに不満な様子を見せながらも妹はふたりを連れてプリクラ機へと向かっていく。霜月さんは僕をひとりにすることで迷子にならないか心配しているようであったが、あれは彼女なりのジョークだろうと信じたい。
ひとりになり手持ち無沙汰になったのでとりあえず近くにあったUFOキャッチャーに目を向ける。僕が目を向けた筐体はぬいぐるみのストラップが景品となっているようであった。
少し考えた後に1クレジット分の金額を投入して遊んでみることにする。どちらかというと景品が欲しいというよりは少しでも時間が潰そうと考えており、言うなれば衝動的な行動であったのだがそれが思わぬ結果を招いてしまう。
山盛りになっているぬいぐるみの真ん中にアームを下ろしたのだが、ぬいぐるみ同士がいい具合に絡み合っていたことで1プレイで5つのぬいぐるみをゲットしてしまった。……やはり物欲センサーというのはこの世に存在しているに違いない。
(なんのキャラかもわからないけど……皆に配るか)
ぬいぐるみを5つも手に入れても必要はないため、プリクラを撮り終わったら皆に配ることにする。問題はこのぬいぐるみを取ったのはたまたまであり、僕も知らないキャラクターだということである。
筐体をよく見ると、どうやらこのぬいぐるみは生き物をデフォルメしただけのようで何かのアニメなどのキャラクターではないらしい。全8種類のぬいぐるみがあるようだが、自分の手元にあるのは、猫、犬、狐、狼、竜である。
(竜だけ異色を放ちすぎじゃないか?……動物の枠組みに入れちゃダメだろ)
実在する動物の中に紛れ込んでいる空想上の生物である竜に違和感を感じるが、実物をよく見るとなかなか可愛い見た目をしている。少し考えた後、竜のぬいぐるみだけをポケットにしまいこみ、女子3人がプリクラを撮り終わるのをそのまま待つことにするのであった。
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