僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑

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第29話 この年の派は

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彼女が何と答えるのか興味があった。

僕的には彼らがαとΩであって欲しくなかった。

αとΩは運命の番でなくとも、
番になれば何か特別な関係が生まれると信じていたかった。

それくらい僕は運命の番ではなくとも、
αとΩの番になる儀式を神聖化していた。

αとΩがたがいに引かれたのであれば、
運命の番ではなくとも、離れられなくなると信じて居たかった。

もちろんこの教師と生徒は番では無かったのだけど、
αとΩでなかったから、
簡単に別れることが出来たのだと思いたかった。

きっと、運命の番がみつから無い、
僕自身への言い訳だったのだろう。

でも彼女の答えは、

「ごめんね、そこは私も知らないのよ」

だった。

彼女の答えを聞いた途端、
緊張していた分、何だか気が抜けた。

また、安堵の様な吐息が僕の口から洩れた。

その溜息を要君は聞いたようだ。

「先輩、安心した?」

また要君が変な質問をしてきたのでえ?っと思った。

「え? 安心って……」

「だって先輩は凄く恋愛に対してというか、
αとΩの恋愛に対して、神聖な気持ちを持ってるじゃないですか!
これがαとΩだったらちょっとガッカリするかなって……」

要君がそう言うと、大久保さんが、

「でもさ、αとΩでも、運命じゃ無かったら、
よっぽどのことが無い限りやっぱり難しいんじゃないの?」

と言った。

それは最もかもしれない。
そうすると、要君も証言をする様に、

「確かに僕が中学生の時は第二次性って二の次でしたね~
僕はΩだって分かってから結構人と距離は置いてたんですけど、
今では羨ましいくらい皆青春を謳歌してますよね?
今の子供達って、僕等の時ほど第二次性を意識して無いんじゃないかな?
特にΩの改正法があってから……
だから、そんな意味では改正法は番の法則のロマンを消してしまったかなって
思いはあるんですけど、
運命の番もきっと僕達の時よりも伝説化していますよ」

と言った。

「まあ、この年頃だと、
第二次性なんて関係なく好きになるからさ~

好きになった人がたまたまαでした~みたいなノリ?

私達の時みたいに、
αだから、Ωだからって寄って行くのは、
あまり見なくなったわね~

確かに赤城君の言うように、改正法が出てからは特に、
αだから、Ωだから、β同志だからって誰も意識してないよね?

でも逆にαとΩだからと言ってこの年で
番になるわけでもないしね~

よっぽど運命の番って分かってない限りはね~

ちょっと恋愛に対しても微妙な年ごろだけど、
皆真剣に恋愛をしている事は確かね。

大人って頭ごなしにまだXX歳なのに早いでしょ!って言うけど、
この子達はこの子達なりに何事に対しても必死なのよ」

「先輩って熱血教師だったんですね!」

と要君は笑っていた。

“運命の番か……
陽一君は智君の事どう思ってるんだろう……

本当に只の親友と思ってるんだろうか?
それとも惹かれて行ってる?

陽一君にも、きっとどこかに運命の番が居る……
居たとしても出会わなけばいいのに!”

そう思っているとまた要君が、

「先輩、結構世の子供たちは運命の番の事を忘れ去って行ってる傾向にあるけど、
陽ちゃんはまだ運命の番を信じてるんですよ。

そして自分には運命の番が居るって、
絶対の自信を持ってるんですよ。
絶対僕のαを手に入れるって!

だから先輩も陽ちゃんに負けない様に頑張ってくださいね!

諦めちゃだめですよ!」

「本当に君たち親子は……
運命の番に対してのパワーが凄いよね……

まあ、親子2代も続けばそうなるか……」

僕がそう言うと要君が、

「まあ、先輩が頑張ってくれないと、
陽ちゃんが泣いちゃうからね」

とまたまた訳の分からないことを言い出した。

でも僕も、出来る事なら運命の番を見つけたい。
陽一君の事は凄く大切で、凄く愛おしくて、凄く大好きだけど、
その思いは絶対あきらめたくない。

いっそ陽一君が僕の番だったら良いのに!

でももう33歳……

諦めの気持ちも少なからず出てきている事は否めない。

そう思ってキャッキャと言いながら館内を回っている
中学生たちに目を向け、大きくため息を付いた。

「彼らは今が一番輝いてるわよね~
未来に向けて色んな志や抱負を持ってるし、
恋愛も例外では無いでしょうからね~

もう既にカップルになってる子達もいっぱいいるのよ。

まあ、青春は短いから今を楽しめよね」

そう言って大久保さんが微笑んだ。

「ねえ、この年で出会って、
結婚した子達っているんですか?」

そう要君が尋ねた。

「そうね、そう言う子達もゼロでは無いわよね」

「じゃあ……
うんと年の離れた人と結婚した子とかは……?」

僕が尋ねた。

「なあに、矢野君、
誰か年若い好きな人でも居るの?」

大久保さんがそう言うと、
要君がニヤニヤとしたように僕の方を見ていた。

「あ…… いや、そういう訳では無いんだけど……
ちょっと興味があってね……」

そう言うと、要君は更に目をキランとさせた。

「そうね~
年の差婚した子もゼロでは無いわね」

総大久保さんが言うと、

「ほらね、先輩!
やっぱりここは少し踏ん張って頑張ろうよ?」

と要君がやっぱり意味深の様にして言った。

「あのさ、要君」

「ん? 何ですか? 先輩」

「もしかして…… 気付いて……」

「え? 何ですか?
僕は何も知りませんよ?
先輩、何か僕に隠し事ですか?
何時でも相談に乗りますよ?」

と意味深なようにして笑って言ったので、
冗談なのか本気なのか分からなかった。

でも要君のコメントは凄く気になった。

もしかして僕が陽一君の事気になってるの知ってる?

それとも、もしかして陽一君が僕の事……
そうだったら天にも昇る思いだけど、
でもそれも何度も思ったけど、
やっぱりあり得ないだろう……

やっぱり僕って分かり易い?
そうだとしても要君の態度は気にして無いような?

そう言えば、あ~ちゃんも、
裕也もなんだか僕が陽一君と絡むとちょっと態度が変わるよな?

なんだよ~
家族皆にばれてるのか?

だから裕也も僕に対してあんな塩対応なのか~?
イヤだ、それは恥ずかしすぎる。

多分まだ100%の確信では無いから僕を牽制できないんだ。
家族ぐるみで僕の事を探っているのか?

これからはもっと気を引き締めて佐々木家とは付き合っていかないと!

それにしても僕のこの恋心は一体どこへ行くんだろう……

気が付けば、

「は~」

と大きなため息を付いていた。

それを聞いた大久保さんが、

「何、何?
矢野君の恋バナ?

矢野君もまだ結婚して無いの?」

と興奮した様に聞いていた。

「ハハハ……
お恥ずかしながら……僕もまだでして……」

「よかった! って変よね、
でも、私だけじゃ無くてよかったわ。

じゃね、良い事教えてあげる。

この子達の間を渡り歩いて、
会話に耳を傾けて見てごらん。

面白い話が聞けるわよ~

この子達の話の内容ってパワーの源になるわよ!
折角だから若さを分けてもらわないとね!」

そこまで言われるともう苦笑いしかない。

僕はまたキャッキャと楽しそうに館内を動き回る
中学生の団体に目を向けて、もう一度大きく

「は~」

とため息を付いた。







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