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第32話 封印したチョーカー
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「裸にチョーカーって何だかいやらしいな。
それにそのプチトマトの真紅の赤色とお前の唇の紅い色がマッチして
更にいやらしさを引き出しているよ」
プチトマトを口に誇んだ途端矢野君がそう言った。
「え~~~! 矢野君が裸でいろって言ったんでしょ!
僕、バスローブ羽織っても全然良いんだよ?」
「ハハハ~ でもサファイヤの青がお前の白い肌に良く似合うな」
突然に矢野君の長い指が伸びてきて僕の頬を撫でると、
首筋へと伝ってチョーカーに付いたサファイヤで手を止めた。
「そう? 似合ってる?
本物の宝石なんて身に着けたことないから
身に余る思いだよ」
そう言って矢野君の指にキスをした。
すると矢野君は僕に微笑んで眩しそうな顔をすると、
「ほら、朝陽に反射してキラキラしてる……
お前の白い肌と対照的でお前の首にしっくりと来てるな。
まるで前からそこのあったようだよ。
でもお前の肌って白いんだな。
今改めて気付いたよ……」
そう言って矢野君は僕の肩を引き寄せてキスをした。
矢野君にもらったチョーカーは、
彼との思い出を否応なしに甦らせる。
「あの、僕と一緒に夏季臨時でバイトに来ていた
矢野光君の住所は分かりませんか?!
突然やめてしまって連絡が取れないんです!」
あの日僕は人事課に飛び込んだ。
「ちょっと待ってくださいね。
矢野光ですよね?
間違いありませんか?
こちらのシステムに矢野光というバイト生は見当たらないんですが……」
「そんな……
本当に登録されてないんですか?
お盆休みまではちゃんといたんですよ?!
ちゃんと僕のルームメイトでランドリー係として
一緒に働いていたんですよ!」
僕が強く言えば言うほど、
人事の人は困惑したようにして僕を見た。
「大きな声を出してどうしたんだい?」
入って来たのは支配人の霧生さんだった。
「あっ、霧生支配人。
こちらのバイト生が矢野光さんという方を探していらっしゃてて……
システムの中には見当たらなくて……
返す言葉もなくて困っているのですが……」
そう人事の人が言うと、霧生さんは
“またお前か”
と言うような目をして僕を見た。
「前にも言ったが、
個人情報は教えることが出来ないと何度も言ったはずだが……
もう忘れたのかね?
それにバイト生は職場を離れると
システムからは抹消されるんだよ。
矢野君の履歴も詳細も、
もうこちらでは分かりかねるんだ。
分かったら諦めてくれないかね?」
そう言って彼は僕をドアまで案内した。
“矢野君の事を知っているくせに!
親戚なんでしょ!”
のどまで出かかった言葉を飲んで僕はお辞儀をすると、
その場を去った。
それが沖縄でのやり取りだった。
福岡に帰っても、
東京に引っ越して本社を訪ねても、
反応は同じだった。
経営者の個人情報は社会から綺麗に隠されていた。
どんなに手を打っても見つからない矢野君に
僕はもう彼を見つける事には半ば諦めの気持ちが生まれ始めていた。
でもそれは彼への想いを諦めると言うことではない。
鏡の前に立つと僕はそっとチョーカーに手をやった。
“一花大叔母さん、僕はどうしたら良い?
何故矢野君は帰ってこないの?
家族に反対されてるの?
それとも……もう僕の事はどうでも良いの?
もしかして僕は遊ばれただけ?
違うよね?
貴方の大切にしていたチョーカーを僕にくれたんだから……
でもあの夏の思い出が辛すぎて……
僕はそんなに強い人間じゃ無いから
このチョーカーをはめていると凄く苦しいんだ……
だからごめんね……
彼の事を諦めると言うわけでは無いけど
暫くこのチョーカーは封印するね。
外す事を許してね。
そしてどうか彼の事が見つかります様に……”
そう呟いて僕はチョーカーを外した。
僕は矢野君との夏を思い出して鏡の前に泣き倒れた。
それは矢野君が居なくなって初めて泣いた日の事だった。
少しの間泣くと、少し気分が軽なった。
僕はタンスの上に置いておいた箱を
テーブルの上に置いて蓋を開けた。
蓋を開けると潮の香りさえしてくる様な感覚に陥る。
その箱の中には矢野君との沢山の思い出が入っていた。
小さな小瓶に詰めた、
矢野君と一緒に過ごしたヴィラの海岸で拾った砂。
色んな形をした貝殻。
矢野君の写真と恥ずかしくて現像できない
沢山の写真が入ったデジカメとそのメモリーカード。
そして矢野君のお守りにも入れた
秘境の地で拾い集めた綺麗な石の数々。
僕はその石を指で摘んで拾い上げると、
日にかざした。
“僕があげたお守りは、ちゃんと矢野君を守ってくれるかな?”
チョーカーはあの日、
矢野君にあげた秘境の地で拾った石たちと共に
僕の宝箱にしまっておくことにした。
そっとチョーカーを箱に入れると、
そのふたを閉めた。
何気なく触った項にはいまだくっきりと
矢野君の噛み痕が付いている。
もう一度鏡をみて深呼吸をすると、
僕は新しいチョーカーを首にはめた。
それにそのプチトマトの真紅の赤色とお前の唇の紅い色がマッチして
更にいやらしさを引き出しているよ」
プチトマトを口に誇んだ途端矢野君がそう言った。
「え~~~! 矢野君が裸でいろって言ったんでしょ!
僕、バスローブ羽織っても全然良いんだよ?」
「ハハハ~ でもサファイヤの青がお前の白い肌に良く似合うな」
突然に矢野君の長い指が伸びてきて僕の頬を撫でると、
首筋へと伝ってチョーカーに付いたサファイヤで手を止めた。
「そう? 似合ってる?
本物の宝石なんて身に着けたことないから
身に余る思いだよ」
そう言って矢野君の指にキスをした。
すると矢野君は僕に微笑んで眩しそうな顔をすると、
「ほら、朝陽に反射してキラキラしてる……
お前の白い肌と対照的でお前の首にしっくりと来てるな。
まるで前からそこのあったようだよ。
でもお前の肌って白いんだな。
今改めて気付いたよ……」
そう言って矢野君は僕の肩を引き寄せてキスをした。
矢野君にもらったチョーカーは、
彼との思い出を否応なしに甦らせる。
「あの、僕と一緒に夏季臨時でバイトに来ていた
矢野光君の住所は分かりませんか?!
突然やめてしまって連絡が取れないんです!」
あの日僕は人事課に飛び込んだ。
「ちょっと待ってくださいね。
矢野光ですよね?
間違いありませんか?
こちらのシステムに矢野光というバイト生は見当たらないんですが……」
「そんな……
本当に登録されてないんですか?
お盆休みまではちゃんといたんですよ?!
ちゃんと僕のルームメイトでランドリー係として
一緒に働いていたんですよ!」
僕が強く言えば言うほど、
人事の人は困惑したようにして僕を見た。
「大きな声を出してどうしたんだい?」
入って来たのは支配人の霧生さんだった。
「あっ、霧生支配人。
こちらのバイト生が矢野光さんという方を探していらっしゃてて……
システムの中には見当たらなくて……
返す言葉もなくて困っているのですが……」
そう人事の人が言うと、霧生さんは
“またお前か”
と言うような目をして僕を見た。
「前にも言ったが、
個人情報は教えることが出来ないと何度も言ったはずだが……
もう忘れたのかね?
それにバイト生は職場を離れると
システムからは抹消されるんだよ。
矢野君の履歴も詳細も、
もうこちらでは分かりかねるんだ。
分かったら諦めてくれないかね?」
そう言って彼は僕をドアまで案内した。
“矢野君の事を知っているくせに!
親戚なんでしょ!”
のどまで出かかった言葉を飲んで僕はお辞儀をすると、
その場を去った。
それが沖縄でのやり取りだった。
福岡に帰っても、
東京に引っ越して本社を訪ねても、
反応は同じだった。
経営者の個人情報は社会から綺麗に隠されていた。
どんなに手を打っても見つからない矢野君に
僕はもう彼を見つける事には半ば諦めの気持ちが生まれ始めていた。
でもそれは彼への想いを諦めると言うことではない。
鏡の前に立つと僕はそっとチョーカーに手をやった。
“一花大叔母さん、僕はどうしたら良い?
何故矢野君は帰ってこないの?
家族に反対されてるの?
それとも……もう僕の事はどうでも良いの?
もしかして僕は遊ばれただけ?
違うよね?
貴方の大切にしていたチョーカーを僕にくれたんだから……
でもあの夏の思い出が辛すぎて……
僕はそんなに強い人間じゃ無いから
このチョーカーをはめていると凄く苦しいんだ……
だからごめんね……
彼の事を諦めると言うわけでは無いけど
暫くこのチョーカーは封印するね。
外す事を許してね。
そしてどうか彼の事が見つかります様に……”
そう呟いて僕はチョーカーを外した。
僕は矢野君との夏を思い出して鏡の前に泣き倒れた。
それは矢野君が居なくなって初めて泣いた日の事だった。
少しの間泣くと、少し気分が軽なった。
僕はタンスの上に置いておいた箱を
テーブルの上に置いて蓋を開けた。
蓋を開けると潮の香りさえしてくる様な感覚に陥る。
その箱の中には矢野君との沢山の思い出が入っていた。
小さな小瓶に詰めた、
矢野君と一緒に過ごしたヴィラの海岸で拾った砂。
色んな形をした貝殻。
矢野君の写真と恥ずかしくて現像できない
沢山の写真が入ったデジカメとそのメモリーカード。
そして矢野君のお守りにも入れた
秘境の地で拾い集めた綺麗な石の数々。
僕はその石を指で摘んで拾い上げると、
日にかざした。
“僕があげたお守りは、ちゃんと矢野君を守ってくれるかな?”
チョーカーはあの日、
矢野君にあげた秘境の地で拾った石たちと共に
僕の宝箱にしまっておくことにした。
そっとチョーカーを箱に入れると、
そのふたを閉めた。
何気なく触った項にはいまだくっきりと
矢野君の噛み痕が付いている。
もう一度鏡をみて深呼吸をすると、
僕は新しいチョーカーを首にはめた。
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