龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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聖魔法

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トスンと忍足なのかと言うよに、
僕は壁の向こう側に着地した。

”凄い…

自分の体じゃ無いみたいだ…“

僕は後ろを振り向いて塀を見上げた。

そこに聳え立つ壁は、
小さい時からずっと何度も飛び越えられたらと
思っていた場所だった。

『ジェイド、そこに居るの?!

着地する音、
聞こえなかったんだけど?!』

向こう側からアーウィンの声がした。

『アーウィン、身体強化って凄いよ!

まるでベッドから飛び降りるみたいに、
この壁を越えられたよ!』

僕も壁越しにアーウィンに話しかけた。

「デューデュー! 何処?

未だ居るの?!」

辺りに見当たらないデューデューを探すと、
先の草むらからカサカサとデューデューが出て来た。

「ほら、私が言った通りだっただろ?

だからお前たちはいつでも私に会いに来れる。

ただし、魔物たちには気を付けろよ。

まあ、ジェイドの攻撃聖魔法で大丈夫とは思うが、
何しろ未だ慣れてないからな。

少し人がいない所で練習をした方がいいぞ」

そう言われ、

「ねえ、今ちょっと使ってみたいけど、
デューデューが少し見てくれる?」

そう言うと、

『ちょっとジェイド、
僕抜きで話を進めないでよ~』

そう言ってアーウィンが壁をペチペチと叩いていた。

「ウ~ン、如何やってアーウィンをこちら側に連れてこよう?!

デューデューが又向こう側へ行くのはリスクが高いし…」

そう言って考え込むと、

「ジェイドが背負って塀を飛べば良いだろ?」

デューデューにそう言われ、

「へ?」

と塀を見上げた。

「ほら、ほら、行った、行った。

早くしないと見つかってしまうぞ」

デューデューに急かされ、

「え~い、ここまで来れば、
もう何でもありだな」

と既に状況を受け入れてしまっている
自分に驚いた。

僕はお腹のところに少し力を入れると、
トンっと又壁を越えてお城側へ行った。

「デューデューは?

もう帰っちゃったの?」

キョロキョロとして尋ねるアーウィンに、

「ううん、向こう側で待ってる。

これから僕の攻撃魔法を試してみるんだ!

アーウィンも見てて!」

そう言って背中をアーウィンに向けて
背負う体になると、

「?」

とした様な顔をアーウィンはした。

「僕がアーウィンをおぶって塀を越えるから
背中に乗って」

そう言うと、
アーウィンはあんぐりとしていた。

「デューデューが出来るって言ったから
多分大丈夫だよ」

そう言うと、アーウィンは肩を窄めて

”ハイハイ、そうでしたね。

どうせ僕は小さいですよ。

ジェイドより5歳も年上だけど、

年下みたいですよ“

と言う様な顔をした。

「えーい!

僕の重みを感じてみろー!」

そう掛け声をかけると、
アーウィンは僕の背に飛び乗った。

「どう? 僕、重い?

ちゃんと抱えて飛べそう?」

アーウィンが背に乗っても、
さほど違いは分からなかった。

「凄い! アーウィンを抱えてるって感じが
全然しないや!

これ、絶対問題なく飛べるよ!」

“身体強化凄い!”

そう呟くと、

「早く行って」

そう言ってアーウィンは僕の頭をコツンと叩いた。

僕は又お腹に力を入れると、
足に力を入れて土を蹴った。

前と同じ様にストンと着地すると、
アーウィンがヘロヘロと僕にしがみついて来た。

「怖かったー、怖かったー!

落ちるかと思った!」

そう言って目を回すアーウィンを地に下ろすと、

「準備はいいか?」

そう言ってデューデューが又草むらから顔を出した。

「ちょっと待って、
僕の心臓まだバクバク言ってる。

ジェイドすごく早いんだもん。

今になって足が震えてるよ~」

そう言ってアーウィンがヨロヨロと立ち上がった。

「所で…聖魔法の攻撃って光魔法だよね?

確かこれって、アンデッド系に強いんだよね?

普通の魔獣にはアンデッド系ほどは無いけど、
それでも効くんだよね?!」

そう尋ねると、

「そうだよ、良く覚えてたね。

さすが聖魔法の行使者だね」

そう言ってアーウィンが僕を突いた。

「それじゃ…

試してみるのはここでも良いかな?

何にせよ、魔法を使うのは初めての事だし、
不発に終わっちゃうかもだから…」

僕がそう言うとアーウィンが首を傾げて、

「でもさ、回復魔法の件があるし、
 注意はしていた方が…」

そう言い終えるや否や僕はもう魔法の体制に入っていた。

「ちょっと、ちょっとジェイド、
一体何処に向かって魔法を撃とうと思ってるの?!

未だ的も何も決めてないんだけど?!」

慌ててそう言うアーウィンに

「あ、そうだったね、

じゃあ、あの木は?」

森へ続く小道に並んで立っている最初の一本を指差した。

デューデューは少し考えた様にしていたけど、
アーウィンは

「練習だから良いんじゃ無い?」

とアーウィン的には問題は無さそうだった。

「あ、でもさ、光魔法を木に撃ったら
あの木ってどんな影響を受けるの?

まさか木っ端微塵になる事は無いと思うけど、
穴が空いたりするのかな?

それとも虫に食われた様に
少しの皮が剥がれるだけかな?」

僕は出来るだけなら
木に傷はつけたく無かった。

でも試してみないと如何なるかわからない。

「取り敢えずやってみようよ」

アーウィンにそう言われ、


「分かった。

デューデューも準備は良い?

ちゃんとみててね。

悪いとこがあったら指摘してね」

そう言うと、僕は神経を集中させ
魔力が全身を巡る様に想像した。

これは何度も練習したけど、
結局自分でやる事はできなかった。

でもアーウィンから魔力を流してもらい、
何度もそれを自分の中で巡回させていたので
コツは掴んでいた。

でも自分自身の魔力を熱するのは初めてだ。

僕はいつもより丁寧に、慎重に気を集中させた。

お腹の中でポワッと何かかが膨らみ始めたかと思うと、
それが全身をめくった。

僕は手を遠くにある木にかざすと、
力一杯魔力を手のひらに集中させ
一気にその木に目掛けて撃った。

金色の光が木に向かって太陽の光の様に放たれると、
眩い光でその木を覆ったかと思うと、
木の周りの草が急に伸び始め、
季節外れの花が咲き始め、
木の枝が伸びたかと思うと、
今度は新しい葉っぱが枝の間から伸び始めた。

「………」

アーウィンもデューデューも呆然としていた。

僕も何が起こったのか分からなかった。

「これって攻撃魔法のはずだったんじゃ…」

回復魔法ともちょっと違うその魔法に
僕も訳が分からなくなった。

「あー私の仮説だが…

聖龍は大地の守り神だから
恐らく彼女の聖なる魔法は自然界には
逆に祝福になるのかもしれない……

あくまでも仮説だがな」

デューデューがそう言うと、

「じゃあ、実際の魔物で無いと効かないと言う事ですか?」

アーウィンがそう尋ねた。

「多分……

だがちゃんと発動できる事は分かったから
それだけでも良いでは無いのか?」

デューデューの言うことも最もだ。

その時、数人の子供達が、
森の中から驚いた様にして駆け出して来た。

「ウワー、何だこれー」

子供達はワーワーと転げたりしながら僕たちの所に
駆け寄って来た。

「如何したのですか?!

森で魔物が出たのですか?!」

急に僕の身が引き締まった。

”ついに聖魔法を試す時が?!”

少しワクワクした。

その中で一番年上っぽい子が、

「魔物か分からない。

初めて見た。

急に草が生きてるように
僕たちに向かって伸びて来たんだ。

それに薬草なんかも3倍くらいの大きさになって…

こんな事は今まで見た事がない!」

ハアハアと言いながらそう言うので
僕はアーウィンと顔を見合わせて、

「ヤッバー」

と言い合った。

その時後ろの方で、

「何故殿下がここに?」

と言う聞き慣れた声がした。

一気に僕の血に毛が引いた。

そっと後ろを振り向くと、
やっぱりダリルがそこに立っていた。

アーウィンの方を横目で見ると、
彼は硬直した様にして瞬きもせずに
そこに立ち尽くしていた。

「あの~ ダリルは何故ここに~?」

子供達の方を見ながらそう尋ねると、

「私はこちらの方で不審な音がすると聞いて
偵察にやって来たのですが…」

そう言ってダリルも子供達の方を見た。

「騎士様、森が辺なのです!

草が急に伸び始めたのです!

草だけではありません、
木の枝も、その葉も急に生きているように伸び始めたのです!」

興奮して話す子供にダリルは

「この先の森は今日は封鎖します。

あなた達は今日はお家へ帰りなさい。

騎士を護衛に1人付けましょう。

ギルドの通達があるまではこの森には入らない様に」

そう言うと、一緒に来ていた騎士を1人、
子供の護衛として町まで送らせる事にした。

そして残った騎士を森の偵察に行かせると、
僕の方を向いた。

「さて、何故殿下が城の外にいるのか
説明願えますか?!

そしてアーウィン様もご協力願えますか?」

ダリルはそう言い終えると、
僕達をギロっと睨んだ。

アーウィンは相変わらず硬直したままだ。

僕はため息を吐くと、ダリルの目を見たまま、

「デューデュー、この騎士様を知っていますか?」

そう尋ねた。

これは一種の賭けだった。

ダリルは一瞬

”?”

とした顔をしたけど、
直ぐにデューデューは話し始めた。

「この者は見た事がない。

声も聞いた事がない。

匂いも違う」

そう言って草の葉陰から
姿を現した。

ダリルは少し当たりをキョロキョロとして居たけど、
デューデューが僕の肩に飛び乗ったので、
やっと声の主がデューデューだと言う事が分かった。

「灰色の……子龍?!」

ダリルはデューデューが
僕の肩に乗っているのを見てとても驚いた。

そしてダリルもデューデューが子供だと思ったらしい。

「私はデューデュー、
ジェイドが名付けた。

見ての通り灰色の子龍だが、
私は95歳の成人だ。

何故体が小さいのか分からないが、
ジェイドとアーウィンに城に捉えられていたのを
助けてもらった」

デューデューがダリルに語りかけた。

デューデューがダリルに姿を晒せば
ダリルにはバレても大丈夫だと思った。

もしデューデューがダリルを認めなければ
僕がデューデューに話しかけた時、
きっと姿を表さなかっただろう。

「龍が話せるという事は聞いた事が無いのですが……」

やはりダリルも龍が話せる事は知らなかったらしい。

「私の声がなぜ人に伝わるのか
私もわからない」

デューデューがそう言うと、
ダリルは納得をしたようにして
僕が魔法を撃った木に視線を移すと、

「これはデューデュー様がやったのですか?」

と尋ねた。

「様は要らない。

それにこれをやったのはジェイドだ」

デューデューがそう言うと、
ダリルが僕の方を見た。

いたって冷静なものだ。

さすがは王専属の護衛騎士。

何があっても驚かない。

「ジェイド殿下がこれを?

如何やったらこうなったのですか?」

ダリルが尋ねると、

「聖魔法の攻撃魔法だ」

とデューデューが答えた。

続けて、

「そうしてだ?って言う様な顔をしているな。

ジェイドにあった聖龍の加護が発動した。

ジェイドは国一番の回復魔法の行使者だぞ。

それに浄化魔法、聖攻撃魔法、
身体強化も加わった。

あれは聖攻撃魔法の成れの果てだ。

どうして攻撃魔法がああなったのかは私には尋ねるな。」

私も知らない」

そうデューデューが説明してくれたので、
ダリルは一度で理解して信じてくれた。

「殿下、龍に懐かれるのも大変素晴らしい事ですが、
殿下に与えられた加護は更に素晴らしい物です。

この事を知っているのは?」

そうダリルに聞かれ、

「未だ誰も知りません。

私もついさっき知ったばかりです」

そう言うと、ダリルは少し考えた様な顔をして、

「ではこの事は誰にも口になさりません様に。

アーウィン様も同様にお願い致します」

そうダリルが言うので、
僕とアーウィンはコクコクと頷いた。

「じゃあ、ダリルにもお願い。

デューデューの事は誰にも言わないで下さい。

僕達はもう友達なんです」

そう言うと、

「分かっております。

これから殿下には
私と一緒に陛下のところまで来て頂きます。

アーウィンも一緒にお願いします。

それではデューデューはこれから?」

ダリルがデューデューに尋ねると、

「私は家へ帰る。

小童共、また会おう。

今日は助かった」

そう言うと、2、3度羽ばたいて、
流れ星の様なスピードで直ぐに見えなくなってしまった。

ダリルは深いため息をつくと、

「さあ、あなた方は私と共に陛下の元へ。

くれぐれも、ジェイド殿下の事は我々以外の者には
悟られませんように」

そう言って歩き出した。

僕はこの力があれば、沢山の人が救えると思ったのに、
この時はなぜ自分の力を秘密にしなければいけないのか
ちっとも分からなかった。









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