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夜のお茶会
しおりを挟む僕はスウ~っと一息付いて
呼吸を整えるといつもの様に目の前にあるドアをノックした。
ドアが開くまでは何故かソワソワとする。
でもいつもの様にそのドアは直ぐに開いた。
少しの明かりがドアから漏れたかと思うと、
ホウッと息を吐いた。
“今日も開けてくれた”
そう思いながら、
そこに現れた彼を見上げた。
「如何なされましか、殿下?」
ダリルがランプをかざして僕の顔を覗き込んだ。
パジャマに着替えてガウンを羽織っただけのダリルは、
すっかり夜の顔に変わり、昼間の騎士の顔とは打って変わり、
まるで別の人の様に思えた。
「あの…あの…」
言い淀んでいると、
「今夜も眠れませんか?
どうぞお入り下さい」
そう言ってダリルは僕を寝室に通してくれた。
最近はよく眠れなくて良くダリルの部屋のドアをノックする。
「殿下、何度も言いますが、
殿下の続きドアからいらしても良いんですよ?」
そう言うとランプをテーブルの上に置いた。
僕の寝室には廊下へ出なくても、
直接ダリルの部屋へ続くドアが設けられている。
これは緊急時に対応できる様施されたものだ。
勿論鍵などもかかってない。
でも今は緊急時ではない。
僕は最低の礼儀は弁えているつもりだ。
だから何時も廊下の方からノックをして
ダリルの寝室へとやって来る。
僕は中へ入ると、
いつもの様にテーブルの所にある椅子に腰掛けた。
ダリルの部屋はとても殺風景で、
ベッドと小さなテーブルと椅子があるだけだ。
「ダリルは今夜は何をして居たのですか?」
そう尋ねた途端、
またダリルのドアがノックされた。
僕の他にもう2人?
ここに入り浸っている人物がいる。
『ジェ~イド、居るんでしょ~
ダリル様~ アーウィンですう~』
そう、1人はアーウィンだ。
僕がダリルの部屋を訪れる様になった時、
アーウィンも頻繁にやって来る様になった。
それまで僕達はいつもの様に一緒にいたから、
僕の姿が見えないと、
アーウィンは直ぐにダリルのところにやって来る。
僕がここに居ると知っているから。
もう習慣になっている。
「あ、僕が出ます」
そう言って椅子から立ち上がると、
ランプを手に取ってドアまで行った。
「ダリル様~ 早く開けて~」
僕がドアを開けると、
アーウィンが僕に飛びついて来た。
「怖かったよ~
お城って如何してこんなに暗いの?!」
アーウィンは最近怖がりだ。
僕がクスクスと笑っていると、
ダリルの窓が
“コツン、コツン”
と鳴った。
「あ、来た!」
僕が窓を思いっきり開けると、
“バサッ”
と一羽ばたきしてデューデューが中に入って来た。
「デューデュー!
誰にも見つかりませんでしたか?!」
そう、もう1人の来客はデューデューだ。
先日デューデューに会いに行った時に、
僕達は無事にデューデューに会う事ができた。
ある程度の範囲内に入ると、
僕が呼べば僕の声が聞こえるらしい。
“呼べば来る”
って言われて居たけど、
実際に如何言う意味なのか分からなかった。
だから城の巡回エリアを抜けた時に試しに呼んでみた。
最初は要領が分からなくて、
むやみやたらに呼びまくって居たら、
「うるさい!
ちゃんと聞こえている!」
と10分程でやって来たデューデューに
足蹴りされてしまった。
デューデューの見解によると、
僕の聖龍の加護の力が
テレパシーみたいにデューデューに繋がる様だ。
だから僕が呼べば聞こえるらしい。
僕はデューデューを抱きしめると、
デューデューの鼻にキスをした。
「あれ? デューデュー、ちょっと大きくなった?」
抱きしめたデューデューの体に
完全に腕が回らなくなって居た。
前に抱きついた時は
未だ手と手が繋がった。
「実を言うとそうなのだ!
あの日お前たちに会ってから、
急に成長が進み始めた様なのだ」
そう言ってデューデューは翼を広げた。
「えー じゃあ、もう少ししたらデューデューは
ここに入れなくなりますね。
そんなの嫌だー」
僕が駄々をこねると、
「仕方ありませんよ。
成人の龍は平民の家より大きくなりますからね。
そうなると、城にも降りるのが難しくなりますよ」
そう言ってダリルがお茶を持って来た。
「どうせ今夜も来られると思い
お茶を用意しておりました。
デューデュー様も如何ですか」
そう言って熱いお茶をテーブルの上に置いた。
「私は大丈夫だ。
それよりも、ジェイド、結婚するそうだな」
そう言ってデューデューが
一緒に出されたビスケットを摘んだ。
「え?! 何故デューデューが知ってるの?!」
ボリボリと大きな音を立てながら
ビスケットを食べるデューデューを横目に、
僕は飲んでいたお茶のカップを落としそうになった。
「人の声は山にいると割と入って来る。
皆嬉しそうに話してたぞ」
そうデューデューに言われ、
僕は飲んでいたお茶のカップをテーブルに下ろし項垂れた。
「如何した?
ジェイドは結婚が嫌なのか?!」
デューデューが尋ねた。
僕はアーウィンをチロっと横目で見た。
彼は一生懸命にビスケットを頬張っている。
ダリルの方をチロっと見ると、
ダリルは涼しい顔をして
ベッドの横にある椅子に座って本を読んでいた。
「あのさ、嫌って言うか……
僕未だ8歳だよ?」
そういうと、
「何の問題もない。
何処の国の王子も8歳になれば婚約する」
そう言ってデューデューは
もう一個ビスケットを口に頬張った。
「えー デューデューってそんな情報、
何処から貰って来るの?!
人の町へはいかないでしょ?!」
「だから言っただろ。
人の声は何処にでもあると。
それに龍は耳が良いんだ」
そう言ってデューデューはゲップをした。
僕はヤケになって
アーウィンの袖を引っ張った。
「ねえ、アーウィン、
優雅にお茶なんか飲んでるけどさ、」
「ん?」
「アーウィンはもう成人してる年だよね?
アーウィンにはもう婚約者がいるの?」
“8歳の僕に婚約者がいるんだったら…”
そう思って結婚話にアーウィンも巻き込もうと思った。
どうせアーウィンはもうどっぷりと
僕の人生に巻き込まれている。
でも肝心のアーウィンは、
「わ…私は神に仕えるものです。
結婚なんてまだ考えていません!」
と、逃げに回った。
「あー!!! 僕は未だ8歳なのに
何故もう婚約者がいるの?!
未だ会った事もない子なのに!
それどころか、これまで女の子とも話した事ないのに、
一体僕は如何したら良いの~!!!」
頭を抱えながらそう言うと、
「王族とはそう言うものですよ?
皆国の為に結婚します」
そう言ったアーウィンの声が僕の頭の中に響いた。
「彼女はそれでも平気なのかな?」
そうポツリと言うと、
ダリルが読んでいた本をベッドの上に置いた。
その隙をついて、
「ねえ、ダリルは?
もう20歳越してるんでしょ?!
ねえ、ダリルにはいないの?
故郷で待ってる人の1人や2人!」
僕がそう尋ねると、
何時も鉄仮面の様にしてるダリルの表情が少しだけ崩れた。
僕はじっとダリルの顔を見た。
「あ、いや…殿下は何故その様な質問を?」
「だって、婚約者だよ?
僕未だ8歳なんだよ?
成人するまでまだ5年もあるんだよ?
8歳の僕に婚約者がいるんだったら、
うんと年上のダリルにはいるんでしょう?」
僕が詰め寄ると、
ダリルはフ~っとため息を吐いて、
「殿下、王家の婚姻とはそう言う物です。
平民のそれとは違います。
妃になられる姫は、これからお妃様教育を
受けねばなりません。
それに殿下と妃殿下には、
お世継ぎをもうけてもらわなければなりません。
それが次の世へと繋がり、
我が国の安泰へと導かれるのです」
そう言うと、僕をじっと見た。
隣ではアーウィンが憎らしくも、
まだ茶を啜りながらウンウンと頷いて居た。
「お世継ぎ?
って赤ちゃんだよね?
お世継ぎ云々言われても、
僕には如何したら良いのかわかりません。
僕は未だその事については学んでおりません!
あなた方はもう既に知っているのですか?!」
僕が力強くそう言うと、
アーウィンは今口に含んだばかりのお茶を
僕の顔目掛けてブーッと吹き出した。
ダリルはと言うと、
これまで見た事も無いほど真っ赤になって
手で口を押さえ横を向いた。
デューデューは飛び上がって僕の頭の上に着地し、
トストスと僕の頭の上で足踏みした。
「え? 何?
僕、変な事聞いた?」
この時で婚約者対面まで後一週間となっていた。
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