21 / 167
ダリルの本音
しおりを挟む
僕は禁断の間へ続く壁際に立って
その場をウロウロとしていた。
そして思いついた様に辺りをキョロキョロと見回し、
誰もいないのを確認すると、
サッと塀を飛び越えた。
誰も周りにいないのを確認すると、
森へ向けて走り出した。
早く言えば城を抜け出したのだ。
森に入ると、辺りをキョロキョロと見回した。
“やっぱりこの辺りには何もいないな”
城の周りの森は、
騎士達によって巡回されている。
僕は少し先に進んだ。
先と言っても弱い魔物や魔獣しか出ない。
茂みの中から子供達の声がした。
“今日はこれくらいにしておこう!”
“これ、いくらになるかな?”
“この辺の薬草は取り尽くしちゃったね。
明日は南の森に行ってみよう”
ってな感じで子供達はやりとりをしていた。
恐らく薬草詰みのクエストに来た子供等だろう。
「あ、スライムだ!」
子供達が叫んだので僕も茂みから顔を出した。
「ティキは向こうへ回って!
アカヤは後ろに下がって!
僕とルカは補助に回るから、
ヨヨお願い!」
何と子供達はちゃんと連携が出来ていた。
しかし……
“ベチャッ”
“ドコッ”
“ポヨーン”
“ツルッ”
4人で掛かっても、
スライム1匹さえ倒せない。
僕は見ていて、どんどんハラハラとして来た。
子供達の年の頃は恐らく5歳~13歳位。
後ろで見守ってるのが1番年若い子だろう。
子供達も長期戦となって段々と疲労が見えて来ている。
その時1番年若い子と目が合った。
「お兄ちゃん、助けて!」
その子は僕に向かって走り出した。
その時戦う子供達の輪の中にいたスライムが
その子目掛けて飛び跳ねた。
「危ない!」
僕は無意識のうちにスライムに向けて
僕の魔力を放出していた。
その反動に駆られ、
僕は後ろに吹き飛ばされた。
「イテテ…
君たち大丈夫?!」
子供達の無事を確認しようとすると、
僕の目の前を赤い血がタラーッと落ちて来た。
頭を触ると、
吹き飛ばされた反動で飛んできた枝で額を切った様だった。
小さい子が僕の血を見て
「キャーッ」
と叫んだかと思うと、
年長っぽい子が詰んだばかりの薬草を揉みながら
僕の所へやって来た。
薬草を詰んだカゴからハンカチを取り出すと、
僕の血を拭き、
「あのー…助けて頂いてありがとうございます。
これ、止血用の薬草です…
時期に血は止まると思います」
そう言って揉んだ薬草を僕の額の所で搾ると、
薬草から数滴雫が落ちた。
それを搾ったばかりのシオシオの薬草で擦り込むと、
「これを口に入れて噛み潰して下さい。
痛み止めになります」
そう言って一枚の葉を僕に差し出した。
その葉を口に含むと、
最初は少し苦くて後で少し酸味が出て来た。
酸味を感じる頃には痛みが和らいでいた。
「君凄いね。
薬草に詳しいんだね」
僕にとっては薬草は圏外だ。
「私はアルケミストの卵なんです」
「アルケミスト?」
初めて聞く言葉だった。
「はい、色々な薬草を混ぜ合わせて
ポーションを作るんです」
「あー、ポーション!
ポーションは聞いたことがある!」
僕がそう言うと、
彼女は微笑んで
「はい、私たちが作っています」
そう言って一つのポーションをかごの中から取り出した。
「綺麗な色だね」
そのポーションは綺麗な青い色をしていた。
「これは魔力回復のポーションなんです」
彼女がそう言った時、
「おーい!ジェーイド!」
と微かに声がした。
「あ、アーウィンだ」
僕はそう言うと、
「おーい! アーウィン!
僕はここだよ!」
立ち上がって手を振ると、
アーウィンの後ろからダリルも一緒にやって来た。
“ヤッバ”
僕は城を抜け出して来ている。
ダリルは僕の専属護衛騎士。
そして今僕は額に傷を作っている。
「ジェーイド!」
アーウィンが走ってやって来た。
その後をついて来ていたダリルが、
アーウィンを追い越して僕に前に来ると、
いきなり僕の頬をぶった。
その風景を皆んなはポカンとして見ていた。
「殿下、黙って居なくなられたら、
私は殿下の事を守れないじゃありませんか!
城に見当たらなくて、
生きた心地がしませんでした!
もう二度と私の目から離れる様な事はしないで下さい!」
ダリルは何だか泣きそうな顔をして居た。
本当に僕の事を心配して居たのだろう。
僕はダリルに抱き付いて泣き出した。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
ダリルがそっと僕の頭を撫でてたくれると、
「ジェイド、額の傷を治しますよ」
アーウィンがそう言って僕の肩に手を置いた。
「あの……今殿下って……
もしかしてあなた様はジェイド殿下なのですか?」
僕を治療してくれた子がそう尋ねた。
「はい、この方は第一王位継承者で在らせられる、
ジェイド王太子殿下です」
そうダリルが言うと、年長っぽいその子が跪き、
「どうかご無礼をお許し下さい。
見事な銀色の髪にもしかしてとは思ったのですが、
まさかこのような所におられるとは……」
そう言って肩を振るわせた。
「待って、助けられたのは僕の方だよ!
薬草をすぐに分けてくれたから、
血も直ぐに止まりましたし、
傷の方もちっとも痛みませんでした!」
僕がそう言うと、
「いえ、私たちがもっと早くスライムを倒していれば…」
彼女がそう言ったので、
ようやくスライムの事を思い出した。
アーウィンに回復魔法を掛けて貰いながら、
「あれ? そう言えばスライムは?
ちゃんと倒せたんですよね?」
そう言ってキョロキョロと辺りを見回した。
「ジェイド、治り切るまでちゃんとして動かないで!」
アーウィンに叱られ、
僕は目だけをキョロキョロとして辺りを伺った。
「あなた様は回復師なのですね。
初めてお目にかかります」
彼女がそう言うと、
「え? 回復師は教会にいるでしょう?」
僕の言葉に彼女は目を伏せると、
「はい、いらっしゃるには、いらっしゃるのですが…
平民は滅多に接触する機会に恵まれません。
何せ回復魔法は掛けてもらうのに
とても高価な対価を支払わなければいけないのです。
平民にはとても手が出るような魔法ではありません。
だから私はアルケミストになったのです。
平民にも手が出やすい様なポーションを作るた為に…」
僕は彼女の話を聞いて、
教会に探りを入れねばと思った。
「あ、そう言えばスライムでしたね、
あの殿下がお倒しになったスライムですが……」
そう言って彼女が指差した方には
ニョキニョキと伸びた枝と、
それを覆う青々とした葉。
そして木の幹にはスライムであっただろう
影がそこに残って居た。
「あの……これはどういう……事かな?!」
僕が恐る恐る尋ねると、
回復魔法を終えたアーウィンが立ち上がりながら、
「殿下の魔法は魔物には効くみたいですね」
そう言って僕の耳を引っ張った。
「あれほど陛下に気をつける様に言われたのに、
何こんな大衆全面で力披露してるんですか!!」
アーウィンに怒鳴られ、
血の気がサーっと引いた。
「君たち、今日あった事は秘密にしてくれる?
それに僕にここで会ったことも……」
「秘密ですね。
大丈夫ですよ。
此処であった事、見た事は決して口にしません。
皆にもちゃんと言い聞かせておきます。
皆んな良い子なんですよ。
私はルカ。
この子達の1番上の姉です。
もし困ったことなどありましたら、
王都のギルドをお尋ね下さい。
アルケミストのルカって言ったら直ぐにわかります」
そう言うと、子供達は大手を振りながら帰って行った。
そこに残された僕達は互いに顔を見合った。
急にダリルが剣を抜くと、
「殿下、これで私を刺してください」
とびっくりするような事を言い出した。
「は? 何言ってるんですか?」
僕は訳がわからなかった。
「私は主君である殿下に手を上げました。
それは死刑に値する行いです。
どうかこれで一思いに」
僕には騎士たちの思考が理解できない。
頬を叩いたから死刑?
何バカな事を……
僕はダリルを無視してスタスタと歩き出した。
「殿下! どちらへ?!
殿下が手を下されないのであれば私が!」
そう言ってダリルは自分で自分を刺そうとした。
“何だか今日はいつに無くペラペラと喋るな?”
何時もは鉄仮面で無口で表情を変えないダリルが、
今日は何故だか良く喋る。
「君、僕を馬鹿にしてるの?!」
そう言うとダリルはその手を止めて、
”えっ?“
と僕の方を見た。
「僕達の剣の誓いは何だったの?!
ダリルの誓いってそんなに軽いものだったの?!
あなたの命はもう僕のものでしょう?
僕が許さない限りはそんな簡単に失くすなんて言わないで!」
そう言うとダリルは僕の前に跪き、
「至らぬ事を申しました。
このダリルの命、
殿下の手で存分におあつらえ下さい」
そう言って彼は僕のつま先にキスをした。
「ちょっ、何?!
今、地面にキスをした?!」
もしかしたらダリルは究極の変態なのかもしれない。
「いえ、殿下。
私は今殿下に敬愛と尊敬、
慈しみと更なる絶対忠誠を誓いました。
どうか私の命をあなた様の身手に」
そう言って今度は手の甲にキスをした。
もしかしたら騎士たちは
誓いを立てるこ事に命を賭けた
ただの変人ばかりかもしれない。
こうと決めたら周りが見えない。
でも悪くない。
何てったて世界一の騎士が
僕に跪きその命をくれたのだから。
「でもダリル、一つお願いがある」
僕がそう言うと、
ダリルは
「何なりと!」
そう言って跪いたまま僕を見上げた。
僕はダリルの目線に合わせると、
「もっと僕とお喋りして!
ダリルの考えてる事や感じている事を
もっと僕に教えて!
じゃなきゃ、僕はずっとダリルの事が分からないままだ!」
そう言うと彼は
「殿下は既に知っておられると思いますが、
私は孤児院の出身です」
ダリルがそこまで言うとアーウィンが、
「え? ダリル様ってそうだったの?!」
と大声を出した。
僕がアーウィンを突くと、
「御免なさい、ついびっくりして…
どうぞ続けて下さい」
そう言って黙り込んだ。
「孤児院に拾って頂くまでは
路上で暮らして居ました。
毎日残飯を漁り回してはその日その日を生きていました。
言葉は話せず、
身体的成長の遅れも有り、
行き倒れになって居たところを
孤児院の院長に拾われたのです。
私は必死に言葉を覚え、読み書きを学びました。
今では普通に話せて読み書きもできるのですが、
子供の頃の反動で今だに言葉を発するのは苦手なのです。
それに孤児院の子供達に私の言葉でいじめられた事があって
泣くたびにイジメが酷くなっていったんです。
だから泣くまいかと心を閉ざして居たら、
それが当たり前になってしまって……
それがトラウマになっている部分もあるんです。
口数は少ないかもしれませんが、
決して殿下を無視しているわけではありません」
ダリルが話し終わる頃には僕は泣きそうになっていた。
そんな僕の悲しみを遮るように、
「それで、殿下は1人で森へは何をしに?」
ダリルが話題を変えてそう尋ねた。
僕は遠くの山を見て、
「実はデューデューに会いに来たんだ」
そう言うとアーウィンが、
「え? デューデューに会いに行くんだったら僕も誘ってよ!
僕もデューデューに会いたい!」
とすかさず言ってきた。
ダリルは、
「デューデューにですか?」
そう尋ねた。
「うん、ほら、デューデューが監禁された場所が分かったじゃない?
だから教えてあげようと思って……」
「殿下はデューデューの住処はご存知なのですか?」
「うん、人目のない山の奥まで来たら呼べって……
だからどこまでいったらデューデューを呼べるのか、
それも試して見たくて……」
「そう言う事でしたら、
私もお供させて下さい」
ダリルがそう言うと、
「僕も僕も!」
そう言ってアーウィンが僕の腕に絡みついて来た。
皆デューデューに会いたいという事で、
僕達はそれまで居たところからさらに奥に進んだ。
「割と奥まで人が居るんだね……」
森の奥にも、
割とや薬草詰みに入り込んでいる冒険者たちが居た。
「この辺りは未だ城の警備範囲なので人は多いでしょう」
ダリルの情報に、
僕達は城の警備が外れるところまで行くことにした。
「そう言えばさ、
僕ずっと気になってたんだけど、
父上が今度の社交界デビューで婚約発表って言ったじゃない?
ダリルは僕の婚約者になる方がどんな方か知って居ますか?」
ふっと思い出して尋ねた。
「私も良くは存じ上げて居ませんが、
確か北の方にある小さな島国の
小国の姫だと聞いた様な気が……」
ダリルの情報に、
”そっか、やっぱりどこかの姫君なのか……“
そう呟いた時、
「殿下、ここからが城の守りから外れる区域となります。
魔物や魔獣も多くなると思われますので、
更に気を付けて進まれますよう」
そうダリルに言われ僕は唾を呑み込んで辺りを見回した。
その場をウロウロとしていた。
そして思いついた様に辺りをキョロキョロと見回し、
誰もいないのを確認すると、
サッと塀を飛び越えた。
誰も周りにいないのを確認すると、
森へ向けて走り出した。
早く言えば城を抜け出したのだ。
森に入ると、辺りをキョロキョロと見回した。
“やっぱりこの辺りには何もいないな”
城の周りの森は、
騎士達によって巡回されている。
僕は少し先に進んだ。
先と言っても弱い魔物や魔獣しか出ない。
茂みの中から子供達の声がした。
“今日はこれくらいにしておこう!”
“これ、いくらになるかな?”
“この辺の薬草は取り尽くしちゃったね。
明日は南の森に行ってみよう”
ってな感じで子供達はやりとりをしていた。
恐らく薬草詰みのクエストに来た子供等だろう。
「あ、スライムだ!」
子供達が叫んだので僕も茂みから顔を出した。
「ティキは向こうへ回って!
アカヤは後ろに下がって!
僕とルカは補助に回るから、
ヨヨお願い!」
何と子供達はちゃんと連携が出来ていた。
しかし……
“ベチャッ”
“ドコッ”
“ポヨーン”
“ツルッ”
4人で掛かっても、
スライム1匹さえ倒せない。
僕は見ていて、どんどんハラハラとして来た。
子供達の年の頃は恐らく5歳~13歳位。
後ろで見守ってるのが1番年若い子だろう。
子供達も長期戦となって段々と疲労が見えて来ている。
その時1番年若い子と目が合った。
「お兄ちゃん、助けて!」
その子は僕に向かって走り出した。
その時戦う子供達の輪の中にいたスライムが
その子目掛けて飛び跳ねた。
「危ない!」
僕は無意識のうちにスライムに向けて
僕の魔力を放出していた。
その反動に駆られ、
僕は後ろに吹き飛ばされた。
「イテテ…
君たち大丈夫?!」
子供達の無事を確認しようとすると、
僕の目の前を赤い血がタラーッと落ちて来た。
頭を触ると、
吹き飛ばされた反動で飛んできた枝で額を切った様だった。
小さい子が僕の血を見て
「キャーッ」
と叫んだかと思うと、
年長っぽい子が詰んだばかりの薬草を揉みながら
僕の所へやって来た。
薬草を詰んだカゴからハンカチを取り出すと、
僕の血を拭き、
「あのー…助けて頂いてありがとうございます。
これ、止血用の薬草です…
時期に血は止まると思います」
そう言って揉んだ薬草を僕の額の所で搾ると、
薬草から数滴雫が落ちた。
それを搾ったばかりのシオシオの薬草で擦り込むと、
「これを口に入れて噛み潰して下さい。
痛み止めになります」
そう言って一枚の葉を僕に差し出した。
その葉を口に含むと、
最初は少し苦くて後で少し酸味が出て来た。
酸味を感じる頃には痛みが和らいでいた。
「君凄いね。
薬草に詳しいんだね」
僕にとっては薬草は圏外だ。
「私はアルケミストの卵なんです」
「アルケミスト?」
初めて聞く言葉だった。
「はい、色々な薬草を混ぜ合わせて
ポーションを作るんです」
「あー、ポーション!
ポーションは聞いたことがある!」
僕がそう言うと、
彼女は微笑んで
「はい、私たちが作っています」
そう言って一つのポーションをかごの中から取り出した。
「綺麗な色だね」
そのポーションは綺麗な青い色をしていた。
「これは魔力回復のポーションなんです」
彼女がそう言った時、
「おーい!ジェーイド!」
と微かに声がした。
「あ、アーウィンだ」
僕はそう言うと、
「おーい! アーウィン!
僕はここだよ!」
立ち上がって手を振ると、
アーウィンの後ろからダリルも一緒にやって来た。
“ヤッバ”
僕は城を抜け出して来ている。
ダリルは僕の専属護衛騎士。
そして今僕は額に傷を作っている。
「ジェーイド!」
アーウィンが走ってやって来た。
その後をついて来ていたダリルが、
アーウィンを追い越して僕に前に来ると、
いきなり僕の頬をぶった。
その風景を皆んなはポカンとして見ていた。
「殿下、黙って居なくなられたら、
私は殿下の事を守れないじゃありませんか!
城に見当たらなくて、
生きた心地がしませんでした!
もう二度と私の目から離れる様な事はしないで下さい!」
ダリルは何だか泣きそうな顔をして居た。
本当に僕の事を心配して居たのだろう。
僕はダリルに抱き付いて泣き出した。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
ダリルがそっと僕の頭を撫でてたくれると、
「ジェイド、額の傷を治しますよ」
アーウィンがそう言って僕の肩に手を置いた。
「あの……今殿下って……
もしかしてあなた様はジェイド殿下なのですか?」
僕を治療してくれた子がそう尋ねた。
「はい、この方は第一王位継承者で在らせられる、
ジェイド王太子殿下です」
そうダリルが言うと、年長っぽいその子が跪き、
「どうかご無礼をお許し下さい。
見事な銀色の髪にもしかしてとは思ったのですが、
まさかこのような所におられるとは……」
そう言って肩を振るわせた。
「待って、助けられたのは僕の方だよ!
薬草をすぐに分けてくれたから、
血も直ぐに止まりましたし、
傷の方もちっとも痛みませんでした!」
僕がそう言うと、
「いえ、私たちがもっと早くスライムを倒していれば…」
彼女がそう言ったので、
ようやくスライムの事を思い出した。
アーウィンに回復魔法を掛けて貰いながら、
「あれ? そう言えばスライムは?
ちゃんと倒せたんですよね?」
そう言ってキョロキョロと辺りを見回した。
「ジェイド、治り切るまでちゃんとして動かないで!」
アーウィンに叱られ、
僕は目だけをキョロキョロとして辺りを伺った。
「あなた様は回復師なのですね。
初めてお目にかかります」
彼女がそう言うと、
「え? 回復師は教会にいるでしょう?」
僕の言葉に彼女は目を伏せると、
「はい、いらっしゃるには、いらっしゃるのですが…
平民は滅多に接触する機会に恵まれません。
何せ回復魔法は掛けてもらうのに
とても高価な対価を支払わなければいけないのです。
平民にはとても手が出るような魔法ではありません。
だから私はアルケミストになったのです。
平民にも手が出やすい様なポーションを作るた為に…」
僕は彼女の話を聞いて、
教会に探りを入れねばと思った。
「あ、そう言えばスライムでしたね、
あの殿下がお倒しになったスライムですが……」
そう言って彼女が指差した方には
ニョキニョキと伸びた枝と、
それを覆う青々とした葉。
そして木の幹にはスライムであっただろう
影がそこに残って居た。
「あの……これはどういう……事かな?!」
僕が恐る恐る尋ねると、
回復魔法を終えたアーウィンが立ち上がりながら、
「殿下の魔法は魔物には効くみたいですね」
そう言って僕の耳を引っ張った。
「あれほど陛下に気をつける様に言われたのに、
何こんな大衆全面で力披露してるんですか!!」
アーウィンに怒鳴られ、
血の気がサーっと引いた。
「君たち、今日あった事は秘密にしてくれる?
それに僕にここで会ったことも……」
「秘密ですね。
大丈夫ですよ。
此処であった事、見た事は決して口にしません。
皆にもちゃんと言い聞かせておきます。
皆んな良い子なんですよ。
私はルカ。
この子達の1番上の姉です。
もし困ったことなどありましたら、
王都のギルドをお尋ね下さい。
アルケミストのルカって言ったら直ぐにわかります」
そう言うと、子供達は大手を振りながら帰って行った。
そこに残された僕達は互いに顔を見合った。
急にダリルが剣を抜くと、
「殿下、これで私を刺してください」
とびっくりするような事を言い出した。
「は? 何言ってるんですか?」
僕は訳がわからなかった。
「私は主君である殿下に手を上げました。
それは死刑に値する行いです。
どうかこれで一思いに」
僕には騎士たちの思考が理解できない。
頬を叩いたから死刑?
何バカな事を……
僕はダリルを無視してスタスタと歩き出した。
「殿下! どちらへ?!
殿下が手を下されないのであれば私が!」
そう言ってダリルは自分で自分を刺そうとした。
“何だか今日はいつに無くペラペラと喋るな?”
何時もは鉄仮面で無口で表情を変えないダリルが、
今日は何故だか良く喋る。
「君、僕を馬鹿にしてるの?!」
そう言うとダリルはその手を止めて、
”えっ?“
と僕の方を見た。
「僕達の剣の誓いは何だったの?!
ダリルの誓いってそんなに軽いものだったの?!
あなたの命はもう僕のものでしょう?
僕が許さない限りはそんな簡単に失くすなんて言わないで!」
そう言うとダリルは僕の前に跪き、
「至らぬ事を申しました。
このダリルの命、
殿下の手で存分におあつらえ下さい」
そう言って彼は僕のつま先にキスをした。
「ちょっ、何?!
今、地面にキスをした?!」
もしかしたらダリルは究極の変態なのかもしれない。
「いえ、殿下。
私は今殿下に敬愛と尊敬、
慈しみと更なる絶対忠誠を誓いました。
どうか私の命をあなた様の身手に」
そう言って今度は手の甲にキスをした。
もしかしたら騎士たちは
誓いを立てるこ事に命を賭けた
ただの変人ばかりかもしれない。
こうと決めたら周りが見えない。
でも悪くない。
何てったて世界一の騎士が
僕に跪きその命をくれたのだから。
「でもダリル、一つお願いがある」
僕がそう言うと、
ダリルは
「何なりと!」
そう言って跪いたまま僕を見上げた。
僕はダリルの目線に合わせると、
「もっと僕とお喋りして!
ダリルの考えてる事や感じている事を
もっと僕に教えて!
じゃなきゃ、僕はずっとダリルの事が分からないままだ!」
そう言うと彼は
「殿下は既に知っておられると思いますが、
私は孤児院の出身です」
ダリルがそこまで言うとアーウィンが、
「え? ダリル様ってそうだったの?!」
と大声を出した。
僕がアーウィンを突くと、
「御免なさい、ついびっくりして…
どうぞ続けて下さい」
そう言って黙り込んだ。
「孤児院に拾って頂くまでは
路上で暮らして居ました。
毎日残飯を漁り回してはその日その日を生きていました。
言葉は話せず、
身体的成長の遅れも有り、
行き倒れになって居たところを
孤児院の院長に拾われたのです。
私は必死に言葉を覚え、読み書きを学びました。
今では普通に話せて読み書きもできるのですが、
子供の頃の反動で今だに言葉を発するのは苦手なのです。
それに孤児院の子供達に私の言葉でいじめられた事があって
泣くたびにイジメが酷くなっていったんです。
だから泣くまいかと心を閉ざして居たら、
それが当たり前になってしまって……
それがトラウマになっている部分もあるんです。
口数は少ないかもしれませんが、
決して殿下を無視しているわけではありません」
ダリルが話し終わる頃には僕は泣きそうになっていた。
そんな僕の悲しみを遮るように、
「それで、殿下は1人で森へは何をしに?」
ダリルが話題を変えてそう尋ねた。
僕は遠くの山を見て、
「実はデューデューに会いに来たんだ」
そう言うとアーウィンが、
「え? デューデューに会いに行くんだったら僕も誘ってよ!
僕もデューデューに会いたい!」
とすかさず言ってきた。
ダリルは、
「デューデューにですか?」
そう尋ねた。
「うん、ほら、デューデューが監禁された場所が分かったじゃない?
だから教えてあげようと思って……」
「殿下はデューデューの住処はご存知なのですか?」
「うん、人目のない山の奥まで来たら呼べって……
だからどこまでいったらデューデューを呼べるのか、
それも試して見たくて……」
「そう言う事でしたら、
私もお供させて下さい」
ダリルがそう言うと、
「僕も僕も!」
そう言ってアーウィンが僕の腕に絡みついて来た。
皆デューデューに会いたいという事で、
僕達はそれまで居たところからさらに奥に進んだ。
「割と奥まで人が居るんだね……」
森の奥にも、
割とや薬草詰みに入り込んでいる冒険者たちが居た。
「この辺りは未だ城の警備範囲なので人は多いでしょう」
ダリルの情報に、
僕達は城の警備が外れるところまで行くことにした。
「そう言えばさ、
僕ずっと気になってたんだけど、
父上が今度の社交界デビューで婚約発表って言ったじゃない?
ダリルは僕の婚約者になる方がどんな方か知って居ますか?」
ふっと思い出して尋ねた。
「私も良くは存じ上げて居ませんが、
確か北の方にある小さな島国の
小国の姫だと聞いた様な気が……」
ダリルの情報に、
”そっか、やっぱりどこかの姫君なのか……“
そう呟いた時、
「殿下、ここからが城の守りから外れる区域となります。
魔物や魔獣も多くなると思われますので、
更に気を付けて進まれますよう」
そうダリルに言われ僕は唾を呑み込んで辺りを見回した。
28
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる