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静かな夜
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父が隠密達の里を探しに出掛けて二週ほどが過ぎた。
父からの連絡はその間全く無かった。
何処をどう探しているのか全く見当もつかない。
国内にいるのかも分からない。
父と連絡が取れないまま、
既に成人の儀の3日前がやって来てしまった。
父は今日までには必ず帰ると約束してくれた。
でも今朝の時点で帰ってくような気配は全く無い。
ダリルも今日、明日には戻って来るはずだ。
僕は何時ものように淡々と政務をこなし、
早くも時は既に夕刻に達して居た。
でも父は未だ戻って来ていない。
“おかしい……
最近は、叔父との接触は無いけど、
叔父に囚われたような気配は全く無い。
どうしてそんなことが分かるのだと言われても、
ただそう感じるだけで、絶対とは言えない。
でも、叔父に囚われたのではないと思う。
それなのに連絡が無いとは一体どういう意味だろう?
無事に隠密達の里に辿り着けたのだろうか?
もし行きつけたとして、
子供の時とは違う状況に、里から出してはもらえないのだろうか?
それとも……もしかして彼らに?
いや、王家に忠誠を誓って居るのであれば父に手をかける事は
少なくとも無い筈だ。
もしかして隠密達と未だタキを探して居るのだろうか?
それであれば、少なくとも一旦城には戻ってこれるはずだ。
何故父上は帰って来ないんだ?!”
いろんな思いが頭を巡って最終的には嫌な結論にばかり至る。
そうこうして居るうちにマグノリアが僕の部屋へ戻って来た。
彼女はここに居座った日から見習い騎士と言われたように剣の鍛錬に励んでいる。
割と見込みがあるようで、
彼女はグングン剣のスキルが上がって居るようだ。
今ではアーウィンと結婚した後は非公式で僕の護衛騎士になると言って居る。
まあ、アーウィンが結婚できる身かは分からないが、
夢は持たせておこうと思って僕はそれ以上何も言わなかった。
でも彼女は努力家でそれはデューデューの隠れ家で生活していた時に学んだ。
楽天家なせいか、順応力も高い。
僕は部屋へやって来たマグノリアの汚れ切った頬を袖で拭くと、
「早くお風呂に入って!
君、本当だったら一国の姫なのに、こんなに手まで荒れてしまって…」
そう言って彼女の手を取った。
初めてここへ僕の婚約者として来た時は、
綺麗な手をして爪も綺麗に整えられ、
本当に王女のような磨き上げられた爪と肌をして居た。
彼女はサッと手を後ろに隠すと、
「私はへっちゃらよ!
一緒に頑張ろうね。
お風呂は自分で入れるからマギーを呼ばなくてもいいわよ!」
そう言って彼女はバスルームへと入って行った。
僕は窓から下を見下ろすとカーテンを手で撫でた。
“父上……どうかご無事で居て下さい”
そう呟くと、デューデューがファサーっとカーテンを揺らして中へ入って来た。
「デューデュー?」
そう問いかけると、デューデューが姿を現した。
「どうしたのだ? そんな顔をして?」
デューデューが直ぐに僕の異変に気付いた。
「父上が帰って来ないんだ。
今日までは必ず帰って来ると言ったのに」
そう言うとまた外を見つめた。
「確か隠密の里に行ったのだったな?」
デューデューの問いかけに、頷いた。
「隠密か……」
そう言ってデューデューは少し考えたような顔をした。
「デューデューは隠密について知らないって言ってたよね?」
以前尋ねた時は、聞いた事がないと即答で答えた。
「隠密は知らないが少し調べておこう」
龍であるデューデューがどう言うふうに調べるのか分からないけど、
今は藁にもすがる思いだった。
「何か分かったら、直ぐに教えて」
そう言うとデューデューは首をクイっと振った。
「ダリルは何時帰って来るのだ?」
デューデュー問いに、
「今日か明日にはって言ってたけど、
今日はもう日も暮れるし明日になると思う」
そう答えると、
「では私は一息ついたらアーウィンを迎えに行ってこよう」
そう言ってベッドの上に飛び乗ると、
真ん中で丸まって目を閉じた。
僕はまた窓から外を見て居ると、
「お風呂お先にありがとう」
そう言いながらマグノリアがバスルームから出て来た。
窓の所に佇む僕の隣に来ると、
マグノリアも外を眺めながら、
「結局陛下は帰って来なかったの?
ダリルも今の調子だと明日になりそうね」
そう言って僕の肩に手を回した。
僕はマグノリアの肩に頭をもたげると、
声を出して泣き出した。
「どうしてこんな事になったのだろう?
一体僕が何をしたって言うの?!
何処から僕は間違ったんだろう?!
もっと良い方法があったかもしれないのに、
足掻けば足掻くほど悪い方に行ってしまう……
いくら身体強化が出来たって、
幾ら魔法が使えたって、未だ何の役にも立てて居ない!
僕は本当に叔父上の企みから皆んなを守る事ができるのだろうか?!」
そんな風に弱気になって泣きじゃくる僕をマグノリアは優しく抱きしめた。
「大丈夫よ。 あなたは一人で戦って居る訳じゃないわ。
私も、アーウィンも、ダリルだって、デューデューだって居るんだから」
「でも叔父上の力は途轍も無く大きくて、
まだ叔父上がどれだけの事ができるのか把握して居ない!
叔父上の反乱の意図だって分かってないし、
エレノアやメルデーナの事だって……
うう、父上…… ダリル……」
そう言って泣きじゃくる僕をマグノリアはただ黙ったままで、
優しく母のようにずっと僕の頭を撫でてくれた。
「僕、母上の事は覚えていないけど、
もし母上が今でも生きていたら、マグノリアみたいだったのかな……?」
そうぽつりと言うと、マグノリアは僕の頭をチョップすると、
「私はあなたと4つしか変わらないのよ?!
せめてお姉さんと言いなさい!
でも今はお母さんになってあげるから、
気が済むまで私に寄りかかってなさい」
そう言って揶揄った様にして僕をギュッと抱きしめた。。
暫くそのままでマグノリアに寄り掛かっていると、
デューデューが起き出して来て
「アーウィンを迎えに行って来る」
そう言って部屋から飛び立って行った。
僕はマグノリアから離れると、
「ご、ごめん。 父上の行方が分からなくて少し弱気になってた」
そう言って涙を拭いた。
「目が腫れちゃってるよ?
デューデューがアーウィンを迎えに行ってる間、
ジェイドもお風呂に入ったら?
マギーを呼ぶ?」
マグノリアが気を利かせてくれたけど、
「いや、大丈夫。
もう直ぐデューデューもアーウィンを連れて戻って来るし……
顔だけ洗って来る」
そう言うと、バスルームへ行き、
桶に水を溜めてジャブジャブと顔を洗った。
デューデューの所で生活をして居た経験があるので、
マギーの助けを得なくても、割と何でも一人で出来るようになった。
前は全てのことを使用人のメイド達が数人がかりでやってくれて居た。
そのことを考えると、少しは成長したのかなと思うけど、
ただそれだけだ。
使用済みのタオルを桶に入れバスルームを出ると、
ガウンに着替えるためクローゼットに向かった。
クローゼットに来るたびにマリオンのことを思い出す。
彼の事についても未だはっきりとして居ない。
取り敢えずパジャマに着替えるとガウンを羽織った。
クローゼットから出ると、マグノリアは窓辺に座りデューデューの帰りを待って居た。
デューデューが部屋へ戻ると、それがアーウィンが窓の下にいると言う合図だ。
これまで何事もなくアーウィンは此処へ忍び込んで入る。
マグノリアのところまで行くと、
「デューデューは未だ来ないの?」
そう言って窓から乗り出して辺りを伺った。
「未だ何時もより少し早いから」
そう言ってマグノリアは窓の桟に両肘をついて顎を抱えた。
「ねえ、何だか何時もより静かじゃない?」
マグノリアのそのセリフに僕も相槌を打った。
「実を言うと僕もそう思って居たんだ」
そう言ってまた窓の外に乗り出した。
「何時も聞こえる虫の声がしないわよね」
そう言えば、何時も外から聞こえる雑音がしない。
「どうしてだろう?」
僕は首を傾げた。
でもそれ以外は変わった所は見受けられない。
「何か小動物でも通ったのかしら?」
「う~ん、分からないけど、
そうかもしれないね。」
そんな事を話していると、デューデューがヒュッと部屋へ入って来た。
その風を頬で受け、
「アーウィンが来たみたいだね」
そう言うと、下の方で手を振るアーウィンが目に入った。
僕は何時ものようにスルスルとロープを垂らすと、
アーウィンがそれに掴まり、ノットの所に足を掛けた。
僕が手を振るとアーウィンも手を振ったので、
腕に力を込めてロープを引いた。
窓のところまで来ると、アーウィンは自分で桟に捕まりよじ登って来る。
「今日もお疲れ」
窓を飛び越えて来たアーウィンに声をかけると、
「今日のお城何だか雰囲気が変じゃない?」
と、いの一番にアーウィンがそう言った。
僕とマグノリアは顔を見合わせて、
「実は僕達もそんな事を言ってたんだ。
何だか静かすぎるって……」
そう言うと、
「うーん、静かなのは静かなんだけど……
なんて言うのかな? 今夜は誰一人としてお城の周りで見かけなかったんだ」
そうアーウィンに言われ、又窓から乗り出して辺りを見回した。
僕の部屋から見渡せる外側は夜になると使用人の行き来は殆どなくなるけど、
人っ子一人いないと言うわけではない。
窓から乗り出して見回した風景は少し不気味だった。
虫の声どころか、人の声さえも聞こえない。
でも灯りが完全に消えていると言うわけでもない。
「うーん、あかりが消えてるわけではないから、
人が居ないって事はないと思うけど、
確かにちょっと変だよね?
でもこんな時間に外へ出たり、窓から外を覗いたりって無かったから、
こんな日もあるんじゃないかな?」
そう言ってマグノリアとアーウィンの方を振り返ると、
デューデューが、
「シッ」
と僕達に向かって言った。
デューデューのその声に僕達は急に口を閉じると、
デューデューの方を一斉に見た。
デューデューは耳をピクピクさせたり、
鼻をクンクンさせたりして空気中の何かを読み取ろうとして居た。
“デューデュー、どうしたの?
何か聞こえたの?”
僕が小声で尋ねると、
「シッ!」
と再度言われ、僕は肩を窄めて口を閉じた。
僕も耳に魔力を流して澄まして見たけど、
何も聞こえなかった。
そう、何も聞こえなかったのだ。
そんな事はありえない。
僕が耳に魔力を集中させると、
遥か遠くの音も拾える。
でも何も聞こえなかったのだ。
“そんなバカな……
魔力に異常が発してる? それとも……”
そう思っている時デューデューが、
『来るぞ!』
突然そう叫んだ。
父からの連絡はその間全く無かった。
何処をどう探しているのか全く見当もつかない。
国内にいるのかも分からない。
父と連絡が取れないまま、
既に成人の儀の3日前がやって来てしまった。
父は今日までには必ず帰ると約束してくれた。
でも今朝の時点で帰ってくような気配は全く無い。
ダリルも今日、明日には戻って来るはずだ。
僕は何時ものように淡々と政務をこなし、
早くも時は既に夕刻に達して居た。
でも父は未だ戻って来ていない。
“おかしい……
最近は、叔父との接触は無いけど、
叔父に囚われたような気配は全く無い。
どうしてそんなことが分かるのだと言われても、
ただそう感じるだけで、絶対とは言えない。
でも、叔父に囚われたのではないと思う。
それなのに連絡が無いとは一体どういう意味だろう?
無事に隠密達の里に辿り着けたのだろうか?
もし行きつけたとして、
子供の時とは違う状況に、里から出してはもらえないのだろうか?
それとも……もしかして彼らに?
いや、王家に忠誠を誓って居るのであれば父に手をかける事は
少なくとも無い筈だ。
もしかして隠密達と未だタキを探して居るのだろうか?
それであれば、少なくとも一旦城には戻ってこれるはずだ。
何故父上は帰って来ないんだ?!”
いろんな思いが頭を巡って最終的には嫌な結論にばかり至る。
そうこうして居るうちにマグノリアが僕の部屋へ戻って来た。
彼女はここに居座った日から見習い騎士と言われたように剣の鍛錬に励んでいる。
割と見込みがあるようで、
彼女はグングン剣のスキルが上がって居るようだ。
今ではアーウィンと結婚した後は非公式で僕の護衛騎士になると言って居る。
まあ、アーウィンが結婚できる身かは分からないが、
夢は持たせておこうと思って僕はそれ以上何も言わなかった。
でも彼女は努力家でそれはデューデューの隠れ家で生活していた時に学んだ。
楽天家なせいか、順応力も高い。
僕は部屋へやって来たマグノリアの汚れ切った頬を袖で拭くと、
「早くお風呂に入って!
君、本当だったら一国の姫なのに、こんなに手まで荒れてしまって…」
そう言って彼女の手を取った。
初めてここへ僕の婚約者として来た時は、
綺麗な手をして爪も綺麗に整えられ、
本当に王女のような磨き上げられた爪と肌をして居た。
彼女はサッと手を後ろに隠すと、
「私はへっちゃらよ!
一緒に頑張ろうね。
お風呂は自分で入れるからマギーを呼ばなくてもいいわよ!」
そう言って彼女はバスルームへと入って行った。
僕は窓から下を見下ろすとカーテンを手で撫でた。
“父上……どうかご無事で居て下さい”
そう呟くと、デューデューがファサーっとカーテンを揺らして中へ入って来た。
「デューデュー?」
そう問いかけると、デューデューが姿を現した。
「どうしたのだ? そんな顔をして?」
デューデューが直ぐに僕の異変に気付いた。
「父上が帰って来ないんだ。
今日までは必ず帰って来ると言ったのに」
そう言うとまた外を見つめた。
「確か隠密の里に行ったのだったな?」
デューデューの問いかけに、頷いた。
「隠密か……」
そう言ってデューデューは少し考えたような顔をした。
「デューデューは隠密について知らないって言ってたよね?」
以前尋ねた時は、聞いた事がないと即答で答えた。
「隠密は知らないが少し調べておこう」
龍であるデューデューがどう言うふうに調べるのか分からないけど、
今は藁にもすがる思いだった。
「何か分かったら、直ぐに教えて」
そう言うとデューデューは首をクイっと振った。
「ダリルは何時帰って来るのだ?」
デューデュー問いに、
「今日か明日にはって言ってたけど、
今日はもう日も暮れるし明日になると思う」
そう答えると、
「では私は一息ついたらアーウィンを迎えに行ってこよう」
そう言ってベッドの上に飛び乗ると、
真ん中で丸まって目を閉じた。
僕はまた窓から外を見て居ると、
「お風呂お先にありがとう」
そう言いながらマグノリアがバスルームから出て来た。
窓の所に佇む僕の隣に来ると、
マグノリアも外を眺めながら、
「結局陛下は帰って来なかったの?
ダリルも今の調子だと明日になりそうね」
そう言って僕の肩に手を回した。
僕はマグノリアの肩に頭をもたげると、
声を出して泣き出した。
「どうしてこんな事になったのだろう?
一体僕が何をしたって言うの?!
何処から僕は間違ったんだろう?!
もっと良い方法があったかもしれないのに、
足掻けば足掻くほど悪い方に行ってしまう……
いくら身体強化が出来たって、
幾ら魔法が使えたって、未だ何の役にも立てて居ない!
僕は本当に叔父上の企みから皆んなを守る事ができるのだろうか?!」
そんな風に弱気になって泣きじゃくる僕をマグノリアは優しく抱きしめた。
「大丈夫よ。 あなたは一人で戦って居る訳じゃないわ。
私も、アーウィンも、ダリルだって、デューデューだって居るんだから」
「でも叔父上の力は途轍も無く大きくて、
まだ叔父上がどれだけの事ができるのか把握して居ない!
叔父上の反乱の意図だって分かってないし、
エレノアやメルデーナの事だって……
うう、父上…… ダリル……」
そう言って泣きじゃくる僕をマグノリアはただ黙ったままで、
優しく母のようにずっと僕の頭を撫でてくれた。
「僕、母上の事は覚えていないけど、
もし母上が今でも生きていたら、マグノリアみたいだったのかな……?」
そうぽつりと言うと、マグノリアは僕の頭をチョップすると、
「私はあなたと4つしか変わらないのよ?!
せめてお姉さんと言いなさい!
でも今はお母さんになってあげるから、
気が済むまで私に寄りかかってなさい」
そう言って揶揄った様にして僕をギュッと抱きしめた。。
暫くそのままでマグノリアに寄り掛かっていると、
デューデューが起き出して来て
「アーウィンを迎えに行って来る」
そう言って部屋から飛び立って行った。
僕はマグノリアから離れると、
「ご、ごめん。 父上の行方が分からなくて少し弱気になってた」
そう言って涙を拭いた。
「目が腫れちゃってるよ?
デューデューがアーウィンを迎えに行ってる間、
ジェイドもお風呂に入ったら?
マギーを呼ぶ?」
マグノリアが気を利かせてくれたけど、
「いや、大丈夫。
もう直ぐデューデューもアーウィンを連れて戻って来るし……
顔だけ洗って来る」
そう言うと、バスルームへ行き、
桶に水を溜めてジャブジャブと顔を洗った。
デューデューの所で生活をして居た経験があるので、
マギーの助けを得なくても、割と何でも一人で出来るようになった。
前は全てのことを使用人のメイド達が数人がかりでやってくれて居た。
そのことを考えると、少しは成長したのかなと思うけど、
ただそれだけだ。
使用済みのタオルを桶に入れバスルームを出ると、
ガウンに着替えるためクローゼットに向かった。
クローゼットに来るたびにマリオンのことを思い出す。
彼の事についても未だはっきりとして居ない。
取り敢えずパジャマに着替えるとガウンを羽織った。
クローゼットから出ると、マグノリアは窓辺に座りデューデューの帰りを待って居た。
デューデューが部屋へ戻ると、それがアーウィンが窓の下にいると言う合図だ。
これまで何事もなくアーウィンは此処へ忍び込んで入る。
マグノリアのところまで行くと、
「デューデューは未だ来ないの?」
そう言って窓から乗り出して辺りを伺った。
「未だ何時もより少し早いから」
そう言ってマグノリアは窓の桟に両肘をついて顎を抱えた。
「ねえ、何だか何時もより静かじゃない?」
マグノリアのそのセリフに僕も相槌を打った。
「実を言うと僕もそう思って居たんだ」
そう言ってまた窓の外に乗り出した。
「何時も聞こえる虫の声がしないわよね」
そう言えば、何時も外から聞こえる雑音がしない。
「どうしてだろう?」
僕は首を傾げた。
でもそれ以外は変わった所は見受けられない。
「何か小動物でも通ったのかしら?」
「う~ん、分からないけど、
そうかもしれないね。」
そんな事を話していると、デューデューがヒュッと部屋へ入って来た。
その風を頬で受け、
「アーウィンが来たみたいだね」
そう言うと、下の方で手を振るアーウィンが目に入った。
僕は何時ものようにスルスルとロープを垂らすと、
アーウィンがそれに掴まり、ノットの所に足を掛けた。
僕が手を振るとアーウィンも手を振ったので、
腕に力を込めてロープを引いた。
窓のところまで来ると、アーウィンは自分で桟に捕まりよじ登って来る。
「今日もお疲れ」
窓を飛び越えて来たアーウィンに声をかけると、
「今日のお城何だか雰囲気が変じゃない?」
と、いの一番にアーウィンがそう言った。
僕とマグノリアは顔を見合わせて、
「実は僕達もそんな事を言ってたんだ。
何だか静かすぎるって……」
そう言うと、
「うーん、静かなのは静かなんだけど……
なんて言うのかな? 今夜は誰一人としてお城の周りで見かけなかったんだ」
そうアーウィンに言われ、又窓から乗り出して辺りを見回した。
僕の部屋から見渡せる外側は夜になると使用人の行き来は殆どなくなるけど、
人っ子一人いないと言うわけではない。
窓から乗り出して見回した風景は少し不気味だった。
虫の声どころか、人の声さえも聞こえない。
でも灯りが完全に消えていると言うわけでもない。
「うーん、あかりが消えてるわけではないから、
人が居ないって事はないと思うけど、
確かにちょっと変だよね?
でもこんな時間に外へ出たり、窓から外を覗いたりって無かったから、
こんな日もあるんじゃないかな?」
そう言ってマグノリアとアーウィンの方を振り返ると、
デューデューが、
「シッ」
と僕達に向かって言った。
デューデューのその声に僕達は急に口を閉じると、
デューデューの方を一斉に見た。
デューデューは耳をピクピクさせたり、
鼻をクンクンさせたりして空気中の何かを読み取ろうとして居た。
“デューデュー、どうしたの?
何か聞こえたの?”
僕が小声で尋ねると、
「シッ!」
と再度言われ、僕は肩を窄めて口を閉じた。
僕も耳に魔力を流して澄まして見たけど、
何も聞こえなかった。
そう、何も聞こえなかったのだ。
そんな事はありえない。
僕が耳に魔力を集中させると、
遥か遠くの音も拾える。
でも何も聞こえなかったのだ。
“そんなバカな……
魔力に異常が発してる? それとも……”
そう思っている時デューデューが、
『来るぞ!』
突然そう叫んだ。
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