龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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エルフ王

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「王がいらっしゃいます」

ルビーのその一言にアーウィンとマグノリアは焦った。

「王?! 王って今話していたエルフの王?!」

「そうでございます」

そう言ってルビーが部屋のドアの隣に立った。

「あの、エルフ王ってどうやってこちらに来られるの?」

マグノリアが髪を整えながら尋ねた。

“マグノリア、何してるの?”

アーウィンが耳打ちすると、

“だってエルフの王様が来るんだよ?

責めて身なりは整えておかなければ!”

そう言ってマグノリアが今度はドレスをパンパンと払い出した。

「エヘッ、オホッ、ンン……」

と喉を鳴らすと、肩をブルブルと震わせて、
スッと背筋を伸ばして立った。

そう言った立ち姿はやはり王家の者だ。

暫く垂直に背筋良くドアの前に立ったあと、
マグノリアが少し変なことに気付きた。

「ん? 何故私達、此処で王様を待ってるの? 

下のロビーの入り口まで迎えに行かなくて良いの?」

マグノリアが眉を顰めて尋ねると、

「いえ、此処に道が開きます」

ルビーはそう言うと、目の前の壁を指差した。

「へ? 壁? 壁ってこの壁?」

そう言ってマグノリアが壁をコンコンとノックすると、
壁が光り始めた。

「ヒャッ!」 

マグノリが、猫がびっくりした様な声で驚いて後ろに飛び退くと、
その壁に穴が空いた様にその部分がなくなり、
代わりに壁の向こうに緑が広がった。

マグノリアがアワアワとして居ると、
向こうから数名を後ろに従えた背のすらっとした人が部屋へ向かって歩いて来た。

先頭から歩いて来る人は眩い光に包まれた様な感じで、
マグノリアは目を細めて、

“ヒャ~ 目が潰れる~”

と呟いて目を瞑るとアーウィンが横でマグノリアの脇腹を突いた。

“マグノリア、王がおいでだよ”

そう囁くとマグノリアは背筋をピンと伸ばして目を開けた。

光の中を潜り抜けて来た様にして目の前に現れたのは
長い銀色の髪に緑の目をした長身のエルフの男性だった。



見惚れる様な綺麗な姿にマグノリアが挨拶も忘れ、ボーッとして彼を見上げた。

「そなた達が地の護り神について知る者か?」

王が話しかけると、

マグノリアとアーウィンはハッとして跪き、

「左様でございます。

失礼いたしました。

アーウィンと申します」

「マグノリアと申します」

そう言ってエルフ王に挨拶をした。

「私はエルフの王と呼ばれているレイクス・フィニルアルムだ」

そう言うと、デューデューの方を見た。

”灰色の龍……”

そう呟くとデューデューが

「私が灰色だと何か不都合でもあるのか?」

そうきっぱりとレイクスに言い放った。

”デューデュー、貴方王様に失礼よ。

もっと丁寧に話さなきゃ”

マグノリアがデューデューにそう囁くと、
デューデューは一言

”フン”

と鼻で息をした。

「デューデューが失礼をしてすみません。

何しろ、礼儀を知らない龍なものでして……」

そう言うと、

「灰色の龍はデューデューと言うのか?」

そうマグノリアに尋ねた。

マグノリアはデューデューの頭をそっと撫でると、

「左様でございます。

この灰色の龍の名はデューデューと申します」

とそう答えた。

レイクスはデューデューを見ると、

「そなたは龍であるのに何故人の言葉が話せるのか?

それに何故そんなに人に慣れているのか?

私の知る龍は一匹として人となれ合うものは居ない」

そう言ってデューデューの背に手を翳した。

「触れても良いですか?」

レイクスはデューデューに丁寧に尋ねると、
デューデューはスッとレイクスに向けて頭を下げた。

”何よ貴方、やれば出来るじゃない”

マグノリアの冷やかしにもピクリともせず、
デューデューはレイクスに撫でられるままにした。

レイクスはデューデューを撫でて居る間、
何かを感じ取った様な顔をした。

その表情を感じ取ったマグノリアは、

「あの……デューデューは大丈夫ですか?」

そう尋ねると、レイクスはマグノリアに微笑んで、

「この灰色の龍を大切にしなさい」

そう言うと、デューデューはレイクスの腕の中に飛び乗った。

「まあ、デューデュー、早く降りなさい!

貴方いきなり失礼よ!」

マグノリアがデューデューをレイクスの懐から受け取ろうとしたけど、
デューデューはガンとして動かなかった。

「申し訳ありません、普段はこの様なことはしないのですが……」

マグノリアが慌てて謝ると、

「いや、デューデューの魔力が私の魔力と共鳴して居る。

きっとこの魔力がデューデューにとって心地よいのだろう」

レイクスがそう言うと、

「え? デューデュー、貴方、魔力なんてあったの?!」

マグノリアがそう言って驚いた。

「いや、僕もおかしいとは思ってたんだよ。

急に人の言葉が話せる様になるし、
姿消せるし、大きさ変えれるし、どんどん新しい事ができる様になってたから……」

アーウィンがそう言うと、

「デューデューの魔力はもっと成長するだろう」

そうレイクスに言われ、アーウィンもマグノリアも驚くよりも何となく納得した。

レイクスはデューデューを撫でながら、
話を本題に戻した。

「それでは尋ねるが、何故そなた達は地の護り神に関与することが出来たのだ?

普段、神々は人の生活に関与することはしないし、出来ない」

レイクスがそう尋ねると、
アーウィンとマグノリアは良い淀んだ。

二人とも、神々は人と接触をしないと言われ、
どう説明をすれば良いのか理解してもらえるのか分からなかった。

全てはジェイドを通して経験した事だったからだ。

そんな二人の雰囲気を察知したレイクスは

「そなた達の記憶を読ませてもらっても構わないか?」

そう尋ねた。

アーウィンとマグノリアは目を合わせると、

「レイクス様はそのような事が出来るのですか?」

と尋ねた。

レイクスが手のひらを二人に掲げると、
その手のひらがポワッと金色に光出した。

それを見た時二人はジェイドを思い出した。

過去の経験がフラッシュバックし、
マグノリアは涙目になり

「お願いします」

そう言って頷いた。

アーウィンも、

「もし、記憶が読めるのなら、
私たちが説明するよりも正確に伝わると思います。

よろしくお願いします」

そう言うとレイクスはまず先ずアーウィンの頭に手を翳した。

レイクスにはアーウィンとジェイドの出会いから、
デューデューとの出会い。

二人と1匹の幼少期、
マグノリアの来国、恋、メルデーナの奇襲、ジェイドへの奇襲、
デューデューの隠れ家への避難と生活、デューデューとジェイドの地の護り神の次元からの帰還、
デューデューの状態、ジェイドから説明されたメルデーナ、賢者、アーレンハイムの現状。

そして突然の城の奇襲とジェイドとダリルの死と時戻しの術の失敗。

レイクスはアーウィンの記憶を読み終えると、

「大体の事は分かった。

やはり地の神は封印されて居る様だな」

そう言うと、マグノリアがすくさま、

「貴方にはメルデーナの居場所が分かるのですか?!」

と尋ねた。

でもレイクスは顔を顰めると、

「全ての闇が彼女を隠している」

そう言って首を振った。

「全ての闇が彼女を隠して居るって一体どう言う意味ですか?!」

「彼女は暗闇の中にいる。

全てが遮断され、光も入らず右も左も上も下も見えない。

彼女の魔力さえ封印されて居る。

私には彼女が何処に居るのか分からない。

だが彼女が生きて居るのはわかる」

そう言うと、デューデューが横から、

「メルデーナには呪いが掛かっているぞ」

そう言うと、

「デューデューには分かるのですか?」

レイクスが尋ねると、

「私もメルデーナの気は感じ取れる。

それとあの禍々しい気……私はあの気を知って居る……

だが何処で感じたのか覚えていない」

そう言って悔しそうにした。

「あの、レイクス様にはエレノアのことも分かるのですか?」

そうマグノリアが尋ねると、

「アーウィン、神殿にあるあの龍の像……」

レイクスが急にアーウィンに尋ねた。

「え? あの神殿の祭壇のところにある聖龍の像のことですか?」

アーウィンが尋ねると、

「あの像はいつからあそこにあるのだ?」

レイクスがそう尋ねると、アーウィンは頭を捻った。

「私が神殿に仕え始めた時はすでにありました。

私にはいつからあそこにあるのか分かりません。

どうしてですか?」

そう尋ねると、

「いや、あの像が聖龍か確認しただけだ。

そのエレノアだが、彼女もまたその身を隠して居る」

そう言うと、マグノリアが

「身を隠して居る? と言うことはエレノアは無事なのですか?」

そう尋ねると、

「ああ、聖龍は自ら身を隠した。

おそらくこうなる事がわかっていたのだろう。

でも……」

そう言いかけて、

「マグノリア、次は其方の記憶を読ませてもらっても良いか?」

そうマグノリアに尋ねると、マグノリは頷いた。

レイクスはマグノリアの頭に触れた瞬間手をピクッと反応させ

「そなたには矢張り子が宿っておるのか」

そう言うと、マグノリアは自分の腹部に目を落とすと、

「矢張りという事は、王には見ただけで分かるのですか?」

マグノリアが驚いた様に尋ねた。

「そなたの子は魔力の光を放っている。

それが外からでも分かる」

レイクスがそう言うと、マグノリアはデューデューの方を見て、

「デューデュー、貴方分かってたのね!」

そう言って良い寄った。

「光が放たれてるって、もしかしてアーウィンの魔力を引き継いだのかしら?

私には何もないから……

あの……妊娠している事は記憶を読むことに何か問題がありますか?」

そう尋ねるとレイクスは

「いや……」

と一言言ってもう一度手をマグノリアの頭に翳した。

「あぁ……ジェイド……聖龍エレノアに愛されし人の子……

そして古の大賢者に選ばれし魔法の使い手……

やはり其方の腹から放たれる光は……」

そうレイクスが言ったのと同時にポワポワとひかる小さな光玉が
空中に埃の様に浮かび上がり始めた。

その光の玉がシャワーの様にマグノリアに降り注ぐと、
ポンポンと光が弾けて、

「エルフの王よ! 我が緑の王! 我が精霊王!」

そう言って次々と精霊達が生み出され始めた。

その光景をレイクスは見上げると、

”やはりカギとなるのはこの子らか……”

そうぽつりと言った。

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