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急に姿を変えたスーに、
僕が余程驚いた顔をしていたのか、
スーは急に笑い出して、
「ビックリした?」
と悪戯っぽく言った。
「あの……不躾かもしれませんが,
その耳はもしかしてエルフと呼ばれる種族特有の物なのでしょうか?」
恐る恐る尋ねると,
スーは耳を撫でながら、
「そうよ。
私はエルフ族なの。
最もショウと出会った頃は自分の事は人間だって
信じて疑わなかったんだけど……」
彼女のその言葉に僕は、
“???”
とした様な顔をした。
スーは又スーッと今の姿に変わると,
「私も良く分から無いんだけど、
エルフの里であまり良く無い事が起こっていたみたいで、
私の父が人の世界に私を隠したらしいの。
姿を変えてエルフだと分から無い様にして、
私も未だ幼かったからついうっかり私の口から
私がエルフだとバレ無い様に記憶まで消して……」
そう言ってそっと自分の髪を撫でた。
そしてクスッと笑うと,
「でも奇抜でしょ?
ピンク色の髪なんて人には滅多に居無いのに、
お父様も何を考えていたのか……」
そう言ってスーは僕の髪に手を伸ばして来た。
いきなりな事だったので一瞬ピクッとして一歩引いたけど、
スーは真剣に僕の髪を眺めながら、
「翠様も髪の色を変えているのね」
そう言って僕の髪を撫で始めた。
僕はそんなスーの顔を覗き込みながら、
「あの……その翠様って言うのはやめて貰えますか?
聞き慣れ無いので凄くぎこちないんです。
できれば僕の事は翠と……」
そうお願いすると,
「そうね、お慕いしていたお姉様とお兄様の息子さんだから
ついつい畏まってしまったわ」
そう言って僕の頬に手を添えた。
「あの小さかった翠がこんなに大きくなって……」
スーが昔を懐かしんだ様な顔をすると僕は、
「あの……凄く変な質問なのですが、
貴方は僕よりも年上……ですよね?
僕と同じ年頃の子供がいる様には全く見え無いんですけど……」
そう尋ねると,彼女はフフっと笑って、
「やあねえ~ 女性に歳を尋ねる物じゃ無いわよ」
そう言われたので、
僕は真っ赤になった。
“しまった! もしかしてこれは、
僕の未だ知り得無い、口に出してはいけ無い事柄だったのか?!”
そう思ってももう遅い。
僕は気まずそうに、
「あ、いや、すみません!
女性に歳は聞いてはいけ無い事だったんですね!」
慌ててそう言い返すと、
彼女はさして気にして無さそうに、
「大丈夫よ。
そうよね、デューデュー様からこう言う事を学ぶのは
難しいわね。
ずっとデューデュー様と隠れる様に二人で生活していたんでしょう?
もしかしてその髪もカモフラージュの為?」
そう尋ね返して来た。
上目遣いで前髪を見上げ、
視線に入った前髪を指先でチョンとつまむと,
「そうみたいですね?って言うのは、
父さんから僕の銀色の髪は隠していた方が良いと言われ、
この色にしてるんですが……
僕には何故銀色の髪だとダメなのかよく分かってなくて……
この色だと変ですか?」
そう尋ねると,
「ううん、お姉様みたいでとても似合ってるわよ。
銀色の髪も神秘的で素敵だけどねって私と同じ色だから素敵なのは当たり前よね」
そう言ってスーは微笑んだ。
そして僕の髪を見つめ、
「でも……その髪の色だと更にお姉様にそっくりになるから、
お姉様達を亡き者にした人が見たら
それこそお姉様の血縁者って事に気付かれないかしら?」
スーのそのセリフに、
それも一理あるかもと僕は考え込んでしまった。
「そう言えば、デューデュー様は一緒に居無いみたいだけど……
今は何処に?」
と、尋ねられ、
「う~ん、僕にもよく分からなくて……
やらなきゃいけ無い事があるからって、
僕が成人したのを期に何処かへ行ってしまいました。
まあ、呼べばすぐに来てくれるんですが……」
そう言うと,
「まあ、デューデュー様らしいですわね。
ねえ、今夜は此処でお夕食を食べて泊まっていかない?
翠とデューデュー様のこれまでのことを色々と聞きたいわ。
それに目を覚ました時のお姉様の事も色々と気になるし……」
そう言われ、どうしようか迷った。
僕だけの判断では決めれ無い。
そんな僕の反応を悟ったのか、
「皆んなにも聞いてみましょう。
お姉様は起きるには未だしばらくはかかりそうだし、
お姉様に付き添えるメイドを呼んでくるから、
翠はここで待っていて頂戴」
スーはそう言うと,メイドを呼びに行ってしまった。
僕は眠るセシルと部屋に残され深いため息をついた。
急に沢山の新しい情報が頭に入って来て、
僕は混乱を超えて回線が切れそうだった。
ベッドの上でスースーと寝息をさせて眠るセシルを側に、
僕は床に膝を付くと、
セシルの額をそっと指でなぞった。
「セシル…… 何だか一気に色んな事が僕達の上に降り注いできたよね。
さっきまで馬車の中でギャーギャー言い合ってたのに、
君はジェイドの婚約者だったマグノリアで間違いないみたいだね。
それに僕の母親だって!
笑っちゃうよね。
そんな訳無い無いって笑い合ってたのに……
君が僕の母親って……何だか受け入れ難いけど、
君が起きた頃にはその事も思い出してるんだろうね。
凄く不思議だよ。
全て信じ難い事なのに、
気づけば全てを信じて受け入れている僕がいるんだから……
きっと僕の魂が覚えているんだろうね。
そこまでくると、じゃあ、僕の前世は誰?ってなっちゃうけど,
やっぱりジェイドって言う王子の事なのかなあ?
それに僕の父親のアーウィンは何処にいるんだろう?
眠りに入る前の君は凄く彼に会いたがっていたし、
きっと凄く愛してたんだろねえ…
元々はジェイドの婚約者らしかったのに、
何処をどうなったらアーウィンとってなるんだろう?
まあ、君がアーウィンと結ばれてくれなかったら僕は生まれなかった訳だけど……
でもジェイドはそれで良かったのかな?
それともジェイドも誰か愛する人が他にいたのかなあ?
まあ、僕がジェイドだったとするんだったら、
そんな事全然覚えて無いんだけど……
でも時々無性に誰かに会いたくなるんだ……
もしかしたらそれが僕の愛する人だったのかなあ?
だったらその人は何処にいるんだろう?
君はアーウィンを、僕はその人を見つける事が出来るのかな?
ううん、見つけなくちゃだよね」
そんな事を眠り続けるセシルに話しかけていたら、
スーがパタパタとメイドを連れて戻って来た。
「翠、待たせたわね。
この子はマージ。
私がここへお嫁に来た時から私に仕えてくれてる信頼できる人よ。
お姉様が起きたら私達を呼びに来てくれるわ。
じゃあ、マージ、後はお願いね」
スーがそう言うと,マージは
「承知いたしました」
そう言って、お辞儀をした。
僕も慌てて、
「宜しくお願いします!」
そう言うと,マージは微笑んで、
「ご心配に入りません。
セシル様が起きられましたらお呼び致します」
そう言うと,又頭を下げた。
僕もつられて頭を下げると,
部屋にセシルとマージを残し、
皆の待つ客室へと向かった。
マージは見たところ若いとは言え無い。
それを“この子”と呼ぶスーの年齢に
前にもまして興味がで始めた。
でも
“聞くな”
とはっきりクギを刺された身としてはどうしようもない。
“エルフという人種は一体どう言う人達なんだろう?
ピンク色の髪か……
彼女の変化も凄い物だな……
それを考えると,エルフ達も魔法が使えるんだな……
いや、でもそれは魔法になるのか?
僕の染毛は魔法だが、彼女はどちらかと言うと、
父さんが龍から人になる様な感じだったよな?
だとするとそれはスキル?
いや、それも少し違うか?
持って生まれた性質?
と言う事は、あの双子の息子達も彼女の様に変化出来るのだろうか?”
そんな感じで僕はスーのピンク色の髪を後ろから眺めながら、
そんな事を頭の中でグルグルと考えていた。
最初に通された部屋に近づくと,
部屋からは大きな笑い声が聞こえて来た。
「あら、皆んなはくつろいでいる様ね。
ショウが又龍の話をしているのかしら?
彼の龍バカには困ったものがあるからね~」
そう言ってスーが頭に手を置いてフ~っとした様な顔をした。
「そう言えばこちらの龍は帝都では有名なんですね。
帝都に入り龍が空を飛んでるの見た時は度肝を抜かれましたが……」
僕がそう言うと,
スーがクルッと振り返って、
「でしょう?!
普通驚くわよね?!
マグノリアお姉様がね、よく言ってたのよ。
ショウは龍バカだって!
普通、龍を見ると、人は逃げるものでしょう?
後で学んだんだけど,
龍ってとても知能が高くて獰猛なんですってね。
お姉様ったら、そんな龍達を猫の子を追いかけ回す様に
目をハートにして追いかけ回すショウなんて、
変態以外の何者でも無いって!
本当に彼と結婚しても良いの?!ってね……」
スーがそう言うと僕は、
「それって確かに今のセシルでも良いそうな事だよね。
性格ってやっぱり受け継がれてるのかな?
そう考えると、
やっぱりセシルは……」
そう思うと,再度納得せざるを得なかった。
スーはニコッと笑うと,
「セシルは生まれ変わっても、
性格もそのままお姉様なんですね」
そう言うと,
「私,実は初めて会った龍がデューデュー様だったんだけど、
かえってそれが良かったのかも?
だって、ショウ達の龍をちっとも怖いと感じなかったんだもの。
ショウの龍達が初めての対面だったら、
私もここまで龍に親しみを持てなかったかも!
そう言う意味ではデューデュー様との出会いは特別だったわね。
まあ、未だ人の言葉が話せて人に姿を変えれる龍は
見た事がないし、聞いた事もないんだけど,
それだけデューデュー様が素晴らしい龍だって事よね。
人の子も育てられるし、
貴方を見ていれば、
デューデュー様が立派な父親たと言う事が分かるわ。
あ~本当に、デューデュー様にもお会いしたいわ」
そう言ってスーは客室の扉を開いた。
するとびっくりした事に父さんがそこで
出されたクッキーをボリボリと食べているでは無いか!
「と……父さん?!」
ビックリして駆け寄ると,
父さんの足元にはショウがひれ伏した様に床に膝を付き、
父さんの足にスリスリと自分の頬を擦り付けていた。
父さんがいた事にも驚いたが、
僕はショウが父さんにそんな姿を晒していた事にもっと驚いた。
「あ……あの……一体これは……」
唖然とした様にそう言うと,
“ほら、これで私の言った意味がわかったでしょ?
お姉様もこれを見ていつも私に囁いてたのよ”
そう言ってスーが肩を窄めた。
父さんはそんなショウを足蹴にするとスッと立ち上がり、
「翠! 久しぶりだな!」
そう言いながら僕の方へと歩いて来た。
“久しぶりだなって……
数日前に会ったばかりなのに……”
そんな事を思っていると,
僕の目の前に立った父さんの顔を見て、
プッと吹き出してしまった。
“クッキーのカスが口元についてるよ”
そう言って父さんの口元を手でパッパと払った。
父さんはクッキーを前にすると
威厳がなくなる。
向こうではショウが
「あっ……デューデュー様!」
そう言いながらスッと立ち上がり、
父さんの横へとやって来た。
父さんはそんなショウを手で押しやると,
「お前は息子との再会もゆっくりとさせてくれ無いのか!
あっちへ行って座っていろ!
スーこいつをどうにかしてくれ」
父さんにそう言われ、スーはショウの腕をガシッと掴み取り、
「さあ、ショウは私と台所へ行って
コック長と一緒に今夜のご馳走でも考えましょう!
今日は皆さん、夕食をして行ってくださるでしょう?
それによければ泊まって行ってくださいね」
スーのそのセリフに皆大喜びで、
「是非!」
と賛成した。
僕はスーに引かれて去って行くショウを見ながら、
”スーって凄いね。
あんなに大きなショウを片手で引いていくなんて……“
父さんにそうボソッと言うと、
「ああ、あれの母親は戦士の家系だからな」
そう父さんが返した。
「よく知ってるね?」
そう言うと,
「まあ、アイツらとも長い付き合いだからな」
そう言って父さんが腕を組んだ。
僕は父さんはを見上げると,
「ねえ、数日前に会ったばかりなのに今日はどうしたの?
まだやる事があったんじゃ無いの?」
そう尋ねると,
「私の行先が決まったから思うことあり、お前に合流しようと思った。
まあ、いつかはここへも来る事になるだろうと思ったが、
それにしても良くこんなにも早くショウの家まで辿り着けたな。
矢張りこれは運命というものか……?」
そう言われ、
「え? それってどういう意味?」
と尋ね返した。
父さんは僕を見下ろすと,
「いや、これからどんどんわかってくるさ。
それよりセシルに異変が起こった様だな」
父さんはセシルの居る部屋の方を見ると,
「翠、実は私はサンクホルムと言う国へ行く必要が出たのだが、
お前も一緒来たほうがいいと思いここへ来た」
そう言い始めた。
僕は目を見開くと,
「実を言うと,僕達もこの国を出た後は、
サンクホルムと言う国へ向かおうとしていたんだ」
そう言うと父さんは驚いた様な顔をして、
「サンクホルムへ?」
そう尋ねた。
僕はローティを指さすと,
「実を言うとね,
ローティはサンクホルム出身なんだ。
それで色々と話をしているうちに、
何だかサンクホルムへ行かなくちゃいけ無い様な気がして……」
そう言うと父さんは、
「そうか、そうだな。
矢張りそうなるのだろうな」
そう言って何だか納得した様な顔をしていた。
僕は不思議そうに父さんの顔を覗き込むと,
「父さんの探し物もサンクホルムと言う国にあるの?」
そう尋ねると,
「どうやらそうらしい……
所でお前は何故ここへ来る事になったんだ?」
そう尋ね返したので、
「実はこの国の第三王子に会う必要があって……
それであの山越えで僕達を助けたグループがこの家にゆかりがあると聞いて、
皇室に所縁のある侯爵家だと噂に聞いたから、
もしかしたら王子に会う橋がけになってくれ無いか尋ねようと思って……
それに山で助けてもらった彼にもお礼が言いたくて……」
そう言うと,父さんは奇妙な顔した。
「変な顔をしてどうしたの?」
そう尋ねると,父さんは今まで見た事もない様な顔をして、
「そうか、そう言うことか……
段々とパズルのピースがはまりだしたな……
と言う事は……私の探し物も見つかりそうだな……」
そう言って僕の肩をポンと叩いた。
僕が余程驚いた顔をしていたのか、
スーは急に笑い出して、
「ビックリした?」
と悪戯っぽく言った。
「あの……不躾かもしれませんが,
その耳はもしかしてエルフと呼ばれる種族特有の物なのでしょうか?」
恐る恐る尋ねると,
スーは耳を撫でながら、
「そうよ。
私はエルフ族なの。
最もショウと出会った頃は自分の事は人間だって
信じて疑わなかったんだけど……」
彼女のその言葉に僕は、
“???”
とした様な顔をした。
スーは又スーッと今の姿に変わると,
「私も良く分から無いんだけど、
エルフの里であまり良く無い事が起こっていたみたいで、
私の父が人の世界に私を隠したらしいの。
姿を変えてエルフだと分から無い様にして、
私も未だ幼かったからついうっかり私の口から
私がエルフだとバレ無い様に記憶まで消して……」
そう言ってそっと自分の髪を撫でた。
そしてクスッと笑うと,
「でも奇抜でしょ?
ピンク色の髪なんて人には滅多に居無いのに、
お父様も何を考えていたのか……」
そう言ってスーは僕の髪に手を伸ばして来た。
いきなりな事だったので一瞬ピクッとして一歩引いたけど、
スーは真剣に僕の髪を眺めながら、
「翠様も髪の色を変えているのね」
そう言って僕の髪を撫で始めた。
僕はそんなスーの顔を覗き込みながら、
「あの……その翠様って言うのはやめて貰えますか?
聞き慣れ無いので凄くぎこちないんです。
できれば僕の事は翠と……」
そうお願いすると,
「そうね、お慕いしていたお姉様とお兄様の息子さんだから
ついつい畏まってしまったわ」
そう言って僕の頬に手を添えた。
「あの小さかった翠がこんなに大きくなって……」
スーが昔を懐かしんだ様な顔をすると僕は、
「あの……凄く変な質問なのですが、
貴方は僕よりも年上……ですよね?
僕と同じ年頃の子供がいる様には全く見え無いんですけど……」
そう尋ねると,彼女はフフっと笑って、
「やあねえ~ 女性に歳を尋ねる物じゃ無いわよ」
そう言われたので、
僕は真っ赤になった。
“しまった! もしかしてこれは、
僕の未だ知り得無い、口に出してはいけ無い事柄だったのか?!”
そう思ってももう遅い。
僕は気まずそうに、
「あ、いや、すみません!
女性に歳は聞いてはいけ無い事だったんですね!」
慌ててそう言い返すと、
彼女はさして気にして無さそうに、
「大丈夫よ。
そうよね、デューデュー様からこう言う事を学ぶのは
難しいわね。
ずっとデューデュー様と隠れる様に二人で生活していたんでしょう?
もしかしてその髪もカモフラージュの為?」
そう尋ね返して来た。
上目遣いで前髪を見上げ、
視線に入った前髪を指先でチョンとつまむと,
「そうみたいですね?って言うのは、
父さんから僕の銀色の髪は隠していた方が良いと言われ、
この色にしてるんですが……
僕には何故銀色の髪だとダメなのかよく分かってなくて……
この色だと変ですか?」
そう尋ねると,
「ううん、お姉様みたいでとても似合ってるわよ。
銀色の髪も神秘的で素敵だけどねって私と同じ色だから素敵なのは当たり前よね」
そう言ってスーは微笑んだ。
そして僕の髪を見つめ、
「でも……その髪の色だと更にお姉様にそっくりになるから、
お姉様達を亡き者にした人が見たら
それこそお姉様の血縁者って事に気付かれないかしら?」
スーのそのセリフに、
それも一理あるかもと僕は考え込んでしまった。
「そう言えば、デューデュー様は一緒に居無いみたいだけど……
今は何処に?」
と、尋ねられ、
「う~ん、僕にもよく分からなくて……
やらなきゃいけ無い事があるからって、
僕が成人したのを期に何処かへ行ってしまいました。
まあ、呼べばすぐに来てくれるんですが……」
そう言うと,
「まあ、デューデュー様らしいですわね。
ねえ、今夜は此処でお夕食を食べて泊まっていかない?
翠とデューデュー様のこれまでのことを色々と聞きたいわ。
それに目を覚ました時のお姉様の事も色々と気になるし……」
そう言われ、どうしようか迷った。
僕だけの判断では決めれ無い。
そんな僕の反応を悟ったのか、
「皆んなにも聞いてみましょう。
お姉様は起きるには未だしばらくはかかりそうだし、
お姉様に付き添えるメイドを呼んでくるから、
翠はここで待っていて頂戴」
スーはそう言うと,メイドを呼びに行ってしまった。
僕は眠るセシルと部屋に残され深いため息をついた。
急に沢山の新しい情報が頭に入って来て、
僕は混乱を超えて回線が切れそうだった。
ベッドの上でスースーと寝息をさせて眠るセシルを側に、
僕は床に膝を付くと、
セシルの額をそっと指でなぞった。
「セシル…… 何だか一気に色んな事が僕達の上に降り注いできたよね。
さっきまで馬車の中でギャーギャー言い合ってたのに、
君はジェイドの婚約者だったマグノリアで間違いないみたいだね。
それに僕の母親だって!
笑っちゃうよね。
そんな訳無い無いって笑い合ってたのに……
君が僕の母親って……何だか受け入れ難いけど、
君が起きた頃にはその事も思い出してるんだろうね。
凄く不思議だよ。
全て信じ難い事なのに、
気づけば全てを信じて受け入れている僕がいるんだから……
きっと僕の魂が覚えているんだろうね。
そこまでくると、じゃあ、僕の前世は誰?ってなっちゃうけど,
やっぱりジェイドって言う王子の事なのかなあ?
それに僕の父親のアーウィンは何処にいるんだろう?
眠りに入る前の君は凄く彼に会いたがっていたし、
きっと凄く愛してたんだろねえ…
元々はジェイドの婚約者らしかったのに、
何処をどうなったらアーウィンとってなるんだろう?
まあ、君がアーウィンと結ばれてくれなかったら僕は生まれなかった訳だけど……
でもジェイドはそれで良かったのかな?
それともジェイドも誰か愛する人が他にいたのかなあ?
まあ、僕がジェイドだったとするんだったら、
そんな事全然覚えて無いんだけど……
でも時々無性に誰かに会いたくなるんだ……
もしかしたらそれが僕の愛する人だったのかなあ?
だったらその人は何処にいるんだろう?
君はアーウィンを、僕はその人を見つける事が出来るのかな?
ううん、見つけなくちゃだよね」
そんな事を眠り続けるセシルに話しかけていたら、
スーがパタパタとメイドを連れて戻って来た。
「翠、待たせたわね。
この子はマージ。
私がここへお嫁に来た時から私に仕えてくれてる信頼できる人よ。
お姉様が起きたら私達を呼びに来てくれるわ。
じゃあ、マージ、後はお願いね」
スーがそう言うと,マージは
「承知いたしました」
そう言って、お辞儀をした。
僕も慌てて、
「宜しくお願いします!」
そう言うと,マージは微笑んで、
「ご心配に入りません。
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そう言うと,又頭を下げた。
僕もつられて頭を下げると,
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皆の待つ客室へと向かった。
マージは見たところ若いとは言え無い。
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前にもまして興味がで始めた。
でも
“聞くな”
とはっきりクギを刺された身としてはどうしようもない。
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それを考えると,エルフ達も魔法が使えるんだな……
いや、でもそれは魔法になるのか?
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だとするとそれはスキル?
いや、それも少し違うか?
持って生まれた性質?
と言う事は、あの双子の息子達も彼女の様に変化出来るのだろうか?”
そんな感じで僕はスーのピンク色の髪を後ろから眺めながら、
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「あら、皆んなはくつろいでいる様ね。
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そう言ってスーが頭に手を置いてフ~っとした様な顔をした。
「そう言えばこちらの龍は帝都では有名なんですね。
帝都に入り龍が空を飛んでるの見た時は度肝を抜かれましたが……」
僕がそう言うと,
スーがクルッと振り返って、
「でしょう?!
普通驚くわよね?!
マグノリアお姉様がね、よく言ってたのよ。
ショウは龍バカだって!
普通、龍を見ると、人は逃げるものでしょう?
後で学んだんだけど,
龍ってとても知能が高くて獰猛なんですってね。
お姉様ったら、そんな龍達を猫の子を追いかけ回す様に
目をハートにして追いかけ回すショウなんて、
変態以外の何者でも無いって!
本当に彼と結婚しても良いの?!ってね……」
スーがそう言うと僕は、
「それって確かに今のセシルでも良いそうな事だよね。
性格ってやっぱり受け継がれてるのかな?
そう考えると、
やっぱりセシルは……」
そう思うと,再度納得せざるを得なかった。
スーはニコッと笑うと,
「セシルは生まれ変わっても、
性格もそのままお姉様なんですね」
そう言うと,
「私,実は初めて会った龍がデューデュー様だったんだけど、
かえってそれが良かったのかも?
だって、ショウ達の龍をちっとも怖いと感じなかったんだもの。
ショウの龍達が初めての対面だったら、
私もここまで龍に親しみを持てなかったかも!
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それだけデューデュー様が素晴らしい龍だって事よね。
人の子も育てられるし、
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あ~本当に、デューデュー様にもお会いしたいわ」
そう言ってスーは客室の扉を開いた。
するとびっくりした事に父さんがそこで
出されたクッキーをボリボリと食べているでは無いか!
「と……父さん?!」
ビックリして駆け寄ると,
父さんの足元にはショウがひれ伏した様に床に膝を付き、
父さんの足にスリスリと自分の頬を擦り付けていた。
父さんがいた事にも驚いたが、
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「あ……あの……一体これは……」
唖然とした様にそう言うと,
“ほら、これで私の言った意味がわかったでしょ?
お姉様もこれを見ていつも私に囁いてたのよ”
そう言ってスーが肩を窄めた。
父さんはそんなショウを足蹴にするとスッと立ち上がり、
「翠! 久しぶりだな!」
そう言いながら僕の方へと歩いて来た。
“久しぶりだなって……
数日前に会ったばかりなのに……”
そんな事を思っていると,
僕の目の前に立った父さんの顔を見て、
プッと吹き出してしまった。
“クッキーのカスが口元についてるよ”
そう言って父さんの口元を手でパッパと払った。
父さんはクッキーを前にすると
威厳がなくなる。
向こうではショウが
「あっ……デューデュー様!」
そう言いながらスッと立ち上がり、
父さんの横へとやって来た。
父さんはそんなショウを手で押しやると,
「お前は息子との再会もゆっくりとさせてくれ無いのか!
あっちへ行って座っていろ!
スーこいつをどうにかしてくれ」
父さんにそう言われ、スーはショウの腕をガシッと掴み取り、
「さあ、ショウは私と台所へ行って
コック長と一緒に今夜のご馳走でも考えましょう!
今日は皆さん、夕食をして行ってくださるでしょう?
それによければ泊まって行ってくださいね」
スーのそのセリフに皆大喜びで、
「是非!」
と賛成した。
僕はスーに引かれて去って行くショウを見ながら、
”スーって凄いね。
あんなに大きなショウを片手で引いていくなんて……“
父さんにそうボソッと言うと、
「ああ、あれの母親は戦士の家系だからな」
そう父さんが返した。
「よく知ってるね?」
そう言うと,
「まあ、アイツらとも長い付き合いだからな」
そう言って父さんが腕を組んだ。
僕は父さんはを見上げると,
「ねえ、数日前に会ったばかりなのに今日はどうしたの?
まだやる事があったんじゃ無いの?」
そう尋ねると,
「私の行先が決まったから思うことあり、お前に合流しようと思った。
まあ、いつかはここへも来る事になるだろうと思ったが、
それにしても良くこんなにも早くショウの家まで辿り着けたな。
矢張りこれは運命というものか……?」
そう言われ、
「え? それってどういう意味?」
と尋ね返した。
父さんは僕を見下ろすと,
「いや、これからどんどんわかってくるさ。
それよりセシルに異変が起こった様だな」
父さんはセシルの居る部屋の方を見ると,
「翠、実は私はサンクホルムと言う国へ行く必要が出たのだが、
お前も一緒来たほうがいいと思いここへ来た」
そう言い始めた。
僕は目を見開くと,
「実を言うと,僕達もこの国を出た後は、
サンクホルムと言う国へ向かおうとしていたんだ」
そう言うと父さんは驚いた様な顔をして、
「サンクホルムへ?」
そう尋ねた。
僕はローティを指さすと,
「実を言うとね,
ローティはサンクホルム出身なんだ。
それで色々と話をしているうちに、
何だかサンクホルムへ行かなくちゃいけ無い様な気がして……」
そう言うと父さんは、
「そうか、そうだな。
矢張りそうなるのだろうな」
そう言って何だか納得した様な顔をしていた。
僕は不思議そうに父さんの顔を覗き込むと,
「父さんの探し物もサンクホルムと言う国にあるの?」
そう尋ねると,
「どうやらそうらしい……
所でお前は何故ここへ来る事になったんだ?」
そう尋ね返したので、
「実はこの国の第三王子に会う必要があって……
それであの山越えで僕達を助けたグループがこの家にゆかりがあると聞いて、
皇室に所縁のある侯爵家だと噂に聞いたから、
もしかしたら王子に会う橋がけになってくれ無いか尋ねようと思って……
それに山で助けてもらった彼にもお礼が言いたくて……」
そう言うと,父さんは奇妙な顔した。
「変な顔をしてどうしたの?」
そう尋ねると,父さんは今まで見た事もない様な顔をして、
「そうか、そう言うことか……
段々とパズルのピースがはまりだしたな……
と言う事は……私の探し物も見つかりそうだな……」
そう言って僕の肩をポンと叩いた。
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処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
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