龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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帰って来た人

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「皆様,それでは今夜のお部屋へご案内致しますね。

お一人ずつお部屋をご用意致しましたので、
皆様,私について来ていただけますか?」

夕食の計画を料理長と話し合った後、
スーが又客室に戻って来た。

父さんにベタベタとくっ付いていたショウは、
皇帝に呼び出されたらしく、
ブウブウと言いながら出て行った様だ。

彼のことは未だよくわから無いが、
父さんの事が大好きだという事は分かった。

それも変態的に……

でも父さんは慣れているのか、
ショウのそんな変態ぶりにも物怖じともせず,
ショウは侯爵家当主だというのに無下にも足蹴にしていた。

僕はその時のやり取りを思い出すだけで
笑いが込み上げて来そうになり,
その度にグッと息を止めた。

「翠?」

スーの問いに慌てて、

「あ、はい? 何でしょう?!」

と答えた瞬間声が裏返った。

スーはクスッと笑った後,

「えーっと、皆様には三階のお部屋を使って頂くのですが、
セシルは2階のお部屋にいますので,
翠はどうしますか?

彼女のお隣の部屋にしますか?

それとも三階の皆さんと一緒の階が良いですか?

2階には客室が後、一部屋しかないのですが、
そうなるとデューデュー様とは離れてしまいますが……」

スーがそう説明すると,

「私は翠と同じ部屋で良い。

セシルの隣を私と翠用に準備してくれ」

と父さんに言われ、

「あら、それで宜しいのですか?

お二人で使うには少し狭いんじゃないかしら?」

そう返すスーに、

「貴族のお前たちの感覚と同じにするでない。

セシルの部屋の隣は私が翠を連れて来た時に泊まった部屋だろう?

あそこはさっきの客室よりも広いではないか。

ベッドも私の様な体格の男が3人ほど寝れる様な大きさだったぞ」

そういう父さんの言葉に僕の頭はぐるぐると、

“どんな広さだ?!”

とそんな思いが急速に巡り始めた。

さっきの客室もかなり広かった。

僕達7人が入っても、
全然息苦しさを感じさせなかった。

それどころかスイスイと動き回ることさえ出来た。

父さんの言う様に貴族とは僕達とは何もかも感覚的に違いそうだ。

「それでは翠とデューデュー様は、
ここを真っ直ぐ行った左側のお部屋になりますので、
そちらはデューデュー様にお任せしても良いですか?

私は皆様を三階のそれぞれのお部屋へと案内して参ります。

食事の準備ができるまでそれぞれのお部屋でゆっりとお寛ぎ下さい。

それと,それぞれのお部屋には備え付きのバスとトイレが有ります。

今夜の寝着もベッドの上にご用意してありますので、
他にも必要なものがあったら遠慮せずに声を掛けてくださいね」

スーはそう言い残すと,
他の者達を三階の客室へと連れて行った。

僕は父さんを見ると,

「ほら! やっぱり僕は此処へ来た事があるじゃ無いか!」

そう言って父さんに迫ると,
父さんは僕をチラッと見て、

「だが、スーが理由を説明しただろう?」

そう言いながらスタスタと僕達の部屋へと歩き出した。

「父さん,父さんと別れて未だ少ししか経って無いけど,
僕は凄く沢山の事を学んだんだよ。

今夜こそは色々と話してもらうからね!

疑問に思う事が沢山出て来たんだ!」

そう言い返すと,

「フン、では今夜はじっくりと
お前の成長の過程でも見させて貰おうか」

と父さんは鼻で笑いながらそう言うと,
セシルの部屋のドアに手を掛けた。

「あ、父さん,そこはセシルの部屋だよ」

慌ててそう言うと,

「知ってるわ!

少しあの小娘の顔でも見てみようと思ってな」

父さんはそう言うと,

キ~っとセシルの寝室のドアをそっと開けた。

「フフン、よく眠っておるな」

父さんはそう言うと,
スタスタとセシルの眠るベッドの横へと歩いて行った。

僕も気になって父さんの後ろから彼女を覗き込むと,

“本当に覚醒の為の過去巡りをしてるのか?!”

と問うほど、
彼女は安らかな顔で、
眉一つ動かさずにスースーと寝ていた。

僕は父さんの横に並ぶと,

“ねえ、スーがセシルは前世を思い出す旅に出てるって言ってたけど,
本当にそうなの?

それにしては寝顔が安らか過ぎじゃ無い?!

彼女、前世では殺されたんでしょ?!

良くこんな寛いだ顔してられるね?”

そう囁くと,
父さんは僕の方をじっと見て、

「コイツらにも楽しく過ごした時期はあったんだ……」

そう言って又セシルの方を見た。

“ねえ、父さんはマグノリアだった彼女の事も良く知ってるんでしょ?”

そう尋ねると,

「何だ,もうそこまで分かってるのか?」

そう父さんが返した。

“いや、分かってるって言うか,
此処までくると,受け入れるしか無いかな?って感じなんだけど、
スーはセシルを見て直ぐにマグノリアだって分かったらしいよ?”

そう言うと父さんはフッと微笑んで、

「あ~そうだったな、
アイツは……」

そう来たので、

“ねえ、エルフってどう言う人種なの?

何故彼女はセシルを一目見てマグノリアだって分かったの?

父さんは知ってるんでしょ?”

そう尋ねた。

父さんは近くにあった椅子を持ってくると,

「まあ座りなさい。

しばらくは此処でセシルの様子を見ていよう」

そう言って父さんは持って来た椅子に座った。

僕も父さんから差し出された椅子に腰掛けると,

「エルフ達の中にも色んな種類がいるが、
スーは一番位の高いハイエルフという人種だ」

そう話し始めた。

”ハイエルフ?“

初めて聞く種族名に僕は首を傾げた。

「お前はスーがエルフであるという事は既に聞いているんだろ?」

父さんの問いに僕は頷いた。

僕が頷くと父さんは,

「エルフという種族は普段は人の前に姿を現さ無い。
時々変わり種が逸れエルフとして人の中に混じっているが、
エルフは普段はエルフの里で暮らしている」

とエルフについて話し始めた。

”エルフの里?“

僕が繰り返すと父さんは頷いて、

「私は行った事はないが……と言うか、
エルフ以外は誰も行く事はでき無いとされているのだが、
それが本当かは定かではない。

だがエルフの里は有りと凡ゆる自然界の力を借りて、
精霊達がその力を行使してこの世界から隠していると言われている。

現にエルフの王は精霊王とも呼ばれているしな」

そう言って僕を真っ直ぐ見た。

“じゃあスーは精霊の力が使えるって事?

精霊の力ってどんな物なの?

それを使ってセシルがマグノリアだったって分かったの?”

そう尋ねると,

「魔法の基本は精霊の力だって前教えただろう?

エルフはその力を駆使する事が出来る。

元を正すと精霊の力はエルフの為の力なのだからな。

そんな力を持つスーがセシルの気を読むのは絶やす事だ。

マグノリアと同じ物だからな」

その答えに僕は納得せざるを得なかった。

でもそんな凄いエルフのスーが
何故人の世界に居るのか未だ理解できなかった。

”ねえ、エルフの世界がそんなだったら、
何故スーはこの世界に居るの?

彼女は逸れエルフなの?!“

そう疑問に思い尋ねると,
父さんは首を横に振った。

僕が

”どうして?!“

と言う顔をして父さんに近づくと、

「スーはエルフ王の娘だ」

と言う父さんの言葉に僕はもう少しで大声を上げそうになった。

”エルフ界のプリンセス?!

そんな存在のエルフの姫がどうして?!

それに人と結婚?!

それも……変……あ、いや、ショウと?!

エルフの王は反対しなかったの?!“

矢継ぎ早にそう尋ねると,
父さんはフッと微笑んで首を振った。

“そもそも、何故里を出ないエルフのスーが此処に?

それも姫のスーが?!”

僕が眉間に皺を寄せ首を捻ると,

「エルフの世界も色々とあるんだ。

人間も一緒だろう?

龍だってそうだ」

父さんのその答えは最もだけど,
僕には何故か解せ無いものがあった。

そうしていると,
いきなりセシルが

“クスクス”

と笑い始めた。

父さんはそんなセシルの顔を覗き込むと,

「フム……セシルはまだ暫くは掛かりそうだな……」

そう言いながらフ~っと深いため息をついた。

そんな父さんを見て、

「父さんも疲れていそうだね?

部屋へ行って一休みする?」

そう尋ねると,キ~っとそっと寝室のドアの開く音がした。

ドアの方を振り返ると,
スーがスッと静かにドアの間をすり抜けて来た。

「矢張り此方にいらしたんですね。

セシル様の調子は如何ですか?」

そう尋ねながらセシルの顔を覗き込んだ。

僕は今さっき父さんに聞いた、

“エルフの姫”

と言う言葉が頭の中を巡って、
セシルの顔を覗くスーの顔をじっと見た。

そんな僕の視線に気づいたスーは、

「私の顔をジロジロと見てどうしたの?」

そう僕に尋ねて来た。

僕は慌てて目を逸らすと,

「あ、いや、あの……」

そう言って言い淀んだけど,

「私が少し前にお前がエルフの姫だと言う事を翠に話したばかりだったんだ。

きっとその為だろう」

そう言って父さんが横から割り込んできた。

スーはフフっと微笑むと,

「あら、そうだったんですね。

ビックリしましたか?」

そう言っておどけた様にした。

「いや、びっくりも何も、
僕自身エルフの事よく分かっていなくて……

エルフの姫が人と結婚しても良かったのかな?って……」

そうポツリと言うと,スーも呑気なもので、

「良いんじゃないの?

実際にできたんだし!

子供も産まれたし、問題は無かったわね。

でも問題があるとすると一つ……」

そう言って彼女は口を閉じた。

僕が

“???”

とした様な顔をすると,

「エルフ達は半永久に生きるんだ」

そう父さんが横から割り込んできた。

「え? 半永久? 半永久って永遠って事?!

それって凄くない?!

どうしてそれが問題なの?!」

僕が驚いた様にそう尋ねると,

「エルフ達はかなり長生きなの……

だからショウとは……」

そうスーが悲しそうに答えたので,

僕はそれを悟って、

“あっ……“

っと呟いてしまった。

”でも長生きって100歳……くらい?

それだったら少し我慢すれば……“

スーを慰めようとそう答えると直ぐ様父さんが笑い出した。

”え? 何がそんなに可笑しいの?!

それに父さん!そんな大声で笑うと、
セシルが起きちゃうよ!“

そう言うと父さんはセシルをチラッと見て、

「いや、大丈夫だろう。

普通こう言った眠りについている時は、
それが終わるまでどんなに揺らしても起き無い」

そう言ってセシルのおでこをピンと弾いた。

そうすると、急にセシルが顔を歪め始めた。

”ほら! 父さんの言う事は違うよ。

見て! セシルに顔が歪み始めたよ!

きっと痛かったんだ!“

そう言うと,

「いや、これはきっと夢の中で次の章に入ったんだろう……

差し詰め、ジェイドが死んだ……と言うところか……」

そう父さんが言って少し赤くなったセシルの額を撫でた。

僕はグッと拳に力を入れると,

「ねえ、父さんはセシルが生まれる前に起きた事を全部見て来たんだよね?

どうしてもそれは教えられ無いの?」

そう尋ねると,
父さんは首を振って、

「前にも話した様に、
それはお前が今のセシルの様に過去を旅して
思い出さなくてはいけ無い事だ」

そう言って僕の両手を取った。

「どうして?

どうして聞いたらダメなの?!」

そう尋ねると,

「セシルが目覚めるのを待ってみなさい。

そうすればお前も何故なのか分かるだろう」

そう言って僕の頬を撫でた。

その時また誰かがセシルの部屋のドアを開けて中に入って来た。

”デューデュー様~

デューデュー様は此方にいらっしゃいますか~?“

囁く様な父さんを探すその声はショウだった。

「あら、もう帰っていらしたの?」

スーがそう尋ねると,

「あー実を言うと……」

そう言ってショウが僕をチラッと見た。

何だろうと思ったけど、
彼は直ぐに会話を変え、

「子供達も戻って来たよ。

デューデュー様は子供達に会うのは久しぶりですよね。

彼らもとても興奮してますので、
直ぐに駆け上がって来るとは思いますが、
そうでなければ翠様には夕食の時にでも紹介致しましょう。

その時に大事な話も……」

ショウがそう言っていると案の定,
廊下の方からバタバタと足音が聞こえ,

「デューデューが来てるんだって?!」

と若い男性の声がした。

それに続き、

「あ、龍星! 今は……!」

と同じ様な声がまた響いた。

そばにいたスーは、

「もう! 又龍星と龍輝が喧嘩してるわ!

本当にいつまで経ってもあの子達は!」

そう言って席を立ったのと同時にドアが開いて、
見覚えのある顔二つが部屋の中へと入って来た。
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