龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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龍星と龍輝

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「デューデュー!」

と元気よく入って来たその人は、
セシルの部屋にいた人達が一斉にドアの方を見ると,

「あ、 ごめん、先客がいたんだ」

と悪びれも無く、
そう謝りながらキョロキョロと部屋を見回した。

“彼は……”

そう思ったのと同時に、

“だから言っただろ!

何故お前はいつも俺の言葉を無視するんだ!“

と囁きながらもう一人、
先に部屋へ入って来た彼を止める様にその腕を掴んだ。

「龍輝、離せよ!

お前だってデューデューに会いたいって言ってただろ?!」

先に来た彼はそうぶっきらぼうに言い放つと、
掴まれた腕を振り解いた。

”やっぱり彼が龍星で、
後から来たのが龍輝だ……“

耳の形の違いを見たわけではないけど、
直ぐに二人の見分けがついた。

二人ともそっくりで華のある顔立ちをしているけど,
何故か龍輝の方に目を奪われてしまう。

ジロジロと顔を見るのも悪いので、
上目遣いにチラチラと二人を伺っていると,

「龍星! 貴方は何度言ったら立場を弁えるの!

龍輝の言う様にお客様とお会いしたら、
挨拶が先でしょう?!

それに此処にはレディーが訳あって休んでおられるのよ?!

此処に来るまでにちゃんと通達はあった筈よ!

貴方はフジワラ家の跡取りなんだからちゃんとしなさい!」

そう言ってスーがガミガミと龍星を叱り始めた。

龍星や龍輝よりも年下に見えるスーが、
龍星を母親の様に説教する姿は何だかチグハグで
彼女が二人の母親というのは何だか信じられない。

ギャーギャー言い合う二人の合間を縫って、
一歩後ろに立っていた龍輝に目をやった途端、
彼と目があって僕はサッと目を逸らした。

何故か心臓がドキンと跳ねてドクドク、ドクドクと
早鐘の様に脈打ちし始めた。

“え?! 何この心臓の速さ……

もしかして心臓の病気?!”

これまでそんな事を経験した事の無かった僕は、
胸を押さえながらゆっくりと深呼吸した。

“あっ……

治って来た……

大丈夫みたいだな?

一体さっきのは何だったんだろう?!”

そんな事を考えていると,
横ではスーと言い合いを終えた龍星が、

「デューデュー! 会いたかった!

どうして今まで訪ねて来てくれなかったんだ!」

そう言って父さんに飛び付いた。

それにビックリした僕が

「僕の父さんに何をするだ!」

そう言って龍星を引き剥がそうとすると,
皆がビックリした様にして僕を見た。

龍星はそんな僕をニヤッとして見ると,

「な~んだ、お前,未だ親離れ出来ないでいるのか?!

ハハハ、お子ちゃまだな~

もしかしてまだオムツ履いてるのか~?」

そう言って僕を揶揄い始めた。

確かに龍星が父さんに抱きついたところを見て
ムカっと来た。

僕の父さんなのに馴れ馴れしいと少し腹が立った。

こんな感情も今まで感じた事がない。

「僕は赤ちゃんじゃない!

僕の父さんに気安く触るな!」

そう言って流星に歯向かうと、

「お前、父親を取られたくないと駄々を捏ねる子供みたいじゃないか?

嫉妬か~? そうだよな?

やっぱりお子ちゃまだな」

そう言って僕に指差して胸をトンと押した。

そんな龍星をスーが父さんからベリっと引き離すと、

「龍星! 貴方はお客様に挨拶も出来ないの!

それに、よそ様の子を揶揄うなんて以ての外です!

そんな息子に育てた覚えはありませんよ!」

そう言って龍星の尻をバシンと叩くと,
その音でハッとして自分も挨拶が済んでないことに気付いた。

幾ら揶揄われたと言っても相手は貴族。

僕は此処へ来るまでに貴族と平民の違いを
セシルとローティに耳にタコが出来るほど聞いた。

僕は膝を折ると,

「あ、僕は翠と申します。

初めてお目に掛かります」

気を取り直しそう挨拶すると,

「知ってるよ、デューデューの息子の翠だよね?

お前、前にも子供の頃に此処に来たことあるよな?

まあ、挨拶はしてないけどな」

龍星はそうそっけなく言ってまた父さんの方を見た。

その瞬間、スパーンという音がして僕は目をぱちくりとしてその光景を見守った。

「イテ! 何で叩くんだよ!」

スパーンという音は、スーが流星の頭を叩いた音だった。

「貴方はどうしてそういう挨拶しかできないの?!

貴方は自分の名前もちゃんと言えないの?!」

そう言った後今度はショウの方を見ると,

「ショウ! 貴方が子供達を甘やかすからでしょう?!

貴方からも何か言って!」

そう言ってスーが今度はショウを怒り出した。

ショウもショウで、

「イヤ~ デューデュー様がいらっしゃると
他のことは目に入らないのはフジワラ家に産まれた定めだよ~

何てったって,デューデュー様は、
世界一、いや、宇宙一の素晴らしい龍ですからね!

龍星もそんなデューデュー様が大好きですからね~」

と訳のわからない事を言いながら
頭を掻いている。

”何だこの親子?

大国の侯爵家、本当にこんなので良いのか?“

そんな事を思っていると,

「挨拶も出来ない貴方は翠をお庭にでもご案内したら?

今頃は薔薇が見事でしょう?」

スーがそんな事を言い出した。

僕としては、

”えーやだな……

この人ちょっと苦手……“

そう思っていると,

「話の腰を折って申し訳ありません。

挨拶が遅れましたが、
私はフジワラ龍輝と申します。

以後お見知り置きを」

そう言って龍輝が膝を折ると,
其れにつられぼくも、

「あ、はい!

す……すみません!

わ…… 私は翠と申します!

よろしくお願致します!」

そう慌てて挨拶を返した。

すると横から、

「ふ~ん……」

と言った様にして龍星が、

「ほら見ろ!

龍輝と翠は結構気が合いそうな感じじゃないか?

だから庭へは龍輝が案内すれば良いじゃないか!

それに庭のバラは龍輝のだし!

俺は疲れたから夕食の前にシャワーでもしようっかな~」

そう言うと、

「デューデュー、夕食の後で色々と話をしよう!

積もる話もあるし,
今夜は寝かせないぞ!」

龍星はそう言い残すと,
早足で部屋を出て行った。

そこに残された僕は気まずそうに龍輝を見た。

龍輝はニコッと微笑むと,

「私でよければ如何ですか?

今薔薇達が見事に花を咲かせ、
とても香りが良いのです。

きっと翠様も気にいると思いますよ」

そう言って手を差し出した。

その手をじっと見つめていると,

「翠,お前が龍輝と共に行きたかったらその手を取るのだ」

そう父さんが言ったので,
僕は慌てて、

「あ、はい!

よろしくお願いします!」

そう言って彼の手を取った。

横ではスーが、

「あら珍しい!

凄い人見知りの龍輝がそんなスマートに翠を誘うなんて!

とても良いものが見れたわ!」

そう言って目をパチクリとしていた。

僕は父さんの方を見ると、

「父さんはセシルに付いて居るんだよね?

もし彼女が目を覚ましたら、
直ぐに教えに来てね」

そう言うと、
父さんは頷きながら、

「早く行ってこい!

楽しんでくるんだぞ」

そう言って僕を送り出した。

「では翠様、参りましょう」

龍輝は僕の手を引くと、

「少し歩きますが」

そう言って歩き出した。

僕は龍輝に手を引かれながら、

「あ……あの、龍輝様!」

そう言うと,

「翠様,私の事は龍輝と呼んで下さい

様は要りません」

そう言うので、

「あ、じゃ……じゃあ、私の事も翠と……」

そう言うと,

「分かりました。

では……翠、何でしょうか?」

そう龍輝に名を呼ばれ、
何故か顔がカーッと熱くなって龍輝の顔を見るのが恥ずかしくなった。

一瞬何を言おうとしていたのか忘れたけど直ぐに思い出し、

「あ、あの! 別に手を引いて貰わなくても、
迷子になったりしないので、
手を離して頂けませんか?!」 

そう言うと,龍輝が繋いだ手をジーッと見た。

龍輝は少し微笑むと,

「大変失礼致しました。

つい昔の癖で……」

龍輝はそう言うと、
パッと繋いだ手を離した。

僕は

彼の“昔の癖”と言うセリフに、

“えっ?”

と呟いて彼の顔を見た。

龍輝はまたニコリと微笑むと,

「失礼、ただの独り言です」

そう言った後,

「それでは私に付いて来て下さい。

ゆっくりと歩く様にはしますが、
毎日かなりの距離を早足で歩いてますので、
もし早足になった時は遠慮せずに仰って下さい」

そう言うと,スタスタと歩き出した。

僕は遅れを取らない様に
彼の後を付いて行った。

後ろから龍輝の背を見上げ、
彼の歩きが早いのはきっと身長の所為だと思った。

僕と歳はそんなに変わらないと思うのに、
身長は僕よりかなり高い。

足も長くて、あの長さで歩くと、
恐らくゆっくり歩いてても大幅の分
早足みたいになってしまうだろう。

僕は龍輝の後をついていきながら、

「ねえ、龍輝って今何歳なの?」

そう尋ねると,

「私は翠と同じ年の筈ですが……

今年、成人したばかりの13歳ですよね?」

そう言われ凄く驚いた。

まさか同じ年だとは思わなかった。

同じ年頃だとは思ったけど、
それでも2、3歳は年上だと思った。

僕が

「へっ?!」

と奇妙な声を出すと、
龍輝がクスクスと笑い出した。

「同じ年に見えませんか?」

龍輝がそう尋ねると,
僕は頭をブンブンと振った。

“あの笑い!

きっと龍輝も僕の事を子供っぽいと思ってるな?!”

そう思って居ると,

「そうですね、今は年上に見えるかもしれませんが、
私は時期に成長が止まります……」

そう言われ、又

「えっ?!」

と奇妙な声を出した。

龍輝は少し照れた様にすると,

「この耳……

お気付きかもしれませんが、
私は半分エルフの血が入っています」

そう言うと,僕にその耳を見せてくれた。

僕は少し緊張してピンと背筋を伸ばすと、

「あ、はい! 龍輝のお母さんから彼女はエルフだと聞いて……

龍輝と龍星は半分エルフなのかなって……

でも、その耳は龍輝だけだよね?

最初は龍星はスーの様に姿を変えて居るのかな?って思ったんだけど……」

そう言うと,

「あ~母の姿をご覧になったのですね」

そう尋ねられたのでコクリと頷いた。

「龍輝はどうして耳を隠してないの?

エルフってバレても大丈夫なの?」

そう尋ねると、

「ああ…… この耳はですね、
変わり身の魔法をかけようとしても何故か掛からないんです。

だからこのままでいる事にしました。

幸いエルフ達よりは小さめの耳ですし、
隠そうと思えば髪で隠れますから。

でも私はありのままの私でいたかったので隠す事は殆どしていません。

これまで問題になったことも無いので……」

そう言うと,少し照れた様な顔をした。

「じゃあ、龍輝だけがエルフの血を受け継いだんだね?

龍星は全然エルフに部分は出てないの?」

そう言うと龍輝も片眉を上げた様にして、

「そうなんです。

龍星にはこの耳は無く、
私だけがこの耳なんです。

その他をとっても、
龍星にセルフの部分は見られませんでした。

それが良かったのか悪かったのか……

私は母親の方の血を濃く受け継いだ様です……」

そう言うと,フ~っとため息を吐いて、

「そのせいで私の成長はエルフ寄りになっているんです」

そう言って耳たぶを指で摘んだ。

「あの……エルフ寄りと言う事は……どんな?」

そう尋ねると,

「エルフって凄く身体強化に優れて居るみたいで……

魔法も強いし、戦闘能力も凄いし……

視聴覚もいいから飛び道具の扱いにも長けてるみたいで……

それに寿命がね……」

そう言って口を継ぐんだ。

僕は疑問に思い、

「寿命がって……どう言う意味?」

そう尋ねると,

「母の話によるとエルフって半永久的に生きるんだて……

私は半分エルフだからそこまで長くは生きないだろうけど、
それでも普通の人よりはかなり長いらしい……」

そう言って少し悲しそうな顔をした。

「え、じゃあ、それって大体どれくらい生きるの?!」

そう尋ねると,

「ハッキリとは分からないらしいけど、
恐らく500年? 位じゃないかって僕のエルフサイドの祖父が……」

そう言って目を伏せた。

僕は何故彼がそんな憂い顔をするのか分からなかった。

長く生きれて魔法や戦闘にも長けていて、
何も文句の付け所がない。

僕が不思議そうな目で龍輝を見て居ると,

「触ってみますか?」

そう言って僕の顔の前に頭を下げて僕の方を向いた。

「え?! 良いの?!」

すっと龍輝の耳を不思議だと思っていた僕は、
遠慮よりも興味が先に走ってしまった。

勢い良くそう尋ねると,龍輝はクスッと笑って

「どうぞ」

そう言って更に僕に近づいた。

瞬間龍輝からフワッと良い匂いがして、
何だか懐かしい気持ちが湧いて来た。

“あれ?!”

と思いながら龍輝の耳に手を差し伸べ
その頬と耳に触れた瞬間、
バチバチっと頭の中で一瞬何かの映像が浮かび、
途端切なくなって凄く胸が苦しくなった。




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