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第三章
01
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聡史から来るメールは段々回数が減り、僕も連絡をしなくなっていった。
休みで実家に帰っても連絡はしなかった。
松本君から聞く聡史には彼女が出来たとの話はなかったけど、友だちの言うことはどこまで信用して良いかわからない。
それに別に良いんだ。
最初から諦めるつもりだったから、逆にさっさと彼女でも作ってきっぱり僕に引導を渡して欲しい。
こっそりと実家に帰った時には、例の神社のベンチに座っていた。
二人だけの思い出の場所。
きっと松本君も知らない。
大学も卒業という頃にはメールも電話もすっかりなくなっていた。
母さんから『出来るなら、実家に近い場所で就職して』とお願いされていたので、松本君には僕の就職先のことは黙っててもらって実家に帰った。
聡史はもう僕のことなんか気にしてないとは思ったけど、気分が良い話ではないだろう。
松本君と村越君は大学が同じで、一緒に飲みに行くほど仲良くなっていた。
聡史も同じ大学だったから三人で行くらしい。僕の話題は出ないと言っていた。
就職して、実家に帰ると松本君や村越君に飲みに誘われる。
お酒はあまり好きじゃない。
お酒に強すぎて酔えないし、顔色も変わらないから飲んでないかと疑われるし、散々だ。
でも2、3人で飲むなら楽しい場になるかなと誘われるまま応じた。
何回目かに誘われた時、前のように三人で飲むのかと思っていたら、店の前に聡史が居た。
「えっ…」
偶然デートの場所に来ちゃったのかな。いくら『彼女でも作ってくれたら…』と思っていても、心の準備をしたかった。
「篤紀…」
「ひ、久しぶり。偶然だな」
「?…聞いてない?」
「何を?」
「今日、他にも高校の時の奴、15人くらいかな?来るんだよ」
嵌められたのか?
僕が逃げると思ったから黙ってたんだ。
「戻ってたんだな。何で連絡くれなかったんだ?」
「えっ…っと…」
何か怒ってる?聡史が怖い。
だって僕たちの関係は終わってるんだから、聡史に言わなくても…って思ってたし、松本君にも口止めしてた。
口止めしなくても興味ないだろうけど…って思ってたんだけど。
「松本とは連絡取ってたのか?」
「あの…」
凄い怒ってる。
「来たか?入れよ。もうみんな来てるぞ」
怖い聡史からは離れられたけど、「偉い、逃げなかったな」と村越君に言われて思い出した。
「騙したのか?」
「人聞きの悪いこと言うなよ!言い忘れただけだ」
堂々と開き直られたらその先の文句も言えやしない。
中に入ると女子も何人か居て、聡史の両隣にはしっかり女子が座ってた。
「あっ、佐々城久しぶり」
三年の時聡史との仲を取り持ってくれとしつこく言ってきた女子が聡史の腕に自分の腕を絡ませて片手を挙げる。
「ああ、久しぶり…」
別に会いたくなかったけどね…。
帰りたい。
拷問だ。
でも村越君と松本君の間に座らされて、帰ることはできなかった。
仕方ない。
酔えないけど、飲むしかない。
「今日は飲み放題だ。好きなだけ飲め!」
いつもは勿体無いからほどほどにと言ってるくせに…、いい加減な村越君を睨むと肩を竦ませた。
「では!皆さん注目!」
幹事なのか隣で松本君が立って皆んなに話しかけた。
「今日は俺の為に…」
「誰がお前の為だよ!」
「あっ、間違えた。久しぶりのお疲れさま会だ!みんな飲んでくれ!」
「何のお疲れだよー」
「飲んでくれって、松本の奢りかよ!」
「いや、それは無理だから!」
休みで実家に帰っても連絡はしなかった。
松本君から聞く聡史には彼女が出来たとの話はなかったけど、友だちの言うことはどこまで信用して良いかわからない。
それに別に良いんだ。
最初から諦めるつもりだったから、逆にさっさと彼女でも作ってきっぱり僕に引導を渡して欲しい。
こっそりと実家に帰った時には、例の神社のベンチに座っていた。
二人だけの思い出の場所。
きっと松本君も知らない。
大学も卒業という頃にはメールも電話もすっかりなくなっていた。
母さんから『出来るなら、実家に近い場所で就職して』とお願いされていたので、松本君には僕の就職先のことは黙っててもらって実家に帰った。
聡史はもう僕のことなんか気にしてないとは思ったけど、気分が良い話ではないだろう。
松本君と村越君は大学が同じで、一緒に飲みに行くほど仲良くなっていた。
聡史も同じ大学だったから三人で行くらしい。僕の話題は出ないと言っていた。
就職して、実家に帰ると松本君や村越君に飲みに誘われる。
お酒はあまり好きじゃない。
お酒に強すぎて酔えないし、顔色も変わらないから飲んでないかと疑われるし、散々だ。
でも2、3人で飲むなら楽しい場になるかなと誘われるまま応じた。
何回目かに誘われた時、前のように三人で飲むのかと思っていたら、店の前に聡史が居た。
「えっ…」
偶然デートの場所に来ちゃったのかな。いくら『彼女でも作ってくれたら…』と思っていても、心の準備をしたかった。
「篤紀…」
「ひ、久しぶり。偶然だな」
「?…聞いてない?」
「何を?」
「今日、他にも高校の時の奴、15人くらいかな?来るんだよ」
嵌められたのか?
僕が逃げると思ったから黙ってたんだ。
「戻ってたんだな。何で連絡くれなかったんだ?」
「えっ…っと…」
何か怒ってる?聡史が怖い。
だって僕たちの関係は終わってるんだから、聡史に言わなくても…って思ってたし、松本君にも口止めしてた。
口止めしなくても興味ないだろうけど…って思ってたんだけど。
「松本とは連絡取ってたのか?」
「あの…」
凄い怒ってる。
「来たか?入れよ。もうみんな来てるぞ」
怖い聡史からは離れられたけど、「偉い、逃げなかったな」と村越君に言われて思い出した。
「騙したのか?」
「人聞きの悪いこと言うなよ!言い忘れただけだ」
堂々と開き直られたらその先の文句も言えやしない。
中に入ると女子も何人か居て、聡史の両隣にはしっかり女子が座ってた。
「あっ、佐々城久しぶり」
三年の時聡史との仲を取り持ってくれとしつこく言ってきた女子が聡史の腕に自分の腕を絡ませて片手を挙げる。
「ああ、久しぶり…」
別に会いたくなかったけどね…。
帰りたい。
拷問だ。
でも村越君と松本君の間に座らされて、帰ることはできなかった。
仕方ない。
酔えないけど、飲むしかない。
「今日は飲み放題だ。好きなだけ飲め!」
いつもは勿体無いからほどほどにと言ってるくせに…、いい加減な村越君を睨むと肩を竦ませた。
「では!皆さん注目!」
幹事なのか隣で松本君が立って皆んなに話しかけた。
「今日は俺の為に…」
「誰がお前の為だよ!」
「あっ、間違えた。久しぶりのお疲れさま会だ!みんな飲んでくれ!」
「何のお疲れだよー」
「飲んでくれって、松本の奢りかよ!」
「いや、それは無理だから!」
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