視線の先

茉莉花 香乃

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第三章

03

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「居るのか?」
「片思いだよ」

…ずっと7年間片思い。
高三のあの幸せな日々はそんな僕へのご褒美だったのだろう。
離れてしまった距離は、時間は埋めることはできない。

思わず笑ってしまった。
目の前の本人に片思い宣言して…変な感じ。

「安達君は?彼女出来た?」
「…ああ、うん…」

そか…そうだよな。
やっぱり辛いけど、仕方ない。

「えっ?今何て…」
「ううん、いいよ」

なんだか慌ててる。

今だに顔を見ると見惚れてしまう。こんな慌ててる顔はあまり見たこと無いからなんだか得した気分だ。
多分もう会うことはないだろう。僕の心の中の写真が増えた。最後にいっぱい盗み見ておこう。

始まりがグダグダだったから、終わりもダラダラだった。何人かは帰ったようで、女子はもう誰も残ってなかった。

「佐々城、どうする?次、行くか?」

酔ってヘロヘロなのにまだ飲みに行くのかと呆れてしまう。

「もう帰るよ」
「送って行く」

聡史が側に来て村越君と僕の間に入った。腕を掴まれて困ってしまう。

「安達、大丈夫だ。こいつは俺が引き受ける」

何が大丈夫だよ。
僕が家まで送って行かなくちゃいけないだろうに!

「うん。じゃ、また」

多分もう会わないだろうけど、さよならとは言えなかった。
さよならは永遠のサヨナラのようで、そんな辛いことは出来ない。

どこかで、心のどこかでまた会いたいと、あの笑顔が見たいと思っている僕はまだ聡史から卒業出来ていないのだろう。

聡史の手は一瞬強く僕の腕を握って…そして離れた。





……もう会わないだろうと思っていたのに、松本君に誘われるとそこには聡史が居た。
『今日居ないよ』と言われて安心して飲みに行くと…やっぱり居た。

四人掛けのテーブル席に向かい合って座ると度々目が合うのでどこを見て良いかわからない。
なるべく対角になる席に座ろうとするけどいつの間にか目の前に聡史が座ってる。

何回目かにそうやって会った時だった。もう帰ろうかという頃聡史が話しかけてきた。ちょうど僕の隣に座ってた村越君が席を離れた時そこに座った。
ち、近いから…。

「明日、どっか行かないか?」

初めて…別れてから初めて誘われた。
でも、行けない。

男友だちだけど、元恋人…。
今の彼女は嫌だろう。

「行きたいとこあるから」
「片思いの奴に会うのか?」
「まあ、そんな感じかな」

ふふっ、まただ。
『お前だよ』なんて言わないけど、本人にこうして打ち明けてるのって変な感じ。
高校生の聡史に会いに、あのベンチに行こうと密かに思う。

でも、もうそろそろ今の聡史に会うのはよそう。
松本君の誘いも今度は断ろう。元々聡史の友だちだったんだ。僕との仲より良いだろうし。

何故騙してまで一緒に飲みに誘うのかはわからないけど、松本君には心配かけた。もしかしたら友だちになれよとか思ってるのかな?

でも、それは無理。
白か黒。
付き合うことが出来ないのだから、会わない方が良い。






………僕は学習能力が低いのかもしれない。

松本君の誘いを断るようになると村越君に誘われた。
『二人で』と言うのに、行くと松本君と聡史が居た。
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