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第四章
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聡史にとってもここは特別な場所だったのかな…。
「僕は聡史の事が好き」
「はあ~やっと聞けた。初めてだよ、篤紀から『好き』って聞くの」
「そんなことは…」
「そうだよ…態度や視線は俺のこと『好き』って言ってるけど、言葉で貰ったことはない」
「そ、そうかな…」
「そうだよ…篤紀は俺が『好きだよ』って言うと『僕も…』って言ってくれるけど自分からは決して言ってくれなかった。最初は俺の事そんなに思ってくれてないのかな?って疑ったけど、やっぱり俺に向ける態度や視線は『好き』ってわかるんだ。でも大学に入って、離れてしまうと不安になって…。連絡できなくなった。篤紀は自分からメールも電話もしてくれなかったからさ」
「ご、ごめん」
「こうして会うようになって…片想いって奴の事話す篤紀は幸せそうだった。片想いなんて辛いだろうと思ったけど、篤紀はそのことに納得しているのか辛いなんて言わないし、笑ってそんなこと言われたらさ。高校の時に俺に見せる笑顔だったから。だから、やっぱり俺から気持ちは離れてしまったんじゃないかって思ったこともあったけど…」
「ごめん…僕は…」
「時々俺に向かう笑顔はやっぱり高校の時に見た笑顔だった。一年の時から…隣に座って、ふとした時に目が合うんだ。しばらくすると、下ばっか見てたけど、やっぱり遠くからでも俺の事見てただろ?」
「うん……気づいてたんだ」
「ものすっごく気になった。その時の文芸部の部長が近所の人でさ、あまり話したことなかったけど家の前で会った時に篤紀の事聞いてみたんだ。その時、次の冊子に出る篤紀の教えてくれるって言ってくれてさ…」
「そうなんだ」
そう言えば、こんな話はしたことなかった。
僕はいつも与えられるだけで、自分から話したり、聞いたりもしなかったのかな?
「篤紀…俺たちやり直せる?」
「えっ…でも…」
「ねえ、何を躊躇ってるの?」
「だって、彼女いるんだろう?」
「いないよ」
「嘘…」
「誰に聞いたんだよ?」
聡史を指差す。
「俺?」
「うん」
「いつ?」
「一年前、就職して初めて会った時」
「そんな話ししたか?」
「僕に恋人が出来たかって聞かれた時、『聡史は彼女できた?』って聞いたら、『ああ』とかって返事したよ」
「覚えてない…でも、そんなのいないから!だから、何にも躊躇うことなんかない」
「昨日見た人は?」
「どこで?俺たち会った?」
「エスポワールの近くで…」
「ああ、あれは姉貴だよ。最近化粧が濃いからな…俺たちが高校の時とは印象が違うと思うよ」
お姉さんには何度か会っているけど…、
「そ、そうなの?…でも、でも僕は男だし」
「大丈夫だよ。俺は篤紀が居れば良いんだ」
「…で…」
「もう、黙ってて」
僕を抱きしめ、キスをした。
触れるだけのキス。
何度も、何度も、触れては離れ、離れては触れる。
それは唇、頬、鼻…労わるように優しく触れる唇に、いつの間にか僕は涙を流していたようで、顔を見ていたいのに視界がボヤけて見えなくなった。でも、その涙は聡史の唇に触れて消えていく。
眼鏡を取って、僕の眼に触れる唇が面映い。
涙が消えるのと一緒に八年間のしこりが柔らかくなったようだ。
聡史の服を握っていた手をそっと背中に回し抱きしめ返した。
僕が腕を回したのが合図のように…まるで初めてのキスの時のように…、僕の頭を聡史の大きな手が捕まえて離さないとでも言うように髪に絡みつく。
それと同時にキスが深くなる。
深いキスにまた泣きたくなる。
「僕は聡史の事が好き」
「はあ~やっと聞けた。初めてだよ、篤紀から『好き』って聞くの」
「そんなことは…」
「そうだよ…態度や視線は俺のこと『好き』って言ってるけど、言葉で貰ったことはない」
「そ、そうかな…」
「そうだよ…篤紀は俺が『好きだよ』って言うと『僕も…』って言ってくれるけど自分からは決して言ってくれなかった。最初は俺の事そんなに思ってくれてないのかな?って疑ったけど、やっぱり俺に向ける態度や視線は『好き』ってわかるんだ。でも大学に入って、離れてしまうと不安になって…。連絡できなくなった。篤紀は自分からメールも電話もしてくれなかったからさ」
「ご、ごめん」
「こうして会うようになって…片想いって奴の事話す篤紀は幸せそうだった。片想いなんて辛いだろうと思ったけど、篤紀はそのことに納得しているのか辛いなんて言わないし、笑ってそんなこと言われたらさ。高校の時に俺に見せる笑顔だったから。だから、やっぱり俺から気持ちは離れてしまったんじゃないかって思ったこともあったけど…」
「ごめん…僕は…」
「時々俺に向かう笑顔はやっぱり高校の時に見た笑顔だった。一年の時から…隣に座って、ふとした時に目が合うんだ。しばらくすると、下ばっか見てたけど、やっぱり遠くからでも俺の事見てただろ?」
「うん……気づいてたんだ」
「ものすっごく気になった。その時の文芸部の部長が近所の人でさ、あまり話したことなかったけど家の前で会った時に篤紀の事聞いてみたんだ。その時、次の冊子に出る篤紀の教えてくれるって言ってくれてさ…」
「そうなんだ」
そう言えば、こんな話はしたことなかった。
僕はいつも与えられるだけで、自分から話したり、聞いたりもしなかったのかな?
「篤紀…俺たちやり直せる?」
「えっ…でも…」
「ねえ、何を躊躇ってるの?」
「だって、彼女いるんだろう?」
「いないよ」
「嘘…」
「誰に聞いたんだよ?」
聡史を指差す。
「俺?」
「うん」
「いつ?」
「一年前、就職して初めて会った時」
「そんな話ししたか?」
「僕に恋人が出来たかって聞かれた時、『聡史は彼女できた?』って聞いたら、『ああ』とかって返事したよ」
「覚えてない…でも、そんなのいないから!だから、何にも躊躇うことなんかない」
「昨日見た人は?」
「どこで?俺たち会った?」
「エスポワールの近くで…」
「ああ、あれは姉貴だよ。最近化粧が濃いからな…俺たちが高校の時とは印象が違うと思うよ」
お姉さんには何度か会っているけど…、
「そ、そうなの?…でも、でも僕は男だし」
「大丈夫だよ。俺は篤紀が居れば良いんだ」
「…で…」
「もう、黙ってて」
僕を抱きしめ、キスをした。
触れるだけのキス。
何度も、何度も、触れては離れ、離れては触れる。
それは唇、頬、鼻…労わるように優しく触れる唇に、いつの間にか僕は涙を流していたようで、顔を見ていたいのに視界がボヤけて見えなくなった。でも、その涙は聡史の唇に触れて消えていく。
眼鏡を取って、僕の眼に触れる唇が面映い。
涙が消えるのと一緒に八年間のしこりが柔らかくなったようだ。
聡史の服を握っていた手をそっと背中に回し抱きしめ返した。
僕が腕を回したのが合図のように…まるで初めてのキスの時のように…、僕の頭を聡史の大きな手が捕まえて離さないとでも言うように髪に絡みつく。
それと同時にキスが深くなる。
深いキスにまた泣きたくなる。
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