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第四章
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今日も神社に来ていた。
聡史との再会から一年が経っていた。
もう自分の気持ちがわからない。
昨日は結局村越君と飲みに行った。僕は酔えないんだから良いと言うのに、『まあ、付き合え』って自分が飲みたいだけじゃないのか?いつも楽しそうに飲んでるからな。
最近は200段の階段がきついから車で社の傍まで来る。
「こんにちは」
ボーっとベンチに座って空を見ていたらおじいさんが声を掛けてきた。
「ああ、こんにちは。今日は日差しが暖かいですね」
四月はまだ肌寒い日が多く、木々が鬱蒼としているここは下界より少し気温が低い。
夏は涼しく感じるけど、今は寒い。
このおじいさんは大学の頃からたまにここで会う。挨拶を交わすだけの知り合いとも言えない人。名前も知らない。
就職して一年と少し、暇があればここに来る。
大抵が聡史と会ってしまった次の日。
ここではこのおじいさんとしか話したことはない。
200段の階段は相変わらずトレーニングに使われているけど、横から車で来ているからほぼ誰にも会わない。
「今日はあんたか?」
「…えっ…誰か他にもここに来る人がいるんですか?」
「ああ、兄ちゃんがいない時にたまにな。その兄ちゃんも同じようにそのベンチに座ってたよ。でも、最近は階段の下にいる時の方が多いかな」
まさかね。
「邪魔したな」とそのおじいさんは帰って行った。
高校の時に会ったことがなかったのは、ここに来る時間が違ったからだろう。二人で来ていた時も夕方に来ることが多かったと覚えている。
おじいさんは大雨の時以外毎日家から歩いてこの下まで来て、毎回階段を登り神社にお参りして階段で帰るそうだ。
僕も見習わないと。
体力落ち過ぎないうちに…。今度来る時は200段頑張ろうかな…。
「篤紀…」
「えっ…」
聡史が驚いた顔をしてそこに立っていた。息を切らしていて、今階段を駆け上がってきたのがわかる。
「どうして…ここに?」
さっきのおじいさんが言ってた『もう一人』は聡史だった?
そうではないかな…そうであって欲しいなと思ったけど…こんなに早く会ってしまうなんて…。
「ずっと、待ってた。篤紀…車で来てたのか?」
「うん」
「階段の下で待ってたんだ。ここだと砂利の音で篤紀が逃げてしまうかもしれないと思ったから…。
おじいさんに会っただろ?俺も会っててさ、ここで篤紀らしい人を何度も見たって言うから…。
今、階段の下で待ってたら、ベンチのとこに居るって聞いて」
「どうして…?」
「片想いの奴に会うんじゃないのか?」
怒った様子の聡史は少しずつ近づいてくる。
「それは…」
「俺じゃないのか?その相手って俺じゃないのか?…」
「えっ…っと」
そうだけど…。
「篤紀はメールでも、電話でも本音を言わない。高校の時だって本当のこと言わなかった!会って聞きたかったんだ。篤紀…俺は今も好きだよ…」
優しい腕が僕を包む。
でも、その力は弱くて、直ぐに解けてしまうくらい。
もっと強く抱きしめて欲しい。けど…あの時と同じ…僕からはその腕を振り解くことはできないけれど、聡史の背中に腕を回すことはできなかった。
「本当のこと教えて?篤紀の言葉で聞きたい」
「僕は…」
「うん」
言っても良いのかな?ここまで来てくれた。
いつも待っててくれた?
聡史との再会から一年が経っていた。
もう自分の気持ちがわからない。
昨日は結局村越君と飲みに行った。僕は酔えないんだから良いと言うのに、『まあ、付き合え』って自分が飲みたいだけじゃないのか?いつも楽しそうに飲んでるからな。
最近は200段の階段がきついから車で社の傍まで来る。
「こんにちは」
ボーっとベンチに座って空を見ていたらおじいさんが声を掛けてきた。
「ああ、こんにちは。今日は日差しが暖かいですね」
四月はまだ肌寒い日が多く、木々が鬱蒼としているここは下界より少し気温が低い。
夏は涼しく感じるけど、今は寒い。
このおじいさんは大学の頃からたまにここで会う。挨拶を交わすだけの知り合いとも言えない人。名前も知らない。
就職して一年と少し、暇があればここに来る。
大抵が聡史と会ってしまった次の日。
ここではこのおじいさんとしか話したことはない。
200段の階段は相変わらずトレーニングに使われているけど、横から車で来ているからほぼ誰にも会わない。
「今日はあんたか?」
「…えっ…誰か他にもここに来る人がいるんですか?」
「ああ、兄ちゃんがいない時にたまにな。その兄ちゃんも同じようにそのベンチに座ってたよ。でも、最近は階段の下にいる時の方が多いかな」
まさかね。
「邪魔したな」とそのおじいさんは帰って行った。
高校の時に会ったことがなかったのは、ここに来る時間が違ったからだろう。二人で来ていた時も夕方に来ることが多かったと覚えている。
おじいさんは大雨の時以外毎日家から歩いてこの下まで来て、毎回階段を登り神社にお参りして階段で帰るそうだ。
僕も見習わないと。
体力落ち過ぎないうちに…。今度来る時は200段頑張ろうかな…。
「篤紀…」
「えっ…」
聡史が驚いた顔をしてそこに立っていた。息を切らしていて、今階段を駆け上がってきたのがわかる。
「どうして…ここに?」
さっきのおじいさんが言ってた『もう一人』は聡史だった?
そうではないかな…そうであって欲しいなと思ったけど…こんなに早く会ってしまうなんて…。
「ずっと、待ってた。篤紀…車で来てたのか?」
「うん」
「階段の下で待ってたんだ。ここだと砂利の音で篤紀が逃げてしまうかもしれないと思ったから…。
おじいさんに会っただろ?俺も会っててさ、ここで篤紀らしい人を何度も見たって言うから…。
今、階段の下で待ってたら、ベンチのとこに居るって聞いて」
「どうして…?」
「片想いの奴に会うんじゃないのか?」
怒った様子の聡史は少しずつ近づいてくる。
「それは…」
「俺じゃないのか?その相手って俺じゃないのか?…」
「えっ…っと」
そうだけど…。
「篤紀はメールでも、電話でも本音を言わない。高校の時だって本当のこと言わなかった!会って聞きたかったんだ。篤紀…俺は今も好きだよ…」
優しい腕が僕を包む。
でも、その力は弱くて、直ぐに解けてしまうくらい。
もっと強く抱きしめて欲しい。けど…あの時と同じ…僕からはその腕を振り解くことはできないけれど、聡史の背中に腕を回すことはできなかった。
「本当のこと教えて?篤紀の言葉で聞きたい」
「僕は…」
「うん」
言っても良いのかな?ここまで来てくれた。
いつも待っててくれた?
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