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幸せだった日々
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◇◇◇◇◇
出会いは高校の入学式だった。
桜がチラチラと舞う校門までの坂道を、友だちと談笑しながら歩く姿に目が離せなかった。
少し大きな真新しい制服のブレザーが、一年生だと教えてくれる。
スラリと背が高く、勝気な目と通った鼻筋、整った顔立ちは見られることに慣れた笑顔。
モテるだろうことは一目でわかる。
僕も一瞬で恋に落ちたのだから。
自分の性的指向が同性に向かうことに気付いたのは、実は最近。
中学の卒業式が終わり、帰り際にクラスメイトの女子から告白された。断ると、思い出にするからキスして欲しいと頼まれた。キスをすることに、少しもドキドキしない。体育の授業の方がよほど胸を高鳴らせた。ああそう言うことか、と人ごとのように理解した。
同じくらいの身長のその子の頬に触れるか触れないかのキスをした。頬を染め、ありがとうと走り去る背中は振られた直後にも関わらず、どこか嬉しそうだった。
名前も知らない一目惚れの相手は、座った場所から同じクラスだとわかった。僕のテンションは一気に上がる。かと言って僕から告白なんか、勿論しない。そんな冒険するわけないでしょ。
入学から一週間が経った頃、その一目惚れくん…馬渕直輝が昼休みに「ちょっと良い?」と話しかけてきた。
中庭の背の高い木の横にあるベンチ。ここは校舎からは見えにくく、後で聞いた話では告白とかによく使われるらしい。
「な、何?」
その日、先客はいなくて中庭に二人きり。個人的に話したことがないのに、何か文句でも言われるのだろうか?
存在がウザいとか、消えてくれとかイジメに繋がる何かを言われたらどうしよう…。
「お前さ、俺の事、好きなの?」
「えっ?な、何で…?」
「ずっと、チラチラ見てたじゃん、俺の事」
「ご、ごめん…あっ、いや、そうじゃなくて…」
ずっと見てたの認めたらダメじゃん…。ああ、何て言って誤魔化そう…。そんなにあからさまに見てたかな?言い訳も、謝ることもできない。もう見ないと言えば、今まで見てたことを認め、気持ち悪がられる。目の前の男の取り巻きにボコられる自分の姿を想像してぶるっと震えた。
そんな僕を優しく見つめる馬渕。
えっと…殴られたりしないのかな?
「あのさ、俺の事、好きなら、付き合わない?」
「ご、ごめ…、えっ?嘘…」
「ホント」
「気持ち悪く…」
「…ないよ?」
「彼女は…?」
「今はいない」
今は…。
それは、いずれ出来るってことなのだろう。
「じゃあ、よろしく」
爽やかに笑われて、サラリとそんなセリフを言われ、思考が付いていかない。
「早速、今日一緒に帰ろうか?」
「あの…」
「ん?」
「クラスのみんなには内緒にしないの?」
あまりにあっけらかんとした馬渕に心配になって聞いてみると、不思議そうな顔をする。
「言ったら嫌なのか?」
「う、うん」
「じゃあ、内緒で」
ええっ!僕が言っても良いって言えば男同士の付き合いをみんなに言っちゃうの?
「学校では今で通りで…」
「ええっ!それじゃ、学校ではしゃべれないじゃん」
彼女が出来るまでの繋ぎの付き合いなら、あまりみんなの前で近寄らない方が、別れた時のダメージが少ないと思うんだ。
出会いは高校の入学式だった。
桜がチラチラと舞う校門までの坂道を、友だちと談笑しながら歩く姿に目が離せなかった。
少し大きな真新しい制服のブレザーが、一年生だと教えてくれる。
スラリと背が高く、勝気な目と通った鼻筋、整った顔立ちは見られることに慣れた笑顔。
モテるだろうことは一目でわかる。
僕も一瞬で恋に落ちたのだから。
自分の性的指向が同性に向かうことに気付いたのは、実は最近。
中学の卒業式が終わり、帰り際にクラスメイトの女子から告白された。断ると、思い出にするからキスして欲しいと頼まれた。キスをすることに、少しもドキドキしない。体育の授業の方がよほど胸を高鳴らせた。ああそう言うことか、と人ごとのように理解した。
同じくらいの身長のその子の頬に触れるか触れないかのキスをした。頬を染め、ありがとうと走り去る背中は振られた直後にも関わらず、どこか嬉しそうだった。
名前も知らない一目惚れの相手は、座った場所から同じクラスだとわかった。僕のテンションは一気に上がる。かと言って僕から告白なんか、勿論しない。そんな冒険するわけないでしょ。
入学から一週間が経った頃、その一目惚れくん…馬渕直輝が昼休みに「ちょっと良い?」と話しかけてきた。
中庭の背の高い木の横にあるベンチ。ここは校舎からは見えにくく、後で聞いた話では告白とかによく使われるらしい。
「な、何?」
その日、先客はいなくて中庭に二人きり。個人的に話したことがないのに、何か文句でも言われるのだろうか?
存在がウザいとか、消えてくれとかイジメに繋がる何かを言われたらどうしよう…。
「お前さ、俺の事、好きなの?」
「えっ?な、何で…?」
「ずっと、チラチラ見てたじゃん、俺の事」
「ご、ごめん…あっ、いや、そうじゃなくて…」
ずっと見てたの認めたらダメじゃん…。ああ、何て言って誤魔化そう…。そんなにあからさまに見てたかな?言い訳も、謝ることもできない。もう見ないと言えば、今まで見てたことを認め、気持ち悪がられる。目の前の男の取り巻きにボコられる自分の姿を想像してぶるっと震えた。
そんな僕を優しく見つめる馬渕。
えっと…殴られたりしないのかな?
「あのさ、俺の事、好きなら、付き合わない?」
「ご、ごめ…、えっ?嘘…」
「ホント」
「気持ち悪く…」
「…ないよ?」
「彼女は…?」
「今はいない」
今は…。
それは、いずれ出来るってことなのだろう。
「じゃあ、よろしく」
爽やかに笑われて、サラリとそんなセリフを言われ、思考が付いていかない。
「早速、今日一緒に帰ろうか?」
「あの…」
「ん?」
「クラスのみんなには内緒にしないの?」
あまりにあっけらかんとした馬渕に心配になって聞いてみると、不思議そうな顔をする。
「言ったら嫌なのか?」
「う、うん」
「じゃあ、内緒で」
ええっ!僕が言っても良いって言えば男同士の付き合いをみんなに言っちゃうの?
「学校では今で通りで…」
「ええっ!それじゃ、学校ではしゃべれないじゃん」
彼女が出来るまでの繋ぎの付き合いなら、あまりみんなの前で近寄らない方が、別れた時のダメージが少ないと思うんだ。
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