彼氏未満

茉莉花 香乃

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プロローグ

ーーー

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「話って、何?学校では…」
「あのさ…。俺ら、終わりにしない?」
「えっ?」
「だから、別れ…」
「あっ、うん。わかった。じゃあ」

昼寝でもしたくなるような秋の穏やかな風がふわりと僕の頬を撫でた。

うららかな日差しは、どんなに気持ちが落ち込んでいようが平等に降り注ぐ。

告白された同じ場所で、別れを告げられたことに苦笑いが漏れる。

馬渕直輝まぶち なおきに背を向けて、お昼休みの中庭から逃げるように教室に駆け込んだ。同じクラスの直輝も同じところを通ってここに戻るはず。

どうしよう…。
帰りたい。
一人になって思いっきり泣きたい。

でも、今はダメだ。
授業をサボることも、早退することもできない。そんなことしたら直輝に速攻バレてしまう。別れてから、面倒なヤツ…何て思われたくない。

そもそも僕の事は『お試し』のお付き合いだったんだ。きっと、妊娠しない、文句を言わない、お手軽な捌け口が欲しかっただけ。彼女のいない間の繋ぎ。怖いもの見たさ、的な興味本位。男って締まってチョー気持ちいいらしい、どこかで聞いてきた噂話を確かめたかっただけなのかもしれない。

それか…僕のあからさまな視線に、からかってやろうと思ったのかな?

最近やたらと耳にした直輝と特定の女子との噂話。その子と付き合うことにしたのかな…?放課後の空き教室で直輝が告白されてるのを見たと言う話なら何度も聞いた。その度にビクビクしながら、別れを切り出されるのを待つのは、はっきり言って疲れた。

僕たちの関係は誰も知らない。

教室では必要最低限の会話しかない。挨拶さえしなかった。そうすると、人気者の馬渕くんに嫌われてる安村くん、と僕の評判はすこぶる良くないものになった。

無視されることはないけれど、積極的に話しかけられることもない。それでも、グループになる時にはどこかしらに入れてもらえ、多少の居心地の悪さはあるもののそれなりに過ごしてきた。もともと、社交的じゃないから、直輝が僕を教室で無視していなくても僕の扱いはこんなもんだろ。
そもそも話しかけないでとお願いしたのは僕だ。

中学までなら小学校からの付き合いで、世話好きの幼馴染があれこれと文句を言いながらも構ってくれたけど、高校は違う学校だった。

授業が始まる直前に教室に戻ってきた直輝と目が合ってしまった。

慌てて視線を下げる。不機嫌そうな顔を見たくなかった。
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