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幸せだった日々
02
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別々に教室に戻ろうと提案すれば、男前の顔でぷぷっと頬を膨らませ拗ねてみせる。
!……心臓撃ち抜かれました。
カッコ良いのに何てお茶目。
「仕方ないな。これで許してあげる。……チュ、…あっ、顔赤い。安村、可愛い。じゃあ、連絡するから」
わざとリップ音を響かせて頬に触れた唇に、何が起こったかしばらくはわからなかった。
予鈴が聞こえて我に返り、慌てて教室に駆け込むと馬渕が微かに手を挙げた。
連絡先を交換して、もっぱら携帯でのやり取りから付き合いは始まった。そして直ぐに名前呼びになった。僕にも名前で呼んでとお願いされた。二、三日は、同じ空間で一日の大半を過ごすのに、まるで遠距離恋愛のような付き合いだった。
三日目の金曜の夕方、電話の向こうで直輝が拗ねる。
『学校でしゃべらないなら、いつ会えば良いのさ!』
「えっと、夜とか?」
『夜?今?今から俺が睦己の家に行けば良いの?』
「やっ、家、アパートで狭いから…」
『じゃあ、家、来る?』
「えっ?良いの?」
『良いの?じゃありません!せっかく付き合えたのに、小学生よりプラトニックじゃん。もっとイチャイチャしたい!』
そう言われれば断ることはできない。僕もせっかく…の気持ちは十分にある。
直輝の家は料理屋さんで、その二階が住居だった。お互いの家はそんなに離れていなくて自転車で十五分くらい。道がわからないと困るから迎えに来てもらった。二人の家の中間地点くらいにある小さな公園。そこで待ち合わせて一緒に家まで行った。
暖簾の脇を抜け、家の玄関の引き戸を開けると真っ直ぐに階段がある。階段の横は廊下になっていて四つのドアが見える。そして一番大きな扉は厨房に繋がっているのか、少し開いたそこからは良い匂いがしていた。
「お邪魔します」
「どうぞ」
招くように階段に伸ばされる手。片方で僕の手を握る。ほぼ初めての触れ合いだった。
「抱っこして連れてってやろうか?」
「ひぇ?な、何言って…」
「何て声出してるの?睦己、可愛い。来て?」
そのまま抱きしめられた。ここは玄関で、店からは注文を告げる声や、フライパンを擦るおたまの音がする。
「直輝、ここ玄関だよ!恥ずかしい」
「もう、睦己は!じゃあ、俺の部屋なら良い?」
「あっ…う、うん」
「じゃあ、早く!」
「あの、挨拶とかしなくて良いの?」
「後で良いだろ」
二階に上がるとドアが幾つかありそのうちの一つが直輝の部屋だった。自分の部屋なんか持ったことないから羨ましい。
「睦己…」
ふわりと抱きしめられ同い年とは思えないがっしりした身体にドキドキする。どうして良いかわからず、ためらいがちに腕を上げて抱きしめ返すとふふっと笑う声がした。
「キスしたこと、ある?」
あの、頬へのキスはカウントしないよね?
「…ないよ」
「何、その間?」
「いや、あの…ないから……」
身体を離し、じっと見つめる真剣な瞳に、詳しく話せと言われたようで口ごもる。
「……えっと、ほっぺにちょっと触れるだけの…」
「それって、男?」
「いや、女子」
「そっか…」
そして、触れるだけのキスをした。
お母さんに紹介されたのはそれから三十分後。ご飯よと声を掛けられ慌てた。
「あっ、ごめん。帰るから」
向き合ってしゃべるのが告白された時以来だから、ぎこちないながらも嬉しくて、つい今が何時だとかを気にしていなかった。
!……心臓撃ち抜かれました。
カッコ良いのに何てお茶目。
「仕方ないな。これで許してあげる。……チュ、…あっ、顔赤い。安村、可愛い。じゃあ、連絡するから」
わざとリップ音を響かせて頬に触れた唇に、何が起こったかしばらくはわからなかった。
予鈴が聞こえて我に返り、慌てて教室に駆け込むと馬渕が微かに手を挙げた。
連絡先を交換して、もっぱら携帯でのやり取りから付き合いは始まった。そして直ぐに名前呼びになった。僕にも名前で呼んでとお願いされた。二、三日は、同じ空間で一日の大半を過ごすのに、まるで遠距離恋愛のような付き合いだった。
三日目の金曜の夕方、電話の向こうで直輝が拗ねる。
『学校でしゃべらないなら、いつ会えば良いのさ!』
「えっと、夜とか?」
『夜?今?今から俺が睦己の家に行けば良いの?』
「やっ、家、アパートで狭いから…」
『じゃあ、家、来る?』
「えっ?良いの?」
『良いの?じゃありません!せっかく付き合えたのに、小学生よりプラトニックじゃん。もっとイチャイチャしたい!』
そう言われれば断ることはできない。僕もせっかく…の気持ちは十分にある。
直輝の家は料理屋さんで、その二階が住居だった。お互いの家はそんなに離れていなくて自転車で十五分くらい。道がわからないと困るから迎えに来てもらった。二人の家の中間地点くらいにある小さな公園。そこで待ち合わせて一緒に家まで行った。
暖簾の脇を抜け、家の玄関の引き戸を開けると真っ直ぐに階段がある。階段の横は廊下になっていて四つのドアが見える。そして一番大きな扉は厨房に繋がっているのか、少し開いたそこからは良い匂いがしていた。
「お邪魔します」
「どうぞ」
招くように階段に伸ばされる手。片方で僕の手を握る。ほぼ初めての触れ合いだった。
「抱っこして連れてってやろうか?」
「ひぇ?な、何言って…」
「何て声出してるの?睦己、可愛い。来て?」
そのまま抱きしめられた。ここは玄関で、店からは注文を告げる声や、フライパンを擦るおたまの音がする。
「直輝、ここ玄関だよ!恥ずかしい」
「もう、睦己は!じゃあ、俺の部屋なら良い?」
「あっ…う、うん」
「じゃあ、早く!」
「あの、挨拶とかしなくて良いの?」
「後で良いだろ」
二階に上がるとドアが幾つかありそのうちの一つが直輝の部屋だった。自分の部屋なんか持ったことないから羨ましい。
「睦己…」
ふわりと抱きしめられ同い年とは思えないがっしりした身体にドキドキする。どうして良いかわからず、ためらいがちに腕を上げて抱きしめ返すとふふっと笑う声がした。
「キスしたこと、ある?」
あの、頬へのキスはカウントしないよね?
「…ないよ」
「何、その間?」
「いや、あの…ないから……」
身体を離し、じっと見つめる真剣な瞳に、詳しく話せと言われたようで口ごもる。
「……えっと、ほっぺにちょっと触れるだけの…」
「それって、男?」
「いや、女子」
「そっか…」
そして、触れるだけのキスをした。
お母さんに紹介されたのはそれから三十分後。ご飯よと声を掛けられ慌てた。
「あっ、ごめん。帰るから」
向き合ってしゃべるのが告白された時以来だから、ぎこちないながらも嬉しくて、つい今が何時だとかを気にしていなかった。
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