彼氏未満

茉莉花 香乃

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別れても好きな人

04

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理不尽だ!と息巻いても僕の肩を持ってくれる人はいなかった。口々に似合ってると言われ複雑な気分だった。
直樹は仏頂面でメイド服姿の僕を見ていたけれど、その時は何も言わなかった。きっと、気持ち悪いものを見て、気分がすぐれなかったのだろう。正しい反応だと思う。もしかしてそれが別れた理由なのかな?はあ~。

みんなは僕をおだてて、メイド服を着せようとそんなお為ごかしを言っただけ。そんなの嬉しくもなんともない。メイド服が破局の原因なら、尚更着たくはない……のだけれど…。

「仕方ないよ…ね…」
「そうだな。諦めろ」
「馬渕~、丸岡が呼んでるぞ」

入り口に立つクラスメイトが大声で直輝に声をかける。その隣でぺこりと頭を下げる美女。

「ん?ああ、ありがと。安村、ごめん…食べてて良いよ。おにぎりも。ちゃんと食べないと大きくなれないぞ?」
「なっ…」
「あははっ」

メイド服を着ることとは別に、少し上昇していた気持ちがどん底まで落ちる。

隣のクラスの丸岡美香はサッカー部のマネージャーで、直輝の彼女。直樹はサッカー部だから、放課後はいつも一緒だ。昼休みまで来なくて良いのに。

丸岡のせいで僕の放課後の楽しみがなくなったのに!走る直輝をこっそり見るって言う楽しみを奪われた。実際、奪ったのは丸岡だが、それは僕の一方的な八つ当たり。視界に入るのだ、丸岡が。そんなの耐えられるわけない。幸せそうな丸岡。笑顔で直輝に話しかける丸岡。

僕には関係ないけど、交際は順調のようだ。それなのに、二日続けて弁当を一緒に食べてるなんて。これ、元カノならこんなことしないのにな…。彼女に怒られるからね。丸岡は僕と直輝の事は知らないだろう。何もわざわざ波風を立てる必要はない。

これは喜ぶべきことなのか?
いや、違うだろ。

でも、自分から逃げたり、無視したりできない。それは性格もあるんだろうけど、根底はまだ直輝が好きだから。

片思いに戻ったと思えば良いのか?それならまだ割り切れる。好きになってすぐに実った恋は、片思いの期間がほとんどなかった。順番が逆だけど片思いも悪くない。奇跡の数ヶ月だった。

実ることのない片思いを始めれば良いのかな。それなら一緒にお昼を食べてる今の状況は喜ぶべきなんだ。

四月のあの時に直輝に彼女がいたとしても、僕の気持ちが変わることはなかった。今、丸岡の存在が僕を苦しめても、それが嫌いになる理由にはならない。片思いってそう言うものだよね。

「災難だな」

以前からちょくちょく話しかけてくれていた隣の席の吉広よしひろ直志ただしが、可愛そうな者を見る目で僕を哀れむ。

弁当を食べ終わり、直輝が自分の席に戻った途端、グッと寄ってきた。

「メイド服のこと?」
「それ以外に何かあるか?」
「…いや、無いけど」

そうだよね。振られたことは知らないよね。付き合っていたことも。それに、それは、災難って言うより想定の範囲内の出来事で、嘆き悲しむ立場にない。

「おかしな奴。諦めたのか?」
「最後まで、できれば諦めたくない。諦めたくないけど…。でも、明後日だし…ダメでしょ……」
「そうだよな」
「吉広が代わってくれたら良いのに」
「ははっ、そりゃ無理だな」
「同じくらいの身長だろ?着られるって。ウイッグ付けたらバッチリ!」

吉広は五分刈りの野球部員。野球部の中では一番低いらしく、身長の話題は禁句だけど、今は気遣ってやることができない。

「あれを、俺に着ろってか?」

吉広とは同じ背格好で、僕が着れるなら、絶対に吉広も着ることができるはず。僕より筋肉質な身体は、きっとシュールで受けるはず!

「安村は自分が着られるってだけで決まったと思ってるのか?」
「えっ?違うの?やっぱり、からかわれてるんだ」
「……まあ、無自覚は今に始まったわけじゃないしな。それより…」

小さな声でブツブツと呟いてから、更にグイッと顔を寄せてきた。

「馬渕となんかあった?」
「えっ?何で?」
「最近よく一緒にいるからさ。昨日も体育で組んでたし、今も一つの弁当一緒に食べてたじゃん。昨日なんか同じ箸使ってた。急にどうしたのかな~って思って」

全部見られてる。そりゃそうか。隣に座ってたら…、いや、同じ教室にいれば見ることはできる。

「先週末から落ち込んでたからさ、どしたかなって思ってたんだ」
「な、何でもないよ」
「そうか?今まで、話しかけるなオーラいっぱい出して張り詰めてる感じだったけど、今は落ち込みでそれもないから…みんな喜んでるけど。安村はそれどころじゃない感じ?」
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