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別れても好きな人
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理不尽だ!と息巻いても僕の肩を持ってくれる人はいなかった。口々に似合ってると言われ複雑な気分だった。
直樹は仏頂面でメイド服姿の僕を見ていたけれど、その時は何も言わなかった。きっと、気持ち悪いものを見て、気分がすぐれなかったのだろう。正しい反応だと思う。もしかしてそれが別れた理由なのかな?はあ~。
みんなは僕をおだてて、メイド服を着せようとそんなお為ごかしを言っただけ。そんなの嬉しくもなんともない。メイド服が破局の原因なら、尚更着たくはない……のだけれど…。
「仕方ないよ…ね…」
「そうだな。諦めろ」
「馬渕~、丸岡が呼んでるぞ」
入り口に立つクラスメイトが大声で直輝に声をかける。その隣でぺこりと頭を下げる美女。
「ん?ああ、ありがと。安村、ごめん…食べてて良いよ。おにぎりも。ちゃんと食べないと大きくなれないぞ?」
「なっ…」
「あははっ」
メイド服を着ることとは別に、少し上昇していた気持ちがどん底まで落ちる。
隣のクラスの丸岡美香はサッカー部のマネージャーで、直輝の彼女。直樹はサッカー部だから、放課後はいつも一緒だ。昼休みまで来なくて良いのに。
丸岡のせいで僕の放課後の楽しみがなくなったのに!走る直輝をこっそり見るって言う楽しみを奪われた。実際、奪ったのは丸岡だが、それは僕の一方的な八つ当たり。視界に入るのだ、丸岡が。そんなの耐えられるわけない。幸せそうな丸岡。笑顔で直輝に話しかける丸岡。
僕には関係ないけど、交際は順調のようだ。それなのに、二日続けて弁当を一緒に食べてるなんて。これ、元カノならこんなことしないのにな…。彼女に怒られるからね。丸岡は僕と直輝の事は知らないだろう。何もわざわざ波風を立てる必要はない。
これは喜ぶべきことなのか?
いや、違うだろ。
でも、自分から逃げたり、無視したりできない。それは性格もあるんだろうけど、根底はまだ直輝が好きだから。
片思いに戻ったと思えば良いのか?それならまだ割り切れる。好きになってすぐに実った恋は、片思いの期間がほとんどなかった。順番が逆だけど片思いも悪くない。奇跡の数ヶ月だった。
実ることのない片思いを始めれば良いのかな。それなら一緒にお昼を食べてる今の状況は喜ぶべきなんだ。
四月のあの時に直輝に彼女がいたとしても、僕の気持ちが変わることはなかった。今、丸岡の存在が僕を苦しめても、それが嫌いになる理由にはならない。片思いってそう言うものだよね。
「災難だな」
以前からちょくちょく話しかけてくれていた隣の席の吉広直志が、可愛そうな者を見る目で僕を哀れむ。
弁当を食べ終わり、直輝が自分の席に戻った途端、グッと寄ってきた。
「メイド服のこと?」
「それ以外に何かあるか?」
「…いや、無いけど」
そうだよね。振られたことは知らないよね。付き合っていたことも。それに、それは、災難って言うより想定の範囲内の出来事で、嘆き悲しむ立場にない。
「おかしな奴。諦めたのか?」
「最後まで、できれば諦めたくない。諦めたくないけど…。でも、明後日だし…ダメでしょ……」
「そうだよな」
「吉広が代わってくれたら良いのに」
「ははっ、そりゃ無理だな」
「同じくらいの身長だろ?着られるって。ウイッグ付けたらバッチリ!」
吉広は五分刈りの野球部員。野球部の中では一番低いらしく、身長の話題は禁句だけど、今は気遣ってやることができない。
「あれを、俺に着ろってか?」
吉広とは同じ背格好で、僕が着れるなら、絶対に吉広も着ることができるはず。僕より筋肉質な身体は、きっとシュールで受けるはず!
「安村は自分が着られるってだけで決まったと思ってるのか?」
「えっ?違うの?やっぱり、からかわれてるんだ」
「……まあ、無自覚は今に始まったわけじゃないしな。それより…」
小さな声でブツブツと呟いてから、更にグイッと顔を寄せてきた。
「馬渕となんかあった?」
「えっ?何で?」
「最近よく一緒にいるからさ。昨日も体育で組んでたし、今も一つの弁当一緒に食べてたじゃん。昨日なんか同じ箸使ってた。急にどうしたのかな~って思って」
全部見られてる。そりゃそうか。隣に座ってたら…、いや、同じ教室にいれば見ることはできる。
「先週末から落ち込んでたからさ、どしたかなって思ってたんだ」
「な、何でもないよ」
「そうか?今まで、話しかけるなオーラいっぱい出して張り詰めてる感じだったけど、今は落ち込みでそれもないから…みんな喜んでるけど。安村はそれどころじゃない感じ?」
直樹は仏頂面でメイド服姿の僕を見ていたけれど、その時は何も言わなかった。きっと、気持ち悪いものを見て、気分がすぐれなかったのだろう。正しい反応だと思う。もしかしてそれが別れた理由なのかな?はあ~。
みんなは僕をおだてて、メイド服を着せようとそんなお為ごかしを言っただけ。そんなの嬉しくもなんともない。メイド服が破局の原因なら、尚更着たくはない……のだけれど…。
「仕方ないよ…ね…」
「そうだな。諦めろ」
「馬渕~、丸岡が呼んでるぞ」
入り口に立つクラスメイトが大声で直輝に声をかける。その隣でぺこりと頭を下げる美女。
「ん?ああ、ありがと。安村、ごめん…食べてて良いよ。おにぎりも。ちゃんと食べないと大きくなれないぞ?」
「なっ…」
「あははっ」
メイド服を着ることとは別に、少し上昇していた気持ちがどん底まで落ちる。
隣のクラスの丸岡美香はサッカー部のマネージャーで、直輝の彼女。直樹はサッカー部だから、放課後はいつも一緒だ。昼休みまで来なくて良いのに。
丸岡のせいで僕の放課後の楽しみがなくなったのに!走る直輝をこっそり見るって言う楽しみを奪われた。実際、奪ったのは丸岡だが、それは僕の一方的な八つ当たり。視界に入るのだ、丸岡が。そんなの耐えられるわけない。幸せそうな丸岡。笑顔で直輝に話しかける丸岡。
僕には関係ないけど、交際は順調のようだ。それなのに、二日続けて弁当を一緒に食べてるなんて。これ、元カノならこんなことしないのにな…。彼女に怒られるからね。丸岡は僕と直輝の事は知らないだろう。何もわざわざ波風を立てる必要はない。
これは喜ぶべきことなのか?
いや、違うだろ。
でも、自分から逃げたり、無視したりできない。それは性格もあるんだろうけど、根底はまだ直輝が好きだから。
片思いに戻ったと思えば良いのか?それならまだ割り切れる。好きになってすぐに実った恋は、片思いの期間がほとんどなかった。順番が逆だけど片思いも悪くない。奇跡の数ヶ月だった。
実ることのない片思いを始めれば良いのかな。それなら一緒にお昼を食べてる今の状況は喜ぶべきなんだ。
四月のあの時に直輝に彼女がいたとしても、僕の気持ちが変わることはなかった。今、丸岡の存在が僕を苦しめても、それが嫌いになる理由にはならない。片思いってそう言うものだよね。
「災難だな」
以前からちょくちょく話しかけてくれていた隣の席の吉広直志が、可愛そうな者を見る目で僕を哀れむ。
弁当を食べ終わり、直輝が自分の席に戻った途端、グッと寄ってきた。
「メイド服のこと?」
「それ以外に何かあるか?」
「…いや、無いけど」
そうだよね。振られたことは知らないよね。付き合っていたことも。それに、それは、災難って言うより想定の範囲内の出来事で、嘆き悲しむ立場にない。
「おかしな奴。諦めたのか?」
「最後まで、できれば諦めたくない。諦めたくないけど…。でも、明後日だし…ダメでしょ……」
「そうだよな」
「吉広が代わってくれたら良いのに」
「ははっ、そりゃ無理だな」
「同じくらいの身長だろ?着られるって。ウイッグ付けたらバッチリ!」
吉広は五分刈りの野球部員。野球部の中では一番低いらしく、身長の話題は禁句だけど、今は気遣ってやることができない。
「あれを、俺に着ろってか?」
吉広とは同じ背格好で、僕が着れるなら、絶対に吉広も着ることができるはず。僕より筋肉質な身体は、きっとシュールで受けるはず!
「安村は自分が着られるってだけで決まったと思ってるのか?」
「えっ?違うの?やっぱり、からかわれてるんだ」
「……まあ、無自覚は今に始まったわけじゃないしな。それより…」
小さな声でブツブツと呟いてから、更にグイッと顔を寄せてきた。
「馬渕となんかあった?」
「えっ?何で?」
「最近よく一緒にいるからさ。昨日も体育で組んでたし、今も一つの弁当一緒に食べてたじゃん。昨日なんか同じ箸使ってた。急にどうしたのかな~って思って」
全部見られてる。そりゃそうか。隣に座ってたら…、いや、同じ教室にいれば見ることはできる。
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