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別れても好きな人
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「そうそう!」
前の席の女子が振り返り、吉広に相槌を打つ。
「なんか違うよね、安村くん。今の方が良いよ」
「そ、そうかな…。変わりないと思うけど」
「ああ、ほら、わたしでも守ってあげたくなるって感じ?母性本能くすぐられる~」
「そりゃ、安村より井尻の方が強そうだけど」
「そうでしょ?!」
「おまぇ、怒らねぇの?」
「いや~、安村くんならそうでしょ」
「な、何か、複雑なんだけど…。凄い、男として叩きのめされた感が…。立ち直れない」
女子って苦手。自分の性癖に気づく前、なんとなく周りに流され、恋愛対象として見ていた時からグイグイ来る子は嫌だった。嫌悪するって意味じゃないけど、押される感じが怖かった。みんながみんなそんな子ばかりじゃないけど、大人しそうな子でも、女子同士なら結構口が悪かったりして、うっかり聞いてしまった時なんかは最悪だった。
「ごめん、ごめん。でも、以前は野良猫が警戒するように毛を逆撫でて震えてるって様子だったけど、今は捨て猫が雨に降られて凍えてるって感じだよ」
「そうだよな。うん、井尻、ナイス例え!」
「でしょ?餌付けしたくなる馬渕くんの気持ち、わかるわ」
「餌付けって?」
「だって、昨日からの二人の昼休みデートって女子の間で凄い話題になってるから」
「デートって…」
「二人だけの空間だったじゃない」
「え……、目立ってた?」
「いや、まあ、目立ってないけど、目立ってた」
「えっ?どっち?」
「二人とも、普段と違ったからさ。それもあるけど、微笑ましい感じ?しっくり馴染んでたよ」
「じゃあ、目立ってなかったの?」
「あ~、そう思いたいんだね?じゃあ、目立ってなかった!」
「な、何それ?どっち?」
「何だよ安村、そんなに気になるのか?」
「いや、気になるってか、目立ちたくないなって」
「今更でしょ?」
「い、今更って、何?」
「まあ、ある意味安村はみんなの癒しだな。隠れマスコット的な?暗黙の了解の不可侵条約的な?」
「だよな!でも、今まであったバリアも今は弱ってるからさ…」
「ばっ、やめろよ、神崎」
吉広の後ろの席の神崎が会話に加わった。
神崎は背が高く…直輝より低いが。整った、女子受けするイケメンの…直輝より劣るが、モテる男だった。
……くっ、我ながら、虚しい。
もう僕のものではないのに…。
いや、初めから違ったのか?
「どう言うこと?」
「あっ、違って…」
吉広が挙動不審だ。思わず席を立ち、神崎の口を塞ごうとする。悲しいかな、身長差か、同じような運動神経では上から抑えるように遮られてしまった。
「いや、それはさ…」
「神崎、黙れ!」
今度は口で抑えようとする。
「何々?神崎は安村くんの隙をつこうとしてるとか?」
「井尻、お前も煽るなよ」
「えっと、神崎はメイド服が着たいとか?」
「ぎゃぁ、はっはっ、そりゃないわ」
「井尻、お前、下品すぎ」
「だって吉広!面白すぎる!」
涙を流して、笑い転げる井尻。それを哀れむように見る吉広。不機嫌そうに睨む神崎。僕はと言えば、おどおどと今の会話を復習中。ど言うこと?
「あー、深く考えるな」
「そうそう!安村くんは今のままが一番」
「まあ、そうだな」
吉広、井尻、神崎の台詞で益々混乱する。
「要するに…」
「神崎!」
「はいはい、余計なことは言わないよ。最近はさ、メイド服のことで悩んでるんだろ?だからか、入学してからピリピリとした警戒が無くなって、話しかけやすくなったなと、クラスメイト全員が思っているわけよ」
「はあ、まあ…」
やたらと持って回った言い方で、ニヤリと笑う。自分ではピリピリしていた自覚はない。メイド服のことは勿論悩みの種ではあるけれど、直輝との事がそれを助長しているだけで、落ち込みの原因は今や直輝との破局だ。もともと着たくなかったのに、破局の原因と思われるメイド服を…と思うと気分も機嫌もダダ下がる。そんなことは口が裂けても言えないけれど。
「だから、今のままで、可愛い癒しでいてくれればいいんだよ」
意味不明な三人の話は、先生が入ってきて、強制終了するしかなかった。意味が知りたかったけど、仕方ない。
前の席の女子が振り返り、吉広に相槌を打つ。
「なんか違うよね、安村くん。今の方が良いよ」
「そ、そうかな…。変わりないと思うけど」
「ああ、ほら、わたしでも守ってあげたくなるって感じ?母性本能くすぐられる~」
「そりゃ、安村より井尻の方が強そうだけど」
「そうでしょ?!」
「おまぇ、怒らねぇの?」
「いや~、安村くんならそうでしょ」
「な、何か、複雑なんだけど…。凄い、男として叩きのめされた感が…。立ち直れない」
女子って苦手。自分の性癖に気づく前、なんとなく周りに流され、恋愛対象として見ていた時からグイグイ来る子は嫌だった。嫌悪するって意味じゃないけど、押される感じが怖かった。みんながみんなそんな子ばかりじゃないけど、大人しそうな子でも、女子同士なら結構口が悪かったりして、うっかり聞いてしまった時なんかは最悪だった。
「ごめん、ごめん。でも、以前は野良猫が警戒するように毛を逆撫でて震えてるって様子だったけど、今は捨て猫が雨に降られて凍えてるって感じだよ」
「そうだよな。うん、井尻、ナイス例え!」
「でしょ?餌付けしたくなる馬渕くんの気持ち、わかるわ」
「餌付けって?」
「だって、昨日からの二人の昼休みデートって女子の間で凄い話題になってるから」
「デートって…」
「二人だけの空間だったじゃない」
「え……、目立ってた?」
「いや、まあ、目立ってないけど、目立ってた」
「えっ?どっち?」
「二人とも、普段と違ったからさ。それもあるけど、微笑ましい感じ?しっくり馴染んでたよ」
「じゃあ、目立ってなかったの?」
「あ~、そう思いたいんだね?じゃあ、目立ってなかった!」
「な、何それ?どっち?」
「何だよ安村、そんなに気になるのか?」
「いや、気になるってか、目立ちたくないなって」
「今更でしょ?」
「い、今更って、何?」
「まあ、ある意味安村はみんなの癒しだな。隠れマスコット的な?暗黙の了解の不可侵条約的な?」
「だよな!でも、今まであったバリアも今は弱ってるからさ…」
「ばっ、やめろよ、神崎」
吉広の後ろの席の神崎が会話に加わった。
神崎は背が高く…直輝より低いが。整った、女子受けするイケメンの…直輝より劣るが、モテる男だった。
……くっ、我ながら、虚しい。
もう僕のものではないのに…。
いや、初めから違ったのか?
「どう言うこと?」
「あっ、違って…」
吉広が挙動不審だ。思わず席を立ち、神崎の口を塞ごうとする。悲しいかな、身長差か、同じような運動神経では上から抑えるように遮られてしまった。
「いや、それはさ…」
「神崎、黙れ!」
今度は口で抑えようとする。
「何々?神崎は安村くんの隙をつこうとしてるとか?」
「井尻、お前も煽るなよ」
「えっと、神崎はメイド服が着たいとか?」
「ぎゃぁ、はっはっ、そりゃないわ」
「井尻、お前、下品すぎ」
「だって吉広!面白すぎる!」
涙を流して、笑い転げる井尻。それを哀れむように見る吉広。不機嫌そうに睨む神崎。僕はと言えば、おどおどと今の会話を復習中。ど言うこと?
「あー、深く考えるな」
「そうそう!安村くんは今のままが一番」
「まあ、そうだな」
吉広、井尻、神崎の台詞で益々混乱する。
「要するに…」
「神崎!」
「はいはい、余計なことは言わないよ。最近はさ、メイド服のことで悩んでるんだろ?だからか、入学してからピリピリとした警戒が無くなって、話しかけやすくなったなと、クラスメイト全員が思っているわけよ」
「はあ、まあ…」
やたらと持って回った言い方で、ニヤリと笑う。自分ではピリピリしていた自覚はない。メイド服のことは勿論悩みの種ではあるけれど、直輝との事がそれを助長しているだけで、落ち込みの原因は今や直輝との破局だ。もともと着たくなかったのに、破局の原因と思われるメイド服を…と思うと気分も機嫌もダダ下がる。そんなことは口が裂けても言えないけれど。
「だから、今のままで、可愛い癒しでいてくれればいいんだよ」
意味不明な三人の話は、先生が入ってきて、強制終了するしかなかった。意味が知りたかったけど、仕方ない。
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