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穏やかな日々
06
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えっ?えっ?食べろと?みんなの前で、あ~ん……ですか?
「食べないの?トマト、好きだよね?」
トマトは特に好きでもないけれど、嫌いではない。そんなことは、直輝も知っている。今は好き嫌いが重要ではない。もちろんミニトマトも重要ではない。重要なのは、多分この行為そのものだ。
微妙な顔で直輝を見ると、満面の笑みで動きを止めている。これは食べるまで許してもらえないのだろうか?
三人の視線が突き刺さる。いや、もしかしたらもっと多くの注目を集めているかも…。どうしよう。周りを確かめるのは怖くてできない。もし見回して、誰かと目が合ってしまったら、死ねる。
これはさっさとミッションを終えた方が、良いのではないかと考えて口を開けた。多分真っ赤だ。トマトの話ではない。僕の顔、トマトと同じに違いない。
「もう!恥ずかし、から」
「俺も欲しいな…、玉子焼き食べさせて?」
「!……へっ?……し、仕方ないなぁ」
小さな声で返せば、同じく小さな声で返事が返ってくる。但し、島にいる三人には確実に聞こえている。
ここまでがミッションと諦めて食べさせた…
「ちょっ、何だよそれ」
「な、何やってんのお前ら」
「見せつけんなよ、直輝」
神崎、吉広、財前の声が控えめながら耳に突き刺さる。ミッションクリアは直輝の機嫌を上昇させただけだった。はぁ…。何がしたかったのだろう?二人きりで食べる時は、たまにこうしてお互いに食べさせるってこともしたけどさ…。
良く考えれば、『無理!』の一言で終わっていたかもしれないのに。直輝の機嫌が少しは悪くなるかもしれないけど、喧嘩するほどのことでもない。ホント、はぁ…、である。
ひたすら下を向き、食べ続けた。もう、食欲は無かったけれど、ご機嫌な直輝の箸から、再び餌付けされることを防ぐには自分で食べるしかない。
それから散々吉広に揶揄われながら何とか弁当を食べ終わり、神崎の何か言いたげな視線を感じながら、午後の授業を受けた。
「安村っち、次、数学の授業、行こうぜ」
後ろでガタンと席を立ち、神崎が肩を叩いた。数学と英語は二クラスを三つに分けて、少人数で授業が行われる。
残念ながら直輝とは教室が違う。習熟度別と言うわけではなく、ランダムに振り分けられたクラスは学期ごとにも変わらなかった。席のようにたまには変えてくれても良いのにな…。文化祭で使った空き教室で授業がある。
「あっ、うん」
このところ神崎がこうして誘ってくる。掃除や移動教室などで声を掛けられることが増えた。
直輝と一緒にいるとそうでもないけど、一人でいると…
「なあなあ、今度の日曜、映画観に行かないか?俺、メチャ気になるのがあってさ」
「えっ?僕、日曜はちょっと…」
「えー、先週も同じ返事だったじゃん」
先週は祭りに誘われた。神崎の母親の実家がある町で、大きな祭りがあるらしい。屋台が沢山出ていて賑やかで、ここから電車で一時間くらいだから行こうと。祭り、屋台とワクワクする単語に、思わず頷きそうになったけど、今は直輝の方が大事。何故か神崎に対して警戒しているようで、普段しゃべるのもあまり良い顔はしない。直輝と一緒なら喜んで行くけど、丁寧にお断りした。
「日曜日ってバイトかなんかしてんの?」
「そんなことないよ」
「じゃあ、いつも日曜って何してんの?部活入ってないよな?毎週ある用事って何?」
「な、何でも良いよね?」
「何々?『お前には関係ない!』ってこと?良いじゃん、何してるか教えるくらい。隠されると余計に気になる」
「……えっと」
どうしよう…。毎週日曜は直輝と一緒だ。部活が休みの日は一緒に出かけるし、部活がある時も、終わるまで待って一緒に過ごす。あの十日ほどの地獄のような日を除けば、僕たちは付き合いたてのような甘々な日々が今も続いている。
奇跡のようだ。
「神崎、安村が困ってるぞ。放っておいてやれないのか?安村だって言いたくないことぐらいあるだろう」
「吉広は気にならない?」
「安村が休みの日に何してようが、別に良いじゃないか?」
「やっ、う、うん。そうなんだけど…」
吉広が助けてくれて、ようやく神崎の質問攻めを終わらすことができた。良かった、吉広が居てくれて。最近では、神崎が僕にしゃべりかけてくれば、直輝が会話に入ってくれる。けれど、ここには居ない。いくら最近過保護な直輝でも、もうすぐ授業が始まる今は隣の教室で席に着いているだろう。
「食べないの?トマト、好きだよね?」
トマトは特に好きでもないけれど、嫌いではない。そんなことは、直輝も知っている。今は好き嫌いが重要ではない。もちろんミニトマトも重要ではない。重要なのは、多分この行為そのものだ。
微妙な顔で直輝を見ると、満面の笑みで動きを止めている。これは食べるまで許してもらえないのだろうか?
三人の視線が突き刺さる。いや、もしかしたらもっと多くの注目を集めているかも…。どうしよう。周りを確かめるのは怖くてできない。もし見回して、誰かと目が合ってしまったら、死ねる。
これはさっさとミッションを終えた方が、良いのではないかと考えて口を開けた。多分真っ赤だ。トマトの話ではない。僕の顔、トマトと同じに違いない。
「もう!恥ずかし、から」
「俺も欲しいな…、玉子焼き食べさせて?」
「!……へっ?……し、仕方ないなぁ」
小さな声で返せば、同じく小さな声で返事が返ってくる。但し、島にいる三人には確実に聞こえている。
ここまでがミッションと諦めて食べさせた…
「ちょっ、何だよそれ」
「な、何やってんのお前ら」
「見せつけんなよ、直輝」
神崎、吉広、財前の声が控えめながら耳に突き刺さる。ミッションクリアは直輝の機嫌を上昇させただけだった。はぁ…。何がしたかったのだろう?二人きりで食べる時は、たまにこうしてお互いに食べさせるってこともしたけどさ…。
良く考えれば、『無理!』の一言で終わっていたかもしれないのに。直輝の機嫌が少しは悪くなるかもしれないけど、喧嘩するほどのことでもない。ホント、はぁ…、である。
ひたすら下を向き、食べ続けた。もう、食欲は無かったけれど、ご機嫌な直輝の箸から、再び餌付けされることを防ぐには自分で食べるしかない。
それから散々吉広に揶揄われながら何とか弁当を食べ終わり、神崎の何か言いたげな視線を感じながら、午後の授業を受けた。
「安村っち、次、数学の授業、行こうぜ」
後ろでガタンと席を立ち、神崎が肩を叩いた。数学と英語は二クラスを三つに分けて、少人数で授業が行われる。
残念ながら直輝とは教室が違う。習熟度別と言うわけではなく、ランダムに振り分けられたクラスは学期ごとにも変わらなかった。席のようにたまには変えてくれても良いのにな…。文化祭で使った空き教室で授業がある。
「あっ、うん」
このところ神崎がこうして誘ってくる。掃除や移動教室などで声を掛けられることが増えた。
直輝と一緒にいるとそうでもないけど、一人でいると…
「なあなあ、今度の日曜、映画観に行かないか?俺、メチャ気になるのがあってさ」
「えっ?僕、日曜はちょっと…」
「えー、先週も同じ返事だったじゃん」
先週は祭りに誘われた。神崎の母親の実家がある町で、大きな祭りがあるらしい。屋台が沢山出ていて賑やかで、ここから電車で一時間くらいだから行こうと。祭り、屋台とワクワクする単語に、思わず頷きそうになったけど、今は直輝の方が大事。何故か神崎に対して警戒しているようで、普段しゃべるのもあまり良い顔はしない。直輝と一緒なら喜んで行くけど、丁寧にお断りした。
「日曜日ってバイトかなんかしてんの?」
「そんなことないよ」
「じゃあ、いつも日曜って何してんの?部活入ってないよな?毎週ある用事って何?」
「な、何でも良いよね?」
「何々?『お前には関係ない!』ってこと?良いじゃん、何してるか教えるくらい。隠されると余計に気になる」
「……えっと」
どうしよう…。毎週日曜は直輝と一緒だ。部活が休みの日は一緒に出かけるし、部活がある時も、終わるまで待って一緒に過ごす。あの十日ほどの地獄のような日を除けば、僕たちは付き合いたてのような甘々な日々が今も続いている。
奇跡のようだ。
「神崎、安村が困ってるぞ。放っておいてやれないのか?安村だって言いたくないことぐらいあるだろう」
「吉広は気にならない?」
「安村が休みの日に何してようが、別に良いじゃないか?」
「やっ、う、うん。そうなんだけど…」
吉広が助けてくれて、ようやく神崎の質問攻めを終わらすことができた。良かった、吉広が居てくれて。最近では、神崎が僕にしゃべりかけてくれば、直輝が会話に入ってくれる。けれど、ここには居ない。いくら最近過保護な直輝でも、もうすぐ授業が始まる今は隣の教室で席に着いているだろう。
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