彼氏未満

茉莉花 香乃

文字の大きさ
38 / 40
それでも素直になれなくて…

08

しおりを挟む
「今日はベッドの準備ができていないから、俺の部屋で良いよな?」
「まあ、…それはそうだけど…どうしよう、ねえ?」
「そうだな…今日は…」
「ありがと!睦己、行こう」
「えっ?あっ、ありがとうございます。おやすみなさい」

直輝に手を引かれながら、なんとか頭を下げて挨拶した。久しぶりの直樹の部屋。ドアを閉めた途端、抱きしめられた。

二人でベッドに座る。僕の座る場所は直樹の膝の上。

「睦己、これからよろしくな」
「うん…うん。ありがと…。ホント、直輝には感謝しかないよ。でも、もし……」
「ん?どした?」
「もし、直輝に、他に好きな人ができたら、言って欲しいんだ」
「そんなのできるわけないだろ?」
「それでも、未来はわからないよ。だから、約束して欲しい。その時はちゃんと…」
「わかった」
「……っ……ありがと…」
「泣きそうな睦己には悪いけど、約束して欲しいって言うから約束しただけで、心配しなくてもそんな未来は来ないから」
「直輝…」
「俺の覚悟を思い知れ!」
「ふふっ…うん。僕は彼氏、失格だね。いつも直輝に心配かけて」
「俺の方が睦己を困らせた。ごめん。これからは何でも言って欲しい」
「直輝も、僕に直して欲しいことがあったら言って?僕、鈍感だから教えてもらわないとわからない」
「そうだな。もう意地は張らない。だから、睦己ももっと俺に甘えて?俺の嫌なところも言って欲しい。それで…ここで花嫁修行して、俺の…」
「はなっ!花嫁修行って!えっ?」
「そりゃそうだよ。いずれは馬渕になれば良い。父さんと母さんにお願いする。もし許してもらえなくても、二人が成人してから、また話し合おう?あの母親のところには絶対に帰さない。しばらくは、登下校も絶対に一緒。あいつが待ち伏せとかしてたら嫌だろ?」
「うん…嫌………」
「睦己?ははっ、眠い?」
「うん…直輝、好き」
「何だよ…そんなこと言って、寝ちまうとか…。でも、ずっとゆっくり寝てないんだもんな」
「うん…直輝、キス…」
「ホントに…」

手伝ってもらいながら歯磨きや着替えをなんとか終えた。半分寝ながら、言われた通りに手を動かす。

身体のどこかが直輝に触れていることに安心して、もっといっぱい話していたいのに、どんどん眠りの世界に入っていく。久しぶりにパジャマを着た。その開放感と直輝の体温は、ここ一週間、熟睡できていなかった身体に泥のような眠りをもたらした。

ふわふわと雲の中を浮いているような浮遊感。嬉しさに高揚している反面、気持ちは落ち着いていて、直輝は僕の精神安定剤だ。過剰摂取は要注意だろうか?でも、手放せない。常習性があるのだ。大丈夫、直輝中毒ならとっくにかかってる。副作用は甘えん坊になるくらい。

「睦己…」
「…んっ…」
「睦己、朝だよ…」
「…あっ、おはよ…直輝だ。へへっ、抱きついちゃお……あれっ?これは、夢じゃないの?匂いまでするなんて。直輝の匂い…好き」
「もう、ホント…何寝惚けてんの?」
「…うん?…夢じゃ、ない?」
「昨日、俺ん家に来ただろ?一緒に寝たじゃん」
「うん。覚えてる。でも、でも、夜に一度起きた時は凄く幸せな夢みてるんだと思ってた。めないように、直輝に抱きついて、直ぐに寝た…。夢の続きだと思ったんだ。良かった…。夢じゃなかったんだね」
「勿論夢じゃないし。これからはずっと一緒。……いっぱいキスもするんだろ?」

耳元で吹き込むような小さな声は、朝には似合わないくらい甘い。

「…ふぁっ…」
「ふふっ…朝ご飯だよ。着替えて?」
「うん。……あっ!」
「どした?」
「寝る前は、早く起きて手伝おうと思ってたのに」
「今日はゆっくりしたらいいんだって。母さんが、テストが終わるまではバイトも良いってさ」
「でも、直輝はお弁当作ったんでしょ?」
「俺は睦己のためならなんだってするさ。いつも完食してくれるから、作り甲斐あるし」
「恥ずかしい…」
「何で?」
「だって、大食いみたい…だから」
「大食いだって、睦己は睦己だよ」
「うん。朝も夜もあまり食べてなかったから、凄くありがたかったんだ」
「そうなんだな……」
「そんな顔しないで。直輝、ありがとう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

不倫の片棒を担がせるなんてあり得ないだろ

雨宮里玖
BL
イケメン常務×平凡リーマン 《あらすじ》 恋人の日夏と福岡で仲睦まじく過ごしていた空木。日夏が東京本社に戻ることになり「一緒に東京で暮らそう」という誘いを望んでいたのに、日夏から「お前とはもう会わない。俺には東京に妻子がいる」とまさかの言葉。自分の存在が恋人ではなくただの期間限定の不倫相手だったとわかり、空木は激怒する——。 秋元秀一郎(30)商社常務。 空木(26)看護師 日夏(30)商社係長。

永久糖度

すずかけあおい
BL
幼い頃、幼馴染の叶はままごとが好きだった。パパはもちろん叶でママはなぜか恵吾。恵吾のことが大好きな叶の気持ちは、高校二年になった今でも変わっていない。でも、これでいいのか。 〔攻め〕長沼 叶 〔受け〕岸井 恵吾 外部サイトでも同作品を投稿しています。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

小石の恋

キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。 助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。 なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。 果たして律紀は逃げ切ることができるのか。

処理中です...