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「俺も最初はそうだと思った。けど、違うんだ」
ドキッとする。
「何が違うの?」
僕はもう既に、失敗をしてしまっていたのか?きっちり謝って、もう会わないようにしよう。
「ご…」
謝りの言葉を両手を挙げて遮られた。
「俺、来るもの拒まずで、適当に付き合って、そんなだから直ぐに飽きられちゃって。太一くんってつまらないって、何だよ…なあ?で、去る者追わずですぐに破局。そして、司に報告だ」
僕は辛かったけどね。今も辛い。
「何度かそんなことを繰り返してるとさ、司がどんな反応するかなとか思うようになって。彼女と付き合ってる時だって、司と遊んでる方が楽しいなって思ったり…変だろ?」
何が言いたいのだろう?
「別れたって報告すると、いつしかトントンって背中を叩いてちょっと抱きしめてくれただろ?それが、照れくさかったけど嬉しかった」
気持ち悪かったわけじゃないの?
「なあ、俺の事嫌いになったのか?」
先ほどされた質問をもう一度された。嫌いじゃないって言ったのに…。
「俺とは会いたくない?」
「そ、んなことない…」
「あの時みたいに、背中を叩いてくれよ」
「誰かにフラれたの?」
そうか…今回は自分から告白して…そしてフラれたんだ。それって、僕にしてみたら今までで一番嫌だ。これまでは、太一の気持ちがその彼女にあるかどうかわからなかったけど、今回は違うんだろ?泣きそうだ。
泣き顔を隠すために両腕を回して背中を叩く。高校の時にしていたように、軽く叩いて離れようとした。
「ありがとう。もう少し、このままで…」
そう言って、太一の腕が僕の背中に回る。
「えっ?」
これじゃ、抱き合ってるよ。
「僕はその子じゃないよ?」
僕に回るこの腕は嬉しいけれど、女の代わりなんてまっぴらだ。
「その子って誰?」
「告白したんだろ?」
「誰に?」
「し、知らないよ。フラれたんだろ?だから慰めて欲しいってさっき言ったのに」
「まだ、誰にも告白してない。これからするから」
「そうなんだ…」
…頑張ってと続けることができなかった。頑張って欲しくない。何度でも慰めてあげるから、フラれて欲しいって心が叫ぶ。
肩を持たれ、向かい合う。
真剣な目で見つめられて、泣きそうな顔を隠したいのにできない。
「なんて顔してんの?」
「どんな顔だよ?」
強がりを言ってみる。泣きそうな変な顔してるってわかるから。
「俺、誰かに告白するのって初めてで、緊張する」
「そ、そうなんだ。僕もしたことないから、アドバイスしてあげられない…ごめんね」
「じゃあ、するよ?」
「えっ?本人に言いなよ!僕を練習相手にしないで…」
「司、好きなんだ」
「だから!…えっ?」
「司が好きなんだ」
ポロっと涙が一粒溢れた。何を言われているかわからない。
「あの……へっ?」
「付き合って欲しいんだけど…」
涙が溢れて太一の顔が見られない。
「泣くほど嫌なのか、泣くほど嬉しいのかどっち?」
「う、れしぃ…」
「じゃあ、付き合ってくれる?」
「僕でいいの?」
「今の、俺の一世一代の告白聞いてた?」
そんな大袈裟なと考える冷静な心と、思ってもみなかった告白に驚いている沸騰するような心が混ざり合う。
声が上手く出ないから、頷くことしかできない。
「キスしていい?」
まだ肩を持たれているから、身体が動かない。
「でも…」
キスしたい。
でも…恥ずかしい。三年と少し見続けていた大好きな顔が、真剣な瞳を僕に注ぐ。目を伏せることしかできない。
肩を持つ手を離し、頬に添えられ、自然と顔を上げると目が合った。親指で目元を拭われ照れ臭い。涙は未だ流れ続け、太一の指を濡らした。
「俺、いじめてる?」
「ちが、ぅ…」
「いい?…」
僕の返事を聞く前に触れる唇。柔らかい感触に、身体が固まる。初めてのことに自分の指で、今の感触を確かめるようになぞる。
「司、可愛い」
「か、可愛くない!」
「可愛いよ。司、好きだよ」
「僕も好き」
いきなりの展開に夢を見ているのかと思った。
ドキッとする。
「何が違うの?」
僕はもう既に、失敗をしてしまっていたのか?きっちり謝って、もう会わないようにしよう。
「ご…」
謝りの言葉を両手を挙げて遮られた。
「俺、来るもの拒まずで、適当に付き合って、そんなだから直ぐに飽きられちゃって。太一くんってつまらないって、何だよ…なあ?で、去る者追わずですぐに破局。そして、司に報告だ」
僕は辛かったけどね。今も辛い。
「何度かそんなことを繰り返してるとさ、司がどんな反応するかなとか思うようになって。彼女と付き合ってる時だって、司と遊んでる方が楽しいなって思ったり…変だろ?」
何が言いたいのだろう?
「別れたって報告すると、いつしかトントンって背中を叩いてちょっと抱きしめてくれただろ?それが、照れくさかったけど嬉しかった」
気持ち悪かったわけじゃないの?
「なあ、俺の事嫌いになったのか?」
先ほどされた質問をもう一度された。嫌いじゃないって言ったのに…。
「俺とは会いたくない?」
「そ、んなことない…」
「あの時みたいに、背中を叩いてくれよ」
「誰かにフラれたの?」
そうか…今回は自分から告白して…そしてフラれたんだ。それって、僕にしてみたら今までで一番嫌だ。これまでは、太一の気持ちがその彼女にあるかどうかわからなかったけど、今回は違うんだろ?泣きそうだ。
泣き顔を隠すために両腕を回して背中を叩く。高校の時にしていたように、軽く叩いて離れようとした。
「ありがとう。もう少し、このままで…」
そう言って、太一の腕が僕の背中に回る。
「えっ?」
これじゃ、抱き合ってるよ。
「僕はその子じゃないよ?」
僕に回るこの腕は嬉しいけれど、女の代わりなんてまっぴらだ。
「その子って誰?」
「告白したんだろ?」
「誰に?」
「し、知らないよ。フラれたんだろ?だから慰めて欲しいってさっき言ったのに」
「まだ、誰にも告白してない。これからするから」
「そうなんだ…」
…頑張ってと続けることができなかった。頑張って欲しくない。何度でも慰めてあげるから、フラれて欲しいって心が叫ぶ。
肩を持たれ、向かい合う。
真剣な目で見つめられて、泣きそうな顔を隠したいのにできない。
「なんて顔してんの?」
「どんな顔だよ?」
強がりを言ってみる。泣きそうな変な顔してるってわかるから。
「俺、誰かに告白するのって初めてで、緊張する」
「そ、そうなんだ。僕もしたことないから、アドバイスしてあげられない…ごめんね」
「じゃあ、するよ?」
「えっ?本人に言いなよ!僕を練習相手にしないで…」
「司、好きなんだ」
「だから!…えっ?」
「司が好きなんだ」
ポロっと涙が一粒溢れた。何を言われているかわからない。
「あの……へっ?」
「付き合って欲しいんだけど…」
涙が溢れて太一の顔が見られない。
「泣くほど嫌なのか、泣くほど嬉しいのかどっち?」
「う、れしぃ…」
「じゃあ、付き合ってくれる?」
「僕でいいの?」
「今の、俺の一世一代の告白聞いてた?」
そんな大袈裟なと考える冷静な心と、思ってもみなかった告白に驚いている沸騰するような心が混ざり合う。
声が上手く出ないから、頷くことしかできない。
「キスしていい?」
まだ肩を持たれているから、身体が動かない。
「でも…」
キスしたい。
でも…恥ずかしい。三年と少し見続けていた大好きな顔が、真剣な瞳を僕に注ぐ。目を伏せることしかできない。
肩を持つ手を離し、頬に添えられ、自然と顔を上げると目が合った。親指で目元を拭われ照れ臭い。涙は未だ流れ続け、太一の指を濡らした。
「俺、いじめてる?」
「ちが、ぅ…」
「いい?…」
僕の返事を聞く前に触れる唇。柔らかい感触に、身体が固まる。初めてのことに自分の指で、今の感触を確かめるようになぞる。
「司、可愛い」
「か、可愛くない!」
「可愛いよ。司、好きだよ」
「僕も好き」
いきなりの展開に夢を見ているのかと思った。
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