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第三章
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「大沢、お前、碧を知ってるのか?」
高倉さんが姫を抱く俺を睨んでいる。それは、この髪のことを言ってるのか?姫の外見の違いに全く動じないからの言葉なのだろう。
それに、今までの俺と姫の距離感ではなくもっと近い…恋人のような触れ合い。今までは、安田碧と話したいと思っても、迷惑になるからと距離を置いていた。あの煩い奴らが何か嫌がらせをするかもしれないと思うと、教室でも視線を送ることさえできなかった。
「はい。全てと言ったでしょ?」
「そ、それでも、俺が連れて行くよ。俺も知ってるから」
そう言って姫を俺から取り上げようとする。でも、嘘だ。プラチナブロンドの姫を見た時驚いていたではないか?何かしらの秘密があるかもしれないと思ってはいても、この髪のことは知らなかったに違いない。
「何を言ってるんですか?何を知ってるかは知らないけど、そんなこと関係ない。あなたの軽はずみな行動が姫…碧を傷付けたんだ!そいつが!」
大人しく床に座る首謀者に目を向ける。怯えた目で俺を見て、それから、縋るように高倉さんを見る。
「そいつの仕業だろ?あんたの事、好きなんだろ、そいつ。高倉さん、昨日、食堂で碧の事構ってたんだろ?」
俺がどれだけ慎重に接してきたか知らないんだ。
「それは…俺が誰と喋ろうとお前に関係ないだろ?」
「関係ないさ。関係ないけど、こうして碧が傷ついた!」
「でも、それでも、碧は、俺に抱かれる方が喜ぶんじゃないか?」
何を言ってるんだ、この人。今まで自分を拒否する人間がいなかったからと言って、こんなに自分勝手な人だとは思わなかった。
「碧の意志ですよ」
「えっ?嘘だ…」
「俺がこうして抱きしめても良いかと確認しました。碧は嫌じゃないと言ってくれました」
まだ何か言いたそうな高倉さんを無視して歩き出す。
「篤人、克さん、後、任せても良い?碧を連れていきたい」
「わかった。鴻志さんに診てもらえよ」
「智親、篤人の手伝いして」
「いいぜ、でも、後で説明してくれよ」
「わかったよ」
部屋を出ると自習室にいた奴らの他に何人もの野次馬が、何があったのかとザワザワしている。
そして、俺の腕の中で、まるで眠り姫のように目を瞑る姫を見て更に騒がしくなる。
「誰なんだ?」
「ひどい!痛そう」
「誰があんな綺麗な顔を傷つけたんだ?」
「なあ、あんな可愛い子いたか?」
「いや、あんな綺麗な髪は見たことない」
「また、転入生か?」
様々な声が聞こえる。
「碧空!」
さっき、自習室で読書をしていた中原が人垣をかき分けて前に来た。
「探していた人見つかった?」
「ああ、さっきは悪かったな」
「ううん。その子?大丈夫なの?」
「ああ。怖かったんだろ。気を失ってるだけだ」
「そんな可愛い子この学校にいた?」
その時、ゆっくりと姫の目が開いた。
「あっ、碧空くん。中原くんも…」
「えっ、僕の事知ってるのか?」
「中原、安田碧だよ」
「えぇっ!」
その後ろで野次馬も盛大な声を上げる。
「碧空くん、何?」
突然の大きな声に驚いた姫が俺の首に抱きつき顔を隠した。更に声は大きくなる。
「怖い…」
俺にだけ聞こえるくらいの小さな声でそう言うと、また震えだした。
「中原、悪い。碧を診てもらわないと」
「う、うん。よくわからないけど、顔も腫れてるから早く行かなきゃだね。任せて。
はい、はい、道開けろよ!そこ!下がれ!手ェ、出した奴は、覚えとけよ!」
手を叩きながら周りを威嚇し、道を作ってくれる。普段はおとなしい中原だが、スイッチが入るととても怖く、喧嘩も強い。中学の時、可愛い見た目に手を出されそうになって、相手をボコボコにした過去がある。
中原のおかげですんなりと勘解由小路さんに診てもらうことができた。医師免許を持つこの人がどうして寮父なんかしてるのかは疑問だけど、こんな時にはとてもありがたい。
「ああ、顔が腫れてるね。痛い?」
椅子に座るように言われても俺の腕から離れることができなかった姫。俺の膝の上でおとなしく診てもらっている。
高倉さんが姫を抱く俺を睨んでいる。それは、この髪のことを言ってるのか?姫の外見の違いに全く動じないからの言葉なのだろう。
それに、今までの俺と姫の距離感ではなくもっと近い…恋人のような触れ合い。今までは、安田碧と話したいと思っても、迷惑になるからと距離を置いていた。あの煩い奴らが何か嫌がらせをするかもしれないと思うと、教室でも視線を送ることさえできなかった。
「はい。全てと言ったでしょ?」
「そ、それでも、俺が連れて行くよ。俺も知ってるから」
そう言って姫を俺から取り上げようとする。でも、嘘だ。プラチナブロンドの姫を見た時驚いていたではないか?何かしらの秘密があるかもしれないと思ってはいても、この髪のことは知らなかったに違いない。
「何を言ってるんですか?何を知ってるかは知らないけど、そんなこと関係ない。あなたの軽はずみな行動が姫…碧を傷付けたんだ!そいつが!」
大人しく床に座る首謀者に目を向ける。怯えた目で俺を見て、それから、縋るように高倉さんを見る。
「そいつの仕業だろ?あんたの事、好きなんだろ、そいつ。高倉さん、昨日、食堂で碧の事構ってたんだろ?」
俺がどれだけ慎重に接してきたか知らないんだ。
「それは…俺が誰と喋ろうとお前に関係ないだろ?」
「関係ないさ。関係ないけど、こうして碧が傷ついた!」
「でも、それでも、碧は、俺に抱かれる方が喜ぶんじゃないか?」
何を言ってるんだ、この人。今まで自分を拒否する人間がいなかったからと言って、こんなに自分勝手な人だとは思わなかった。
「碧の意志ですよ」
「えっ?嘘だ…」
「俺がこうして抱きしめても良いかと確認しました。碧は嫌じゃないと言ってくれました」
まだ何か言いたそうな高倉さんを無視して歩き出す。
「篤人、克さん、後、任せても良い?碧を連れていきたい」
「わかった。鴻志さんに診てもらえよ」
「智親、篤人の手伝いして」
「いいぜ、でも、後で説明してくれよ」
「わかったよ」
部屋を出ると自習室にいた奴らの他に何人もの野次馬が、何があったのかとザワザワしている。
そして、俺の腕の中で、まるで眠り姫のように目を瞑る姫を見て更に騒がしくなる。
「誰なんだ?」
「ひどい!痛そう」
「誰があんな綺麗な顔を傷つけたんだ?」
「なあ、あんな可愛い子いたか?」
「いや、あんな綺麗な髪は見たことない」
「また、転入生か?」
様々な声が聞こえる。
「碧空!」
さっき、自習室で読書をしていた中原が人垣をかき分けて前に来た。
「探していた人見つかった?」
「ああ、さっきは悪かったな」
「ううん。その子?大丈夫なの?」
「ああ。怖かったんだろ。気を失ってるだけだ」
「そんな可愛い子この学校にいた?」
その時、ゆっくりと姫の目が開いた。
「あっ、碧空くん。中原くんも…」
「えっ、僕の事知ってるのか?」
「中原、安田碧だよ」
「えぇっ!」
その後ろで野次馬も盛大な声を上げる。
「碧空くん、何?」
突然の大きな声に驚いた姫が俺の首に抱きつき顔を隠した。更に声は大きくなる。
「怖い…」
俺にだけ聞こえるくらいの小さな声でそう言うと、また震えだした。
「中原、悪い。碧を診てもらわないと」
「う、うん。よくわからないけど、顔も腫れてるから早く行かなきゃだね。任せて。
はい、はい、道開けろよ!そこ!下がれ!手ェ、出した奴は、覚えとけよ!」
手を叩きながら周りを威嚇し、道を作ってくれる。普段はおとなしい中原だが、スイッチが入るととても怖く、喧嘩も強い。中学の時、可愛い見た目に手を出されそうになって、相手をボコボコにした過去がある。
中原のおかげですんなりと勘解由小路さんに診てもらうことができた。医師免許を持つこの人がどうして寮父なんかしてるのかは疑問だけど、こんな時にはとてもありがたい。
「ああ、顔が腫れてるね。痛い?」
椅子に座るように言われても俺の腕から離れることができなかった姫。俺の膝の上でおとなしく診てもらっている。
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