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第四章
06
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その日、寮に帰ると碧空くんの部屋に行った。
「こっちに越して来ないか?」
「そんなことして良いの?」
「本当はダメなんだけど…」
「じゃあ、今のままで…。僕、晩御飯作るから一緒に食べよ?」
「そうだな…会えなかった今までに比べたら全然良いよな……」
「どうしたの?」
「…たまには、泊まってくれる?」
可愛くおねだりされて拒める僕じゃない。
「うん。僕も碧空くんと……その…一緒に居たいから」
「嬉しいよ」
その時、ドンドンと激しくドアを叩く音がする。一昨日も体験したこの状況に同じように不機嫌な碧空くんの顔が僕に迫る。
「キス…、良い?」
「えっ?…でも、だれか……んっ」
チュッと触れる唇は一瞬で離れ、再び重なる。
何回も何回も繰り返されるバードキスに酔ってしまいそうになる。
その間もドアはドンドンと友だちの部屋を訪問するには乱暴な音を出し続けている。
「寝室に行こうか?」
「で、でも…」
「姫だけだよ…隠したい」
「ダメだよ。誰か、見てきたら?」
「見なくても良いよ」
そんな会話の間も無遠慮な音は止まない。
「ああっ!」
座っててねと頬にキスをしてドアを開けると、そこには美都瑠と智親くんの他、八城さんと桜庭さんが立っていた。
ガヤガヤと部屋に入ってきた一行は碧空くんを無視してソファーに座る。
「碧空、コーヒーお願い」
八城さんのそんな注文に険しい顔が更に歪む。
「ぼ、僕も手伝うから」
「碧は良いよ」
やんわりと八城さんに止められてしまった。じゃあ僕が手伝うと立ち上がった桜庭さんに複雑な気持ちだ。あの時碧空くんははっきりと否定してくれた。桜庭さんには大学生の恋人がいる。知っているけど、今まで二人を見て悲しかった記憶が蘇り泣きたくなった。
渋々キッチンに向かう碧空くんと後を追う桜庭さんを見ていられない。こんな醜い顔はみんなには見られたくなくて俯いて隠した。
どうしよう…。
涙が出そう。
「どうしたの?…碧?」
俯いて動かない僕を心配して顔を覗き込もうと美都瑠が横に座る。
「何泣いてるの?碧空に虐められた?」
「ち、違う、から!」
「じゃあ、何で泣いてるの?」
「姫!どうした?」
美都瑠の声が聞こえたのか、碧空くんが僕の前に跪いて頬に手を添えた。
心配そうな顔に安堵する。
直ぐに戻ってくれたことに言いようのない喜びがこみ上げてきた。
両手を前に出すとフワリと抱きしめてくれる。
「ありがと…ヤキモチ妬いちゃった」
素直に言葉にすると『姫だけだよ』と甘い声が耳にこだまする。
小さな声はみんなに聞こえたかわからない。恐る恐る顔を上げると六人分のカップを重そうに持った桜庭さんとソファーに座る三人が見えた。
カッと顔が熱くなる。
「ほら、みんな取ってよ」
桜庭さんに怒られて美都瑠が手伝っている。
これからも賑やかになるだろう。
クラスメイトも遊びに行って良いかと碧空くんに聞いていた。
僕の世界はまだ小さなままだけど、碧空くんの隣で少しずつ広がっていったら良いな。
「碧空くん」
名を呼ぶと何?と髪を撫でてくれる。
耳元で『好き』と言えば『俺も好き』と返してくれた。
おわり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んでくださり、ありがとうございましたm(_ _)m
本編はここまでですが、明日から番外編を続けて公開します
番外編終了まで『連載』とします
番外編もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
「こっちに越して来ないか?」
「そんなことして良いの?」
「本当はダメなんだけど…」
「じゃあ、今のままで…。僕、晩御飯作るから一緒に食べよ?」
「そうだな…会えなかった今までに比べたら全然良いよな……」
「どうしたの?」
「…たまには、泊まってくれる?」
可愛くおねだりされて拒める僕じゃない。
「うん。僕も碧空くんと……その…一緒に居たいから」
「嬉しいよ」
その時、ドンドンと激しくドアを叩く音がする。一昨日も体験したこの状況に同じように不機嫌な碧空くんの顔が僕に迫る。
「キス…、良い?」
「えっ?…でも、だれか……んっ」
チュッと触れる唇は一瞬で離れ、再び重なる。
何回も何回も繰り返されるバードキスに酔ってしまいそうになる。
その間もドアはドンドンと友だちの部屋を訪問するには乱暴な音を出し続けている。
「寝室に行こうか?」
「で、でも…」
「姫だけだよ…隠したい」
「ダメだよ。誰か、見てきたら?」
「見なくても良いよ」
そんな会話の間も無遠慮な音は止まない。
「ああっ!」
座っててねと頬にキスをしてドアを開けると、そこには美都瑠と智親くんの他、八城さんと桜庭さんが立っていた。
ガヤガヤと部屋に入ってきた一行は碧空くんを無視してソファーに座る。
「碧空、コーヒーお願い」
八城さんのそんな注文に険しい顔が更に歪む。
「ぼ、僕も手伝うから」
「碧は良いよ」
やんわりと八城さんに止められてしまった。じゃあ僕が手伝うと立ち上がった桜庭さんに複雑な気持ちだ。あの時碧空くんははっきりと否定してくれた。桜庭さんには大学生の恋人がいる。知っているけど、今まで二人を見て悲しかった記憶が蘇り泣きたくなった。
渋々キッチンに向かう碧空くんと後を追う桜庭さんを見ていられない。こんな醜い顔はみんなには見られたくなくて俯いて隠した。
どうしよう…。
涙が出そう。
「どうしたの?…碧?」
俯いて動かない僕を心配して顔を覗き込もうと美都瑠が横に座る。
「何泣いてるの?碧空に虐められた?」
「ち、違う、から!」
「じゃあ、何で泣いてるの?」
「姫!どうした?」
美都瑠の声が聞こえたのか、碧空くんが僕の前に跪いて頬に手を添えた。
心配そうな顔に安堵する。
直ぐに戻ってくれたことに言いようのない喜びがこみ上げてきた。
両手を前に出すとフワリと抱きしめてくれる。
「ありがと…ヤキモチ妬いちゃった」
素直に言葉にすると『姫だけだよ』と甘い声が耳にこだまする。
小さな声はみんなに聞こえたかわからない。恐る恐る顔を上げると六人分のカップを重そうに持った桜庭さんとソファーに座る三人が見えた。
カッと顔が熱くなる。
「ほら、みんな取ってよ」
桜庭さんに怒られて美都瑠が手伝っている。
これからも賑やかになるだろう。
クラスメイトも遊びに行って良いかと碧空くんに聞いていた。
僕の世界はまだ小さなままだけど、碧空くんの隣で少しずつ広がっていったら良いな。
「碧空くん」
名を呼ぶと何?と髪を撫でてくれる。
耳元で『好き』と言えば『俺も好き』と返してくれた。
おわり
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読んでくださり、ありがとうございましたm(_ _)m
本編はここまでですが、明日から番外編を続けて公開します
番外編終了まで『連載』とします
番外編もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
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