アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

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第八章 逆鱗

九話 灼熱の大地

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「はぁ……やはり暑すぎる。何だこの灼熱の地は……」
「うへ~、この服じゃ身体に張り付くのです……」

 俺がぼやいていると、それに同調したアニアは中に空気を送り込むためローブを捲り上げてバサバサとしている。太ももがバッチリ見えて大満足だ。

「そうかなー、ポカポカで良い気分だけど。セシリャお姉さんも大丈夫だよ?」

 ユスティーナが軽い調子でそう言った。俺とアニアには立っているだけで汗が出てくる環境だが、ユスティーナはこんな気候でも気にならないのか、ピョンピョンとポッポちゃんと一緒に飛び跳ねている。

 ポッポちゃんも大丈夫なのかよ。って、いやあれは違う。身体の周りに風を起こしてるぞ!
 流石、嵐の神の加護を持っている。その使い方はどうかと思うけど。

「ポッポちゃん、俺らにも風を起こしてくれよ」

 俺がそうお願いすると「はい、はい、なのよ!」とクルゥと鳴き、俺とアニアの方へ身体を向けると、風を巻き起こしてくれた。

「ちょっ!」
「キャッ! わ、わ、ローブが!」

 風が強すぎる! それ竜巻撃つ魔法だろ! 土埃が巻き起こるし、アニアのローブが巻き上がってるぞ! ごちそうさん!

 俺らが大変な事になっている時、セシリャは余裕そうな顔をしてユスティーナを追いかけていた。何だ、種族的な違いって奴なのか?

 ダンジョンがあるシーレッド王国の東部へ辿り着いた俺達は、その目的地からほど近い場所にあるカーグの街から、少し離れた場所でスノアから降り立ち地面に足を着けた。

 上空でも気温が高いとは感じていた。しかし、空気は冷たかったし、流れもあるので丁度良いと思える程だった。でも、いざ降り立ってみるとその環境に驚いた。二日ほど前から感じていたがこの周辺は、エゼルやシーレッドの西部とは違いかなり気温が高い場所のようだ。
 これ以上東部へと進めば、砂漠が広がる地帯もあるらしい。

 見渡す限り、乾いた大地が見える。地形も厳しく小山のように隆起した大地が所々に見えている。
 木々も少ない。多少の林は遠くに見えているが、街まで続くこの道沿いにはポツンポツンと寂しく生えているだけだ。

「こんな所に何時までもいても仕方あるまい。さっさと行動だ」
「そうだよ、街に行こう、街に」

 ヴァンパイアなのに全く暑さに動じないシラールドは、ずんずんと道を進み始めた。あいつは日中も活動してるし、単なる人族の強化版って感じだな。でも、たまに飲んでるんだよな血を……
 ヴィートもそれに続いて歩いている。やはり、種族的に熱さには強いのか……ずるい!

「そうだな、まずは街に行こう。スノアは好きな場所で待機していてくれ。何かあったら呼ぶから」

 街の門が見えてきた。このカーグの街はエゼル王国やシーレッド王国の西部とは、建築物の様相がかなり違う。今見えている城壁は白い石で作られており、表面に塗装でもされているのか、一枚の岩で作られたかのようにも見える。門や矢倉の造形も見慣れた物とは異なっており、目を楽しませてくれた。

 街へ入るには何の工作もせずに入れた。俺らの格好から冒険者の一団にでも見られたのだろう。
 シーレッド王国の多くの街同様に、通行税を払って簡単な会話をしたら入れてくれた。

「全然違うのです。シーレッドにも色々なところがあるのですね」
「ねえ、アニアママ。あれ何?」
「……謎ッ! なのです!」

 街の風景にアニアは圧倒されていた。ユスティーナが指を差した先にある建造物にも、ゴクリと喉を鳴らして反応している。単なる塔だと思うんだけど、エゼルにある物とはデザインが違うから説明できないよな。

 とりあえず宿を取った俺達は、長旅の疲れを癒やすべく、二日ほどこの街を満喫した。
 別に楽しむだけではない。俺は今後の事を考えて情報収集を行う。

「では、その王家の生き残りってのが、あの宮殿に?」
「おう、王妃様に王女と王子が軟禁されているな。みんな救ってやりたいと思ってるが、誰にもそれは叶わねえ。中には兵士がわんさかいるし、この街の外にも沢山の兵士がいるからな」

 尖った耳をした褐色の肌を持つ男が、酒の入ったカップを片手にそう言った。この地方に住む種族、イレケイ族だ。細身のエルフとは違い男性はガタイがよく、女性はグラマラスな人が多い。シェードなどと同じく、人族と多少の違いを持つ人種だ。

 どんな場所でも情報収集の基本は酒場というのは間違いない。高めの酒瓶を持って酔ったふりをして近付けば、結構簡単に飲みに加えてくれる。
 この地には旅で来たと言い、街の中心付近にあった大きな建物は何だ? と聞いてみれば、みんな話を聞かせてくれてた。

 事前に情報は得ていたが、酔っ払いどもからは現地の生の声が聞ける。
 この地方はキャスの村があった場所と同じく、元はカフベレ国という物があり、イレケイ族が支配していた土地だった。
 今この地では、王妃を筆頭にその娘と息子がシーレッド王国の監視下に置かれている。
 シーレッド王国には他にもそんな存在はまだ残っていて、この前キャスの村の村長さんが言っていた公国って奴の生き残りもいたりする。周辺国家を併合して今の形になったシーレッド王国には、簡単に殺す事のできない存在がまだ残っている場所があるんだ。

「ゼン様おかえりなさい」

 とりあえずの情報取集を終えて部屋に戻ると、何故か部屋を片付けているアニアがいた。

「洗う服をたたむ必要はあるの?」

 アニアは俺が脱ぎっぱなしにしておいた服を、綺麗に畳んでいた。

「このままじゃ痛みません? 汚れた物は私が持っていきますので、出してくださいね」
「世話してくれるのは嬉しいけど、もう奴隷じゃないんだから俺がやるよ」
「いえ、私がやりたいからいいのです。ゼン様は早く汚れたものを出して下さい」
「はい……」

 真顔で言うなよ。そんな顔をされたら、俺は勝てないないじゃないか……

「それとさ、気になってたんだけど、いつまで俺を様付で呼ぶんだ? もう普通に呼べばいいじゃないか」
「…………」

 汚れ物を出しながら、前々から思っていた事を、何気なく口にするとアニアが固まった。

「あれ? そんなに困る事?」
「うーん、何て呼べば……ゼンさん? 何か違うのです。 ゼ、ゼン……これも違うのです……」
「別に無理に変えろとは言わないけどさ、アルンみたいにそろそろ変えても良いんじゃないかと思っただけだよ」

 明確な身分の差があれば、様付でもおかしくないけれど、俺は平民だしな。

「アルンはズルいのです……ゼンお兄ちゃん……」
「それだと本当の妹に手を出しているのかと誤解されそうだから止めてくれ」
「じゃあ、当分はゼン様なのです。だって、旦那様も様が付いているのです!」
「アニアがいいなら俺は何も言わないよ。でも、ベッドの上じゃ結構呼び捨てで呼んでるのにな?」
「……えっ? 本当です?」
「無意識だったのか……」

 普段はあまり触れない下な話に、アニアは何を思い出したのか顔を赤くし始めた。そんな顔可愛い顔を見ちゃうと、このままいじめたくなってきたが、この後はみんなで飯を食うから我慢だ。

「まあ、この話はもう良いとして、明日からはダンジョンに潜ろう。夜に忍び込むからまだ時間はある。日中に用意しておきたい物とかある?」
「特にないのです。欲しいものは今日買いましたし」

 アニアがそう言いながら、俺の脱いだ服を自分のマジックボックスの中に収納した。

「そうか、じゃあ俺は予定通り一度偵察に出るよ。それにしても、その服良いな」

 アニアは教国に渡ってから身に着けていた長いローブから、へそ丸出しの身軽な服装に変えていた。髪の毛も暑いので上でまとめていて、うなじが丸見えだ。素晴らしい、とても素晴らしい。

「ちょっと、踊り子みたい? これを着ちゃったら、こっちにいる間はあのローブはもう着られないのです」

 確かに踊り子風である。聖女様から踊り子にジョブチェンジか。色々と俺の攻撃回数が増えそうだな。



「ふ~、朝から結構食ったな。ちょっと休憩してから行くわ」
「なら、その前にちょっとだけこっちに来てください」

 この地方では香辛料が多く使われる料理が美味い。つい朝から食べ過ぎてしまった。腹をさすっていた俺をアニアは呼び寄せると、ベッドに腰を掛けて俺の頭を掴んだ。
 なるほど、そろそろ耳掃除の時期か。何か最近、アニアによって俺の身体が管理されてきている。それは良いのだが、俺がお返しにやろうとしても嫌がるのは何なんだ。

 アニアの耳かきで俺の気力は溢れるほどに充填された。心無しか聴力も上がっている気がする。今ならば、探知の性能も上がっているかもしれない!
 と、そんなくだらない事を考えながら街を出た俺は、ポッポちゃんに掴まって荒れた大地に寂しく続く道を頼りに飛んでいく。

「おっ、見えてきたな。ちょっと離れた所で降りようか」

 俺がそう言えば、ポッポちゃんは「わかったのよ!」と、クッと短く鳴いて答えてくれる。
 地面に降り立った俺は、その場にポッポちゃんを残して歩いていく。
 ポッポちゃんはこの大地に潜む新しい味や、石っころに興味津々だ。「おいしいの、さがすのよ!」と首をクイクイしながら走っていった。やる気満々だったので、暇をする事はないだろう。

 隠密を展開して進んでいくと、視線の先には土の壁が見えてくる。周囲に何もない荒野に現れた壁は、上空から見ると四角形をしている。内部には大小の建造物があり、その中心には岩山があった。

 ここが今回の目的地であるダンジョンのある場所だ。
 エゼル王国ではダンジョンの周りに町が作られていたりした。だが、ここの様子は少し違う。中にいるのはその殆どが兵士で、言わば軍事施設のような物だ。
 ダンジョンの使用目的も、新兵のレベルを上げる為に使われており、その副産物といえるエーテル結晶体は、シーレッド王国に莫大な富をもたらしていた。

 隠密を展開して土壁まで近づいた。探知で探ったが特に警備がいる様子もないので、全力で飛び上がり壁をよじ登る。四メートル近い壁を苦もなくよじ登れる自分は、改めて前世の人類と比べると人外じみていると思わず感じてしまう。

 中は何の変哲もない軍の施設だ。訓練ができる広場に兵士が寝泊まりする施設。それに、司令官などが泊まるのであろう、少し上等な建物があるぐらいだ。
 今は余り兵士が見られない。日中なので、もしかしたらダンジョン内でレベルを上げているのかもしれない。

 このダンジョン内部に関しては、相当数の人間が入っているので、情報はかなり得られた。時たま冒険者ギルドには国に依頼された上級冒険者が訪れるらしく、そこから情報が漏れているのだ。
 まあ、それ以外にも兵士が飲み屋で話したりもしているので、ダンジョン内部の様子は、公然の物となっている。

 なので、今回の潜入ではダンジョン内部に興味はない。俺が欲しい物は、シーレッド王国が開発したとされる、経験値分配の魔道具「共鳴の腕輪」だ。
 この魔道具を作り出したのは、大魔道士マリウス。シーレッド王国では大将軍に並ぶ存在らしく、六人いた、今は五人いる将軍の一人でもある。新しい魔道具を作るとか、生産を上げまくっている俺からすると、天才なんだろうと実感できる。

 大魔道士マリウスは将軍なのだが、戦場には滅多に出てこないらしい。大分高齢らしく、元から開発を主にしているので、シーレッド王国の王都に引きこもっているのだとか。
 今一般的に出回っている魔道具は、大魔道士が作った物も多い。俺の身近な物で言えば、マジックグローブなどがそうだし、一般的ではないが明かりの魔道具などもそうらしい。

 まあ、俺も前世の知恵を導入すれば、この世界を改変できるレベルの物は造れるだろう。
 って、一から全てを作ってる人に、前世の知恵を使う事を前提で対抗心を燃やすとか、俺小さすぎるだろ……

 ともかく共鳴の腕輪を頂いてさっさと帰ろう。今日の夜にはもう一度来てダンジョンに潜るのだし、何だか爪が伸びてきているように感じる。アニアに切ってもらわないと気になって仕方がない。
 ……あれ? 何で自分で切ろうと考えがでなかった……?
 もしかして、俺はアニアがいないと駄目になってきてるんじゃ……まあいいか。

 洗脳済みの俺は基地内部で一番立派な建物に潜入した。
 中にはそれなりに身なりの良い兵士が多く、外でちらちらと見えた兵卒とは一線を画していた。

 一応バレる事のないように慎重な足取りで部屋を調べていく。一階は共同施設が多く当たりがなさそうなので、二階に上がった。
 二階は個室が多いのだろう、部屋の中にはまばらに人の気配がある。とりあえず見るだけ見ようと思い、人気のない廊下を進んでいくと、通路の突き当たりに他の部屋とは様子の違う扉が見えた。

 その扉に手をかけるが、当然鍵がかかっていた。俺は所持している魔法の一つである『アンロック』を使って、解錠を行った。
 この魔法、一体どの程度まで開くのか検証もしていないのだが、俺は魔法の力が強くなる加護を持っている。そのお陰だろうか、扉はカチャリッと音を立てて、素直に開いてくれた。

 中に入るとそこは狭い小部屋だった。壁には武器や棚が置かれ一見すると物置だが、物はそれなりに価値がありそうだ。
 まあ、散々領主の館を荒らしてきた俺からすると、しょぼくて悲しみが生まれるんだけど。

 しかし、これは没収するしかない。これがエゼル兵の命を奪う可能性があるからだ。いや、正直に言おう。敵の物は俺の物だ。
 この部屋にある物を全てマジックボックスに収納していく。面倒くさいから棚ごと持っていこう。
 部屋の両脇にあった武器と棚を収納して、奥にある棚を見てみれば、そこには綺麗に並べられた腕輪が幾つもあった。

 俺はその一つを手に取って鑑定する。

 名称‥【共鳴の腕輪】
 素材‥【鉄 ミスリル 魔石】
 等級‥【希少級レア
 性能‥【経験値分配】
 詳細‥【範囲内に存在する経験値分配効果が及ぶ存在に、自身が得た経験値を分け与える】

「ある程度予想していた通りの魔道具だな。しかし、デザインは俺並みにセンスねえな……」

 見た目は鉄の腕輪で爪楊枝程の太さのミスリルが、一周するように埋め込まれている。そこに、青い魔石が一つ乗っているだけの単純なデザインだ。普段からデザインは外注に出すし、アーティファクト等の精巧な作りを見ているだけに、無骨とも言えないこれはちょっといただけない。

 思ったより簡単に事が済み、俺は軽い笑顔を浮かべながら、また隠密を展開する。最期にダンジョンの入り口を一目見てから、この施設を脱出したのだった。



「痛ッ! アニア~、これは自分でやるからいいよ……」
「駄目なのです、私がやります。もう、動かないで下さい。しかし、これは盲点だったのです……こんな生えてるなんて……」

 俺はアニアにがっしりと頭を拘束され、ピンセットのような道具を鼻の中に突っ込まれている。
 恥ずかしながら長い鼻毛があったのだが、それが気になり隠れて抜いていたのをアニアに見つかってしまったのだ。
 その結果これだ。高レベルなのに鼻毛を抜かれると痛い。何故だ……

「あっ、光ったよパパ!」

 俺がアニアから辱めを受けているというのに、ユスティーナは気にもせずに声を上げた。
 セシリャに抱きかかえられているユスティーナの視線の先には激しく光る物あり、それからすぐに地響きと爆発音が聞こえてきた。

「よし、行くぞ。……アニアもうやめなさい」
「うーん、後で落ち着いたらもう一度なのです」

 俺が鼻声でそう言うと、アニアは少し納得のいかない表情を見せながら答えた。どんだけやりたいんだよ!

 俺、アニア、ユスティーナ、セシリャ、シラールドの五人は今、日中に偵察をしてきたあの基地近くに潜んでいた。
 月明かりだけが照らす暗闇なのだが、基地からは隠れられる岩陰があったので、そこにいた。
 だから、『ライト』の魔法を使って明かりを灯し、俺の鼻の中を見る事もできた。
 ……今度アニアにお返しとして『ライト』の魔法を使って、隅々まで照らしてやろう。
 いや……逆に喜びそうだから止めとくか……

 岩陰から出た俺達は、ダンジョンのある基地へと進んでいく。

「おっ、よく見えないけど、いっぱい出てきてるか? 敵さん大激怒だな」
「わははは、あれは無理矢理起こされて、そのまま出撃しているぞ。眠そうな顔が面白い」
「この暗闇でよく見えるな」

 俺らから見て右手側にある門からは、多くの人影が出ていったのが見える。
 それを見た俺が声を上げれば、シラールドが笑いながら答えた。
 そういえば、シラールドはヴァンパイアだったわ。暗闇◎か。

「あれだけ出ていけば、そんなに残ってないだろう。もうこのまま突っ切るか」
「うむ、真っ直ぐ進んで壁を壊そう」

 壁はシラールドが【天帝】で切れ目を入れてショルダータックルをかましたら、簡単に崩れてしまった。もしかしたらタックルだけでも行けたかもしれない。

 内部に侵入した俺達は、程なくしてポッポちゃんに掴まり空を飛んで戻ってきたヴィートを迎え入れた。

「自分で飛ぶのは気持ちいいけど、ポッポに運んで貰うのも楽しいね。 兄ちゃん、ポッポにまたお願いって言ってよ」

 ポッポちゃんの足を離して飛び降りたヴィートは、俺が貸していた浮遊の指輪を外しながらそう言った。

「ポッポちゃんに貢物をすれば何時でも可能だ。ポッポちゃんはこの大地より広い心を持っているからな」
「……広い心なのに貢物が必要なの?」
「当たり前だ、親しき仲にも礼儀ありだ」

 俺の肩に乗ったポッポちゃんも「そうなのよ! そうなのよ!」とクルゥと鳴いて同意している。要するに美味い食べ物寄越せって事だ。

 先程基地の入り口を爆発させた犯人は、犯行後に兵士達が追っていった方向へと飛んでいった。だが、暗闇の中でドラゴンの姿から人の姿に戻り、ポッポちゃんに掴まって自動的に俺の下へ戻ってきた。まさに完全犯罪!
 兵士をこの場から移動させる陽動作戦だったのだが、何故わざわざそんな事をしたかと言えば、俺が一人で乗り込んでルートを確保をするような殺しをするのが面倒だったからだ。それに、ユスティーナがいる。散々殺している俺だが、なるべく人間の殺しは見せたくないのも心情だ。
 ヴィートがブレスを吐くだけで、こんなに基地がガラガラになったのだから正解だっただろう。

 基地の中心に向かっていくと、ダンジョンの入り口が見えてきた。
 俺が二人分は必要な高さの岩が幾つも重なりあっている。その真ん中には人が数人横になって通れるほどの隙間が見える。ダンジョンの入り口だ。

「情報通りのダンジョンの名前なのです」
「そうだな、あれだけ街でも知られてたし、ここで間違ってたら笑うな」
「ワシと親和性があり、何だか胸が躍るぞ」

 俺とアニアがダンジョンの入り口に掲げられた看板を見ていると、シラールドが俺らの後方から声を掛けてきた。

「まあ、とにかく入るか。ポッポちゃんとアニアは、ユスティーナを頼む」
「はい、なのです」
「じゃあ、守られる!」

 俺とアニアは後方でユスティーナを守って戦う。
 ポッポちゃんも毛を立たせて威嚇の動作を繰り返し「いくのよ! いくのよ!」と元気に鳴いて答えてくれた。

「前衛はシラールドに頼んだぞ。ガンガン進んで一気に最下層までだ」
「畏まったぞ、主」
「分かったよ!」
「まっかせろ兄ちゃん。斬りまくりだ!」

 みんなの気合は十分のようだ。男に紛れる事になったセシリャだが、シラールドとヴィートにはもう慣れているので大丈夫だろう。

「じゃあ行こうか、久しぶりの本格的なダンジョンだ!」
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