アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

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第九章 戦役

三十五話 褒美

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 帰還した次の日に呼び出された俺は、王たちが集まる講和が行われたあの広い部屋に向かった。
 部屋に入ると何となく俺が行く前から話し合いをしていた雰囲気を感じる。
 目線で促され着席すると上座に座ったエアが口を開いた。

「体の方は休めたか? 昨日見た感じでは疲労を全く感じさせなかったから、気に病む必要もなさそうだが」
「えぇ、身体的疲労はほとんどありません」
「そうか、ならば早速話をしよう。今日呼んだのは他でもない、褒美の話だ。各王や長老の話も交えてとの事となってな。他の者達より早いが、我々が集まっているこの機会に決めてしまいたいのだ」

 エアがそう言うと、この場にいるラングネル大公様やサリーマ王女、それにリュシールちゃんが頷いた。

「本来であればこちらが決め与える物だが、ゼンの活躍は大きすぎる。だからな、出来る限りゼンの希望を叶えたいと我々は思っている」

 そう言ったエアは何だか納得していない表情をしている。
 その代わり、他の王たちは笑顔だ。絶対に事前の話し合いでやり込められてるだろ。エアは国の規模や立場は上だけど、どう考えても経験豊富な他の人達に勝てるとは思えないしな。
 王クラスが出て来るこの場に、レイコック様とかを出すわけにもいかないからエアも大変そうだな……

 自分の気持を察しろと俺に目線を投げかけてくるエアに、俺が頑張れ王様と微笑んでやると、目を閉じてため息を吐かれてしまった。失礼な奴め!

「いきなり褒美の話をされてもゼン殿も困ると思いますので、ここは私が簡単な説明をしましょう。何やらエリアス殿はお疲れのようですからね」

 リュシールちゃんが助け舟を出したかのように喋りだしたのだが、エアは視線を送って抗議をしている。何なんだ、何で喧嘩してんだよ。

「まず、ゼン殿には領地並びにそれに伴い爵位をと考えています。さて、ここでゼン殿に質問なのですが、貴方はどこの国の爵位を望みますか? それによって今回手にいれた領地の分配に変更が必要になりますので」
「はぁ……領地の分配が変わるんですか?」

 おいおい、一体どんな話し合いがなされたらこんな内容になるんだ!?
 俺がエアに視線を送ってみると、それを遮るかのようにサリーマ様が言った。

「ゼン殿、貴方には大変助けられました。この場の話し合いに我が国が参加出来ている事自体、貴方のおかげだといえます。お聞きしますが、貴方は王座を――」
「ちょっ! サリーマ殿!? それは言わない約束では!? な、ならこちらはエルフをたくさん用意します! 美人のエルフですよ!? とりあえず私の孫を四人ほど連れてきますから、まずは見てください!」

 サリーマ様の言葉をリュシールちゃんが遮った。
 思いっきり焦った様子だけど、そんな姿も可愛いな。
 って、まじで何言ってんだこの人達……

 俺が何も言わずに呆れた顔をしていると、見かねた大公様が言った。

「ご両人、ゼンが困っているではないか。まったく、リュシール殿は娘ほどのサリーマ殿相手に何をしているのだ……」
「い、いえ……。だって、言わないと約束したのに言うから……」

 リュシールちゃんの見た目は三十いってないぐらいだから、人族の二倍生きるエルフなら、年齢的にそうか……分かっていたけど知りたくなかった。
 そういえば、孫ってさっき言ってたな。そうすると見た目が若いんだけど、もしかしてエルフにも色々いるのか?

 俺が視線をリュシールちゃんに送っていると、彼女は咳払いをして言った。

「人妻だから私は駄目ですよ?」
「いえ、違います」
「そうですか、それは少し残念ですが、私に似た孫に興味はないですか?」
「それは正直あります」
「……やはり人族はエルフが好きですね。ゼン殿、私と少し個人的なお話を――」

 リュシールちゃんと視線を話さずに話をしていると、エアが叫んだ。

「あぁ~~もう、この人達はっ!」

 突然切れたエアにこの場にいる皆の視線が集まった。

「ゼンッ! 話が進まないから俺が話す! 二人もおふざけは止めていただきたい!」
「は、はい。エア君、ごめんね?」
「私も少し悪ふざけが過ぎましたね。エリアス殿、謝罪いたします」

 エアの怒りに、リュシールちゃんとサリーマ様は素直に謝罪した。
 まだ眉間に皺を寄せているエアが、俺をキッと見ると言った。

「ゼン、率直に聞くぞ。エゼルからの爵位を貰ってくれるな!?」
「お、おう……。頂きます」

 あまりの剣幕に押されてつい言ってしまった。

 それにしても、ここまで感情を露わにするって事は、俺が来るまで相当虐められてたのか?
 俺の返事で急に笑顔に戻ったエアは、椅子から立ち上がると俺の近くに来て肩を叩いた。

「うむ、やはりゼンならそう言ってくれると思っていた!」

 満面の笑みを見せるエアのあまりの変わりように、お前はどんだけ鬱憤が溜まっていたんだと、素で聞きそうになっていると、ラングネル大公様がわざとらしい咳払いをした。

「ゴホンッ、ゼンよ、素晴らしいな、おめでとう。これで貴族として領地を得られるのだな。ところで、どこを貰うつもりだ?」
「場所を選べるのですか?」
「もちろんだ。お前程の働きをしていたら、その程度の願いはエリアス殿はいくらでも聞いてくれる。そうですな、エリアス殿?」

 話を振られたエアが、何やら警戒の眼差しを大公様に向けながら言った。

「そ、そうですが、ゼンには王都近くの土地を与えようと思っています」
「ほう……そうでしたか……。ところでゼンは、ラングネルが自立出来るまで手伝いをしてくれると言っていたな?」
「えぇ、それは約束をしましたから」
「そうであれば、ある程度の時間を貰わねばならん。爵位はその後になるな……。であれば、これはどうであろう、ラングネル公国の周辺を貰うというにはどうだ? これであれば、領地運営をしながら我が国に滞在をしていられる」
「ギュディオン殿!?」

 大公様にエアが詰め寄ろうとすると、大公様は華麗にそれを躱して俺の耳元に口を寄せると言った。

「これなら、大勢いるゼンの友人達にも居場所が出来るだろう。これは良い案だと思うのだがな」

 小声でそう言った大公様が、俺にウインクを飛ばしてくる。この人案外おちゃめだな。

 どう見てもこれはエアが望んでいる結果ではないだろう。
 だけど、亜人軍を人前に晒した以上、彼らの近くにいないと心配で仕方がない。それに、あの周辺には今回村を焼かれた人達が大勢いる。キャスに話したダンジョンコアを使った街に優先的に受け入れたい。俺的にこの位置がベストなんだよな。

 エゼル王都に近い場所はかなりいい土地であるが、同時に安定しきった領地でもある。正直運営をするとなると、魅力に欠けるのも事実だ。やっぱこういうのは、フロンティア精神が刺激されちゃうよね。
 だったら、俺の選択は決定なんだよな。元から大公様にはその辺の土地をどうにかさせてくれって言うつもりだったんだし。ならば、俺の領地にすれば相当自由に出来るだろう。

「それでは……ラングネル北部を頂きたく思います」

 俺の言葉にエアが呆然とした表情を見せ、ラングネル大公様は拳を握り「よしっ」と真面目な表情をそのままにガッツポーズを取っている。

 この選択は俺の理想を叶えるには適切な場所のはずだ。若干早計だったような気がするのと、エアのあの表情を見ると可哀想な気がするが、どちらにしても俺が貰おうという事はエゼル王国に所属するのだから許してもらおう。

 また、褒美の一環としてあの暴走おじいちゃんマリウスの身柄を貰う事となった。
 扱いとしては俺の奴隷として今生を過ごす事となる。本来ならば今頃は首と胴体が繋がっていなかったのだから、奴隷としてでも穏やかに生涯を終える方が彼は幸せなはずだ。
 これは別に老人だから保護しようと思ったわけではない。彼の持つ魔法の知識を死ぬまで俺に提供してもらうためだ。
 酷い話だがそんな建前でマリウスの身柄は貰う。ただ、流石に無理やり搾り取ろうとは思っていない。たまには昔を思い出す時があるらしいので、その時に俺の知らない知識を貰うだけだ。
 世話に関しては以前からの付き人が一緒に来るので、俺はお金を出すだけだね。

 話が終わり俺はエアの恨めしい視線を背中に部屋を出た。何やらこれからまた話し合いがあるらしい。まあ、どうなるにせよ、俺は望みを言っただけだし、後はお偉方におまかせだな。

 城砦の廊下を歩きながら、俺は窓の外に見える街を見た。
 今回の戦いは得られた物は大きかったが、それと同じく失った物もあった。
 直接的に俺の被害と言える物は殆どないけれど、同じ街に住む人を大勢失ったし、それ以上に俺はシーレッドの人達を多く殺めている。
 戦いなのだからこの行為に後悔はない。俺らから奪おうとしたのだから、それ相応の対応をしただけだ。
 しかし、それによってセラフィーナのように、俺に対して恨みを持つ者も生まれただろう。
 だから今後はより自分の回りを守らなくてはならないな。

 それにしても、これで俺も土地持ちになれるのか。
 まだ貰ってないから実感は全くないが、貴族の仲間入りだと考えると俺も結構上ってきた感じがしてくる。
 これならそう遅くならないうちにジニーを迎えにいけそうな気がしてきたな。

 そんな事を考えながら到着した自室のドアを開けると、部屋にはアニアとポッポちゃんを抱くセシリャの姿があった。
 何故か二人の顔にはやたらと期待に満ちた表情が見える。
 俺がその事を質問しようとすると、アニアが俺に駆け寄ってきた。

「ゼン様、どうだったのですか!?」
「どうって、何でそんなに嬉しそうな顔してんだ?」
「えっ、ご褒美のお話じゃなかったのですか?」
「そうだけど、アニアが褒美の事でそんなに嬉しそうなのは珍しいなと思ってさ」
「だって、ゼン様が貴族になれるって聞いたのです。嬉しいに決まってるのです!」

 どこから聞いたか知らないが、俺の褒美の事は漏れているらしい。

「聞いたというか、ヴィンスさんの予想だよ?」

 俺の心を読み取ったかのようにセシリャがそう言った。

「そういう事か、納得したわ」
「で、どうだったの?」
「あぁ、爵位を貰えるみたいだな。まだ話し合いがあるらしいから、詳細は決定してないけど」

 俺がそう言うと、アニアが言った。

「おめでとうございます! ゼン様!」
「ありがとう。それにしても、本当に嬉しそうだな」
「だって、ゼン様は平民で終わる人じゃないのです! アルンにも早く知らせたいのです!」
「ははは、何だよそれ。でも、分かってるのか? 俺が貴族になるって事は、アニアもそうなるって事だぞ?」
「……? あっ!」

 短く考えたアニアは、俺の言葉の意味を理解したのか驚きの表情を浮かべると、口を大きく開けっ放しにして固まった。

 アニアの豊かな胸に頭が挟まれているポッポちゃんは、俺達の会話に耳を向けているが、いまいち理解が出来ていないようだ。「しゅじん、何なのよ?」と会話の内容を教えろと、クルゥと鳴いている。

「うーん、俺の巣がでかくなるって事かな? ポッポちゃんには今後もいっぱいお手伝いしてもらうからね」

 俺の言葉にポッポちゃんの目が光った。「しゅじん、凄いのよ! だったら早く卵なのよ!」と俺を褒めつつ自分の要求を通そうと、器用な事を言っている。それにしても、アニアの胸の谷間から頭は動かさないんだな。よほどその場所が気に入ってんのか。

 ポッポちゃんを撫でながら、まだ固まっているアニアの柔らかい部分をちょっとだけ触ってみようかと悩んでいると、セシリャが口を開いた。

「あぁ、これでゼン殿も貴族様かー。今後は気軽に一緒にはいられないかも?」
「何言ってんだよ、セシリャは信頼できる数少ない人の一人だ。今後も近くにいてくれ。嫌じゃないだろ?」
「あはは、そう言ってくれるならこっちからお願いするね。なら、アニアちゃんみたいにゼン様ってお呼びした方がいいのかな?」
「その呼ばれ方は魅力的だが、今まで通りでいいよ」
「そう? ならそうするよ。あれだね、アルン君に早く教えてあげたいね」
「メルレインから聞かされてそうだけどな」

 アルンは今、メルレインと共に周辺警備に当たっている。アイツとこの手の話が出来ないのはちょっと残念だったな。

「さて、いきなりで悪いが帰り支度をしてくれ。一度家に帰って色々報告してから、ラングネルにいかなくちゃならない」

 ゴブ太君達の事や、キャス達の事など、まだやる事は沢山ある。
 だが、その前に一度ラーグノックの自宅に戻って皆に報告をしないとな。
 俺はまだ口を開けっ放しにしているアニアのほっぺたを掴み覚醒を促し、帰り支度をはじめたのだった。
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