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しおりを挟む――レドックス・ガレイア。
それはある日、アルメリアのまえに突然現れた、礼儀知らずで無遠慮、不躾極まる男の名である。率直に言って当初、アルメリアはレドックスにまったく無関心だった。
これまでにも、ままあったからだ。
こうして腕に覚えのある冒険者やら、魔王軍幹部みたいな肩書きの相手が自分のところにやってくることは。
ここ数週間に限れば、とくにその頻度はグンと増えている。
おそらくは地学的な見解からだろう。
どうもこの森のどこかにマンドラゴラが自生しているはずと情報は、双方によくよく知れ渡っていることのようで。
(はぁ、またこの手合いかぁ……)
故にこれまで通り、内心でため息を吐きつつ、スクり。
静かに腰をあげるアルメリアだった。
「ハズレよ」
「……あぁ?」
まず差し当たっては、今しがた男がした発言。
その聞き捨てならない部分の要訂正からだ。
「だって私、もう子どもじゃないもの。あなたたちの基準でいっても、ちゃんと成人してます。立派な大人です。"ただの"も何も、そもそもジャリじゃありません」
キッパリ否を突きつける。
得物の木刀でペチペチ、肩を叩いている男の方へと歩を進めながら。
近づきすぎない辺りで立ち止まると、彼はしばらく呆気に取られたような顔をしていたが。
「ジャリが、ナマイキ抜かしやがる」
吐き捨てるようにまた笑った。
そしてブォン、振り下ろした木刀で乱雑に風を切る。
「あら? まさかと思うけれど、丸腰の女の子相手にそんな物騒なものを振るう気?」
「ビビんなよ、まぁ心配すんな。闘るにしても殺んなってクソ兄貴どもから釘刺されてっからな。峰打ちで勘弁してやる」
「なんかビミョーに答えになってない気がするんだけど……とりあえず振るう気満々ってことは分かりました。でも、そう。命まで取る気はないってことね。それなら私も……」
「それによぉ、オメェもオメェだろうが」
そうしてあげる。
言い添えようとしたところで、唸るように低い声が被せられた。
加えて、状況も大きく動いたのは――。
「どこが“丸腰”だってんだぁ、オイ」
ボコン、グパリ。
先手必勝と、そのとき地中から仕掛けたアルメリアの奇襲攻撃が、男の跳躍により軽々と躱わされたからだ。
「なっ……!?」
正直なところ驚いた。
仕留められるとまでは思わないまでも。
(まさか、こんなにあっさり避けられるだなんて……!?)
でもチャンスだった。
(空中で身動きの取れない今なら……!)
手のひらを空に向け、すかさず追撃に出る。
ニュルニュルと荊を伸び上がらせるが。
「ちっ、あんだよ。足元で何かモゾついてやがると思ったら、ただの草きれじゃねぇーか。つまんねぇなぁオイ、斬りがいってもんがねぇ。とっとと散れや」
「ッ……!?」
「雑草がよぉッ!!」
それもいなすような回転とともに、あっけなく斬り払われてしまう。
そのままスタリと、無事の着地も許してしまって。
「ようやく口利きやがったかと思えば、いきなりブッ込んできやがる。まったく、礼儀ってもんがなっちゃいねぇ」
「会ったばかり。初めましてもまだ済んでない相手に、こんなこと言いたくないけど」
「言いたくねぇなら黙っとけぇ。とっととお口チャックしろや」
「そのセリフ、あなたにだけは言われたくないわ……」
軽口で応じながら、このとき。
アルメリアのなかで急速に認識が置き換わりつつあった。
侮っていたのだ。
これまでに同じような輩を幾度となく、片手間に追い返してきたからこそ。
でもだからこそ、もはや疑いようもなく……。
(この男は危険……。今までの相手とは実力の桁が違う……!)
危険度が吊り上がる。
「とんだジャジャ馬じゃねぇか、オメェ」
「只者じゃない、そういうことね……」
獲物で肩をペチペチやりながら、振り返りざま。
男から放たれる尋常ならざる気迫と凶暴なまでの威圧感に、アルメリアは微塵も警戒を解けずにいた。
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