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 さて、ここいらで自己紹介をやり直したい。

 アルメリア・リーフレットという少女の、少しばかり特異な成り立ちについてだ。

 唐突だが――。
 アルメリアは"ただの人間”ではない。
 その正体は『マンドラゴラ』である。

 もし初対面でいきなりそんな自己紹介をぶちかまそうものなら、どうなるか。

『……は? 何言ってんだ、おまえ』
『おい、こいつアタマ大丈夫か?』

 たぶんそんな反応をされるだろう。
 戸惑われるか、不審がられるか。
 どんなにうまくいっても、変わり者とか不思議ちゃん認定は避けられないはずだ。

 でも、アルメリアにとってはどうしようもないことだった。

 だって自分はマンドラゴラであると。
 それがれっきとした事実であり、紛れもない真実なのだから。



 ――『擬人化』。

 どうも世の中には、そうと呼ばれる現象があるらしい。

 スライム、トロール、リッチ、ドラゴンと種族は問わず、べつに何でもよいのだが。生まれつき、とりわけ魔力の強い個体に限り、だんだん人間に近づいて成長していくと――極めてまれな確率でそういうことが起きるそうだ。

 早い話、アルメリアはそのマンドラゴラ版ということ。
 土の中でぬくぬくしていた頃の記憶も、うっすらとは残っている。
 でも物心ついたとき、姿はほぼほぼ人間の子どものそれだった。

『おおおお~っ!』

 しっかり付いている手指をワキワキさせ、その便利さや機能性に感動。
 目を輝かせる。人知れぬ森の奥深くで、徐々にその使い勝手にも慣れていって。

 今やすっかり地上暮らしの方が長くなっていると。
 そんな擬人マンドラゴラこそが、アルメリア・リーフレットという少女の出自である。

 では何故そのアルメリアが、この『ガレイア』の街でポーション屋など開くことになっているのかだが。



 キッカケはある男との出会いにある。


「――よぉガキ。おおそうだ。そこのオメェだ、チンチクリンのジャリ。ちぃと耳貸せや。聞きてぇことがあんだよ」


 どう形容していいものか……。
 とにかくガラの悪いやからとだけは、出会い頭から察せれた。


「なにシカトぶっこいてやがる。澄まして絵になんのはイイ女だけだろうが。顔はまぁ悪くねぇみてぇだが……オメェじゃチチもケツもまったく足んねぇっつーんだよ」


 まず口が酷い。
 いや酷いなんてものじゃない。
 女の敵だ。


「カッ、やんじゃねぇか。いっちょまえに睨み返すかよ。大抵の奴ぁ、俺見た途端にチビって逃げ出すか、腰抜かしてチビるかのどっちかだってのに。なかなか肝っ玉が座ってやがる」


 かなりの長身。
 切るのがめんどくせぇとも言わんばかりに、伸び放題の紅い長髪。 
 こんな山奥にも関わらず、着崩した服装はほとんど半裸も同然で、足を見ればなんと。


(え、草履……!? うそでしょ、まさかあれでここまで登ってきたっていうの……!?)


 まともに口を利いてやる気は起こらず、無言のまま凝然。


(とてもマトモな神経の持ち主とは思えないわね……)


 その非常識さに、信じがたい気持ちとなるアルメリアだった。

 本当に見れば見るほど信じがたい。
 命を捨てにきたとしか思えない軽装だ。
 とんだうつけ者もいたものだと、呆れを通り越しそうになる――が。

 だからこそ一方で、異様さも際立つ。
 そう、あり得ないことなのだ。
 本来なら。

 こんな、ほとんど身ひとつ同然の格好で、人一人がここまで踏み込めるはずはない。あるいは彼がよほどの幸運に恵まれた可能性も否定はできないが。

(あの刀に付いてるの、魔獣の血よね……)

 男が片手から無造作にぶら下げている木刀。
 そこにベッタリと付着している血糊ちのりや魔獣の体毛、そして着衣にも散っている返り血らしきあかが、それを否定している。

(つまり、この男は……)

「さてはオメェ」

(そんな身なりでも、平然とここまで無傷で到達できてしまう……それほどに腕の立つ、埒外らちがい手練てだれ……)

「ただのジャリじゃねぇな?」

 当時、森の奥地に棲み――荊の魔女、そうとも呼ばれていたアルメリアが認識を改めるとともに、男もニィと口元を釣り上げる。

 まるで肉食獣が、狩る獲物を見定めたが如く。
 それはひどく好戦的かつ、獰猛どうもうな笑みだった。

 ともあれ、これがその出会いだ。

 ――レドックス・ガレイア。
 後にそう名乗ったヤサグレ男とアルメリアの、お世辞にも好印象とは言い難い初顔合わせである。
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