衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

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第12章 二つ目の地域制覇へ

第31話 屋敷にて

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 パーティが終わると、それぞれの派閥なのか、グループに分かれて王城から出て行く貴族達。
 色んな人に声を掛けられたが、覚えられるわけがない。俺の記憶力を買い被るんじゃねーってとこだ。
 それでも、宰相のブルボンさんは覚えたので、一つ賢くなったよ。
 だいたい、俺には覚える人が他に大勢いるんだ。貴族なんて関係ない人達なんか覚えてられないっつーの!

 最後まで残れと言われてたので大人しくユーと二人で待ってたが、ようやく案内人が来たようだ。

「お待たせしました。それでは参りましょうか、付いて来てください」

 ブルボンさんだった。
 宰相が案内人? いやいや、国を仕切ってる人が案内人なんて有り得ないから。

「あのー」
「はい、何でしょうか」

 さっさと行動に移ろうとするブルボンさんを呼び止めた。

「ブルボンさんが案内してくれるのですか?」
「はい、私では不足ですか?」
「いえいえ! とんでもない! 過分すぎませんか?」
「何をおっしゃいますか。貴公は我が国の英雄なのですよ? 少しは自覚して頂きたい」

 そういや、今日の授与式も偉く大袈裟だったよな。
 騎士・兵士はもちろん、貴族も大勢いたし、冒険者まであれだけの人数を呼び寄せて、主役は俺だけって。ユーもいたけど、ユーは元々呼ばれてないからね。

 何がよかったのか…どの業績が手柄になって功績を上げたのか知りたいところだ。
 これほどの歓待振りなんだから、聞いても怒られないだろ。

「その英雄の件なんですが、何が良かったのでしょう」
「まだそんな事を……いえ、自分では中々気付かないもの、と言いますね。分かりました、説明しましょう。ただ、ここで話すと時間も遅くなりそうです。馬車の中で話しましょう」

 馬車? そう言えば、何処に行くとも聞いてないな。

「今から目録にあった屋敷に向かいます。そう時間は掛かりませんが、説明するのにはちょうど良い時間です。まずは馬車に行きましょう」

 馬車に案内され乗り込むと、何事も無く王城から出門した。
 来た時が来た時だけに、あっさりしすぎている感はあるが、またあんな行列に並ばれてお見送りされるのも勘弁願いたいので、このあっさり感がちょうどよかった。

「さて、さきほどの続きですが、何故イージ卿が英雄と呼ばれ、此度の多大な報奨を授与されたか、でしたね」
「はい。ちょっと大袈裟すぎだと思うのですが」
「はぁ~、まだそのような事を。では順を追って説明しましょう」

 そう言ってブルボンさんが説明を始めてくれた。

 まず、ヘルファンの町の防衛と復興。これだけでも十分なところを、復興に至っては新農地の開拓、それも精霊女王から謙譲された土地で収穫量が信じられないほどあり、ヘルファン周辺の町の食糧事情まで改善されてしまった事。
 更に下水道施設の改善も、ヘルファンの町を筆頭に、王都や周辺地域へも手を伸ばし、それをやり遂げている。国全体で考えれば1/3ほどだが、これも年内には終わりそうな勢いだ。
 そして食糧事情で言えばマヨネーズや唐揚げだ。これは現在進行形で国中を支配しつつある。更にマヨネーズの後ろをホットケーキが追従している。
 もう国を制覇したと言っても過言では無い快進撃だ。更に更にダンジョンだ。温泉だ。と説明を続けてくれたブルボンさんが最後に締めた言葉が、『精霊女王を手玉に取る男』だった。

 精霊女王―――花子さんの事だが、花子さんはこの国では王都に銅像も建つほど崇拝されている。
 そんな精霊女王を顎で使い、農地を一晩で提供させる力を持っている男、しかも今はその農地を妖精に管理させ、あの気難しいエルフ達すらマヨネーズ作りに奉仕させ、パシリ―――ウィアーズとしてこき使う男だと恐れられていた。

 う~ん…かなり脚色されてる気がする。
 やって来た事や登場人物に間違いが無いのが余計に真実味を増してる気がするよ。
 途中で俺の手から離れてるものも結構有るよ? 下水道もヘルファンしか関わってないし、農地なんて花子さんに頼んだだけだ。
 ウィアーズももう知れ渡ってるんだね。あいつらは確かに俺のパシリかもしれない。

「これだけの功績を上げて、まだ自分は英雄では無いと? すべてこの国のためにしかならない事を成し遂げているのにあの出迎えが大袈裟だと? 宰相である私が案内を致すのも当然の立場なのです。本当は授爵して頂きたいのですが、イージ卿も断っていると聞き及んでおりますし、彼奴あやつが邪魔を……」

 あ、それコーポラルさんかな。何となくピンと来た。
 だけど、悪魔達や精霊女王の協力があればこそなんだけどな。ま、その上に君臨してるのは衛星なんだけどな。
 その衛星は俺の加護だし、やっぱり俺の功績でいいの、かな?

 まっ、いいか。貰えるものは貰っておきましょう。爵位はいらないけどね。

 うん、世の中には貰えるものでも断りたいものがある事を知ったよ。
 これが屋敷に付いた最初の感想だ。

「あの…宰相様?」
「今更、何故宰相と? これまで通りブルボンと呼んで頂いて結構ですよ? 願わくばラリーとお呼び頂けないかと」
「いやいや、それじゃブルボンさん。これってどういう事になってるのでしょう」
「イージ卿。これだけ大きな屋敷です。執事やメイドも必要でしょう」
「確かにそうかもしれませんが、多すぎません?」
「そうでしょうか。執事が五名にメイドが三〇名。ちょうどいいと思いますが。あ、それとメイド達には自分から誘ってはいけないと申し付けておりますが、誘われたならば断る必要は無いと伝えております」

 うん、俺、ここに住めないや。隣にいるユーが屋敷を破壊しそうなぐらい覇気を出してんだけど。
 ユーさん? オーラが見えてますよ? 今日は赤黒いオーラなんですね。いつもは金色ではなかったですか? なんかメラメラしたオーラで禍々しい気配が駄々漏れなんですが。

「エイジ?」

 爽やかな笑顔で俺に問い掛けるユー。
 うん、めっちゃ怖い。

「はい…なんでしょうか」
「なんで敬語なのか分かんないけど、分かってるわよね? もう、これ以上増やさなくていいからね?」

 それってフリ? とか聞いちゃったら、俺の人生はここで終わっちゃうんだろうな。
 敬語なのは、ユーさん、あなたが怖いからですよ。

「……はい」

 よろしい。と満足気に肯くユー。
 これってアレだよね。俗に言う、尻に敷かれてるって定番なやつだよね……今更か。

「ところでイージ卿。パーティではあまり食事ができなかったとお見受けしたが?」
「そうですね、連れは食べてましたが、僕はあまり食べられませんでした」
「では、食事の用意をさせましょう。イージ卿はグルメだと伺っておりますからね。料理長はこの王都でも将来有望と評判の者から選出したのです。その者ならイージ卿の要望にも答えることが出来るでしょう」

 ほぉ~、別にグルメじゃないけど美味しいに越した事は無いからね。でもどうなんだろ、レシピを渡しただけで料理してくれるのかな?

「それはいいですね、すぐにでも食べたいです」

 賛同するように隣でうんうん肯くユー。
 ちょっと待ってみそ。ユーはずっと食べてたよね? 軽くにしておこうね。デブになったら第一嫁候補からはずしちゃうかもしれないよ?
 え? この世界なら太らないから大丈夫? そんな法則ってあったの? 勇者って便利なんだね、元だけど。

「私もご相伴にあずかってもよろしいですかな?」
「ええ、もちろん結構です。僕も感想が聞きたいですし」
「ありがとうございます。では、参りましょうか」

 執事さん達やメイドさん達が頭を下げる中、執事長さんに広ーいリビングへと案内された。
 食事の用意ができるまでリビングで待つみたいだ。
 屋敷の案内は食事が終わってからしてくれると説明を受けた。

 一応は見てみたいけど、全部見なくても問題ないんだけどね。だって、こんなに広い屋敷を使いきれる自信がない。食う寝る寛ぐ、ができればいいんだから、広い部屋が一つあればいいんだよ。あと風呂とトイレね。

 リビングで待ってると、ちょくちょくメイドが現れて、小皿に一口にも満たない料理を持って来ては味見を求めて来る。
 俺があまり良い顔をしないので何度もやって来る。

 美味しいとは言ってないけど、不味いとも言ってない。だから表情も普通なのに、何度もやって来るのだ。
 不味いとは思ってないのにね。もう味見だけで腹いっぱいになりそうだよ。

「イージ卿はやはりグルメでらっしゃる。私には最高の味付けだと思えるのですが」
「そうですね……不味くはないですよ」

 だって、この世界って何処に行ってもステーキなんだよ。別のものを期待しちゃうじゃないか。
 それを肉の種類を変えてくるだけで、味付けは塩か香草。せめてソースを掛けてくれたらいいんだけど、後でマヨネーズも付きますから。とだけ伝えて来て延々ステーキを食わされる身にもなってくれ。

「失礼致します」

 そう言って入って来たのは、高いコック帽を被った二十歳過ぎぐらいの男性だった。

「何がダメなのでしょうか。いったい何処がいけないのでしょうか」
「え?」
「ご主人様」
「え? ご主人様?」
「私はこれでも将来を有望視されていると自負しています。それなりの経験もして来たつもりです。それがここまでダメ出しされてしまうと、本当はご主人様の味覚を疑ってしまいそうになってしまいます。どういう肉が好みで、どれぐらいの塩加減がベストなのか、よろしければ教えて頂けないでしょうか」

 えっと…なんでご主人様って呼ばれてるのか分からないけど、この人がコックさんで、さっきから味見の肉を焼いてる人なんだろうな。
 それで俺に好みを聞かせろと……うん、まずその肉前提から改めようか。

「君! 失礼ではないか。イージ卿の好みなど関係ない。イージ卿が美味いと思うものを君が提供すればいいだけだろう。それなりの給金は出してるだろう」
「うぐっ……たしかに……失礼しました」

 ブルボンさんの言葉に何も言い返せず、そのまま去ろうとしたコックさんに声を掛けて呼び止めた。

「あ、コックさん。ちょっと待ってください」
「えっ! あ、はい、何でございますか」
「その…言い難いんですが、もうお腹がいっぱいで」
「え? いえ、まだ料理をお出ししてませんが」
「私は食べれるよー」
「大変美味しく頂いてますので、私もまだまだ行けますね」

 お前達は何なの!? 俺より味見の量が多かったよね? ユーはともかく、ブルボンさんも細身なのに結構食べるんだね!

「じゃあ、二人に出してあげて。僕はもういいから」
「そうは行きません! 今日は初めてご主人様に私の料理をお出しするのです! 料理の味に満足していただけるよう努めますので、どうかお願いします!」

 なんでそこまで必死なの? お腹がいっぱいになったって言ってるんだから別にいいじゃん。

「それと、そのご主人様って僕の事?」
「当然ではありませんか。私はこの屋敷の長であられるエ…ご主人様に雇われている立場です。ご主人様とお呼びするのが当然でしょう」

 あ…エイジって言えないのね。だからご主人様と。

「でも、もうお腹がいっぱいで……」
「では、一品だけ! 一品だけでも召し上がって頂けませんでしょうか!」
「う~ん…一品ぐらいなら……」
「私はフルコースでもいいわよ!」
「私もフルコースを所望する!」

 マジ? この二人はマジで言ってるのか? ここに来るまでにも食ってるよね? ブルボンさんは知らないけど、ユーはドカ食いしてたよね?

「だったら……あっ、そうだ! コックさんってレシピを見て料理を再現できる?」
「! もしや、それは伝説の【星料理レシピ】では!」

 なにそれ? 星ってこの世界じゃ認知されてなかったよね? いや、星は分かってるけど、惑星とか衛星って認識は無いんだった。
 それに伝説の使い方が間違ってるよ? たぶん、【星料理レシピ】の星は俺から取ったんじゃないかと予想できるんだけど、伝説って超過去のものだからね? 俺、来たの最近だから。まだ二年も経ってないし。
 しかも、そんなレシピ集を出した覚えなんて無いから!

「もちろん努力は致しますが、見た事も食べた事も無い料理の再現となると、ご主人様のお口に合うかどうか」
「そっか。だったら今日は僕が料理を出すから、レシピを見ながら作ってくれればいいよ」
「おお! よ、よろしいので?」
「なんと! イージ卿の料理が食べられるのですか!」
「私はテリヤキセットね!」

 ……もうユーにはツッコまない。
 まず、ユーにテリヤキセットを出して黙らせておいて、今日はチャーシュー麺を出す事にした。
 だって、もう腹がもたれて麺類が食いたかったんだもん。
 それにほら、チャーシューって汎用性がありそうだし、ハム系だからマヨネーズにも合うしさ。うん、ナイスチョイスだろ?

 もちろん衛星に出してもらったさ。衛星は誰にも見えないからね。
 せっかくだから親睦を深める意味も兼ねて、執事さんやメイドさんにも振舞ったよ。
 食べるのに箸がいるんだけど、今日だけはフォークで我慢したよ、俺がね。
 やっぱりラーメンは箸だと思うんだ。だから見てる俺が違和感を感じるんだけど、そこは箸なんて見た事も無い人達だから、その違和感は我慢したんだよ。

「なんと!」
「これは斬新な!」
「どうやって食べるものですか?」
「熱っ! でも美味しい!」
「この肉も美味い!」

 などなど、色々と感想は出たけど概ね好評だった。
 でも、麺をすするのも下手糞なんで、見ててイライラしたよ。

 コックさんには今までに他の地で出した唐揚げとウィンナーの他に、餃子やシュウマイ、ラーメンにうどん、パスタにサラダ、ホットドッグにハンバーグなどのレシピもアレンジなども含めて渡しておいた。
 まだ、魚料理は魚の流通が始まってないので今回は辞める事にした。それでも、それなりに厚みをもったレシピ集になっている。

 それを見たブルボンさんとコックさんで少し争いになりかけたが、執事・メイド連合の手によって阻止されたのだった。

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