衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

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第12章 二つ目の地域制覇へ

第32話 次はカードだった

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 ブルボンさんから伝説の【星料理レシピ】を譲ってくれとしつこく迫られたが、執事長さんから「半年後に写本したものをお渡しします」という事で決着がついた。

 いや、別にあげても良かったんだけど、執事長さんとコックさんが頑なに拒んだんだ。「これはご当主様の財産ですから」って言ってたけど、美味しいものが広まる方がいいと思うんだけどな。
 ま、半年後には広まるんだろうから、少しぐらい遅くなってもいいかな。

「早く再現させて売りまくってやります!」
 と張り切るコックさん。あなたはここの料理番じゃないの? どこで料理を作る気なんだ? ここではあんまり寝泊りする気は無いんだけど、それでも一応主である俺の許可は取ってね?

「私も毎晩ご相伴に預かるとしましょう」
 いやいや、あんたは自分ちで食えよ! ここ俺んちだからさ!

「いや、それはちょっと……」
 毎日、宰相さんの顔を見ると疲れるじゃん!

「では、ほどほどにお邪魔する事にしましょう」
 それでも来んのかい! ま、俺がいない時ならいいけどさ。って誰の家か分かんなくなって来た。

「それで、イージ卿のこれからの予定をお伺いしてもよろしいですか?」
「ええ、それぐらいなら。実は、個人的に探し物をしていまして、この王国全土に散らばってまして、まずは王都周辺を探してから他も探そうかと考えています」
「それは大変そうだ。こちらからも兵を派遣しましょうか?」
「いえいえ、それには及びません。色々と言い難い事もありますので、これぐらいで勘弁してください」
「では、何を探してるかも教えて頂けないと」
「ええ、本当に個人的な事なので。僕以外には全く意味の無いものですし、期限も無いですからボチボチと探しますよ」

 なんだこの腹の探りあいみたいなやつは。俺も腹黒貴族の仲間入りか?

「分かりました。これ以上深入りしてイージ卿のお加減を損ねてはこの国の損失にもなり兼ねません。ですが、覚えておいてください。我が国はイージ卿に対してどんな協力も惜しまないと頭の片隅にでも残して置いてください」

 おお! 国のナンバーツーである宰相の言質を頂きましたよー!
 宰相って王家の次に偉い人だろ? 凄いね、俺って!

 長々と居座ったブルボンさんも帰り、ユーと二人で屋敷の中を執事長に案内してもらった。
 まず初めに屋敷で働く人達の紹介をしてもらった。
 さっきまでブルボンさんが居座っていたので、遅ればせながらの顔見世となったのだ。
 執事長さんが名前を言って頭を下げるだけ。総勢五〇人以上いるのに覚えきれるわけがない。
 なので、こっちも軽く会釈をしてよろしくと言うだけ。こっちは俺とユーだけだしね。
 でも、驚いたのは、全員がエイジと言えた事だ。城門の兵士もたどたどしくもエイジと言おうとしてたし、それだけで何か嬉しいよ。

 でもさ、この人達の給料って誰が払うの? お金はたくさん持ってるから俺が払ってもいいんだけど、それなら採用面接なんかも俺がするべきじゃないの?
 この人達に不満があるわけじゃないんだけど、買ってやったからあと任せるって感じで、ちょっと気分が悪い。
 俺としちゃ、別に執事さんやメイドさんなんていらないんだから。
 掃除なんて衛星に頼めば一瞬だし、食事もそう、警備もいらない。そもそも、こんなにデカイ屋敷なんていらないんだから。

 何部屋あると思ってんの! 三〇部屋以上あったよ。
 誰が住むんだよ! って話だよ!
 まさか、屋敷の中を案内してもらうだけで一時間以上掛かると思わなかったよ。

 そんな屋敷に一泊して、次の日は朝食後にすぐ出発した。だいぶタイムロスしてるからね。
 別に慌てなくてもいいんだけど、漁村の件と王都の件で色々時間も掛かったし、ここからはちょっと巻きで行こう。
 そう考えて、それが出来る手駒が俺にはある。
 移動手段の天馬ノワール。
 地図の場所まで行くとこちらが指示しない限り手伝ってくれないけど、遠くからだといつも通り有能な衛星。
 元勇者という強大なステータスを持つ協力者のユー。
 特にユーは、一人じゃ心細いところを一緒に行動してくれるだけでも有り難い。
 衛星がいるから大丈夫だろ、とは言うけど、一人での行動って寂しくて心細いもんなんだよ。今までも大体誰かが一緒だったしね。ノワールもいるだろって? ノワールは馬だし、暑苦しい奴だから二人きりはちょっとね。

 一日目でサクサクっと王都周辺の地図の場所の攻略が完了。三日で済んでしまった。
 今回は卵や装飾品ではなく、トランプのようなカードだった。というかトランプのカードそのものが各一枚ずつ隠されていた。それもご丁寧に宝箱に入れられて。
 回れた場所は六ヶ所、カードは『A』『A』『10』『J』『Q』『K』。柄はハートやスペードではなく、どう見ても『衛星』だったが。丸というか、ちょっと立体的になってるから球だね。
 なんなんだろ、この微妙な拘りはって思っちゃうよ。
 しかし六枚だからロイヤルストレートフラッシュにしては『A』が一枚余計だ。こういうのってモヤモヤするよな。

 十枚の地図。という事はカードも十枚と予想できる。
 十三枚なら一~十三と思えるんだけど、それでもAが被ってるし、十枚っていうのも中途半端だよな。

 王都周辺を探索してるって事は、もちろん王都屋敷を拠点にしている。なので、王都屋敷には三連泊目だ。

「執事長さん」
「何でしょうか、旦那様」

 何故かこの執事長さんだけは旦那様呼びなんだ。他のメイドさんはエイジ様って言ってくれるし、コックさんも今では辿辿しくもエ…イ…ジ様と言ってくれてるのに、頑なに旦那様呼びをされる。
 エイジと言えないのかとも思ったけど、誰よりも早くマスターしてくれたようで、実際にエイジと言える事も証明してもらっている。
 なのに旦那様と呼ぶのだ。何か拘りがあるんだろうね。俺ももう諦めてるから。

「王都周辺の探索が終わったので、当分戻って来ないと思うので、その報告を」
「畏まりました。次はいつ頃戻られる予定ですか?」
「それがねぇ……分からないし、もしかするともう戻って来ないかもしれない」
「結構でございます。私共はこの屋敷に旦那様がいらっしゃる時に最大限に寛いで頂けるようにして頂くのが仕事です。いつ、お戻りになられてもいいように、この屋敷でお待ちしております」

 ぐはぁ、凄いな執事長さんって。最高の言葉を頂いたよ。こんな事言われたら戻って来ないわけには行かないじゃん!
 王都にはあまり用は無いけど、メイドさん達のお蔭でここの住み心地は最高だし、何も無い時は戻って来るのもいいかもな。何も無い時ってこの世界に来てから無かった気もするけど。


 そして翌朝、衛星の色が変わっていた。

『えーと…タマちゃん?』
『はい、おはようございます』
『あ…おはよう。もしかして、衛星達の色が変わってる?』
『はい変わっています』

 ホッ、よかった。目がおかしくなったわけでも、寝ぼけてるわけでも無さそうだ。

『なんで変わったの?』
『カードが揃いましたので、役が一つできたおかげです』
『役?』
『はい、A・10・J・Q・Kでロイヤルストレートフラッシュができたお蔭です』

 やっぱりトランプじゃん! ポーカーってこの世界にもあったの? いや、衛星には関係ないか。ラーメンやハンバーグでも出せるんだからな。
 でも、それなら残りは……2・3・4・5か? いや、それだと一枚足りないな。
 うわーモヤモヤする! すぐに出発して今日中に解き明かしてやる!

『ところで、色が変わった意味ってあるの? 色んな色があるみたいだけど』
『はい、パワーアップしました。従来の機能はそのままに、機能が追加されました』
『例えば?』
『それは言えません。私達はエイジの願いを叶える機能を持っているだけであって、エイジを操るような存在ではありませんから』

 んん? どゆこと? 俺を操る? その前に俺の願いを叶えるだけ?
 たしかにそうかも。衛星が守ってくれてるのも『守って!』って言ったからだし、後は俺が言った事を忠実に再現してくれてるだけだもんな。自分からやった事といえば…エルフの里を調べまくってたじゃん! あんなの俺は言ってないからね!

『今後のエイジに役立つ資料作りです。それにエイジは願いましたから』

 そんな事ないよな。あの時の衛星は『なめやがって!』みたいなとこが見えたもん。確かに高飛車なエルフが現れた後に願ったかもしれないけど…願ったか? ふ~む、よく思い出せないや。紐無しバンジーのイメージが濃すぎて記憶をそれに全部持って行かれてるよ。

 結論として、俺が希望する事を言えば、今まで以上の事をしてくれるかもしれないって意味でいいかな。
 でも、今まで以上ってのが想像できない。今までも結構な事をしてくれてたと思うんだよね。
 ま、その時になって分かるんだろうけど、戦闘以外でお願いしたいよ。例えば移動とかでさ。瞬間移動とかね。
 一応、聞いてみるかな。

『タマちゃん? 瞬間移動ってできる?』
『はい、何処へ行きましょう』

 おお! できるんだ! でも、今まで聞いた事が無かったから、今まででも出来てたかもしれないよね。

『今まででも出来てたの?』
『……』

 答えねーのかよ! ホント都合の悪い事は言わないよね!

『じゃあさ、この地図の場所まで行ける?』
『行けません』

 行けないのかよ! 遠いから? じゃない? 地図の場所の近くまではサポートしてくれるけど、ピンポイントではいつもサポートしてくれない。だったら。

『この地図のこの辺りまでなら行ける?』

『Sir, yes, sir』

 おお! 行けるんだ! やっぱり直接の場所はダメだけど、近くまでならサポートしてくれるんだよ。

 シュンッ! と周囲の景色が変わると、そこは森の中だった。
 え!? もう!? 待って待って? 確かに森の中を指定したけどさ、いきなり移動させられるの? しかも寝巻きのままだし、靴だって履いてないんだよ。

『戻してくれる?』

『Sir, yes, sir』

 再び、シュンッ! と景色が変わり、先ほどまでいたベッドの上に戻された。隣ではユーが寝息を立てている。

 凄いな。前から出来ていたとかどうでもいいよ。これを使わない手は無い。
 ノワールも速いけど、これの方が断然速いよ。
 今まででもチートだったけど、益々チートになったなぁ。衛星が。

 大体さ、チートって何なのって話だよ。
 凄い力を得て無双すんだろ? あと凄い能力を得て伝説の武器を作ったり、ダンジョンを作ったり、領地経営したりするんだよね?
 で、俺は? 無双してないよね? だって魔物にエンカウントしないんだから。武器? 俺は作れないよ。領地経営? 衛星監修の元、妖精樹のヨウムがやってるよ。ダンジョン? 悪魔達が頑張ってるね。俺? うん、衛星の地図を巡ってるだけ? いやいや、それだけじゃないでしょ、他にも何かあるでしょ。

 ……微ハーレムができたぐらいか。それも今はユーだけになってるし。いや、ユーが不満ってわけじゃないんだよ? 俺には十分すぎてホントに俺でいいのって思っちゃうぐらい素敵ななんだけど、それだけ?
 それなら悠々自適なスローライフでもいいんじゃない? ユーと二人でさ。
 次に地図をコンプリートさせたら悠々自適な暮らしができたらいいな。【星の家】や【星菓子】の人たちとね。

「…おはよ……エイジ」
「おはよう、ユー」

 うん、まずはユーと二人から頑張ろう。頑張って地図をコンプリートさせて、それからトレーズ様にお願いしてみるか。

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