222 / 224
第12章 二つ目の地域制覇へ
第33話 終わり? それとも始まり?
しおりを挟む
大変遅くなりました。
章のタイトル変更しています。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝からユーと二人で王都を出た。
ノワールも連れて行かないと、また後で暑苦しい再会が待ってるので、ノワールに二人乗りで王都を出発した。
その上で衛星に頼んだ。もちろん、ユーとノワールには説明済みだ。
『タマちゃん、さっき行ったところまで、ユーとノワールも一緒に連れて行ってくれる?』
『Sir, yes, sir』
一人で転移した時と同じく、シュンッ! っと周囲の風景が変わり、一瞬で移動した。
「おー! 凄いね! エイジって私なんかよりずっとチートだよね!」
『ぐぬぬぬ、我も負けん!』
ユーさんや、俺がチートなんじゃなくて、衛星がチートなんだよ。全然満足度が無いんだよ。それに、ステータス面だけなら俺よりユーの方がずっとチートだからね。
ノワールは誰と勝負してるのか知らないけど、瞬間移動には勝てないと思うよ。
現場近くに瞬間移動してノワールでの高速移動。からの、ユーの無双と俺の勘で残りのカードも手に入れた。
もうね、なんでこんなに簡単なのに後回しにしちゃってたかなぁって思うほどあっさりと計十枚のカードを手に入れた。
『A』『A』『A』『A』『A』『10』『J』『Q』『K』『JOKER』の十枚。
何故『A』が五枚あるのかなんて分からない。俺に分かるはずも無い。因みに図柄は全部衛星で、『JOKER』の図柄はタマちゃんが眼帯して牙が二本出てたよ。顔なんて無いのに牙だけあってもな……
ただね、こういう衛星が常時俺を護ってくれてるんだってユーには説明できたのは良かった。信じてくれてるようには見えなかったけどね。
コジれてる痛い奴を見る目で、ジトっと見られただけだったよ。
「ユー、前回もそうだったけど、今回もコンプリートしたら強制転送されると思うんだ。ユーはノワールと一緒に待ってて……」
言い終える前にタマちゃんが俺の言葉を遮って転送を開始した。
『Aのフォーカードとロイヤルストレートフラッシュが揃いましたので二段階目の進化をします。JOKERを手にしたエイジを、再びトレーズ様の下へ転送します』
ズーン! シュンッ!
野球のボール大だった衛星達が、バスケットボール大のタマちゃんサイズに大きくなったように見えたような気がしたところで、強制転送されてしまった。
JOKERってトレーズ様の下へと行けるチケット的な何かだったのか?
って、そんなのは今はどうでもいい! もう来ちゃってるから!
「……お、おひさしぶり…で、ございますです」
『おや、またあなたですか。まさか、また来るとは思いませんでした』
いやいや、トレーズ様から期待しているとか言われて、俺も一応頑張ったんだけど。
『それで? ふーむ…むしゃむしゃ…なるほどね…むしゃむしゃ…中々やりますわね』
「……」
なにが? トレーズ様に対しては何もやってないと思いますけど。
それと、食うか話すか、どっちかにしてほしいんだけど……って、それって【星菓子】で出してたケーキじゃん! なんでトレーズ様が食ってんの!?
「はむはむ……美味ですわ……むしゃむしゃ……こちらでは何を作ったのでしょうね……むしゃむしゃ」
「あのー……」
「はむはむ……なにか?」
「あ、いえ、そのホールを食べ終えてからでいいです」
ホールで食うとか、冒険者ギルドにいたランレイさん以来だよ。久し振りに胸が悪くなったよ。
ユーの大食いを見ててもならないのに、ケーキをホールで食うのを見せられると来るよね。
あと、声の聞こえ方が変わった? 今までは念話っぽく頭に響くような声だったのに、今は普通に聞こえてる。
「けぷ…失礼しました。今回は一度目の時と比べて早く済んだようですが、成果は上がりましたか?」
「は、はい。仲間のお蔭で色々とできたと思います」
けぷって…可愛らしいゲップだな! ユーにも見習ってほしいぐらいだよ。でも、ゲップが出るぐらいケーキを食べてたんだな。
食べてる本人も胸悪くなってんじゃないの?
「それで…あの……もう元の場所…【星の家】に戻っても……その…いいんでしょうか」
「そうですね。カードも揃っていますし、最後に出る予定でしたJOKERを探し出していますので資格はあります。あとは……」
「あとは!?」
「貢物ですね」
「貢物?」
達成したご褒美じゃなくて貢物!? なんで?
「勘違いしないでください。前回同様、この後達成したご褒美は差し上げます。その前に、こちら側で行なった成果を提出してください、という意味です」
そゆこと。だったら何が……今の感じだと甘味を欲してそうに見えるけど、こっちじゃホットケーキぐらいだよな。
食べ物って事なら魚介系や蒲鉾なんかもあるんだけど、あまり女子ウケしないだろうし、ケーキと比べるとイマイチだから、やっぱホットケーキを出しとく?
あ…今持ってねーわ。衛星は……そうか、この場所には前回も衛星は来てなかったな。という事は、またリセットか? とすると、レベルアップの予感が……
「すいません。今の手持ち品はこの中にあるんですけど、ホットケーキは手持ちに入ってなくて」
とポシェット型の収納バッグを示すと、トレーズ様はニッコリと微笑んで答えてくれた。
「いいのですよ。衛星が出せれば問題ありません。衛星の機能はこちらにもありますし、データは繋がっていますから」
ほら、と言ってホットケーキを手に取るトレーズ様。
なんですと!? そんな機能があったの? だったら俺が衛星に要望すればするほどデータが溜まっていくの?
もしかして、それが狙い?
呆気に取られている俺を尻目に、ホットケーキを食べるトレーズ様。
まだ食えんの!? さっきいっぱいいっぱいに見えたけど、まだ食う気?
「さっきより甘く無いのですね」
「あ、それはそのままだとそうですね。熱い内にバターを乗せて蜂蜜をかけると美味しいんですよ」
そう言って収納バッグからバターと蜂蜜を取り出した。
バターはパン用に衛星に用意してもらったものの残りをそのまま収納していたもので、蜂蜜はエルフ達からせしめたものだ。
「むほっ! 美味でござりまするー」
だれ? まさかのニセモノ!?
そんなわけないな。こんな絶世の美女が何人もいてたまるかって話だよ。
美味しいものって人格変えるのな。残念な感じに見えるよ。
確かにエルフのとこの蜂蜜は別格だからね。衛星が用意してくれる蜂蜜よりも美味しいからな。ホットケーキも一段と引き立って数段味が上がるよね。
一気にホットケーキを食べ終えたトレース様が、ようやく本題に入ってくれた。
さっきホールでケーキ食った後に、よくそんな勢いで食べられるもんだ。
別腹何個持ってんの?
「さてキズナ。貢物はしっかと受け取った。うむ、満足じゃ。次も期待しておる」
胸を張って仰々しくのたまわってくれましたが、口調が全然変わってんだけど。そんな偉そうに話してなかったよね?
「では…コホン、仕切り直しです。よくぞ頑張ってくれました。これで、この山を挟んだ二つの地域は何千年と停滞していた歴史より一歩前に進めるでしょう。そこでキズナに選択肢をあげましょう」
「選択肢? ですか?」
選択肢? ご褒美を選べるって事かな?
「はい、選択肢です。選択肢は三つ。ひとつはご褒美は大した物はありませんが、二つの地域を行き来できるようになる事。ひとつはまぁまぁのご褒美でどちらかの地域にしか行けない事。最後のひとつは最高のご褒美を貰えて新たな地域に行く事です」
なっ! そんなの選べ……そうだな。二番目の選択肢は無いな。そこそこのご褒美で一つしか行けないんだったら、ご褒美が無くても両方行ける方がいい。三番目の超絶なご褒美が気になるところだけど、また危ない橋を渡るのなら、安全に一番目を選びたい。
それに、皆にも会いたいし、やってた事もやりっ放しになってて任せっきりだもんな。
「わかりました。もう言ってもいいですか?」
「もう決めたのですか? 中々見所があるとは思っていましたが、これほどとは思っていませんでした」
「では言いますね」
「はい、最高のご褒美ですね」
「え? いや、ちが……」
「あとは任せましたよ」
「いや、違うってー……」
違うと言ってるのに聞いてくれないトレーズ様。
また? また一からやるの? ユーに待っててって言って来たのに。
視界が暗転したので、また森の中かどこかに飛ばされると思ってたら、目の前にはトレーズ様がいた。部屋も同じ真っ白な部屋だ。
見た目がソックリの別の神様かと疑ったが、手にはホットケーキを持ってたから本人で間違いないだろう。
「あれ? 戻って来た? ってか、送られてない?」
「エイジ、あなたの要望には答えられないようです」
え? え? どうゆう事? っていうか、三番目の選択は俺の要望じゃなかったんだけど。
「私の管理する領域はこの山を挟んだ二つの地域なのです。色は黒。七つある領域のひとつなのです。次は白か黄を予定していましたが、今は勇者が飽和状態で受け入れられませんでした。そこで、新たに四つ目の提案です」
「一番目でお願いします!」
どうせ四番目を聞いたら無理にでも四番目にしようとしてんだろ。分かってんだよ!
「あら、聞かなくて良かったのですか?」
「はい! 一番目でお願いします!」
「そうですか…あー勿体無いですね。折角、衛星をリセットして差し上げようと思ってましたのに。では、一番目の……」
「ちょーっと待ってください!」
「なんでしょうか。もう変更はできませんよ?」
「四番目の内容……いえ! 一番目を選ぶと衛星はリセットされないのですか?」
もう変更ができないのなら、選択した一番目の内容の詳細が知りたい。と、思って聞いてみたのだが。
「当然です。一度クリアしたのですから、そのまま継続となります。四番目の選択にはリセットをした上で、両方に行ける権利を差し上げようとしましたのに、一番目を選ばれたのでしたらそれも致し方ありません」
ノォォォォォ! マジか、聞いときゃよかった……
「その代わり、白か黄の領域に空きが出れば行ってもらう予定でしたが。当分空きは出ないようですし、青か緑でも行きますか?」
ん? その色って……
「それって月の色が関係してます?」
「はい、私達はそれぞれの月に住んでいます。この山頂の領域は住まいと担当領域を繋ぐ入口に過ぎません。私の領域は二つの地域で出来ていますが、他の者は幾つも地域を持っていたり一つしか持っていなかったり色々おります」
おお! この世界の秘密に少し触れたよ! こんなの誰も知らないんじゃない? このレッテ山の主をしてたクラマでも知らないだろうな。
「でも、この地域でまだやり残した事もありますし……」
「この領域では前進がありました。あとは他の者にさせないと、真の意味での前進になりません。ここまで切っ掛けを与えれば十分でしょう。ですから、エイジがやり残したと思う事があれば、次の地域で行なってください。それが他の地域でも前進の切っ掛けになるでしょうから」
俺がやったのは、あくまでも切っ掛けってわけね。結構、頑張ったんだけどなぁ。でも、やりっ放しで丸投げできるのかいいかな。最終的なビジョンは日本のものだし、この世界はこの世界の終着点があるだろうしね。
だって、俺が育った日本には魔法が無かったんだから、あまり手を出しすぎるのもよくないんだろうね。
俺としては非常に不完全燃焼なんだけど、トレーズ様の指示とあれば致し方ないか。
だって、この人に逆らったら『衛星の加護』をはずされちゃうかもしれないんだよ? 今更、衛星の無い生活なんて考えられないから!
「分かりました。でも、もう少しやりたい事があるんで、それには手を出してもいいですか?」
「少しぐらいなら構いません。何をするのか聞いても構いませんか?」
「はい、貿易です」
「貿易?」
「はい、折角、二つの地域が行き来できるようになったんですから、その橋渡しをしてみたいです。お互いに足りない物も多いようですから」
「そうですか。そろそろ川も開通させようと思ってましたからちょうどいいでしょう。でも、それ以上は手出しは無用ですからね」
「わかりました」
あの塞がっていた川を開通してくれるんだ。海から川を登って行けるようになれば、かなり楽ができるかも。
「海を超えれば次の予定地です。どの方角に超えてもいずれエイジが行く事になる場所ですから、少しぐらいは行っても構いません。話は通しておきましょう」
「ありがとうございます。それは楽しみです」
行きたくないけどね。でも、強制的に行かされそうだし、少しぐらいは下見に行った方がいいと思うんだ。皆との新婚旅行というのもアリだと思うんだよ。
そうだった、まだ結婚もしてなかったよ。一つ目の地域に戻れるんなら、それもキッチリしておかないとね。
「では、後は衛星に任せます。好きな所に戻りなさい」
「はい、わかりました」
「あ、そうそう、忘れてました。ご褒美でしたね」
おお! 何かもらえるみたいだ。
「一つ目の地域に戻っていた事を不問に致しましょう」
「え?」
バレてたの!?
「本来なら衛星を取り上げる予定でしたが、二つ目の地域でもよくやってくれましたので不問とします。それでいいですね?」
「もちろんです!」
何も貰えなかったのは残念だけど、衛星を取り上げられなくてよかったよ。俺にとっては何よりの褒美だよ。
「では、空きが出来次第、衛星に知らせます」
「分かりました!」
トレーズ様が去って行き、姿が消えると衛星が現れた。
さて、ユーのところに戻るかな。
章のタイトル変更しています。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝からユーと二人で王都を出た。
ノワールも連れて行かないと、また後で暑苦しい再会が待ってるので、ノワールに二人乗りで王都を出発した。
その上で衛星に頼んだ。もちろん、ユーとノワールには説明済みだ。
『タマちゃん、さっき行ったところまで、ユーとノワールも一緒に連れて行ってくれる?』
『Sir, yes, sir』
一人で転移した時と同じく、シュンッ! っと周囲の風景が変わり、一瞬で移動した。
「おー! 凄いね! エイジって私なんかよりずっとチートだよね!」
『ぐぬぬぬ、我も負けん!』
ユーさんや、俺がチートなんじゃなくて、衛星がチートなんだよ。全然満足度が無いんだよ。それに、ステータス面だけなら俺よりユーの方がずっとチートだからね。
ノワールは誰と勝負してるのか知らないけど、瞬間移動には勝てないと思うよ。
現場近くに瞬間移動してノワールでの高速移動。からの、ユーの無双と俺の勘で残りのカードも手に入れた。
もうね、なんでこんなに簡単なのに後回しにしちゃってたかなぁって思うほどあっさりと計十枚のカードを手に入れた。
『A』『A』『A』『A』『A』『10』『J』『Q』『K』『JOKER』の十枚。
何故『A』が五枚あるのかなんて分からない。俺に分かるはずも無い。因みに図柄は全部衛星で、『JOKER』の図柄はタマちゃんが眼帯して牙が二本出てたよ。顔なんて無いのに牙だけあってもな……
ただね、こういう衛星が常時俺を護ってくれてるんだってユーには説明できたのは良かった。信じてくれてるようには見えなかったけどね。
コジれてる痛い奴を見る目で、ジトっと見られただけだったよ。
「ユー、前回もそうだったけど、今回もコンプリートしたら強制転送されると思うんだ。ユーはノワールと一緒に待ってて……」
言い終える前にタマちゃんが俺の言葉を遮って転送を開始した。
『Aのフォーカードとロイヤルストレートフラッシュが揃いましたので二段階目の進化をします。JOKERを手にしたエイジを、再びトレーズ様の下へ転送します』
ズーン! シュンッ!
野球のボール大だった衛星達が、バスケットボール大のタマちゃんサイズに大きくなったように見えたような気がしたところで、強制転送されてしまった。
JOKERってトレーズ様の下へと行けるチケット的な何かだったのか?
って、そんなのは今はどうでもいい! もう来ちゃってるから!
「……お、おひさしぶり…で、ございますです」
『おや、またあなたですか。まさか、また来るとは思いませんでした』
いやいや、トレーズ様から期待しているとか言われて、俺も一応頑張ったんだけど。
『それで? ふーむ…むしゃむしゃ…なるほどね…むしゃむしゃ…中々やりますわね』
「……」
なにが? トレーズ様に対しては何もやってないと思いますけど。
それと、食うか話すか、どっちかにしてほしいんだけど……って、それって【星菓子】で出してたケーキじゃん! なんでトレーズ様が食ってんの!?
「はむはむ……美味ですわ……むしゃむしゃ……こちらでは何を作ったのでしょうね……むしゃむしゃ」
「あのー……」
「はむはむ……なにか?」
「あ、いえ、そのホールを食べ終えてからでいいです」
ホールで食うとか、冒険者ギルドにいたランレイさん以来だよ。久し振りに胸が悪くなったよ。
ユーの大食いを見ててもならないのに、ケーキをホールで食うのを見せられると来るよね。
あと、声の聞こえ方が変わった? 今までは念話っぽく頭に響くような声だったのに、今は普通に聞こえてる。
「けぷ…失礼しました。今回は一度目の時と比べて早く済んだようですが、成果は上がりましたか?」
「は、はい。仲間のお蔭で色々とできたと思います」
けぷって…可愛らしいゲップだな! ユーにも見習ってほしいぐらいだよ。でも、ゲップが出るぐらいケーキを食べてたんだな。
食べてる本人も胸悪くなってんじゃないの?
「それで…あの……もう元の場所…【星の家】に戻っても……その…いいんでしょうか」
「そうですね。カードも揃っていますし、最後に出る予定でしたJOKERを探し出していますので資格はあります。あとは……」
「あとは!?」
「貢物ですね」
「貢物?」
達成したご褒美じゃなくて貢物!? なんで?
「勘違いしないでください。前回同様、この後達成したご褒美は差し上げます。その前に、こちら側で行なった成果を提出してください、という意味です」
そゆこと。だったら何が……今の感じだと甘味を欲してそうに見えるけど、こっちじゃホットケーキぐらいだよな。
食べ物って事なら魚介系や蒲鉾なんかもあるんだけど、あまり女子ウケしないだろうし、ケーキと比べるとイマイチだから、やっぱホットケーキを出しとく?
あ…今持ってねーわ。衛星は……そうか、この場所には前回も衛星は来てなかったな。という事は、またリセットか? とすると、レベルアップの予感が……
「すいません。今の手持ち品はこの中にあるんですけど、ホットケーキは手持ちに入ってなくて」
とポシェット型の収納バッグを示すと、トレーズ様はニッコリと微笑んで答えてくれた。
「いいのですよ。衛星が出せれば問題ありません。衛星の機能はこちらにもありますし、データは繋がっていますから」
ほら、と言ってホットケーキを手に取るトレーズ様。
なんですと!? そんな機能があったの? だったら俺が衛星に要望すればするほどデータが溜まっていくの?
もしかして、それが狙い?
呆気に取られている俺を尻目に、ホットケーキを食べるトレーズ様。
まだ食えんの!? さっきいっぱいいっぱいに見えたけど、まだ食う気?
「さっきより甘く無いのですね」
「あ、それはそのままだとそうですね。熱い内にバターを乗せて蜂蜜をかけると美味しいんですよ」
そう言って収納バッグからバターと蜂蜜を取り出した。
バターはパン用に衛星に用意してもらったものの残りをそのまま収納していたもので、蜂蜜はエルフ達からせしめたものだ。
「むほっ! 美味でござりまするー」
だれ? まさかのニセモノ!?
そんなわけないな。こんな絶世の美女が何人もいてたまるかって話だよ。
美味しいものって人格変えるのな。残念な感じに見えるよ。
確かにエルフのとこの蜂蜜は別格だからね。衛星が用意してくれる蜂蜜よりも美味しいからな。ホットケーキも一段と引き立って数段味が上がるよね。
一気にホットケーキを食べ終えたトレース様が、ようやく本題に入ってくれた。
さっきホールでケーキ食った後に、よくそんな勢いで食べられるもんだ。
別腹何個持ってんの?
「さてキズナ。貢物はしっかと受け取った。うむ、満足じゃ。次も期待しておる」
胸を張って仰々しくのたまわってくれましたが、口調が全然変わってんだけど。そんな偉そうに話してなかったよね?
「では…コホン、仕切り直しです。よくぞ頑張ってくれました。これで、この山を挟んだ二つの地域は何千年と停滞していた歴史より一歩前に進めるでしょう。そこでキズナに選択肢をあげましょう」
「選択肢? ですか?」
選択肢? ご褒美を選べるって事かな?
「はい、選択肢です。選択肢は三つ。ひとつはご褒美は大した物はありませんが、二つの地域を行き来できるようになる事。ひとつはまぁまぁのご褒美でどちらかの地域にしか行けない事。最後のひとつは最高のご褒美を貰えて新たな地域に行く事です」
なっ! そんなの選べ……そうだな。二番目の選択肢は無いな。そこそこのご褒美で一つしか行けないんだったら、ご褒美が無くても両方行ける方がいい。三番目の超絶なご褒美が気になるところだけど、また危ない橋を渡るのなら、安全に一番目を選びたい。
それに、皆にも会いたいし、やってた事もやりっ放しになってて任せっきりだもんな。
「わかりました。もう言ってもいいですか?」
「もう決めたのですか? 中々見所があるとは思っていましたが、これほどとは思っていませんでした」
「では言いますね」
「はい、最高のご褒美ですね」
「え? いや、ちが……」
「あとは任せましたよ」
「いや、違うってー……」
違うと言ってるのに聞いてくれないトレーズ様。
また? また一からやるの? ユーに待っててって言って来たのに。
視界が暗転したので、また森の中かどこかに飛ばされると思ってたら、目の前にはトレーズ様がいた。部屋も同じ真っ白な部屋だ。
見た目がソックリの別の神様かと疑ったが、手にはホットケーキを持ってたから本人で間違いないだろう。
「あれ? 戻って来た? ってか、送られてない?」
「エイジ、あなたの要望には答えられないようです」
え? え? どうゆう事? っていうか、三番目の選択は俺の要望じゃなかったんだけど。
「私の管理する領域はこの山を挟んだ二つの地域なのです。色は黒。七つある領域のひとつなのです。次は白か黄を予定していましたが、今は勇者が飽和状態で受け入れられませんでした。そこで、新たに四つ目の提案です」
「一番目でお願いします!」
どうせ四番目を聞いたら無理にでも四番目にしようとしてんだろ。分かってんだよ!
「あら、聞かなくて良かったのですか?」
「はい! 一番目でお願いします!」
「そうですか…あー勿体無いですね。折角、衛星をリセットして差し上げようと思ってましたのに。では、一番目の……」
「ちょーっと待ってください!」
「なんでしょうか。もう変更はできませんよ?」
「四番目の内容……いえ! 一番目を選ぶと衛星はリセットされないのですか?」
もう変更ができないのなら、選択した一番目の内容の詳細が知りたい。と、思って聞いてみたのだが。
「当然です。一度クリアしたのですから、そのまま継続となります。四番目の選択にはリセットをした上で、両方に行ける権利を差し上げようとしましたのに、一番目を選ばれたのでしたらそれも致し方ありません」
ノォォォォォ! マジか、聞いときゃよかった……
「その代わり、白か黄の領域に空きが出れば行ってもらう予定でしたが。当分空きは出ないようですし、青か緑でも行きますか?」
ん? その色って……
「それって月の色が関係してます?」
「はい、私達はそれぞれの月に住んでいます。この山頂の領域は住まいと担当領域を繋ぐ入口に過ぎません。私の領域は二つの地域で出来ていますが、他の者は幾つも地域を持っていたり一つしか持っていなかったり色々おります」
おお! この世界の秘密に少し触れたよ! こんなの誰も知らないんじゃない? このレッテ山の主をしてたクラマでも知らないだろうな。
「でも、この地域でまだやり残した事もありますし……」
「この領域では前進がありました。あとは他の者にさせないと、真の意味での前進になりません。ここまで切っ掛けを与えれば十分でしょう。ですから、エイジがやり残したと思う事があれば、次の地域で行なってください。それが他の地域でも前進の切っ掛けになるでしょうから」
俺がやったのは、あくまでも切っ掛けってわけね。結構、頑張ったんだけどなぁ。でも、やりっ放しで丸投げできるのかいいかな。最終的なビジョンは日本のものだし、この世界はこの世界の終着点があるだろうしね。
だって、俺が育った日本には魔法が無かったんだから、あまり手を出しすぎるのもよくないんだろうね。
俺としては非常に不完全燃焼なんだけど、トレーズ様の指示とあれば致し方ないか。
だって、この人に逆らったら『衛星の加護』をはずされちゃうかもしれないんだよ? 今更、衛星の無い生活なんて考えられないから!
「分かりました。でも、もう少しやりたい事があるんで、それには手を出してもいいですか?」
「少しぐらいなら構いません。何をするのか聞いても構いませんか?」
「はい、貿易です」
「貿易?」
「はい、折角、二つの地域が行き来できるようになったんですから、その橋渡しをしてみたいです。お互いに足りない物も多いようですから」
「そうですか。そろそろ川も開通させようと思ってましたからちょうどいいでしょう。でも、それ以上は手出しは無用ですからね」
「わかりました」
あの塞がっていた川を開通してくれるんだ。海から川を登って行けるようになれば、かなり楽ができるかも。
「海を超えれば次の予定地です。どの方角に超えてもいずれエイジが行く事になる場所ですから、少しぐらいは行っても構いません。話は通しておきましょう」
「ありがとうございます。それは楽しみです」
行きたくないけどね。でも、強制的に行かされそうだし、少しぐらいは下見に行った方がいいと思うんだ。皆との新婚旅行というのもアリだと思うんだよ。
そうだった、まだ結婚もしてなかったよ。一つ目の地域に戻れるんなら、それもキッチリしておかないとね。
「では、後は衛星に任せます。好きな所に戻りなさい」
「はい、わかりました」
「あ、そうそう、忘れてました。ご褒美でしたね」
おお! 何かもらえるみたいだ。
「一つ目の地域に戻っていた事を不問に致しましょう」
「え?」
バレてたの!?
「本来なら衛星を取り上げる予定でしたが、二つ目の地域でもよくやってくれましたので不問とします。それでいいですね?」
「もちろんです!」
何も貰えなかったのは残念だけど、衛星を取り上げられなくてよかったよ。俺にとっては何よりの褒美だよ。
「では、空きが出来次第、衛星に知らせます」
「分かりました!」
トレーズ様が去って行き、姿が消えると衛星が現れた。
さて、ユーのところに戻るかな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる